Nikon(ニコン)F/伝説の名機ニコンFの特徴・おすすめモデルを一挙紹介!
世界に名機と呼ばれるカメラは数あれど、伝説を残したカメラは数えるほどしかないでしょう。
Nikon F(ニコンF)は、まさにそんな、伝説のカメラのなかの1台。
機構とデザインの完成度はもちろんのこと、プロの道具としての一眼レフという新地平を切り拓き、数え切れないほどの写真家・カメラマンに愛用されました。
そんなニコンFも、いまでは手頃な値段で中古を手に入れることが可能です。
高度経済成長下の日本が生み出した、機能美に満ちあふれた名機。
伝説のカメラであるニコンFをこれから手に入れるにあたって、ぜひ知っておきたい歴史と機構、そして選び方について今回は紹介したいと思います。
目次
Nikon F(ニコンF)
ニコンのプロ用一眼レフ、その始祖となったのがNikon F(ニコンF)。
1950年代、徐々に機構が爛熟していった35mm一眼レフカメラを、一挙にプロの道具として完成させたカメラです。
Nikon F(ニコンF)の性能・スペック
形式 | 35mmフィルム一眼レフカメラ |
シャッター | B、1秒〜1/1000秒 機械式 横走りチタン幕フォーカルプレーンシャッター(最初期型は布幕) |
露出計 | なし(ニコンF) 外光式(ニコンFフォトミック) TTL平均測光(ニコンFフォトミックT) TTL中央重点測光(ニコンFフォトミックTN、ニコンFフォトミックFTN) |
AE | なし |
ファインダー | 交換式 視野率100% 倍率約0.8倍 |
レンズマウント | ニコンFマウント |
対応レンズ | 絞り環とカニ爪付きのニッコールレンズ |
使用電池 | フォトミックファインダーは水銀電池MR-9×2使用 ※販売終了品のため、代替電池PX-625(Amazon) もしくはボタン電池用アダプター(Amazon)にて代替 |
発売年 | 1959年 |
Nikon F(ニコンF)登場前史
1959年。
カメラの歴史を大きく塗り替えるカメラが生を受けました。
その名はNikon F(ニコンF)。
35mmフィルムカメラの主流を、それまでのレンジファインダーカメラから一眼レフカメラへと一挙に塗り替えたカメラです。
1950年代以前35mmフィルムカメラの主流はあくまでも、レンジファインダーカメラでした。
それは、35mmフィルムカメラの元祖・本元であるライカがレンジファインダーカメラであり、その他の35mmフィルムカメラはそのフォロワーだったことが理由だといえるかもしれません。
しかし、第二次大戦後になり、国内外のカメラメーカーは、新たな形式の35mmフィルムカメラの開発をそれぞれ行うようになっていました。
新たな形式のカメラ。
すなわち一眼レフカメラです。
レンジファインダーカメラには真似ができない、マクロ撮影や望遠撮影といったマルチな用途に活用可能な一眼レフカメラは、まさに未来のカメラとして、1950年代を通して爛熟していったのです。
一眼レフカメラが誰でも使えるカメラとなるためのハードルも、クイックリターンミラー、自動絞り、ペンタプリズムといった新技術の開発により、1950年代終わりには解決されていました。
そして、1959年。
日本を代表する光学機器メーカーである日本光学(現ニコン)は、満を持してプロ用一眼レフであるニコンFを送り出したのです。
Nikon F(ニコンF)はどんなフィルムカメラ?
では、Nikon F(ニコンF)とはいったいどんなカメラなのでしょうか。
どんなところに独自性があったのでしょうか?
実は、ニコンFの採用した技術そのものは、そこまで新規性のあるものではありません。
上下左右が反転しない、ペンタプリズムを使用したアイレベルファインダー。
内蔵されたミラーが自動的に上下し、撮影時のファインダー像消失を最低限に抑えるクイックリターンミラー。
そして撮影時以外は絞りを開放状態とし、明るいファインダーでのピント合わせを可能とする自動絞り。
これら、一眼レフカメラに必須の諸機能は、日本光学が初めて開発したものではなく、他のカメラメーカーによって既に採用されていたものです。
では、ニコンFのどんなところが新しかったのか。
それは、堅牢で、壊れず、質実剛健で、プロの使用にも耐えるカメラであったことだったのです。
ニコンF以前に日本光学が製造していた、ニコンSPやニコンS3といったレンジファインダーカメラは、極度に堅牢で壊れない、まさにプロの道具として揺るぎない評価を得ていました。
ニコンFは、プロの道具であるという伝統を継承することで、報道、広告、戦場、いかなるフィールドでも安心して使えるカメラとして一世を風靡することとなったのです。
Nikon F(ニコンF)の機構的特徴
ニコンFが開発されるにあたって、ベースとなったのはニコンのレンジファインダーカメラの最高峰、ニコンSPでした。
ニコンFの内部機構は、乱暴に言ってしまえば、ニコンSPのボディを左右に引き伸ばし、その間に一眼レフ特有のミラーボックス挿入したもの、と表現しても間違いではありません。
戦後10年あまりを経て、機構的には完成の域に達していたニコンのレンジファインダーカメラ。
その信頼性を受け継ぐことで、ニコンFは、世界中のカメラマンに一眼レフの決定版として愛用されうるだけの完成度を実現することができたのです。
ニコンSPをベースとしたことの名残として、ニコンFのシャッターボタンは、他の一眼レフカメラとは異なり、ボディの後ろ寄りに位置しています。
このことはニコンFのウィークポイントと表現されたりもしますが、いまとなっては、シャッターを切るたびにニコンのカメラの歴史を思い起こすことができる、愛おしい特徴とも感じられる部分となっているとさえいえるでしょう。
(このシャッターボタンの位置は、後継機種のニコンF2で改良されることとなります)
また、フィルム交換時には裏蓋を取り外す必要があり、こちらもそれまでのレンジファインダーカメラを受け継いでいるポイントです。
不変のFマウント
ニコンFのレンズマウントは、現代のデジタル一眼レフカメラにも受け継がれているニコンFマウント。
このFマウントを採用した最初のカメラがニコンFとなります。
レンズマウントが共通であるため、絞りリングのあるレンズであれば、近年のレンズに至るまでニッコールレンズが使い放題。
絞りリングがないデジタル用レンズこそ使えないものの、さまざまな組み合わせを楽しむことが可能です。
さらに、絞りリングにカニ爪のついたレンズであれば、露出計との連動も可能となっています。
工業デザインを取り入れたカメラ
現代の目で見ても美しいニコンF。
けっして、堅牢で質実剛健なだけのカメラではないことが一目でわかると思います。
このデザインには、とある工業デザイナーが携わっていました。
その名は亀倉雄策。
有名どころでは、1964年の東京オリンピックのロゴやポスターを制作したことで知られているデザイナーです。
それまでもニコンの広告デザインの仕事を行っていた亀倉雄策は、このニコンFにおいて、カメラ本体のデザインにも携わりました。
あくまで直線基調で、かつ、一眼レフカメラの特徴であるペンタプリズムを強調したデザイン。
ファインダー部のソリッドな三角形は、まさにニコンFを特徴づけるとともに、一眼レフカメラのデザインの頂点とさえいえる完璧なものです。
それまで、カメラのデザインに工業デザイナーが関わることは珍しく、1966年にはグッドデザイン賞も受賞するなど、日本、いや世界のカメラデザインにおいてエポックメイキングな存在となったのです。
Nikon FからNikon F2へ
そんなニコンFは、後継のニコンF2が出た後にも併売されました。
F2ではニコンFの不便だった各所が改良されましたが、そのような改良点がなくても十分に実用的なくらい完成したカメラであったことがわかります。
最末期のニコンFは、各部のパーツがF2と共通になり、後述する「ニューF」になりました。
ニコンF2や、ニコンの他のカメラについてはこちらの記事もご覧ください。
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Nikon F(ニコンF)中古購入時のポイント
では、そんなニコンFをこれから中古で入手する場合、どのようなモデルを購入すればよいのでしょうか?
おすすめする各モデルの紹介、そしてレアな機種などについて紹介したいと思います。
Nikon F(ニコンF、アイレベル)
これからニコンFを手に入れるなら。
まず真っ先におすすめしたいのは、やはりアイレベルファインダーの付属したニコンFだといえるでしょう。
三角屋根のアイレベルファインダーは、まさにニコンFの象徴。
完成したデザインのカメラを肩から掛けているだけで、道行く人が振り返ること間違いありません。
ただし注意したいのは、三角形のアイレベルファインダーには露出計が搭載されていないということ。
これからフィルムカメラを使い始める初心者の方は、単体露出計やスマートフォン用の露出計アプリを使用するなどの工夫が必要かと思います。
アイレベルファインダーのついたNikon Fは、中古での販売時は「Nikon F アイレベル」のように書かれる場合も多いです。
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それでも、ニコンF本来の美しい形態を愛でることができるという一点で、アイレベルファインダー搭載のニコンFには、他のモデルでは到底及ばない魅力があります。
シャッター速度、絞り、ピントを手動で合わせるという、フィルムカメラを扱うプリミティブな魅力。
足しもせず、引きもしない。
フィルムカメラ本来の魅力を味わえるという点でも、ニコンFを手にするならぜひアイレベルファインダーをおすすめしたいのです。
なお、露出計を内蔵したファインダーが登場する以前には、ペンタプリズムの前に装着するセレン受光素子の専用露出計が用意されていました。
レンズのいわゆる「カニ爪」は、本来はこの露出計のために設けられたものでした。
露出計搭載の各モデル
ニコンFの特徴である、ファインダーが交換可能であるという点。
そのことを活かして、ニコンFはファインダーを交換することで露出計の使用が可能となっています。
ここではニコンFの露出計内蔵ファインダーについて紹介します。
Nikon F Photomic(ニコンF フォトミック)
ニコンF フォトミックは、1962年発売の外光式露出計搭載モデル。
多くの一眼レフカメラでは撮影用レンズを通った光で露出を計測する「TTL測光」を採用していますが、初期の露出計内蔵モデルであるニコンFフォトミックは、撮影用レンズとは別に露出計測部のある、いわば旧式のモデルとなります。
Nikon F Photomic T(ニコンFフォトミックT)
ニコンFフォトミックTは、1965年に発売された、TTL開放測光に対応したモデル。
露出計の形式は、ペンタックスSPなどと同様の「平均測光」となります。
レンズ交換の際には、レンズの開放F値を手動で設定し直す操作が必要となります。
Nikon F Photomic TN(ニコンFフォトミックTN)
1967年発売。
ニコンFフォトミックTNでは、測光形式が中央重点測光となりました。
空の明るさなどで容易に露出が適正値からずれてしまう平均測光に比べて、より適切な露出値を求めやすくなっています。
こちらもレンズの開放F値を手動で設定する必要があります。
Nikon F Photomic FTN(ニコンFフォトミックFTN)
1968年発売のニコンFフォトミックFTNは、ニコンF用の露出計内蔵ファインダーの完成形と呼べるモデルです。
測光方式は中央重点測光。
それまでの露出計内蔵ファインダーと大きく変わったのが、レンズの開放F値が半自動で設定できる、いわゆる「ニコンのガチャガチャ」が採用されたこと。
「ガチャガチャ」とは、レンズを装着したあとにレンズの絞りリングを最小値まで回し、次に開放F値まで回すだけで、レンズの開放F値がカメラボディに伝達されるという仕組み。
言葉で説明すると伝わりにくいかもしれませんが、実際に操作してみるとこれ以上なく単純明快、かつ一瞬で操作できる優れた方式です。
ファインダー自体も他に比べて小型化されており、カメラとしての取り回しもよくなっています。
露出系内臓のニコンFを選ぶなら
これら、露出計(フォトミックファインダー)を搭載したニコンFを選ぶなら、おすすめは断然ニコンF フォトミックFTNです。
ニコンのガチャガチャを搭載した完成度は、他に比べて群を抜いています。
ただし、中古で購入する際には露出計がしっかりと作動しているかチェックすることは必須です。
ニコンFのフォトミックファインダーは露出計が劣化していることも多く、もしも露出計を使用した撮影を行いたい場合には、オーバーホール済みの個体を選ぶ、動作確認済みの個体を選ぶなどの対策をおすすめします。
いっぽうで、露出計内臓のニコンFは、三角形のアイレベルファインダー搭載のニコンFに比べて、一般的に安価に入手することが可能です。
露出計の精度をそこまで求めないなら、露出計搭載モデルを選ぶことで手軽な価格でニコンFを楽しむことができるといえるでしょう。
Nikon F(ニコンF)のマニアックなモデル
1959年から1973年まで、長期間に渡って販売されたニコンF。
製造期間にわたって、数多くの改良が施されています。
なかでも注目したいのが最初期のモデルと、最後期のモデル。
ここではニコンFを選ぶときに注目したいモデルについて簡単に紹介します。
ニコンF 最初期型(640F)
ニコンFのなかでもカメラファンの間で人気が高いのが、640Fと呼ばれる最初期型。
巻き上げレバーの裏に肉抜きがある、セルフタイマーレバーのデザインが異なる、メッキの仕上げがそれ以降と異なるなど、外観上もいくつかの違いが存在しています。
また最初の100台程度は、シャッターが通常のチタン幕ではなく布幕となっており、非常に珍重されています。
640Fとは、640から始まるシリアルナンバーに由来する呼び名。
ニコンFのシリアルナンバーは6400000から始まるため、いかにシリアルナンバーの数字が若いかで価値が大きく異なってきます。
製造開始から3桁台目といった、初期中の初期のモデルはコレクターズアイテムとしてプレミアがついてしまっていますが、ひと味違うニコンFが欲しいというあなたは、640****番くらいの比較的初期のモデルを探してみるのも面白いかもしれません。
ただし製造から時間が経っているので、中古購入時にはオーバーホール・メンテナンス済みの個体を選ぶのが重要です。
New F(ニューF)
「ニューF」とは最後期に製造されたニコンFの通称です。
1971年、ニコンFの後継機であるニコンF2が発売されましたが、その後も1973年までニコンFは並行して販売が行われました。
その際に、ニコンF2からフィードバックが行われ、いくつかの改良が施されました。
その改良モデルのことを、ニューFと通称するようになったのです。
ニューFが一目で見分けられるポイントとして、巻き上げレバーとセルフタイマーレバーにプラスチックの指当てがついたことが挙げられるでしょう。
その他にも長い生産期間の間に改良された点が諸々フィードバックされているため、機構の完成度から言って、実用機として中古購入時にもおすすめできるモデルだといえるのではないでしょうか。
ニコンF用モータードライブ(F36)
電気モーターでフィルムを巻き上げるモータードライブ。
もちろんニコンFにも用意されています。
ただし、後年のカメラに比べるとこちらは少々マニア向けなアイテムとなっています。
ニコンFでのモータードライブ使用には、カメラ本体への改造と調整が必要。
カメラ1台に対してモータードライブ1台が対応するように調整されているため、後年のカメラのように、どのカメラにどのモータードライブを取り付けても動作する、というようにはいきません。
また連射時にシャッター速度の制限があるなど、使用も比較的難易度が高いです。
いまとなっては非常に趣味性の高いアイテムとなってしまっていますが、1964年東京オリンピックでカメラマンが愛用した組み合わせを味わうのも非常に楽しいものです。
F36モータードライブ 各部画像
ニコンFで使いたいニッコールレンズ
では、ニコンFにレンズを合わせるなら、いったいどんなレンズがおすすめなのでしょうか。
マニュアルフォーカスのニッコールレンズならどんなレンズでも似合うニコンFですが、なかでも断然似合うのは、カメラ本体と同時代に販売された「オートニッコール」レンズだといえるでしょう。
金属削り出しの手間がかかったレンズ鏡胴は、ニコンFの魅力を更に引き出してくれるもの。
まず1本選ぶなら標準レンズの50mm/F2や50mm/F1.4。
オートニッコールレンズは値段も安価なため、接写用のマイクロニッコールや、広角、望遠まで選び放題です。
オートニッコールレンズには初期型とそれ以外が存在しているため、シリアルナンバーを見て、640万番台に近い初期のモデルだった場合には、初期型レンズを合わせるのもおすすめです。
見分けるポイントは絞りリングについているカニ爪の形状。
初期型は尖った三角形となっているのに対して、それ以降のモデルでは半円形となっています。
↑初期型のオートニッコールはカニ爪の形状が異なる
おすすめのニッコールレンズはこちらの記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
伝説の一眼レフをあなたも使ってみませんか?
語っても語っても語りきれない伝説のカメラ。
それがニコンFです。
数え切れないほどの逸話を持つカメラは、それだけで本が1冊書けるほどにカメラファンの間で研究も行われています。
歴史に名を残し、伝説を作り、カメラファンに愛されてきたカメラ。
そんなニコンFは、同時にいまでも中古で入手して、実際に使うことができるカメラでもあります。
伝説を追体験する。
それこそがニコンFを扱う魅力。
ぜひあなたも、身をもって伝説を体験してみませんか?
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