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Voigtlander Bessaflex TM(フォクトレンダー・ベッサフレックス)/21世紀に蘇ったペンタックスSP

ベッサフレックスTM 白
シルバー

ベッサフレックスTM 黒
ブラック

Bessaflex TM(ベッサフレックスTM)は、2003年にコシナがVoigtlander(フォクトレンダー)ブランドで発売したフィルム一眼レフカメラ。
2003年という、フィルムカメラ新製品として最末期の発売ながら、非常にクラシカルな外観と機能を持った、趣味性の高い機種です。

その内容は、「ペンタックスSP」を現代の技術で蘇らせた、というもの。
レンズマウントはM42マウント
いまもミラーレス一眼とマウントアダプターでとても人気の高い中古のM42マウントレンズですが、フィルムの時代にもすでに、カメラ愛好家の間では魅力が認知されていました。

このベッサフレックスは、まさにそんな中古M42マウントレンズを使うために開発された機種。
古いM42マウントの一眼レフは状態が悪かったり、最新のカメラに比べて露出計の精度がよくなかったりしたため、「最新の性能で古いレンズが使えるカメラ」が求められていました。
そこでコシナは、ベッサフレックスでそんなニッチな要望に応えたのです。

これからフィルムでM42マウントの中古レンズを使うなら、最高の選択肢。
ベッサフレックスとはどんなフィルムカメラなのか、中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが解説します。

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Bessaflex TM(ベッサフレックスTM)

まずは、Bessaflex TM(ベッサフレックスTM)の性能や特徴からみていきましょう。

Bessaflex TMの性能・スペック

ベッサフレックスTM

形式 35mmフィルム一眼レフカメラ
シャッター B、1秒~1/2000秒
機械式
縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッター
フラッシュ同調速度1/125秒
露出計 TTL絞り込み中央部重点測光
SPD受光素子
3点LEDによる合致式
露出 マニュアルのみ
ファインダー アイレベル固定式
視野率約95%
レンズマウント M42スクリューマウント
対応レンズ 各種M42マウントレンズ
電池 LR44(Amazon)x2またはSR44(Amazon)x2
発売年 2003年

※参考文献:COSINA公式Webサイト アーカイブスよりベッサフレックス TM解説pdf(2022年2月26日閲覧)

ベッサフレックスTMは、2003年にコシナがフォクトレンダーブランドで発売したフィルム一眼レフカメラ。

いまも中古フィルムカメラが人気ですが、それと同じように、フィルムからデジタルの移行期である2000年代前半にも、クラシックな中古フィルムカメラが愛好家の間で人気を集めていました

当時も人気を集めていたのが、中古の単焦点レンズ。
ライカをはじめとするレンジファインダー用レンズ、そしてM42マウントなどの一眼レフ用レンズ。
しかし、フィルムカメラでは現代のミラーレス一眼カメラと異なり、撮影した写真を液晶で見ながら露出を調整することができません。
また、ペンタックスSPをはじめとする既存のM42マウントのボディは、整備すれば末永く使えるものの、ファインダーの見えなど、最新の一眼レフカメラに比べれば時代を感じる部分も多いものでした。

そこで、古い中古レンズでも簡単に適正露出で撮影できる、現代の技術で製造されたボディが求められていたのです。

レンジファインダーのBESSAから一眼レフのBESSAへ

まずコシナは、露出系内臓のレンジファインダーカメラを送り出しました。
それが、Voigtlander BESSA(フォクトレンダー ベッサ)シリーズ。

距離計を内蔵しない1999年のベッサLにはじまり、2000年にはライカ同様の操作性で使える、レンジファインダー内蔵のベッサRが登場。
2002年にはライカMマウントのベッサR2として結実し、これで、ライカL39マウント・Mマウントの中古レンズは、新品で状態が良い上に、精度の高い露出計を内蔵したボディで使えるようになりました。

Voigtlander(フォクトレンダー)BESSAシリーズまとめ 中古でレンジファインダーを味わおう!

そこで、次にコシナはオールドレンズが使える一眼レフがほしいという声に応えたのです。

2003年、ベッサフレックスTMの登場です。

M42マウントを採用した、ペンタックスSPの再来

ベッサフレックスTM

ベッサフレックスTMの設計は、M42マウントの代表機種、ペンタックスSPに範をとったもの。

M42マウントの自動絞りレンズが統一して採用する、ピン押し込み式の絞り連動機構を装備
日本製や旧東ドイツ製、旧ソ連製に至るまで、各時代のレンズが使用可能です。

そして、ペンタックスSPと同一の場所にある露出計スイッチ
ペンタックスSPを使ったことがある人なら、一切戸惑うことなく使用可能な操作体系。

ベッサフレックスTMは、現代の技術で蘇ったペンタックスSPというほかない、非常に趣味性の高いカメラに仕上がっているのです。

ちなみにTMとは、”Thread Mount”、つまりネジマウントの意味です。

では、それぞれの特徴について細かく見ていきましょう。

ペンタックスSPゆずりの絞り込み測光

ベッサフレックスTMの露出計スイッチは、カメラを構えたときに左手で操作できる、レンズマウントの横に設置されています。
これはペンタックスSPの露出計スイッチと同じです。

ベッサフレックスTM
ベッサフレックスTMの露出計スイッチ

ペンタックスSP
ペンタックスSPの露出計スイッチ

操作もペンタックスSPと同様。
上に押し上げるとスイッチが入り、レンズも自動で絞り込まれます。

測光方式は、M42マウントなので当然ですが、絞り込み測光です。
21世紀に入ってから絞り込み測光の新機種が登場するというのは、当時のカメラ愛好家にも驚きを持って迎えられました。

そして、シャッターを切るとスイッチが自動でOFFになり、絞りが開放になってファインダーが明るくなる機構も、これまたPENTAX SPと同様です。

このように、ペンタックスSPゆずりの操作性こそが、ベッサフレックスTMの存在意義。
クラシカルな操作系を信頼性の高い新しいカメラで使える。
いまでもM42マウントのレンズをフィルムで撮影する場合のベストな選択肢であるゆえんです。

露出計は中央重点測光、LED式に

ベッサフレックスTM

露出計には、ペンタックスSPとは異なる点もあります。
まず、露出計が中央部重点測光になったこと。

ペンタックスSPは、画面全体の明るさを平均して計測する、平均測光でした。
ただし、平均測光には、撮影者が意識的に露出を測る場所を変えられないというデメリットがありました。
明るい空や、照度が大きく異なる被写体では、露出がオーバーやアンダーに転んでしまうことも多い形式だったのです。

そこでベッサフレックスTMでは、露出計を中央部重点測光にあらため、完璧ではないものの、露出計の使いやすさが向上しました。
もちろん当時の最新フィルム一眼レフで採用されていた分割測光や評価測光には劣りますが、実用性は十分以上。
中央部重点測光はもっとも広くフィルム一眼レフカメラで用いられていた形式のため、ユーザーとしては「慣れ親しんだ」露出計の癖と同じように撮影できることもメリットとなりました。

露出計の表示はLED式。
ペンタックスSPの針式とは好みが分かれますが、可動部が少なく信頼性は高いといえるでしょう。

マグネシウムの高級感あふれる外装

そして、外装は金属製
1990年代以降のフィルムカメラ上級機の証ともいえる、マグネシウム素材をおごっています。

後述しますが、ベッサフレックスTMは、シルバーボディとブラックボディで外装デザインを大きく変えています。
往年の中古フィルムカメラの名機を彷彿とさせるトラッドな外装は、製造が新しいカメラにもかかわらず、フィルムカメラを「持つ喜び」をいやおうなしにかきたててくれるのです。

機械式カメラ――源流はコシナ製一眼レフ

ベッサフレックスTM

そんなベッサフレックスTMは、露出計以外、完全に機械式のカメラ。
シャター速度は最高速1/2000秒です。

この性能は、ベースとなったコシナ製フィルム一眼レフカメラ、CT-1 Superをそのまま受け継いだもの。
同じく同機種をベースとした、レンジファインダーのベッサシリーズと同様です。

CT-1 Superそのものは、けっして高級機としてつくられたものではありません。
しかし、海外向けOEM製品として開発されたもののため、1980年代の開発途上国で、過酷な環境のもと鍛えられた信頼性は抜群です。

OEM元が同じカメラにNikon FM10がありますが、世界のニコンが認めた機種であることも、その品質の証だといえるでしょう。

[slr]

分割巻き上げ可能 内部機構の味付けも上質に

ベッサフレックスTMがただ単にCT-1 Superの外装を変えただけのものではないことは、巻き上げ機構ひとつとってもわかります。

コシナCT-1系のカメラは基本的に分割巻き上げが不可。
いっぽう、ベッサフレックスTMは、分割巻き上げができるようになっているのです。

そもそも、本機種が参考にしたペンタックスSPも分割巻き上げができていました。
ここを省いてしまっては、現代のペンタックスSPとしては片手落ち。
こんな部分にも、コシナのM42マウントへのこだわりが感じられるのです。

※ただし、この巻き上げ機構については経年劣化で滑りが発生するといわれています。手持ちのベッサフレックスTMで巻き上げがおかしい場合はコシナへお問い合わせください。

関連記事

ペンタックスSPについて、詳しくはこちらで解説しています。

PENTAX(ペンタックス)SP・SPOTMATIC/60年代フィルム一眼レフカメラのスタンダード

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ベッサフレックスTMの対応レンズ

M42マウントのフィルムカメラということで気になるのが、特殊な形状のレンズが使えるのかということ。
結論からいえば、開放測光対応のM42マウントレンズも、基本的には問題なく装着可能なようです。

開放測光フジノンも装着可能

M42マウントの中古レンズでとくに問題になるのが、開放測光に対応したフジノン
開放測光フジノンは、絞りリングに絞り値伝達用の突起があるため、たとえばマウントアダプターで使おうとしても、干渉して無限遠が出なくなってしまうのです。

EBC FUJINON 50mm F1.4

干渉する突起

その点、ベッサフレックスTMなら大丈夫。
レンズマウントの幅が狭いので、開放測光の突起が外側に逃げて干渉しません。
ペンタックスSPも同様なので、おそらくこちらも構造を参考にしたのでしょう。

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[オールドレンズ探訪記] ふんわりボケ感!FUJIFILM EBC FUJINON 50mm F1.4 M42(作例・撮影Tipsあり)

レンズマウントが平滑なので引っ掛かりの心配もなし

また、ベッサフレックスTMのレンズマウントにはネジ穴がなく平滑です。

そのため、東独プラクチカのElectricレンズ(マウントに電子接点を設け開放測光を実現したレンズ)や、マウント面にネジ穴があるレンズなどでも、引っかかって外せなくなる心配はありません。

このような点でも、ベッサフレックスTMは、最強のM42マウント機といえるでしょう。

[slr]

黒と白 まったく違う外装

ベッサフレックスには、黒と銀色(白)の2種類のボディ色バリエーションがあります。

他に類を見ないのは、色だけでなく、ペンタプリズム部の形状もまったく違うということ。
しかもそのデザインは、往年の中古フィルムカメラの名機を彷彿とさせるものなのです。

ブラックボディは三角屋根

ベッサフレックスTM

ブラックボディは、ニコンFを思い起こさせる、三角の尖ったペンタ部にデザインされています。

ニコンF以外ではなかなかない、頂点が丸められておらず鋭角なトップカバー。
シンプルにクラシックさを演出した、すぐれたデザインです。

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シルバーボディは四角いトップカバー

ベッサフレックスTM

いっぽうで、銀色のモデルはペンタプリズム部が四角くなっています

真っ先に思い起こされるのはトプコンREスーパーをはじめとする、1960年代の東京光学製一眼レフ
かつてトプコンはニコンと並ぶ高級カメラブランドでしたが、後が続かず、1980年代初頭にカメラから撤退してしまいました。

そんな往年の名メーカーをモチーフにする、コシナの遊び心が光ります。

ただし、トプコンのカメラに比べるとベッサフレックスTMは角が丸められていて、全体の印象としては、1940〜1950年代にイタリアで製造された「レクタフレックス」も連想させる仕上がりになっています。

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最後のM42マウント一眼レフ、Bessaflex TM

このように、ベッサフレックスTMは、21世紀の技術で作られたペンタックスSP復刻版ともいえるもの。

ただし製造期間は短く、2006年には製造終了となってしまいました。
最後には新品がかなり値引きされて売られていたのも覚えています。

しかし、M42マウントのレンズをフィルムで味わうのに、このカメラ以上の選択肢ははっきりいって存在しません

ミラーレス一眼カメラでM42オールドレンズを楽しむのもよいですが、フィルムの味わいもデジタルとは別格のよさがあります。
中古で買ってもまだまだ現役のベッサフレックスTMで、オールドレンズを楽しんでみませんか?

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更新履歴

2022年2月26日

参考文献(コシナ公式Webサイト)をもとにスペック表を修正。その他細かな修正。

著者紹介: サンライズカメラ

サンライズカメラは、いまでは数少なくなってしまった「フィルムカメラ専門店」の使命として、フィルムカメラに関する情報を公開し続けています。 「こんな記事が読みたい」というご要望がありましたら、お気軽にFacebook、Twitter、お問い合わせフォームなどからご連絡ください。カメラ愛好家のみなさん、これからフィルムを始めたいみなさんとお話できることを楽しみに待っています。

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