プロ直伝!通販&店舗で中古レンズを買うときの注意点・選び方
カメラの中古レンズを購入するとき、いったいどんなことに注意すればよいのでしょうか?
フィルムカメラやデジタルカメラの楽しみを大きく広げてくれる中古レンズ。
フィルムカメラ時代の銘レンズは中古でなければ手に入れることはできませんし、デジタルカメラ用のレンズも、中古なら格安で入手することが可能です。
そんな中古レンズを購入するときに注意したいのがレンズの状態。
中古レンズは個体によって状態が異なるので、購入時にチェックして、状態がよいものを選ぶのが重要です。
そこで今回は、フィルムカメラ専門店サンライズカメラのスタッフが、中古レンズを買うときの注意点と選び方について徹底解説します!
フィルムカメラだけでなく、デジタルカメラ用レンズを購入するときにも役に立つ知識なので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
それでは具体的に、中古レンズを選ぶときの注意点・チェックポイントについて見ていきましょう。
目次
中古レンズの注意点【光学系編】
まず最初に、レンズのガラス部分、光学系のチェックポイントを紹介します。
1.レンズにカビが生えていないかチェックする
まず注意したいのが、レンズにカビが生えていないかチェックすること。
日本は湿度が高いため、カメラのレンズには容易にカビが生えてしまいます。
撮影に影響が出ることはまれですが、ひどくなると描写に影響することがあり、写真の鮮鋭度が悪くなってしまうのです。
そこで、中古レンズをチェックするときには、天井の照明にレンズをかざして、内部を見るようにしましょう。
レンズの表面に、蜘蛛の巣のような細い網状のものが付着していたら、ほとんどはカビです。
もちろん、街中にある中古カメラ専門店ではカビの生えたレンズをそのまま売っていることはほとんどなく、ジャンク品扱いになってしまうことがほとんどです。
ですが、ネットオークションやアプリ、フリーマーケットで購入するときにはカビが生えたレンズものも一定の確率で混ざっているので、注意しておいたほうがいいでしょう。
実物が見られるときには自分でチェックのがベストです。
2.レンズにクモリがないかチェックする
カビと並んでレンズの描写に直接影響する可能性があるのがクモリ。
中古レンズを購入する際の重要な注意点です。
要因は、レンズに使われているガラスやコーティング素材の劣化。
化学変化によってレンズにクモリが生じると、透明なはずのレンズがうっすらと白く変色してしまうのです。
カビと同じく、光にかざすことで確認可能です。
良心的なカメラ専門店では、微細なクモリでも状態表記に「クモリあり」と表示してくれるので、購入時に注意するとよいでしょう。
また、カメラやレンズによってはクモリが生じやすいとされているレンズも存在します。
有名なものとしては、
1950年代のオリンパスのレンズ(ズイコー曇り)
ライカのズマリット5cm F1.5
などが知られています。
3.コーティングの劣化・剥がれ
カメラのレンズには性能を向上させるために、ガラスの表面にコーティングが施されています。
中古レンズのなかには、このコーティングが劣化したり、剥がれているものが存在しています。
中古レンズといえども普通に使っている場合にはコーティングが自然に剥がれることはほとんどありえませんが、修理歴がある場合にはとくに注意が必要です。
専門の修理業者で修理した場合でも、カビやクモリを除去した際に一緒にコーティングが剥がれてしまって、そのまま中古として並んでいる個体が存在します。
また、素人の方が趣味で分解した中古レンズにも、コーティングが剥がれてしまっているものが存在しています。
もし再コーティングを施す場合、修理業者で高額な費用が発生してしまうため、とくにライカなどの高価なレンズでは注意することをおすすめします。
4.バルサム切れ
カメラのレンズでは、内部で複数枚のレンズが組み合わせられており、そのうち何組かは貼り合わせられていることが普通です。
「バルサム切れ」とは、レンズを貼り合わせた部分の劣化のこと。
貼り合わせ部分に使用されている「バルサム」という接着剤が経年変化を起こしてしまった状態です。
バルサム切れが起きると、レンズ内部が曇ったり、ブツブツとした点が生じたり、こちらも描写に重大な影響を及ぼします。
このバルサム切れは、専門修理業者に頼めば修理できないこともないですが、一般に費用は高額になりがちです。
もしクモリの生じたジャンクのレンズを購入する場合には、それが単なるクモリなのか、バルサム切れなのか判断することも重要です。
5.レンズのキズ
写真の写りに影響してしまう点で、中古レンズを購入するときにはキズにも注意が必要です。
レンズのガラス表面にキズがあると、当然のことながら写真の画質にも悪影響があります。
引っ掻いたような目立つキズだけでなく、「拭き傷」と呼ばれる、光にかざしてみないとわからない微小なキズもあるため、中古レンズを購入するときはこちらもチェックしましょう。
とくに、微小なキズがガラスの表面にびっしりついているようなレンズは、一見透き通って見えても、描写力が非常に低下していることがあります。
レンズのキズは一般的に、レンズの前側(前玉)よりもレンズの後側(後玉)のほうがより影響するとされています。
キズのある中古レンズは非常に安価に購入可能ですが、とくに後玉にキズがあるものは避けたほうが無難です。
レンズの種類によってはガラスが柔らかく、キズがとてもつきやすいものも存在しています。
ライカのズマール5cm F2などが有名です。
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中古レンズの注意点【機構編】
続いて、絞りやヘリコイドなど、中古レンズの機構部分の注意点について紹介します。
1.自動絞りの動作はスムーズかチェック
一眼レフカメラ用の中古レンズでは必ずチェックしたいポイントです。
一眼レフカメラ用のレンズには、「自動絞り」という機構が組み込まれています。
自動絞りとは、シャッターを切ったときに絞りを設定値まで絞り込み、シャッターが閉じたら絞りを開放状態に戻す機構のこと。
一眼レフカメラの光学ファインダーを、絞り開放の明るい状態に保つためのメカニズムです。
この自動絞り機構ですが、状態の悪い中古レンズのなかには動作がおかしいものが存在します。
内部で油がねばっていたり、ひっかかっていたりしてスムースに動かないと、撮影時に適切な絞りまで絞り込まれないおそれがあります。
そこで、一眼レフ用のレンズをチェックするときには、自動絞りを実際に作動させてみるよう注意しましょう。
購入したい中古レンズに適合するボディがあるときは、実際にカメラに取り付けて空シャッターを切ってみるのがベスト。
もしボディがないときには、レンズ裏面にある自動絞り連動レバーを指で操作して、スムースに動くか確かめましょう。
レンズマウントによって異なりますが、自動絞り連動レバーを指で動かしたときに、絞りがバネの力でスムースに開閉すればOKです。
例:ニコンFマウントのレンズの場合、上記の箇所を動かします。
ただし、チェックする際にはレンズのガラス部分に指が触れないよう注意しましょう。
2.絞りに油が染み出ていないか
絞りが油を引いていないかも、重要な注意点です。
古い中古レンズでは、絞りの羽根の表面に油がしみ出てしまっているものがあります。
レンジファインダーカメラでは実用上問題にならないことも多いですが、絞りが油を引いているということは、それ相応の経年劣化があるということ。
絞りの開閉動作に負荷がかかるため、使っているうちに絞りが外れてしまうこともあります。
もし他に絞りの状態がよいレンズがあったら、そちらを選んだほうがよいでしょう。
いっぽう、一眼レフ用の自動絞りのレンズでは、絞り羽根の油は重大な問題です。
絞りが油を引いていると、上に書いた自動絞りのスムースな動作が不可能になります。
一眼レフ用のレンズでは、絞りが油を引いている中古を買うのはNGです。
3.ヘリコイドが軽すぎたり重すぎたりしないか
次に注意したいのが、レンズのヘリコイド(ピントリング)が軽すぎたり、重すぎたりしないかということです。
レンズのピントリングは、適切な重さで回せるように、内部にグリスが充填されています。
このグリスが経年劣化を起こすと、ピントリングがスカスカに軽くなったり、回せないくらい重くなったりしてしまうのです。
ヘリコイドが軽くなるぶんには、回すことができるのだから問題ないのでは……
と思うかもしれませんが、軽いのも重いのもどちらも大問題。
ヘリコイドがスカスカな状態だと、使っているうちに摩耗してガタが生じてしまうのです。
ヘリコイドがスカスカな中古レンズは、ニコンのニッコールレンズに非常に多くみられます。
中古のニッコールレンズを購入する際には、ヘリコイドがスカスカな個体はできるだけ避けたほうがよいでしょう。
4.フィルター枠にアタリ・凹みがないか
中古レンズを購入する際にはレンズの外装にキズがないか、見た目の状態がよいかも重要なチェックポイント。
なかでも、レンズの先端部にアタリや凹みがないかどうかには注意が必要です。
レンズ先端部のフィルター枠が凹んでいるということは、そのレンズは落下品であるということです。
一見、内部のガラス部分はきれいであるように見えても、レンズ全体に細かな歪みが生じていることが考えられます。
また当然、フィルター枠が歪んでいると、レンズにフィルターを取り付けることができません。
カメラボディ、レンズともに、中古を探すときには落下品は避けたほうが無難。
フィルター枠にアタリ・凹みがあると見た目も悪いので、購入時には注意しましょう。
ちなみに、もし自分が持っているレンズを落としてしまってフィルター枠を歪ませてしまったときは、自分で直そうとするのは避けたほうが無難です。
とくにラジオペンチで掴んで元に戻そうとするのはNG。
ペンチでそのまま掴むと、金属部分に無残なキズが残ってしまいます。
DIYで直すには当て木をするなど、それなりの手間をかけることが必要です。
5.レンズマウントが極端に摩耗していないか
中古レンズのなかでも、マウント部分が極端に摩耗している個体は、相当に使い込まれたレンズであることが予想されるので注意したほうがよいでしょう。
レンズのマウント部分には、基本的にメッキが施されています。
そのメッキがはがれて、その下の金属の色が見えてしまっているということは、かなりの回数、レンズの着脱を繰り返したということ。
それだけ、ハードな使用がなされたことが考えられます。
もちろん、多少メッキが剥がれたくらいではマウント部分の精度に影響することはありませんが、状態のよい中古レンズを探すなら、あまりにも使い込まれたものは避けたほうが無難です。
6.レンズのカニ目にキズはついていないか
最後に、中古レンズを探すとき、ハズレを掴まないために注意したいこと。
それが、分解品を避けるということです。
フィルムカメラ愛好家のなかには、ジャンクのレンズを購入して、分解修理して楽しむ方もいます。
個人で楽しむぶんにはよいのですが、中古市場に素人修理品が流れてしまうのは問題です。
中古レンズの場合、素人修理品を見分ける簡単な方法として、レンズのガラスを固定している部分にキズがないかをチェックする、ということが挙げられます。
レンズのガラスの固定には、カニ目回しという道具で回す、2箇所にスリットの入った部品が用いられています。
この、工具を引っ掛けるためのスリットに不自然にキズがついていた場合、おそらくその中古レンズは素人分解品です。
自分も中古レンズの修理が趣味である場合を除いて、購入は避けたほうが無難でしょう。
基本的に、専門のカメラ修理業者が修理を行った場合、素人修理のように目立つキズが入ることはありません。
中古レンズの注意点の優先順位は?
とはいえ、中古レンズを買うときには、状態と値段を天秤にかけて選びたいもの。
それでは、これらのチェックポイントのなかでも、どのようなことを優先すればよいのでしょうか?
まず光学系から言えば、もちろんキレイな玉であるに越したことはありません。
とはいえ、中古カメラ店として誤解を恐れずに言えば、多少のカビ、クモリ、キズなどの不具合に関して、それらが撮影に影響を与えるケースは少数です。
もちろん症状によっては、明らかに影響が出ることはあります。特に実用品をお求めの方は、価格と状態のバランスを考えて、多少の難あり品を手にしてみることも、一考に値すると思いますよ。
分解品は避ける
いっぽう、機構面ですが……。
素人分解品は基本的に避けたほうが無難です。
また、自動絞りがスムースではない一眼レフ用レンズも避けましょう。
フィルター枠のアタリもNGです。
いっぽう、レンジファインダー用レンズで絞りに油が引いてしまっているものは、金額が安ければ選ぶのも悪くはないでしょう。
また、ヘリコイドが重かったり軽かったりするレンズ、マウントが摩耗しているレンズも、程度によりますが、こちらも金額によっては選択に値するといえるかもしれません。
中古レンズを賢く探してみよう
中古レンズを購入するならこれらの注意点がすべてOKな個体を選ぶのがベスト。
ですが、チェックポイントを知ることで、より賢く、希望する金額と一致するレンズを見つけることができると思います。
ぜひあなたもこの記事を参考にして、中古レンズを楽しんでみてくださいね。
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