露出計がないフィルムカメラで写真を撮るには? 単体露出計・アプリの使い方
今回は、「露出計がついていないフィルムカメラ」の使い方について紹介します。
いま人気の中古フィルムカメラの中には、「露出計」がついていないものが存在しています。
二眼レフカメラやレンジファインダーカメラなどをはじめ、1960年代以前の機種には、初心者に人気のものでも露出計がないものは多いです。
絞りとシャッタースピードで合わせる露出。
露出計がついているフィルムカメラなら、その値に従って操作すればよいのですが、中古フィルムカメラを使い始めたばかりの方には難しいはず。
そんなときの解決方法が「単体露出計」を使うこと。
使いたい中古フィルムカメラに露出計が内蔵されていなければ、「露出計」の機能だけが独立した「単体露出計」を使えば、問題なく撮影できるようになるのです。
また、カメラ用品メーカーが販売している「単体露出計」のほかに、スマートフォンにも露出計アプリがあるので、そちらもおすすめ。
この記事では、単体露出計とスマホの露出計アプリの両方について紹介します。
目次
露出計がついていないフィルムカメラの使い方
中古フィルムカメラのなかには、露出計がついていないものが多く存在しています。
まず、露出計がついていないとは、どのようなことなのでしょうか?
露出計とは
まず、露出計とはどのようなものか、について解説します。
露出計とは、写真を撮るときに「光の強さ」を測る機械です。
撮影したい被写体が照らされている光の強さを測り、内部で数値を計算して、絞りとシャッター速度の数値に変換。
露出計を使うことで、写真を撮るときに、どれくらいの絞り値とシャッター速度に設定すればいいか、表示してくれるのです。
それでは、なぜ「光の強さ」を測る必要があるのでしょうか?
写真と光の強さ
露出計で光の強さを測る理由。
それが、写真を撮るには「適切な光の量」だけがフィルムや、デジタルカメラのイメージセンサーに当たらなければいけないためです。
フィルムカメラで使う写真用フィルムや、デジタルカメラのイメージセンサーが、光を感じられる範囲は限られています。
もし当たる光の量が多すぎれば写真が真っ白に。
もし少なすぎれば真っ黒になってしまうのです。
適正露出(ちょうどいい)
露出オーバー(明るい)
露出アンダー(暗い)
そこで、写真を撮るときには、「適切な量の光だけをレンズから取り込む」ことが必要になるのです。
「適切な量の光だけをレンズから取り込む」ために、カメラの「露出」を合わせる操作をすることとなります。
簡単な露出の話
では、露出とはいったいどんな概念なのでしょうか?
(わからなかったら飛ばしてもOK。実際に露出計を使って撮影するうちに概念がわかるようになりますよ!)
写真の「露出」は、一般に3つの要素で決まります。
・絞り
・シャッター速度
・フィルム感度(デジタルカメラの感度)
です。
このうち、「フィルム感度」はフィルムカメラの時代には簡単に変えることができませんでした。
その名残で、デジタルカメラでも、あらかじめ感度を設定してから撮影することが多いため、まず、最初に「感度」はISO100やISO400といった、特定の値に設定したことを前提に説明します。
この記事で紹介する「単体露出計」でも、基本的には先に「感度」を設定してから光を計測し、「絞り」と「シャッタースピード」の数値を表示することとなります。
残った2つの要素。
「絞り」と「シャッター速度」は、それぞれ以下のような役割を持っています。
絞り:光をどれくらいの量ずつ取り込むか
絞りによって、取り込む光の「量」が決まる。
シャッター速度:光をどれくらいの時間取り込むか
シャッターが開いている「時間」だけ光が取り込まれる。
よく例えられるのは水道の蛇口。
絞りは「水道からどれくらいの勢いで水を出すか」、シャッター速度は「どれくらいの時間、蛇口を開けるか」ということに相当します。
バケツに同じ量の水を貯めるのでも、水の勢いによって貯まる時間は違いますよね。
絞りとシャッタースピードの関係でも、同じことが起こっているのです。
絞りとシャッタースピードについては、他の記事でも詳しく解説するのでぜひ参考にしてください。
ひとまずは、絞りとシャッタースピードの概念がわかっていなくても、露出計に表示された値をそのままカメラに設定するだけでOK。
この記事でも、まずは露出計を使って簡単に撮影することを前提に方法を説明するので、「露出」についてよくわからなくても、まずはフィルムカメラで撮影してみましょう!
撮影しているうちに、絞りとシャッタースピード、そして感度という、「露出」の意味がわかってきますよ!
露出計はデジカメにもスマホにもついている
そんな露出計は、じつは現代のほぼすべてのカメラについています。
スマホの内蔵カメラにも、デジタルカメラにも。
露出計とは、光の強さを測る機械。
スマホやデジタルカメラは、計測した光の強さをもとに計算することで、自動で「露出」を合わせることが普通になっています。
(「自動露出」や「AE」と呼ばれています。中古フィルムカメラでも、1960年代後半以降、自動露出のカメラは多く存在しています)
スマホのカメラで誰でもきれいな写真が撮れるようになったのも、露出を計測するセンサーやプログラムが進歩したため。
いっぽう中古フィルムカメラでは、現代ではコンピューター制御が普通になった「露出」を手動で合わせることになります。
自動が普通になってしまったものを、あえて手動で合わせる。
フィルムカメラを使うのは、このように手仕事で写真を撮ることでもあるのです。
単体露出計とは
それでは、露出を手動で合わせるときに使う、単体露出計とはどのようなものなのでしょうか?
単体露出計とは
単体露出計とは、「露出計の機能だけが独立した」道具です。
「入射光式」と「反射光式」の2種類があり、用途によって使い分けられています。
単体露出計は、この記事でも後で紹介するような、露出計のないフィルムカメラで使うことのほか、スタジオでのモデル撮影、商品撮影などプロの現場でも使用されています。
単体露出計はカメラに内蔵された露出計よりも精密に光を計測することができるので、プロの仕事には欠かせない道具でもあるのです。
プロが使う道具には「フラッシュメーター」という種類の単体露出計もあり、フラッシュ(ストロボ)の光を計測することができるのが特徴となります。
それでは、単体露出計の種類について、それぞれの特徴を見ていきましょう。
1.入射光式露出計
入射光式露出計とは、
「被写体を照らしている光」を計測する露出計です。
実際に当たっている光の量をそのまま計測できることから、精密な計測が可能です。
わかりやすいイメージとしては、ドラマで写真スタジオのシーンが出てきたときに、アシスタントの人がモデルの周りに黒っぽい機械をかざしているのを見たことがあるのではないでしょうか。
あれが入射光式露出計です。
見た目のうえでは、白い半球がついていることが特徴となります。
入射光式露出計のメリット
入射光式露出計のメリットは精密な測定が可能なことです。
また後述しますが、反射光式露出計と異なり、「被写体の色」に影響を受けません。
入射光式露出計のデメリット
入射光式露出計のデメリットは「被写体の場所まで行かないと計測できない」ということです。
机の上での物撮りや、近くにいるモデルの撮影なら問題ないのですが、例えば風景写真の撮影では、遠くに行って測ることは不可能です。
2.反射光式露出計
セコニックL-558(入射光式と両用)
反射光式露出計とは、「被写体に反射してこちらにやってきた光」を計測する露出計です。
人間の目が見ている光はすべて、太陽光や照明など自ら光っているものを反射した光です。
反射光式露出計では、人間の目が見ているのと同様に、被写体が太陽光や照明を照り返した光の量を計測しているのです。
基本的に、カメラ本体に装着する露出計や、カメラに内蔵されている露出計はすべて反射光式露出計となります。
反射光式露出計のメリット
反射光式露出計のメリットは、被写体のところまで行かなくても計測できることです。
その特性上カメラに組み込むことができるため、現代のデジタルカメラやスマホのカメラの自動露出には欠かせない技術となっています。
反射光式露出計のデメリット
反射光式露出計のデメリットは「被写体の色によって露出に誤差が生じる」ことです。
反射光式露出計が計測しているのは、あくまでも「被写体に反射してきた光の強さ」。
ということは、
・黒っぽい被写体(光をあまり反射しない被写体)は実際より暗い
・白っぽい被写体(光を反射しやすい被写体)は実際より明るい
と、露出計が判断してしまうのです。
そのため、反射光式露出計が指し示した数値のまま撮影すると、以下のような撮影結果になってしまいます。
・黒っぽい被写体→全体が明るすぎる状態になる
黒っぽい被写体を(露出補正を掛けずにスポット測光で)撮影
・白っぽい被写体→写真が暗すぎる状態になる
白っぽい被写体を(露出補正を掛けずにスポット測光で)撮影
このようなことが起こる要因は、被写体の色自体をカメラが判断することはできないため。
カメラには、「暗い場所にある白いもの」と「明るい場所にある黒いもの」を見分けることができないのです。
そのため、反射光式の単体露出計、カメラ内蔵の露出計ともに、業界標準として「濃度18%のグレー」を、光の明るさを計算するときの基準にすることとなっています。
濃度18%のグレーとは、だいたい人間の肌と同じくらいの光の反射率だとされています。
18%のグレー(ディスプレイ上での表示のため厳密には異なる)
もちろん、技術の進歩により近年のカメラでは、ある程度、被写体の色によって露出に補正をかけることもできるようになっていますが、まだまだ発展途上の技術で、完璧にはなっていません。
現代の最新のデジタル一眼レフカメラでさえ、「露出補正」の機能がついています。
「白いものが白い」「黒いものが黒い」写真を撮るためには、いまでもある程度経験を積むことが必要となるのです。
[acce]
露出計アプリ
近年登場した新しい形の露出計。
それがスマホ用の露出計アプリです。
その名の通り、スマホに内蔵されたカメラやセンサーを用いて光の強さを計測して、カメラのシャッター速度や絞り値を表示してくれます。
形式としては反射光式露出計の一種となり、メリット・デメリットも上記と同様です。
無料でダウンロードして使うことができるのも魅力です。
単体露出計と露出計アプリ、どちらがいい?
無料で使える気軽さが魅力的な露出計アプリですが、実際に撮影に使うことを考えると一長一短でもあります。
メリット:無料
広告が表示されることはありますが、スマホ用の露出計アプリは無料。
まず、露出計のない中古フィルムカメラで撮影してみるのには便利な選択です。
デメリット1:精度はそれなり
露出計アプリは、あくまでも露出計としては簡易的なもの。
そのため、ある程度適切な露出値は表示されますが、厳密な露出の値を決めるには向いていません。
ただし、明るすぎたり暗すぎたりしない写真が撮れる、くらいの精度はあるので、その点は安心してください。
デメリット2:動作が緩慢
筆者が実際に露出計アプリを使ってみて不便に感じたのが、動作の緩慢さです。
専用の単体露出計や、カメラ内蔵の露出計は、基本的には一瞬、古い機種でも1秒以内には露出値が表示されます。
それに比べると、スマホアプリの露出計は、表示される値が安定するまでに数秒のタイムラグがあるのです。
またスマホを使う関係上、画面のロックを解除したり、アプリを立ち上げるタイムラグも存在します。
一瞬の撮影チャンスを活かすなら、即応性の高い専用の単体露出計に一日の長があるといえるでしょう。
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単体露出計を使った撮影方法の実際
それでは、実際に単体露出計を使ってどのように撮影するのか紹介します。
初心者の方のための、もっとも簡単な方法を解説するので、これで誰でも露出計のないカメラで撮影できるようになりますよ。
初心者向けの簡単な露出の決め方
まず最初に、初心者の方が絞りとシャッター速度を手動で決めるときにおすすめの方法を紹介します。
シャッター速度を先に決める
それが、「シャッター速度を先に決める」ということです。
具体的には、シャッター速度を1/125秒か1/250秒に決めます。
ISO100のフィルムを使っているときは1/125秒に。
ISO400のフィルムを使っているときは1/250秒にするとよいでしょう。
この数字の根拠は「手ブレしにくいシャッター速度」。
一般に、手ブレしにくいシャッター速度は「レンズの焦点距離分の1秒」とされており、これなら広角〜中望遠くらいまでのシャッター速度に対応可能です。
とくに、中古フィルムカメラ・クラシックカメラでは望遠レンズを使うことは少ないため、1/125秒以上に設定しておけば間違いはないでしょう。
絞りを変えて露出を合わせる
そして、単体露出計や露出計アプリの表示に従って、
表示された絞り値にカメラの絞りを合わせます。
これで適正露出となります。
太陽が昇っている日中については、基本的にこれで撮影可能です。
絞り開放で対応できなくなったら1/125秒以下のシャッター速度に変更
しかし、夕方〜夜にかけては、絞りを開放にしても、1/125秒のシャッターを切ることは難しくなります。
そんなときは、露出計の表示に合わせて、1/60秒、1/30秒、1/15秒、1/8秒と、シャッター速度を遅くしていきましょう。
シャッター速度が遅くなる(シャッターが開いている時間が長くなる)と手ブレしやすくなるので、カメラをしっかり保持するように心がけましょう。
現代の最新デジタルカメラとは異なり、フィルムカメラは感度がとても弱く、夜間の撮影は困難です。
クラシックカメラでは、暗い場所での撮影はときにはあきらめることも必要です。
慣れてきたらシャッター速度と絞りの組み合わせを変えてみよう
このような方法で「露出が合った」写真を撮ることが可能です。
ただし、絞りとシャッタースピードは単に露出を合わせるためだけのものではなく、それぞれを変えることでさまざまな写真表現が可能です。
中古フィルムカメラを使うときは、最初は露出の決め方を学んで、慣れてきたらシャッター速度や露出を変えて表現することを覚えていくとよいでしょう!
単体露出計での撮影方法(セコニックL-558使用)
それではここから、実際の撮影方法を解説します。
まずは単体露出計です。
今回は、入射光式露出計と反射光式露出計の両用の、セコニックL-558(Sekonic L-558)を使用して解説します。
※旧製品のため購入は中古のみとなります。
機種によって操作は異なりますが、
「測光ボタンを押すと光を計測する」ことと、「ダイヤルやボタンでシャッター速度と絞りの組み合わせを切り替える」ことは共通しています。
1.使用の準備
電源を入れたら、まず、使っているフィルムに合わせてISO感度を設定します。
ISO感度はISO1ボタンかISO2ボタンを押しながらダイヤルを回して設定します。
このL-558の場合、ISO1・ISO2ボタンで登録したISO感度の切り替えが可能です。
ISO感度を設定したら、使用する環境によって、入射光式と反射光式を切り替えます。
切り替えは側面の、反射光式露出計用のファインダー部分を回して行います。
切り替えると画面上の表示も変わります。
2.画面の表示
L-558の場合、写真のような画面表示になっています。
ISO感度は既に設定したので、
光を測ったときに表示が変化するのはシャッター速度と絞り値となります。
それでは、光を測ってみましょう。
3.入射光式で測光する
入射光式のときは、被写体に当たっている光に、露出計上部の白い半球をかざします。
測光は、側面にある測光ボタンを押すことで行います。
測光ボタンを押すと瞬時に、その時の光の量が計測され、画面上の数値が更新されます。
入射光式露出計で遠くの被写体の露出を測る
ところで、入射光式露出計しか持っていなくて、遠くの被写体を撮影したいときにはどうしたらよいのでしょうか?
結論からいうと、「いま立っている場所」の露出を測ればOKであることが多いです。
例えば、広い芝生の公園や学校の校庭、砂浜、見晴らしのいい山頂。
そんな場所では、近くでも遠くでも、降り注いでいる太陽光の強さはほとんど変わりがありません。
いっぽう、いま立っている場所は日向だが、撮影したい場所は日陰、というような場合には、露出値が大きく変わってしまうので、その場所まで行ってきちんと測光するか、反射光式露出計を使いましょう。
4.反射光式で測光する
反射光式のときは、ファインダーを覗いて、中央部分を被写体の測光したい箇所に向けます。
セコニックL-558のファインダー
同様に測光ボタンを押すと測光されます。
5.数値を読み取る
液晶画面に数値が表示されます。
そのとき、必ずしも、撮影したい状況にぴったりのシャッター速度・絞り値が表示されていないことがあります。
写真では例として、シャッター速度が遅すぎる(1/15秒)・絞り値が小さすぎる(F32)
場合を示しました。
そのようなときは、ダイヤルを回すことで、「同じ光の量を取り込む」組み合わせで、シャッター速度と絞りを変えることが可能です。
写真のように、今回はシャッター速度が1/125秒になることを基準に数値を求めました。
写真のように、シャッター速度が1/125秒となるように表示を変えることで、
そのときの適切な絞り値が求められます。
6.シャッター速度と絞りの値をカメラに設定する
露出計で読み取ったシャッター速度と絞りの値をカメラに移し替えます。
例として、二眼レフ(ローライコード)と一眼レフ(ニコンF3)の場合を紹介します。
(ニコンF3は露出計を内蔵しているカメラですが、今回は例として使用します。操作方法は他の一眼レフカメラも同様です)
二眼レフ(ローライコード)の場合
レンズ脇のノブを動かして、シャッター速度と絞りを操作します。
シャッター速度と絞りの値は、2つのレンズの間の窓に表示されます。
一眼レフ(ニコンF3)の場合
シャッター速度は、ボディ上面のシャッターダイヤルを回して設定します。
絞り値は、レンズ根本の絞りリングを回して設定します。
7.撮影する
これで、カメラ本体に適切な露出値を設定することができました。
早速撮影しましょう。
(時間が経って光の状態が変わると、せっかく設定した露出値がずれてしまうので、すぐに撮影するようにしましょう)
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露出計アプリでの撮影方法
次に、露出計アプリでの撮影方法を解説します。
今回は、筆者も実際に使っている「Pocket Light Meter」を使用します。
アプリは以下のリンクからダウンロード可能です。
1.アプリを立ち上げる
ダウンロードしたアプリを立ち上げます。
2.ISOを設定する
上下にフリックしてISO感度を設定します。
3.シャッター速度を設定する
シャッター速度を、今回は1/250秒に設定します。
4.絞り値が表示される
表示が安定するまで待ちます。
今回は、絞り値がF11〜13の間で止まりました。
5.値をカメラに移し替える
単体露出計を使ったときと同様、カメラにシャッター速度と絞りの値を移し変えます。
シャッター速度は1/250秒に。
絞り値は、近似値としてF11としました。
(絞りリングはクリック位置以外でも止めることが可能ですが、最初は値が近いクリック位置で止めるのがわかりやすいでしょう)
6.撮影する
これで露出が適正値になりました。
撮影します。
おすすめの単体露出計6選
具体的に、おすすめの単体露出計を紹介します。
1.セコニック デジタルマスター L-758D
今回の記事で使い方を紹介したセコニックL-558と同系統の、入射式と反射式の双方が使える上位機種です。
定評あるセコニックの製品だけあって、的確な露出を決定できること間違いありません。
2.セコニック スタジオデラックス
通称スタデラ。
非常に長い歴史を持つ露出計です。
機能は非常にシンプルで入射光式のみ。
光電池をセンサーとして用いているため、電池を入れる必要さえありません。
L-28c(初代)
L-398M(スタジオデラックスII)
L-398A(スタジオデラックスIII)
が存在しますが、基本的には機能は同一。
ただし、経年劣化を考えると、中古ではIIかIIIがおすすめです。
操作がアナログなため、露出について非常に勉強になるおすすめ機種です。
[acce]
3.セコニック L-208 ツインメイト
セコニックの反射光式露出計です。
特徴は、カメラのアクセサリーシューに取り付けることを前提に設計されていること。
持ち替えることなく測光が可能です。
露出計のついていないフィルムカメラを使うのに最適な露出計ですね。
4.Voigtlander VCメーター
フォクトレンダー(コシナ)の露出計です。
反射光式でLED表示。
シンプルな見た目のため、バルナックライカやM型ライカなどに取り付けても違和感がありません。
初代VCメーターと、改良版のVCメーター2があり、測光値ロックがついた2型のほうが便利です。
5.銘匠光学 TTArtisan TT-METER
こちらもカメラの上に取り付けられるクリップオンタイプの露出計です。
中国メーカーの製品。
見ての通りフォクトレンダーのVCメーターに非常に似通っているのですが、2020年代に入ってから登場した製品だけあって使いやすさは良好。
中国ではフィルムカメラが流行しているようで、中国製アクセサリには使いやすく廉価なものが多く存在しています。
フィルムカメラに手ごろな露出計を載せたい場合、おすすめの製品だといえるでしょう。
[acce]
露出計がないフィルムカメラについて簡単な解説
それでは、ここまで紹介してきたような方法で撮影する、露出計がない中古フィルムカメラとは、いったいどんなものなのでしょうか?
そもそも、なぜ露出計がないのでしょうか?
露出計がない理由
ライカ、ローライ、ハッセルブラッド。
これら、いまでも中古で非常に人気が高いフィルムカメラには、露出計がついていない(内蔵されていない)機種が多く存在します。
いったいなぜなのでしょうか?
露出計がまだ未発達だった
露出計がない理由は、乱暴な答え方をしてしまえば「露出計がなかったから」ということになります。
もちろん、露出計そのものの原理は発明されていたし、商品としても存在しました。
しかし、小型化してカメラに組み込むことが難しかったり、値段が高かったり、まだまだ発展途上の存在だったのです。
厳密にいうと語弊があるのですが、いまでも人気の中古フィルムカメラのなかには、露出計の内蔵がまだ一般的ではなかった時代の機種が多くあります。
たとえばM型ライカの代表であるライカM3は1954年発売。
ローライフレックスは1950年代後半まで露出計を搭載していませんし、1960年代に最終型が登場したローライコードは最後まで露出計を内蔵することはありませんでした。
これはあくまでも傾向ですが、1950年代のカメラは露出計なしが多数派。
1960年代に入ると露出計を組み込んだ機種が増え始め、1960年代後半になると、露出計内蔵機種が主流となります。
また、1960年代後半になると、自動露出(AE)を採用した初期のカメラが市場に受け入れられ始めます。
「プロは露出計を使わない」と思われていた
さらに、1970年代に入っても露出計のないカメラは存在しています。
ニコンF2などの一眼レフ。
そしてハッセルブラッドをはじめとした中判カメラ。
これらの機種は、ファインダーなどの追加部品を取り付けることで露出計を装備することはできたものの、それでも露出計なしのモデルが用意されていました。
その理由が「プロは露出計を使わない」という風潮。
1970年代には、まだカメラ内蔵の露出計を信用しないカメラマンも多く、露出計を好まない人のために、露出計なしモデルが用意されていたのです。
例:ニコンF2(1971年)には露出計ありとなしが存在
ニコンF2(アイレベル・露出計なし)
ニコンF2フォトミック(露出計つき)
また、とくに中判カメラについては、それ以降、1980〜1990年代になっても、露出計のないモデルが新品で販売されていました。
廉価版機種には露出計を省略したものが
また、1960年代後半〜1970年代前半の一時期、メインとなる機種には露出計を装備していても、廉価版では露出計を省略したものもありました。
こちらは上記とはうってかわって普及機種の場合となりますが、メーカーによっては、「廉価版機種」と「露出計を好まない人のための機種」を兼用しているものもありました。
有名な例としては、
ニコマートFTnに対するニコマートFS
オリンパスPEN FTに対するオリンパスPEN FV
ペンタックスSPに対するペンタックスSL
などが挙げられます。
露出計の組み込みが構造的に困難
最後に、構造的に露出計の内蔵が困難なフィルムカメラもあります。
それが、リンホフやトヨフィールドなどの大判カメラ。
フィルムカメラとしてもっともプリミティブな形態をとっているため、露出計を組み込むことが構造的に考慮されていませんし、そもそも露出計を内蔵する意味がありません。
現在も大判カメラは新品で販売されていますが、もちろん露出計はありません。
大判カメラで撮影するときは、基本的に単体露出計を使うこととなります。
露出計がないカメラには名機が多い
そんな、露出計を内蔵していないカメラには、いまでも人気の高い名機がとても多いです。
その理由はいくつかあります。
まず、露出計が内蔵されていない時代のカメラは、仕上げがよい高級品が多いため。
1950年代はドイツのカメラ産業の、脂が乗りに乗っていた時期。
当時のライカやローライの仕上げは絶品です。
日本製の一眼レフカメラやレンジファインダーカメラ、二眼レフカメラにしても、どれも現代の価値では月給一ヶ月分以上に相当する高級品。
価値に見合う職人の仕上げは、高機能になった代わりにコストダウンされた現代のカメラでは味わえません。
また、露出計がないフィルムカメラには、上に書いたようにプロ向け機種が多かったのも理由のひとつ。
ニコンFやハッセルブラッドはその代表例。
最上級機種なので、使用感も剛性も、信頼性もトップクラスです。
露出計のないフィルムカメラは愛好家にも人気
さて、そんな「露出計なし」カメラは、露出計がないカメラより愛好家に好まれることが多いです。
上に書いた「名機」に限らず、中古カメラ愛好家は、露出計のついた機種と露出計がない機種では、後者を好みがち。
その理由は……
1.露出計がないカメラは壊れる部分が少ない
1950〜1960年代のカメラの露出計はまだまだ発展途上。
そのため、いまでは経年劣化で使えなくなっていることも多いです。
いっぽうカメラ本体の機械部分は、整備すれば問題なく使えることがほとんど。
カメラ本体のバネやゼンマイでできた機械部品より、露出計の電気系統のほうが壊れやすいのが、中古フィルムカメラ愛好家が露出計のないカメラを好む理由のひとつです。
例:ニコンFは、経年劣化していることが多い露出計つきより、露出計なしのほうが中古が高値のことが多い。
ニコンF
露出計つきのニコンF(フォトミックFTN)
2.「露出計だけが壊れたカメラ」への抵抗感
機械式のフィルムカメラは、露出計が壊れていて修理不能でも、機械部分をオーバーホールして使うことは十分可能です。
ですが人によっては、露出計が壊れているという「完全ではない」状態に違和感を覚えることも。
その点、露出計が最初からないカメラなら、壊れる露出計自体が存在しないのでそのような問題はありません。
3.露出計のないカメラには希少なものがある
最後に、露出計のないカメラのなかには、希少なコレクターズアイテムとして珍重されているものがあります。
1960年代後半〜1970年代前半の露出計省略機種は、既に露出計内蔵カメラが主流になったあとの登場だったため、台数が少なく貴重になったのです。
例えば上で紹介したニコマートFSやオリンパスPEN FVは有名な例。
一般的な機種であるニコマートFTnが中古で数千円、ジャンクでは1000円以下になることもあるのに対して、ニコマートFSは状態が悪くても2万円以上で取引されています。
露出計がない中古フィルムカメラ名機紹介
それではここで、露出計がないフィルムカメラの代表例を紹介します。
1.M型ライカ(M3・M2・M4他)
まずもっとも有名な部類となるのがM型ライカ。
メジャーな機種では、M3、M2、M4と、M4のマイナーチェンジであるM4-2、M4-Pは露出計がありません。
M型ライカについては以下の記事も参考にしてくださいね。
2.バルナックライカ
上記のM型ライカの以前の機種であるバルナックライカは、すべて露出計非搭載です。
また、バルナックライカを日本や旧ソ連などでコピーした機種も、露出計はすべてありません。
バルナックライカについては以下の記事で解説しています。
3.ローライフレックス、ローライコードなどの二眼レフ
ローライをはじめとする二眼レフカメラは、日本製も含め、ほとんどが露出計を内蔵していません。
ただし、ローライフレックスに関しては1950年代後半から露出計搭載モデルが存在し、数が多く人気も高いローライフレックス2.8Fも露出計搭載モデルです。
しかしながら、クラシックカメラのローライフレックスの露出計は古いもののため、信頼性を考えると露出計のないカメラに準じて考えたほうがよいといえるでしょう。
4.ニコンF
はじめてのプロの使用に耐えうる一眼レフ、ニコンFも露出計のないカメラです。
ただし、交換式の「フォトミックファインダー」には露出計が内蔵されています。
5.ハッセルブラッド
ハッセルブラッドも基本的に露出計はありません。
6.ゼンザブロニカ、マミヤ、ペンタックスなどの中判カメラ
ゼンザブロニカS2、マミヤRB67シリーズ、マミヤRZ67シリーズ、マミヤM645シリーズ、ペンタックス67シリーズなど、主要な日本製中判カメラは、1980年代以前のモデルでは露出計がないのが普通です。
ここで紹介したのはほんの一部。
露出計がないカメラはある時代までは当たり前だったため、1950年代以前のカメラを使う場合、基本的には露出計はないのが当たり前と考えてよいでしょう。
露出計がないから使うのが難しそう……、と思ってあきらめるなんてもったいない!
露出計がないカメラは魅力的なものばかり。
ぜひ紹介した方法を参考に撮影してみてください。
単体露出計を使ってクラシックカメラで撮影しよう!
M型ライカ、ローライ二眼レフ、ハッセルブラッド。
魅力的な中古カメラには露出計がないものも多いですが、単体露出計や露出計アプリを使うことで、安心して撮影することができますよ。
露出計を使えば、真っ白な写真や真っ黒な写真になってしまう心配はなし。
シャッター速度と絞りの関係もすぐに理解することができるので、写真も上達します!
ぜひ単体露出計を使って、中古フィルムカメラでの撮影を楽しんでくださいね!
おすすめ露出計はこちら
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