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シネレンズで楽しむオールドレンズ ディープな映画用中古レンズの世界

Zunow 13mm F1.1

いまミラーレス一眼カメラに中古のシネレンズを取り付けて楽しむ人が増えています。

シネレンズ。
すなわち、映画用のレンズのことです。

シネレンズは2000年代なかばまで、使いみちがないレンズとして誰も見向きもしないものでした。
ところが、ミラーレス一眼カメラが登場。
マウントアダプターを使って撮影することができるようになり、がぜん注目を浴びるようになったのです。

シネレンズはイメージサークルが小さめで、ミラーレス一眼カメラならその性能をフルに楽しむことが可能。

しかも、国産の「ズノー」や海外製の「シュナイダー」など、35mmフィルムカメラ用のオールドレンズだと非常に中古が高額となる銘玉を、ずっと安い価格で手に入れることができるのです。

シネレンズ、それはオールドレンズに残されたフロンティア。
フィルムカメラ用の中古レンズ、オールドレンズとはまったく異なる、映画用ならではの描写を楽しむことができますよ。

今回は、マウントアダプターを使ってシネレンズを楽しむための基礎知識を解説します。
ぜひあなたも、オールドレンズの新たな楽しみを味わってみませんか?

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シネレンズで楽しむオールドレンズ

まず最初に、シネレンズとはどんなものか解説します。

中古のフィルムカメラ用オールドレンズを愛好していても、シネレンズで撮影したことがない方も多いと思います。
よりディープな撮影が楽しめることうけあいです。

シネレンズとは

Zunow 6.5mm F1.1

シネレンズとは、シネカメラ、つまり映画用のカメラに使われるレンズです。

現在、動画といえばビデオカメラや、デジタルカメラ(デジタルスチルカメラ)の動画機能、そしてスマホなどで、デジタルのデータで撮るのが普通。
また、その前はビデオテープを使うビデオカメラが広く使われていました。

では、その前は?

じつは、1980年代にビデオカメラが普及するまでは、動画撮影には8mmカメラや16mmカメラといった、「フィルム」を使うカメラが一般に使われていました。

8mmカメラ

映画用の8mmフィルムや16mmフィルムは、サイズこそ異なりますが、静止画用のフィルムカメラのフィルムと、構造的にはまったく同じもの。

ちなみにフィルムカメラで最も広く使われた35mmフィルムも、もともとは映画の上映用に開発されたものなのです。
(35mmフィルムカメラは、最初のバルナックライカが映画用フィルムを写真撮影用に転用したことにはじまります)

フィルム映画用のカメラにも、写真用のフィルムカメラと同じように、レンズが交換できるものがいくつも存在していました。

ただし、レンズマウントの規格は写真用のフィルムカメラとはまったく異なります。
そのことが、中古のシネレンズが、近年までほとんど使われていなかった要因となったのでした。

見向きもされなかったシネレンズ

Zunow 38mm F1.1

いま、ミラーレス一眼に取り付けて使うことが広く行われているオールドレンズ。
ミラーレス一眼カメラが登場する以前も、デジタル一眼レフカメラに取り付けたり、フィルムのレンジファインダーカメラや一眼レフカメラに取り付けて楽しむことが、愛好家の間で行われていました。

しかし、そんな愛好家たちも、中古のシネレンズにはまったく見向きもしなかったのです。

その理由は、そもそも「使うことができなかった」ため。

シネレンズのレンズマウントの規格は、形状はもとより、フランジバックやイメージサークルのサイズが写真用のカメラとはまったく異なります

そのため、取り付けて使おうにも、事実上、まともな写真を撮る方法がなかったのです。

ミラーレス一眼カメラの登場で脚光を浴びる

大きく流れが変わったのが、ミラーレス一眼カメラの登場

2008年から2009年にかけて、オリンパスとパナソニックから相次いで、マイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼カメラが発売されました。

オリンパスE-P1

このマイクロフォーサーズ規格は、マウントアダプターを使ってシネレンズを取り付けるのにとても都合がよい規格だったのです。

理由は2つあります。

1.フランジバックが短い

オリンパスE-P1

マイクロフォーサーズ規格は、フランジバック(レンズマウントとイメージセンサーの距離)が一眼レフカメラよりもずっと短くなりました

そのため、同様にフランジバックの短いシネレンズを取り付けても、無限遠から撮影することが可能となりました。

2.イメージセンサーのサイズが小さい

オリンパスE-P1

マイクロフォーサーズ規格は、35mmフルサイズに比べ、イメージセンサーも小さくなっています

それにより、イメージサークルが小さいシネレンズでも、周囲がケラレることなく撮影することが可能となりました。

マイクロフォーサーズ規格に向いているのは、16mmシネカメラ用の「Cマウント」のシネレンズ。
後述しますが、マイクロフォーサーズと16mmシネカメラは画面サイズが近いので、イメージサークルをフルに使用可能です。

※ただし、レンズによってはケラレが生じます。

参考:イメージサークルとは

イメージサークルとは、レンズを通った光が像を結ぶ範囲のこと。

カメラ用のレンズは基本的に円形をしています。
そのため、レンズを通った光も、丸い形の像を結びます

イメージサークル

通常、撮影する写真は四角い形をしていますが、それは、イメージサークルの中を、イメージセンサーやフィルムの形に四角く切り取って使っているためです。

イメージサークル
このように、イメージサークルの中を四角く切り取っている

基本的にイメージサークルの大きさは、フィルムやイメージセンサーの形に合わせて設計されます。

もしイメージサークルが小さいと、フィルムやイメージセンサーがはみ出てしまいます。
イメージサークルの外側は、レンズを通った光が像を結びません。
すると、その部分は真っ黒になったり、境目の部分は像がぼやけたりしてしまうのです。

画面の周囲が黒くなることを「ケラレ」と呼びます。

ケラレ

APS-Cサイズやマイクロフォーサーズ規格といったイメージサークルの小さいカメラ用のレンズを、フルサイズのカメラに取り付けて使用できないのも、このことが理由です。

ミラーレス一眼カメラの規格が増え、さらに幅広いシネレンズが使えるようになった

さて、マイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼カメラの登場は、中古のシネレンズが見直されるきっかけとなりました。

さらに、他にもミラーレス一眼カメラの規格が誕生することで、より幅広いシネレンズを使うことができるようになりました。

たとえば、PENTAX Qシリーズ
PENTAX Qシリーズは、マイクロフォーサーズよりもさらに小さいイメージセンサーを採用していますが、それにより、16mmシネカメラ用のCマウントレンズよりさらにイメージサークルの小さい、8mmシネカメラ用のDマウントレンズも使えるようになったのです。

また、SONY NEXシリーズやαシリーズ、Fujifilm XシリーズといったAPS-Cサイズのミラーレス一眼カメラでも、イメージサークルが大きめのCマウントレンズで撮影できるようになりました。

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シネレンズの種類

中古のシネレンズにはいくつかの種類があります。

主に、レンズマウントによって見分けることが可能です。

Cマウントレンズ

Tele-Xenar 100mm F3.8
Tele-Xenar 100mm F3.8

Tele-Xenar 100mm F3.8
Tele-Xenar 100mm F3.8

Cマウントは、16mmシネカメラのデファクトスタンダードだったレンズマウント規格。
M42マウントやライカLマウント同様、ねじマウント(スクリューマウント)です。

フランジバック17.526mm。
画面サイズは10.26 x 7.49mmが標準です。

Cマウント用アダプターの例

↓マイクロフォーサーズ用

↓Eマウント用

Dマウントレンズ

Zunow 13mm F1.1
Zunow 13mm F1.1

Zunow 13mm F1.1
Zunow 13mm F1.1

Dマウントは、1960年代以前に広く使われた8mmシネカメラの規格、「ダブル8」で用いられた規格です。
こちらもスクリューマウント。

フランジバックは12.29mm。
ダブル8の画面サイズは4.8 x 3.5mm。

Dマウント用アダプターの例(PENTAX Qシリーズ用)

Arriマウント

プロ用16mmシネカメラの「アリフレックス」(Arriflex)で使われたマウントです。
バヨネットマウント。

CマウントやDマウントのマウントアダプターが廉価に手に入るのに比べ、こちらはマウントアダプターの製品の種類が限られており高価です。

H8 RXマウント

Kern Macro Switar 12.5mm F1.3
Kern Macro Switar 12.5mm F1.3

Kern Macro Switar 12.5mm F1.3
Kern Macro Switar 12.5mm F1.3

8mmシネカメラのBolex H8 RXに使われたマウントです。

マウントの形状はCマウントと同一ですが、フランジバックが異なり、使用時には専用のマウントアダプターが必要です。

参考:フランジバック比較表

マイクロフォーサーズ※ 20mm
SONY Eマウント※ 18mm
Fuji Xマウント※ 17.7mm
Cマウント 17.526mm
Arriマウント 52mm

※各種ミラーレス一眼カメラのフランジバックはCマウントよりも長いが、Cマウントは口径が小さいため、マウント部が凹んだ構造とすることで対応している。

PENTAX Qマウント 9.2mm
Dマウント 12.29mm
H8 RXマウント 15.31mm

参考:画面サイズ比較表

※実際には画面サイズより余裕を持ってレンズが設計されているので、本来は小さい画面用に作られたレンズでも、ケラレが発生せずに撮影できる可能性がある。
一般に、標準レンズ、望遠レンズはイメージサークルに余裕があることが多い。
広角レンズはケラレが発生しやすい。

マイクロフォーサーズ※ 約17.3 x 13mm
SONY Eマウント※ 約23.4 x 16.7mm
Fuji Xマウント※ 約23.4 x 16.7mm
16mmフィルム 10.26 x 7.49mm
PENTAX Qマウント 6.2 x 4.6mm(Q、Q10)
7.6 x 5.7mm(それ以外)
8mmフィルム(ダブル8) 4.8 x 3.5mm

シネレンズの魅力

さて、それでは中古のシネレンズにはいったいどんな魅力があるのでしょうか?

高級メーカー・希少メーカーのレンズがとても廉価に手に入る

シネレンズが俄然注目を浴びた理由。

それが、安価に銘玉を手に入れることができること。

たとえば、スイスのレンズとして有名な「スイター」(Switar)
中古フィルムカメラでは、スイス製の超高級カメラ「アルパ」で有名で非常に高価ですが、シネレンズ用のスイターは、写真用カメラ用にくらべとても安価に入手可能です。

Kern Macro Switar 12.5mm F1.3
Kern Macro Switar 12.5mm F1.3(H8 RX用)

また日本製でも、伝説の光学機器メーカーとして有名な、帝国光学の「ズノー」レンズは、写真用のオールドレンズは珍品。
いっぽうシネレンズなら、1万円台で入手できることさえあるのです。

Zunow 13mm F1.1
Zunow 13mm F1.1(Dマウント)

伝説の銘玉を手頃な値段で。
それがシネレンズ最大の魅力です。

[cine]

シネレンズならではの独特の描写

中古のオールドレンズならではの魅力のひとつ。

それが、現代のレンズにはない「味のある」写真を撮ることが可能ということ。

シネレンズは、とくに写真(静止画)用のレンズとは設計思想が異なるため、レンズひとつひとつの個性もずば抜けて高いのが特徴です。

たとえば、動画には静止画ほどの解像力は求められません。
だからこそ、むしろ性能面を、微細な部分の描写よりも、人の心を動かす質感や量感に割り振っているのです。

オールドレンズのなかでも「クセ玉」と呼ばれるような、強烈なボケ味や、周辺部分の味のある収差を楽しむことができますよ。

シネレンズには珍品が多い

また、シネレンズのなかにはマニアでさえ知らないような珍品も隠れています。

写真用のフィルムカメラのオールドレンズは、ある程度カメラ愛好家によって研究が進められ、どんなものがあるか知られています。
いっぽうシネレンズは近年までマイナーだったので、まだまだマイナーなレンズは発掘されきっていないといえます。

さらに、Cマウントは古い16mmシネカメラだけでなく、監視カメラなどの実用品にも採用されていました。
そのため、得体の知れないメーカー、写真や映画用の製品では知られていないメーカーの製品も存在しています。

珍品レンズを掘り起こして、あなただけの写真を撮ることができる。
それもまた、シネレンズの魅力なのです。

焦点距離がセンサーサイズの小さいカメラにぴったり

また、マイクロフォーサーズなどのセンサーサイズが小さいカメラで使う場合、シネレンズは使いやすい画角になるのもメリットです。

マイクロフォーサーズにレンズを取り付けると、35mmフルサイズ換算の焦点距離は2倍(50mmは100mm相当に)。
APS-Cサイズのカメラでも1.5倍となります(50mmは75mm相当に)。

その点、もともとの画面サイズが近いシネレンズなら、本来そのレンズが想定していたのに近い画角で撮影することが可能となるのです。

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シネレンズで撮影してみませんか?

このように、シネレンズには、写真用のオールドレンズとはまた異なる魅力があります。

値段も手ごろなものが多いので、マイクロフォーサーズのミラーレス一眼カメラを使っている方にはとくにおすすめ!

ぜひシネレンズで、あなたのオールドレンズの楽しみを広げてみませんか?

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著者紹介: サンライズカメラ

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