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[オールドレンズ撮り比べ9] Nikon New NIKKOR 55mm F1.2で大口径の魅力をミラーレスでもフィルムでも生かそう

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ミラーレス一眼で撮影/絞り F1.2/露出補正+1

こんにちは、雨樹一期です。今回はフィルムカメラとミラーレス一眼カメラの撮り比べ。使用するのは大口径レンズ(F値が小さいレンズ)のNikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2
非Aiレンズのなかでも後期の「ニューニッコール」(New NIKKOR)に分類されるレンズです。

大口径レンズの中では、中古価格的にも入手は容易な部類に入ります。

焦点距離は違いますが、前回のNikon(ニコン) Ai NIKKOR 50mm F1.8Sで撮影した作例との比較にもなりますね。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
フィルムカメラで撮影/絞り F4

こちらはフィルムカメラ「Nikon F」での一枚。雰囲気がガラッと変わりますね。

前回のコラムは以下より。

[オールドレンズ撮り比べ8] Nikon Ai NIKKOR 50mm F1.8Sであなたの撮りたい世界を素直に表現してみませんか?

それでは詳しく、フィルムカメラとミラーレス一眼カメラで撮り比べた作例を見ていきましょう。

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Nikon Fの魅力

Nikon(ニコン) F / New NIKKOR 55mm F1.2

このシリーズの作例、いつもはカメラをお借りして撮影しているのですが、今回は自前の「Nikon F」を使いました。結構ボロボロになりましたが、まだ故障も不具合もありません。

日本光学の元祖一眼レフになりますが、操作性も良く、これでほぼ完成されているかのような設計です。ただ、露出計が搭載されていないので、カメラ初心者の方が扱うには難しいかもしれません。

コレクターズアイテムとしても人気がありますね。親から譲り受けた一眼レフが「Nikon F」だとラッキーかもしれません。シリアルナンバーが古いほど高い価格で取引されています(笑)。それを知らずに使っている方は多いのですが、伝説の名機です。

1959年発売で、今もバリバリに使えますからね。耐久性があるのもわかります。外観もかっこいいです。

整備済みで状態のよい中古も多いので、ぜひ探してみてください。

SONY α7 + New NIKKOR 55mm F1.2の作例(ミラーレス一眼カメラ)

まずはミラーレス一眼カメラの作例。
今回も、フルサイズのミラーレス一眼カメラとしては中古価格が手頃でオールドレンズ入門に便利なSONY α7を使用しています。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F1.2/露出補正+1

最初の作例は、さっそく最短撮影距離で開放のF1.2で撮影。被写体との距離が近いほど背景もボケるのですが、ピントがジャストで合っているのが花びらの一部分のみですね。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F1.2/露出補正+1

少し距離を離して、コスモスの花びらがこの大きさくらいなら花びら全体にピントが合います。これが大口径F1.2の世界。
ボケ味も前回の「Nikon Ai NIKKOR 50mm F1.8S」とは違います。「Nikon New NIKKOR 55mm F1.2」の方が柔らかいです。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F1.2/露出補正+1

開放でもしっかりとピントを合わせたいのなら、被写体までの距離があまり近くないほうがいいですね。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F1.2

続いて同じ場所で絞り値を変えて作例を撮り比べてみました。撮りたいのは落ちたバラの花びら。F1.2だとその一枚にしかピントは合わず、葉っぱもボケボケ。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F8

F8だとだいぶ締まりが出ますね。ふわっと感がなくなり、やや暗くなります。
New NIKKOR 55mm F1.2は年代と明るさもあって、絞り値によって描写はかなり変わります。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例

こちらの作例の方が分かりやすいでしょうか?F1.2の凄さが分かります。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F1.2/露出補正+1

ただ、開放で撮ると色彩やコントラストが落ちているのがわかります。締まりが無くなりますね。そしてピント合わせが辛い(笑)。上体が前後に揺れるだけでもピントを外してしまいます。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例ISO 100/絞り F1.2/露出補正+1

それだったなら、いっそ滲みやピントの甘さを利用してやればいいってことで、ホワイトバランスの色温度を3600Kに設定。青緑の色味にして、ふわふわのトロトロ描写にしてみました。露出補正はプラス1〜2で撮影。この時、背景は明るい方がいいですね。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F1.2

背景が暗いといまいちです。レンズの個性を活かして撮影しましょう。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例ISO 100/絞り F2/露出補正−1

背景が暗いのなら、露出補正はマイナス1〜2で暗めに撮影するのがいいですね。

SONY α7のカメラ設定
色温度は、SONY α7だと上記の設定で変更可能です。
SONY α7の場合、【Fn】を押して、ホワイトバランス設定、下の方にある「色温度・カラーフィルター」より色温度を変更出来ます。

大雑把に説明すると、数字を小さくするほど青みが強くなり、大きくすると赤みが強くなります。

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Nikon F + New NIKKOR 55mm F1.2の作例(フィルムカメラ)

続いて、名機Nikon FとNew NIKKOR 55mm F1.2の作例です。
今回はリバーサルとカラーネガでそれぞれ作例を撮影しました。

FUJIFILM PROVIA100Fを使用

いつも撮り比べはネガ現像が多めですが、今回、まずはリバーサルフィルムから。
リバーサルフィルムといえばド派手になるものが多いですが、FUJIFILM PROVIA100Fは彩度やコントラストも程よく、オールマイティーに使えるフィルムです。少しだけ青味がかるのも特徴です。

優しく、しっかり撮れるフィルムですね。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F8

まずは絞って撮影した作例。リバーサルフィルムを使うとフィルムらしさは少し薄れますが、カッチリ撮れます。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例ISO 100/絞り F2

Nikon Fは60年ほど前のカメラ。New NIKKOR 55mm F1.2も50年近く前のレンズ。なのに、普通にキレイに撮れてしまいます。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F8

リバーサルフィルムは露出が狂えばその影響は大きく出てしまいます。露出計の無いカメラで撮影するのは難しくなりますね。
これも少し明るくなり過ぎましたが意外とお気に入りです。

フルマニュアルの撮影は難しいですが、失敗したけど意外と好きってことはよくあります。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F8

絞ってカッチリ。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例ISO 100/絞り F1.2

開放でふわっと。

ミラーレス一眼の作例と同じように、New NIKKOR 55mm F1.2は絞り値を変えるだけで雰囲気がガラッと変化します。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F5.6

開放で動くものを撮るのは難しいので(特にピント合わせ)、F5.6くらいで撮影するのがいいですね。いい瞬間が撮れました。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F5.6

同じくF5.6に設定。この作例ではピントリングの距離を1mくらいにして、走る娘を追いかけながら撮影しました。New NIKKOR 55mm F1.2はF1.2の大口径ですが、そこに拘る必要もありません。

FUJIFILM 業務用100を使用

続いて、カラーネガの作例です。

フィルムはFUJIFILMのカラーネガフィルム 業務用100(サンライズカメラスタッフ注:価格が安く便利なフィルムでしたが、2020年に製造終了してしまいました)。
当コラムでは一番よく使用しているレンズです。
安価な割に粒状性(ザラつきも少ない)も良くて、発色も良い。おまけにフィルムらしい描写も楽しめます。

(代替品としてフジカラー100がおすすめです)

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Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F2

ミラーレス一眼の作例でも撮影したコスモス畑です。こちらは適正露出で撮っていますが、雰囲気は別物ですね。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F1.2

絞り開放のF1.2です。かなりふわっとしてしまいましたが、背景のとろけ具合や玉ボケ、色味もいいですね。これぞ、フィルムの味。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F8

ミラーレス同様、F8くらいまで絞って撮ればもちろんカリッとします。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F1.2

ピントをあえて中途半端な位置に合わせてみました。
もともと僕はピントがカリカリより少し曖昧くらいが好みなので、これはこれでありな一枚です。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F4

にゃんこをストーキングしながら撮影。やっぱり作例としても良い被写体ですね。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例
ISO 100/絞り F5.6

フィルムで撮影した作例は絞り値に関係なく味が出ました。

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まとめ

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2

今回の作例、「Nikon New NIKKOR 55mm F1.2」開放での撮影が特徴的でした。ピント合わせは難しいですが、ボケはとても柔らかく、優しい描写になりますね。オールドレンズらしいレトロ感もあります。

前回の「Nikon Ai NIKKOR 50mm F1.8」も決して悪くはありませんが、全体の性能はやっぱりこちらが上。
年式のうえでは「Nikon Ai NIKKOR 50mm F1.8」のほうが新しいですが、「Nikon New NIKKOR 55mm F1.2」の実力はさすが最上級レンズならではのものでした。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例ミラーレス一眼で撮影/絞り F1.2/露出補正+1

ミラーレス一眼なら、カメラにもよりますがシャッタースピードが1/8000秒くらいで撮影が出来るので、開放(F 1.2)でもバンバン撮影出来ます。フィルムカメラから揃えなくても、ミラーレスでも存分に活躍してくれます。

カチカチに撮らずに、ピントの甘さを利用した写真が個人的には気に入りました。

Nikon(ニコン) New NIKKOR 55mm F1.2の作例フィルムカメラで撮影/絞り F4

今回使用したフィルムカメラの「Nikon F」は、最速のシャッタースピードが1/1000秒。開放のF1.2で撮影すると、露出オーバー(光の入れすぎ)になって真っ白になることがあります。

開放の味は捨てがたい。だけど先ほども書いたように、絞り値に関係なくいい味を出してくれるレンズです。

撮り比べた作例を見返してみると僕はやっぱりフィルム派ですが、どちらで使うにしても、New NIKKOR 55mm F1.2は買って損のないレンズですね。

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New NIKKOR 55mm F1.2 簡単な解説

ここからは、中古フィルムカメラとオールドレンズのサンライズカメラ スタッフがNew NIKKOR 55mm F1.2について簡単に解説します。

New NIKKOR 55mm F1.2

New NIKKOR 55mm F1.2

中古価格 35,000-40,000円
マウント Nikon Fマウント
構成 9群9枚
メーカー 日本光学

New NIKKOR(ニューニッコール)は、いわゆる非Aiレンズのなかでも1974年以降の最後の時期に販売されたレンズです。
外観的な変化として、ピントリングがそれまでの金属製ローレットからゴム巻きのモダンなものとなりました

New NIKKOR 55mm F1.2はそのなかでももっとも大口径のレンズ。
発売は1975年。
焦点距離が少し長めの55mmとなっているところに、いわゆるオールドレンズらしさを感じますね。

それ以前のレンジファインダーカメラに比べてバックフォーカスの制限が厳しい一眼レフでは、当初、大口径の(50mm前後の)標準レンズの設計は難しいことでした。
ニッコール千夜一夜物語の第49夜(外部リンク)によれば、50mm F1.4が実現した後もF1.2は困難だったとのことで、非Aiレンズの時代にはF1.2のレンズは焦点距離を5mm伸ばした55mm F1.2がラインナップされていたのでした。
それでも、同ページによれば、このNew NIKKOR 55mm F1.2はそれ以前のものに比べ改良が行われていて、硝材に新しいものを使い、設計を修正することで最短撮影距離を短縮しています。

NIKKOR S.C AUTO 55mm F1.2
NIKKOR S.C AUTO 55mm F1.2の側面:最短撮影距離は0.6mと刻印されている(画像はAi改造されたもの)

New NIKKOR 55mm F1.2
New NIKKOR 55mm F1.2の側面:最短撮影距離が0.5m

日本光学の開放F1.2の標準レンズは、このあと1977年に、55mm F1.2のままAi化され、ついに1978年、Ai NIKKOR 50mm F1.2を実現することとなります。

さて、今回の作例写真でもわかるように、「オールドレンズ」という視点からみると、F1.2という大口径と年代もあいまって、New NIKKOR 55mm F1.2は絞り値による描写の変化が楽しめるレンズになっています。
ニッコールに限らず一眼レフ用レンズ全般にいえることですが、中古の価格は比較的安め。
それでも、とくに大口径のレンズは中古価格が上昇傾向にあるので、良い状態の気に入った中古在庫があったら、早めに買うのがおすすめです。

この「オールドレンズ撮り比べ」シリーズではSONYのミラーレス一眼カメラを使用していますが、Nikon Zシリーズをお持ちの方は、開放F1.2のニッコールレンズの血を引く最新のレンズ、設計者渾身の傑作といわれるNIKKOR Z 50mm F1.2 Sと撮り比べてみるのも面白いかもしれませんね。

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Nikon(ニコン)生産停止中古ニッコールレンズ 銘玉15選 2本目を買う前に!

Nikon Fについて

Nikon(ニコン) F / New NIKKOR 55mm F1.2

Nikon Fは言わずとしれたニコンの最初の一眼レフ。
そして、一眼レフの地位を確固たるものとしたカメラです。

この解説文は2022年にスタッフが追記しているものですが、その時点で、ニコンFは以前なら考えられないほど安い中古価格で購入することが可能になっています。

FやF2を買うなら今!なのかもしれないですね。

Nikon Fについて詳しくはこちら

Nikon(ニコン)F/伝説の名機ニコンFの特徴・おすすめモデルを一挙紹介!

今回使用したミラーレス一眼カメラ・マウントアダプター

このシリーズでは、中古価格が手ごろなフルサイズ機としてSONY α7初代をチョイスしています。
Eマウント機はフルサイズのミラーレスとしては先発なことから、アクセサリなどの資産、中古の豊富さなどに強みがあることが魅力。

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マウントアダプターについて

今回のFマウントでも、定番品のK&F Concept製品を使用しています。

今回のAi NIKKOR 50mm F1.8Sは絞りリングのあるレンズのため、単純にマウントを変換するだけの価格が安いタイプを使用しています。

↓こちらのアダプターでは絞りリングのないGタイプレンズも使用可能です。マウントアダプターで使用したいレンズに合わせて購入するとよいでしょう。

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New NIKKOR 55mm F1.2 まとめ

New NIKKOR 55mm F1.2の作例と解説をみてきました。

このように、New NIKKOR 55mm F1.2はオールドレンズならではの魅力を存分に楽しめる大口径レンズです。
オールドレンズとしては買いやすい価格ながら、ニッコールならではのつくりのよさも所有欲を満たしてくれるでしょう。

ぜひあなたも、New NIKKOR 55mm F1.2のボケを体感してみませんか?
当店の中古在庫もぜひご覧ください。

オールドレンズ撮り比べ、次回はCONTAX G用のレンズ、Carl Zeiss Planar T* 45mm F2を取り上げます。

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著者紹介: 雨樹 一期(Ichigo Amaki)

フィルムカメラ・トイカメラの多重露光などで作品撮りの傍ら、大阪・東京を中心に全国でフィルムカメラワークショップを開催。
2024年9月8日ラジオ番組【編集長 稲垣吾郎】(文化放送)に出演するなど、精力的に活躍中。 その他、カメラの個人レッスン、ペット・家族の撮影をしています。 基本、娘と猫と珈琲とカレーに生かされてます。

HP : 雨樹一期写真事務所
blog : フィルム寫眞手帖

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