オールドレンズの魅力とは?いまフィルムカメラ用の中古レンズを使う理由。
今回は、オールドレンズの魅力についてご紹介します。
きれいな写真が撮れるデジタル一眼カメラがぐっと身近になった現代。
カメラに付属してきた新しいレンズではなく、いま、あえて「オールドレンズ」を使う方が増えています。
オールドレンズ。
昔のフィルムカメラの時代に作られた、古い中古レンズのことです。
どうして、最新のデジタル一眼カメラであえて古いレンズを使うのでしょうか?
レトロなだけではない美しい描写。
丁寧な手仕事が感じられる作りの良さ。
そして、高性能な描写が実は安価に味わえるコストパフォーマンスの良さ。
オールドレンズには魅力がいっぱい!
わたしたち、中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラでは、フィルムカメラの時代のレンズをいくつも実際に使ってきました。
オールドレンズの質感・量感あふれる美しい描写。
それをフィルムカメラだけで独り占めしていたらもったいない!
ぜひデジタル一眼カメラをお持ちの方にも使っていただきたいと思い、今回の記事をお届けします。
目次
オールドレンズの魅力とは
現代の最新レンズとはまったく異なる味わい深く美しい描写が楽しめるオールドレンズ。
いったい、どのような魅力があるのでしょうか?
まず、オールドレンズとはどのようなものか、入門のための基礎知識から解説します。
そもそもオールドレンズってなに?
まず、オールドレンズとはどんなものなのでしょうか?
簡単にいえば、オールドレンズとは「フィルムカメラの時代のレンズ」のこと。
さらに、フィルムカメラでも、1970年代以前の「マニュアルフォーカス時代のレンズ」が狭義のオールドレンズとされることが多いです。
どんなに新しくても、1980年代中盤以降に発売したレンズは、オールドレンズの範疇には含まないことが多いといえるでしょう。
それでは、なぜ、そのような年代のレンズがオールドレンズと呼ばれることが多いのでしょうか?
オールドレンズは作りがよい時代のレンズ
主に1970年代以前のレンズがオールドレンズとされることが多いのは、まず、マニュアルフォーカス(ピントを手動で合わせる)のレンズであること。
マニュアルフォーカス
そして、1970年代を境に、カメラのつくりが大きく変化したことも、大きな理由として挙げることができるでしょう。
1970年代の中ごろ、フィルムカメラの価格破壊が起こりました。
CanonのAE-1やRICOHのXR500といった安価な一眼レフカメラが発売。
それを境に、カメラもレンズも量産に向いた、よりコストダウンされた構造になりました。
また、1975年のコニカC35EFをはじめとしたストロボ内蔵コンパクトカメラの発売を契機に、カメラのボディはそれまでの金属製から、廉価に製造可能なプラスチック製へと変化しました。
(コニカC35EFがプラスチックを採用したのはストロボの高電圧の絶縁のためだったのですが、その技術はコストダウンに活かされることとなります)
また、1970年代以前のカメラ用レンズは、「単焦点レンズ」(ズームができないレンズ)でした。
単焦点レンズはズームレンズよりも画質や描写力に勝ります。
1980年代以降、一般的に使われるレンズが、単焦点レンズからズームレンズに移行していきました。
一般的に使われるレンズに、画質よりもズームの便利さが求められるようになる変化も同時期に生じたのです。
(単焦点レンズとズームレンズについてはこちらで解説しています)
それでは逆に、そのような変化が起こる1970年代中ごろ以前のレンズはどうでしょうか。
大幅なコストダウンが起こる以前の、金属製の重厚かつ職人技を感じられる外装。
クラシックな設計ながら、ズームレンズよりもずっと画質がよく、それでいて色合いや質感、量感にあふれる描写。
そう、オールドレンズとは、カメラが使い捨ての家電製品になる前の、高級な精密機械としての魅力を感じることができるもの。
逆説的になりますが、そのような古き良き時代のレンズのことを、オールドレンズと呼ぶ、ということができるでしょう。
1970年代の金属製レンズ
1990年代〜近年のプラスチック製レンズ
なお1980年代前半くらいまではコストをかけた製品もまだまだ残っていて、少し新し目の年式でも人気が高いです。
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オールドレンズの種類
それでは次に、オールドレンズにはどのような種類があるのか解説します。
基本的にはどれもフィルムカメラ用のレンズです。
なお、この項目で触れる「フルサイズ」「APS-Cサイズ」「マイクロフォーサーズ」とはデジタル一眼カメラのイメージセンサーサイズの規格。
それぞれの規格により、オールドレンズの種類ごとに向き・不向きが変わります。
オールドレンズにおすすめのデジタルカメラ(ミラーレス一眼)についてはこちらで解説しています。
1.一眼レフカメラ用レンズ
適応
フルサイズミラーレス一眼カメラ | ◎(最適) |
APS-Cサイズミラーレス一眼カメラ | ◯(換算焦点距離1.5倍) |
マイクロフォーサーズミラーレス一眼カメラ | △(換算焦点距離2倍) |
デジタル一眼レフカメラ | ◯〜△(メーカーごとに異なる) |
まず、フィルムカメラ時代の一眼レフカメラ用レンズ。
(ここでは35mmフィルム一眼レフカメラ用レンズを「一眼レフカメラ用」とします)
具体的には、日本製としてはニコン、キヤノン、ペンタックス、ミノルタ、オリンパス、コンタックスといったメーカー。
海外製では、カール・ツァイス(東ドイツ・西ドイツ)、ライカ製一眼レフ、旧ソ連製レンズなどが挙げられます。
最大の特徴はバリエーションの豊富さ。
古今東西、1950年代〜1980年代まで、日本製やドイツ製、ロシア製の各社製レンズがよりどりみどり。
さまざまなレンズが楽しめるのが最大の魅力だといえるでしょう。
ただし、カメラメーカーにより「レンズマウント」が異なるため、デジタル一眼カメラで使用する場合には、種類ごとにマウントアダプターを用意することが必要です。
レンズマウント
一眼レフカメラ用レンズをミラーレス一眼カメラに取り付けるマウントアダプター
また、日本製のオールドレンズは製造数が多いので安価に手に入れることが可能です。
値段の面でも、オールドレンズ入門にぴったりの製品だといえるでしょう。
海外製のレンズについても、次に解説するレンジファインダーカメラ用レンズに比べると廉価なものが多いです。
また、フィルム一眼レフカメラは第二次世界大戦後に生まれた種類のカメラで、普及し始めたのは1960年代以降と、オールドレンズのなかでも比較的新しい部類に入ります。
そのため、操作性が次に紹介するレンジファインダーカメラ用レンズに比べ良好です。
具体的には絞りリングが等間隔でクリックが付いていたり、ピントリングや絞りリングの配置が人間工学に配慮したものとなっている、といった特徴があります。
さまざまなデジタル一眼カメラで使用可能
デジタル一眼カメラに取り付ける場合の適応について解説すると、フランジバック(イメージセンサーからレンズマウント面までの長さ)が長いため、マウントアダプターを使用する場合、もっとも自由度が高い部類となります。
ミラーレス一眼カメラでは基本的にどの機種でも使用可能(※PENTAX K-01を除く)。
デジタル一眼レフカメラでは、ペンタックス、ニコン、Canonが向いています。
PENTAXの機種はPENTAX KマウントとM42マウントのものが。
Canon EOSシリーズでは各社のレンズが。
Nikonのデジタル一眼レフカメラでは、NikonのAiレンズの装着が可能です(一部、非Aiレンズの装着が可能なエントリー機種が存在)。
2.レンジファインダーカメラ用レンズ
適応
フルサイズミラーレス一眼カメラ | ◎(最適) |
APS-Cサイズミラーレス一眼カメラ | ◯(換算焦点距離1.5倍) |
マイクロフォーサーズミラーレス一眼カメラ | △(換算焦点距離2倍) |
デジタル一眼レフカメラ | ☓(使用不可) |
レンジファインダーカメラとは、「ライカ」に代表される、連動距離計を搭載したフィルムカメラのこと。
レンジファインダーカメラについては以下の記事で解説しています。
レンジファインダーカメラ用のレンズも、オールドレンズのなかでも非常に人気が高いものです。
特徴は、高級レンズだということ。
レンジファインダーカメラが主流だったのは1950年代以前。
カメラがまだまだ高級品だった、一家に一台あればよい部類だった時代。
しかも当時、レンズ交換式のレンジファインダーカメラは最高級カメラでした。
そんなカメラに使われたレンズだからこそ、レンズのモノとしての仕上げは最良。
そして描写力も非常に良好。
当時の技術者がすべての知識を注ぎ込んで作り上げた、ものつくりの力の結晶です。
もちろん、単なる数値上のスペックでは現代のレンズのほうがよいことも多いです。
しかしながら、レンジファインダーカメラ用のオールドレンズには、数字には現れない魅力的な描写力を持っているものが数多く存在します。
完璧ではないゆらぎがあるからこその魅力。
それがレンジファインダーカメラ用のオールドレンズの強みだといえます。
高級レンズだったこと、一眼レフカメラ用オールドレンズに比べれば大量生産されなかったため中古価格は少し高め。
ですが、それに見合う満足感が確実に得られる逸品だといえるでしょう。
レンジファインダー用レンズを使うならミラーレス一眼カメラ
レンジファインダーカメラ用オールドレンズを使うなら、ミラーレス一眼カメラが最適です。
レンジファインダー用レンズはフランジバックが一眼レフカメラよりも短いため、デジタル一眼レフカメラでの使用はできません。
(無理やり装着しても、マクロ撮影専用となります)
[oldlens]
3.中判レンズ
適応
フルサイズミラーレス一眼カメラ | ◯(換算焦点距離が望遠寄りになる) |
APS-Cサイズミラーレス一眼カメラ | ◯(換算焦点距離が望遠寄りになる) |
マイクロフォーサーズミラーレス一眼カメラ | △(換算焦点距離が望遠寄りになりすぎる) |
デジタル一眼レフカメラ | ◯(換算焦点距離が望遠寄りになる) |
中判カメラとは、35mmフィルムカメラよりも大きな画面サイズのフィルム、主に120フィルム(通称:ブローニー)を使うカメラのこと。
中判カメラ用のオールドレンズは、基本的には中判一眼レフカメラ用のレンズのことを指します。
具体的にはPENTAX 6×7やMamiya M645といった国産中判一眼レフ。
また海外製では、東ドイツのペンタコンシックス用のレンズ。
フィルムのフォーマットにより異なりますが、中判用の標準レンズ(80mm前後)を取り付けた場合、35mmフルサイズのデジタル一眼カメラでは中望遠に、APS-Cサイズのデジタル一眼カメラでは望遠レンズになります。
マイクロフォーサーズのデジタル一眼カメラでは、望遠レンズになりすぎるので、望遠撮影を目的にするとき以外には不向きです。
中判レンズはどのカメラでも使用可能
基本的には中判用オールドレンズは、デジタル一眼レフにもミラーレス一眼にも取付可能です。
(一部を除く)
中判一眼レフカメラのフランジバックは35mmフィルム一眼レフカメラよりも長いので、一眼レフ用のマウントアダプターも各種販売されています。
4.シネレンズ
適応
フルサイズミラーレス一眼カメラ | ☓(使用不可) |
APS-Cサイズミラーレス一眼カメラ | ○(制限あり) |
マイクロフォーサーズミラーレス一眼カメラ | ◎(最適) |
デジタル一眼レフカメラ | ☓(使用不可) |
シネレンズとは、フィルムを用いた動画撮影用カメラで使用されたレンズのこと。
16mmフィルム用のCマウントレンズや、8mmフィルム用のDマウントレンズが代表的です。
いまではデジタルで撮影されている映画やテレビの動画ですが、ビデオテープが一般的になる以前は、フィルムで撮影することが一般的でした。
16mmフィルムや8mmフィルムとは、写真用の35mmフィルムよりもさらに幅が狭い、映像撮影用のフィルム。
幅が狭い=撮影する画面面積も小さいので、35mmフルサイズよりも画面サイズが小さな規格のミラーレス一眼カメラに最適なのです。
専用マウントアダプターを介することでシネレンズの取り付けが可能となります。
価値が見直されたシネレンズ
実はシネレンズは、ミラーレス一眼カメラが登場する以前はまったく無価値な製品とされていました。
ところがミラーレス一眼カメラに取り付けて使えることが知られるようになり人気が爆発。
フィルムカメラ(スチルカメラ)用のオールドレンズでは希少な、日本の「Zunow」(ズノー)やフランスの「Angenieux」(アンジェニュー)といった伝説のメーカーの製品が手頃に楽しめるとあって、カメラファンに珍重されています。
魅力的なシネレンズのかずかずを楽しんでみませんか?
シネレンズについて詳しくはこちら
シネレンズはマイクロフォーサーズとペンタックスQマウントが最適。
Cマウントレンズは、APS-Cサイズとマイクロフォーサーズのミラーレス一眼が向いています。
ただし、イメージサークルの大きさが一定しないので、どちらもケラレが発生する可能性があります。
よりセンサーが小さいマイクロフォーサーズのほうがよりよいといえるでしょう。
また、Dマウントレンズはイメージサークルが非常に小さいので、マイクロフォーサーズよりさらにセンサーが小さい、PENTAX Qシリーズ専用となります。
なお、35mmフルサイズのミラーレス一眼カメラでは、イメージサークルが小さいため使用不可。
またデジタル一眼レフカメラでも、レンズ自体のフランジバックが短いため使用することはできません。
5.その他にもあるオールドレンズ
その他にも、以下のようなレンズがあります。
引き伸ばしレンズ
フィルムを印画紙に拡大投影して焼き付けるためのレンズ。
特徴として、ピントを合わせるための機構がないため、撮影のためには「ヘリコイド内蔵マウントアダプター」や「接写リング」を組み合わせるなどの工夫が必要です。
レンズシャッターカメラから取り外したレンズ
戦前の「ベス単」や戦前〜戦後の「スプリングカメラ」(蛇腹フォールディングカメラ)などから取り外したレンズです。
引き伸ばしレンズ同様に工夫することで撮影が可能。
ただし、取り外すイコール、元々のカメラを不可逆的に破壊することにもつながるので、必ずしもおすすめできる行為ではありません。
オールドレンズはどうやって使うの?
さて、それではそんなオールドレンズは、いったいどうやって使うのでしょうか?
1.マウントアダプターで使う
オールドレンズの魅力を味わうときに、いまもっとも行われている方法が、「マウントアダプター」を使う方法です。
マウントアダプターとは、カメラ本体の「レンズマウント」を、オールドレンズの「レンズマウント」に変換するアクセサリーのこと。
構造はとても単純なので、廉価なものなら2000円前後で入手することが可能です。
マウントアダプターを使って撮影するのに向いているのは、ミラーレス一眼カメラ。
フィルム一眼レフカメラ用、レンジファインダーカメラ用をはじめて、ほとんどのオールドレンズの使用が可能です。
具体的な機種としては、断然、フルサイズのイメージセンサーを搭載した「SONY α7シリーズ」がおすすめできるでしょう。
フィルム時代のオールドレンズの魅力を思う存分に味わうことができますよ!
↑ミラーレス一眼カメラに、マウントアダプターを介してオールドレンズを取り付ける様子
また、デジタル一眼レフカメラでも、Canonの「EOS」シリーズはフランジバックが短いため、マウントアダプターを使ってオールドレンズを取り付けることが可能です。
ミラーレス一眼カメラでオールドレンズを使う方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
ミラーレス一眼カメラにおすすめの定番マウントアダプター
2.デジタル一眼カメラに直接取り付けて使う
Canon EOS – ヤシカ・コンタックス用マウントアダプター
デジタル一眼レフカメラのなかには、レンズマウントがオールドレンズと同じ形状をしているものが存在します。
具体的には、ニコンとペンタックスのデジタル一眼レフカメラです。
Nikonのデジタル一眼レフの場合
ニコンの一眼レフカメラは、フィルムカメラでもデジタルカメラでも一貫して「Fマウント」を採用しているため、レンズの装着に互換性があります。
ただし、一部の組み合わせでは、デジタル一眼レフカメラのボディと、オールドレンズとが形状的に干渉し装着できないことがあります。
ニコンのオールドレンズについては以下の記事で紹介しています。
PENTAXのデジタル一眼レフの場合
またペンタックスは1975年以降現代に至るまで「Kマウント」を採用しており、こちらは完全に装着の互換性があります。
また、Kマウントの以前にペンタックスが採用していた「M42マウント」も、マウントアダプターを介することでペンタックス製デジタル一眼レフカメラで使用することが可能です。
CanonとSONYのデジタル一眼レフもマウントアダプターを取り付け可能
また、CanonとSONYのデジタル一眼レフは、一眼レフ用のオールドレンズをマウントアダプターで取り付け可能です。
例として「M42マウント」のオールドレンズは、それぞれ以下のマウントアダプターで使用可能です。
デジタル一眼レフとマウントアダプターについて、詳しくはこちらの記事でも解説しています。
3.フィルムカメラで使う
中古フィルムカメラ専門店である当店としては、ぜひ、フィルムカメラでの撮影を楽しむこともおすすめしたいです。
質感高いオールドレンズですが、じつは同時代のフィルムカメラのボディ本体も、負けず劣らずの上質な仕上げが楽しめます。
バネとゼンマイの精密機械。
職人芸あふれる本来の組み合わせでカメラとレンズを味わう。
手のひらの中に収まる写真機にあなたの手で生命を吹き込む至高の体験です。
もちろん、撮影した写真もとても味わい深いもの。
オールドレンズならではの豊穣な描写力と、フィルムでしか味わえないあたたかみあふれる描写の魅力を同時に味わうことができますよ。
いまならフィルムで撮影して、お店でデータにしてもらうことで、スマホ・パソコンで見たり、SNSにすぐシェアすることも可能。
ぜひオールドレンズの魅力を、フィルムカメラで楽しんでみませんか?
おすすめのフィルムカメラ機種について以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
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どこでも持ち歩ける相棒です。
オールドレンズの魅力とメリット
さて、オールドレンズにはどんな魅力があるのか最初に簡単に紹介しましたが、ここからは、もっと深く、オールドレンズの「良さ」ついて解説していきます。
オールドレンズはなぜ魅力的なのか?
そして、現代のレンズとどのように違うのでしょうか?
1.オールドレンズは上質
まず、オールドレンズの最大の魅力。
それが、とても「上質」だということです。
上質。
すなわち、手間とコストがふんだんに掛けられた、現代では実現することのできない贅沢な仕上げを楽しむことができるということです。
なぜオールドレンズが上質なのかといえば、当時のカメラやレンズは「高級品」だったため。
大卒の初任給が2万円の時代に5万円のカメラは、初任給が20万円の時代の50万円のカメラに相当します。
オールドレンズは、どんなに安いレンズであっても、現代のレンズでいえば10万円以上の高級品に相当するもの。
仕上げがとてもよいのは当たり前です。
金属製の質感
さらに。
カメラは本体、レンズともに、1970年代以前は金属を素材として作られていました。
いっぽう1970年代後半以降には、素材がプラスチックに移行していきます。
これもオールドレンズの上質な仕上げの源泉。
同じ高級品であっても、プラスチックよりも金属のほうが趣き深い製品になるのは当然。
現代では高級品だけのものになってしまった金属素材が、オールドレンズではほとんどの製品に用いられています。
今では実現できない金属製品の職人技が味わえる。
オールドレンズの大きな魅力のひとつです。
2.オールドレンズは「描写がよい」
オールドレンズは、とても味わい深い、魅力的な描写を楽しむことが可能。
それはいったい、なぜなのでしょうか?
まずひとつには、オールドレンズは「単焦点レンズ」が多いということが挙げられます。
単焦点レンズ、すなわちズームできないレンズは、レンズの構成が比較的単純かつ、設計が古い時代に完成しているので、旧世代のオールドレンズでも完成度の高い描写を味わうことが可能です。
実際、例えば50mm F1.8〜F2クラスの標準レンズなどは、基本的な設計においては現代のものも、1950年代後半〜60年代のものも、ほぼ変わりありません。
それでいて、「完成しきった」現代レンズと異なり、わずかに残った未完成な部分の「収差」が、質感や量感を深めてくれるのです。
どちらもオールドレンズ Helios-44 で撮影
現代レンズに伍して使える一定以上の完成度。
そして、古い設計ならではの「味」。
印象的な写真を撮るなら、これ以上の心強い味方はないかもしれません。
3.高性能なのに安価
実用性も抜群な高性能。
さらに仕上げも現代レンズよりずっと上質。
それなのに、オールドレンズはずっと「安く」中古で購入することが可能です。
中古価格を比較すると、似たスペックの現代レンズに比べ、半額以下で買えることも普通。
とてもリーズナブルな価格で、描写力あふれるレンズを手に入れることが可能です。
ミラーレス一眼カメラやデジタル一眼レフカメラは持っているけれどズームレンズしかない、そんなときには、初めての単焦点レンズにオールドレンズを選ぶのもおすすめ。
安い単焦点レンズがほしいときに、オールドレンズは心強い味方になってくれるでしょう。
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4.オールドレンズは「最新レンズでは撮れない写真」が撮れる
開放ではボケ味を楽しみ
絞ればシャープな描写
(ともにSONY α7 + MINOLTA MC ROKKOR 55mm F1.7で撮影)
さて、上で紹介した描写力の高さとは相反しますが、古い時代のオールドレンズには、もちろん描写が「よくない」ものも混じっています。
(ただし、単焦点レンズはオールドレンズの時代に設計がほぼ完成しているものが多く、描写がよくないものは少数派であることも書き記しておきます)
さて、そんな「収差の残ったレンズ」もまた、現代の目から見れば魅力的な光学製品。
例えばレンズの絞りを開いたときの「バブルボケ」などはその最たるもの。
また逆光時のフレアや、光源を画面に入れたときのゴーストも、現代のレンズよりもぐっと個性的です。
一般にレンズの個性は開放付近で最も発揮されます。
さまざまなボケ味や立体感を楽しむのは、オールドレンズの楽しさのひとつです。
また、どんなレンズであっても多少絞り込めば破綻のない描写へと変わるので、いわゆる「クセ玉」と呼ばれるオールドレンズには「乗りこなす楽しみ」もありますよ。
5.オールドレンズはコンパクト
カメラやレンズは、歴史上、機能が増えるとサイズが大きくなる傾向にあります。
とくに現代のデジタルカメラでは、レンズは基本的に大型。
単焦点レンズでも、オートフォーカスや手ぶれ補正などの機構が増えていることもあり、以前よりも外装が大きめなことが多いです。
その点、フィルムカメラ時代のオールドレンズはコンパクト。
1950年代のレンジファインダーカメラ用レンズはもちろん、1960年代の一眼レフカメラ用レンズも取り回しはとても良好です。
もしもオールドレンズに慣れてきたら、何種類かのレンズを持ち歩いて、取り替えながら使うのも簡単ですよ。
ただし、オールドレンズは金属製のため少し重いです。
中身がぎっしりと詰まった重量感。
それもまた、高級なレンズだったことの証だともいえます。
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オールドレンズの弱点
魅力的なオールドレンズにもデメリットがあります。
オールドレンズを使うときには少し慣れが必要なことも。
どのような点に注意が必要なのでしょうか?
1.使用はマニュアルフォーカスになる
オールドレンズは基本的にオートフォーカスに対応していません。
そのため、使用時にはファインダーを覗きながら、自分でピントリングを回して、フォーカスを合わせることになります。
速写性では最新のオートフォーカスレンズに劣りますが、グリスが詰まったピントリングのなめらかな感触は、逆に現代のレンズでは味わえないもの。
不便な点であるとともに、魅力でもあるといえるかもしれません。
2.露出が絞り優先AEまたはマニュアルになる
オールドレンズは、カメラ本体と情報を伝達する電気接点を持っていません。
そのため、基本的にはプログラムAEとシャッター優先AEを使うことができません。
デジタル一眼カメラでオールドレンズを使う場合には、絞り優先AE(Aモード)またはマニュアル露出(Mモード)で使うこととなります。
ただし、露出計を見て露出を合わせなければならないデジタル一眼レフカメラと違って、ミラーレス一眼カメラでは、液晶画面やEVFの表示を見ながら「見た目で」露出を合わせることが可能。
マニュアル露出もそう難しいことではありません。
実際筆者も、普段の撮影はすべてSONY α7にオールドレンズを付けて、マニュアル露出で行っています。
3.逆光に弱い
描写にも優れるオールドレンズ。
ただし苦手な撮影シーンもあります。
それが「逆光」。
つまりレンズの正面から直接光が入ってくるような場面です。
オールドレンズと現代レンズで最も進歩したのが、レンズ表面のコーティング。
現代レンズでは問題なく撮影できる逆光のシーンでも、オールドレンズは盛大にフレアが生じたり、コントラストが低下したり、ゴーストが発生したりしてしまうのです。
とくに、逆光を使うことが多いポートレートでは注意。
むしろオールドレンズを使うときは、そのような逆光耐性の弱さを「味」として積極的に絵作りに活用するのがおすすめです。
また、少しでも逆光の影響を減らすために、必ずレンズフードを装着するようにしましょう。
4.状態が千差万別
オールドレンズはすべて、長い年月を経てきたもの。
中古での購入になるので、ひとつとして同じ状態のものはありません。
とても良い状態のものから、キズやクモリ、カビのあるジャンク品まで千差万別。
これからオールドレンズを購入する際には、しっかりと点検・整備されたものを選ぶのがとても大切です。
光学系(ガラス部分)が美しく保たれているものを選べば、現代レンズに伍して豊かな描写を味わうことができますよ。
以下の記事でもレンズの状態チェックについて解説しています。
当店でもしっかりと状態チェックしたレンズ・専門修理業者で整備したレンズを取り揃えておりますので、ぜひ公式サイトをご覧ください。
オールドレンズは魅力たっぷりの逸品
このように、高性能で味わい深く、それでいて安価に楽しめるオールドレンズ。
美しい写真を撮りたい方にも、安価な単焦点レンズが欲しい方にも、ぜひ試して欲しい名玉たち。
当店公式サイトでもさまざまなオールドレンズについて解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね!
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