Leica(ライカ)IIIf/バルナックライカの実質的完成形
バルナックライカのLeica IIIf(ライカIIIf)。
これから中古でバルナックライカを入手するならぜひおすすめしたいカメラです。
バルナックライカとは、ライカがM型ライカに移行する前に製造していた35mmレンジファインダーカメラのこと。
そもそもこのバルナックライカこそ35mmフィルムカメラの元祖と呼べる存在。
バルナックライカを使うことでカメラの進歩の歴史を身をもって体感することができるでしょう。
ライカIIIfはバルナックライカにフラッシュ同調機構を追加した機種。
その他の機構も完成の域に達しているので、良好な操作感と快調な動作で、カメラという精密機械を扱う楽しみを存分に味わうことができますよ。
完成度の面から、中古のバルナックライカのなかでも、もっとも信頼して使えるといえるでしょう。
この記事ではバルナックライカのなかでもライカIIIfにはどんな魅力があるのか、中古フィルムカメラ専門店サンライズカメラのスタッフが紹介します。
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バルナックライカについては、こちらの新しい記事でより詳しく、各機種、使い方、購入のポイントを解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
目次
ライカIIIf
バルナックライカとは。
そしてライカIIIfとはいったいどんな機種なのでしょうか。
バルナックライカを中古で手に入れるときに役立つ知識を紹介します。
バルナックライカ
バルナックライカとは、ライカを製造するエルンスト・ライツ(Ernst Leitz)の技術者、オスカー・バルナックが考案したカメラのこと。
のちのライカに通じることになるウル・ライカ(Ur Leica)が生み出されたのは1913年とも1914年ともいわれています。
特長は映画用の35mmフィルムを転用したこと。
当時すでにコダックの120フィルムを始めとするロールフィルムは普及していましたが、映画用フィルムは画面サイズが小さすぎ、写真撮影には適さないと思われていました。
じつはライカ以前にも映画用の35mmフィルムを写真に流用した製品は存在していたのですが、あくまでも特殊な小型カメラや、多くの枚数が撮影できる旅行用カメラといった、マイナーな位置づけのものでした。
しかし、ライカでは高解像度を誇るレンズを搭載することで、フィルムから印画紙に拡大焼付けしても鑑賞に耐えうる画質を実現したのです。
また、ライカの発売時には引き伸ばし機をはじめ、さまざまなアクセサリーをシステムとして提供。
これがきっかけで、35mmフィルムの普及がはじまります。
第二次世界大戦後には一般ユーザーへの需要が120フィルムなどのロールフィルムと逆転。
カメラのデジタル化が一気に進む21世紀初頭まで、35mmフィルムカメラはカメラの主流となっていったのです。
最初に市販されたライカ、ライカA型は1925年に発売。
1932年には連動距離計を搭載したライカII型が送り出され、レンジファインダーカメラの基本形が完成しました。
その後、スローシャッターの搭載、当初の板金ボディからライカIIIcでダイキャスト製ボディに移行するなど、バルナックライカは着実に進歩していきました。
ライカIIIfの特長とスペック
形式 | 機械式レンジファインダーカメラ |
シャッター速度 | B、1秒〜1/1000秒 機械式 2軸回転式横走り布幕フォーカルプレーンシャッター |
露出計 | なし |
ファインダー | 2眼式(フレーミング用とピント合わせ用の窓が別) |
レンズマウント | ライカスクリューマウント(L39マウント、旧Lマウント) |
巻き上げ | ノブ式 |
巻き戻し | ノブ式 |
製造年 | 1950〜1957年 |
ライカIIIfは1950年に発売された、バルナックライカにフラッシュ同調機構を搭載したモデル。
生産は1957年まで行われました。
性能的にはそれまでのバルナックライカと基本的に同様。
シャッター速度はB、1秒〜1/1000秒で、1/25以上の高速シャッターと、それより遅いスローシャッターでシャッターダイヤルが分かれています。
シャッター速度は現在のカメラの倍数系列とは異なる「大陸系列」なのも、他のバルナックライカと同様です。
(大陸系列ではシャッター速度が、B-1s-1/2s-1/5s-1/10s-1/15s-1/25s-1/50s-1/100s-1/200s-1/500s-1/1000sというように変化していきます)
レンズはライカスクリューマウント(L39マウント、以前の通称Lマウント)のものが距離計連動で使用可能。
ライカスクリューマウントのレンズは古今東西多彩な種類があるため、さまざまな中古レンズを味わうことができますよ。
フィルムの装填も、バルナックライカ共通の底蓋を外して行う形式です。
フィルムの先端をカットして入れることとなります。
ライカIIIfのフラッシュ同調機構
ライカIIIfの特長はフラッシュ同調が行えること。
当時はフォーカルプレーンシャッターでフラッシュを同調させるための統一規格が存在しなかったため、使用するフラッシュの種類に合わせて、シャッターダイヤルと同軸に設置されているダイヤルで、「コンタクトナンバー」を選択する形式となっています。
当時はフラッシュといっても電気式のストロボではなく化学的な燃焼の光を用いる閃光電球(フラッシュバルブ)が主流で、フラッシュバルブにより燃焼時間が異なったため、このような機構が必要となったのです。
実際のところ、いまライカIIIfを使う場合、フラッシュ撮影を行う理由はあまりありません。
むしろいま、ライカIIIfを中古で手に入れて使う理由は、その機械的完成度こそが最大のメリットだと思われます。
ブラックシンクロとレッドシンクロ
ライカIIIfは前期型のブラックシンクロと、後期型のレッドシンクロに大別できます。
その違いはシャッター同調速度とコンタクトナンバー。
ブラックシンクロはコンタクトナンバーが黒色で、レッドシンクロはコンタクトナンバーが赤色で記されていることからその名がつきました。
ブラックシンクロとレッドシンクロではシャッター速度も微妙に異なり、
ブラックシンクロ:1s-1/2s-1/5s-1/10s-1/15s-1/25s-1/50s-1/75s-1/100s-1/200s-1/500s-1/1000s
レッドシンクロ:1s-1/2s-1/5s-1/10s-1/15s-1/20s-1/30s-1/40s-1/60s-1/100s-1/200s-1/500s-1/1000s
となります。
中古を探す際には好みで選ぶとよいでしょう。
フラッシュ同調機構が採用された理由
ライカIIIfにフラッシュ同調機構が内蔵された最大の理由。
それが、アメリカ市場がフラッシュを求めていたためです。
第二次世界大戦後のアメリカ市場がカメラにもっとも求めた「新機能」がフラッシュでした。
ところがバルナックライカには標準でフラッシュ同調機能がありません。
第二次世界大戦後、戦争で疲弊したヨーロッパと異なりアメリカは最大の需要国でした。
そのためライツとしても無視することはできず、それまでのライカIIIcからシンクロ機能を売りにしたIIIfに移行することとなったのです。
完成度の高いバルナックライカ
さまざまな中古バルナックライカの中でもIIIfは、製造年代の関係もあり品質や状態のよい個体が多いです。
前機種のライカIIIcには第二次大戦中の製造のため品質が明らかに低下している個体もありますが、IIIfは戦後復興が進んだ時期に製造されたため、「明らかにメッキの質が悪い」といった心配はありません。
シャッター機構にはボールベアリングも標準で用いられています。
状態、品質ともにすぐれたバルナックライカが中古で欲しい方は、まずはIIIfから探してみるとよいでしょう。
このIIIfのあとにはバルナックライカの最終機、IIIgも生産されましたが、こちらは他のバルナックライカとは一風変わった外観になってしまっており、またマニアックなため中古価格も高めです。
そのためIIIfはいわゆる普通のバルナックライカの外観のカメラが欲しい方にもおすすめです。
[leicab]
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中古でバルナックライカを手に入れるなら
それでは、中古でバルナックライカ、とくにIIIfを手に入れるなら、どんなところに気をつけたらよいのでしょうか。
まず他の中古カメラにも共通しますが、低速から高速までシャッターの確認、各部動作、そしてファインダーの見えなどをチェックするのは当然です。
さらに、これは他のレンジファインダーにも共通しますが、シャッター幕の状態をチェックしましょう。
バルナックライカの場合、中古の価値が高いので中古店でもしっかりチェックしていると思いますが、シャッター幕のピンホールはとくに確認したほうがよいでしょう。
(布幕シャッターのレンジファインダーは、キャップを外したままレンズを太陽に向けると、シャッター幕が焼けてピンホールが生じてしまうことがあります)
余裕があったら気を配りたいのが合わせる中古レンズ。
ライカIIIfは戦後のモデルのため、中古のライカレンズを買うなら戦後のものを購入するのが一番似合いますよ。
バルナックライカで使えるおすすめ用品
露出計のないフィルムカメラの使用にあたっては、アクセサリーシューに取り付けられる露出計を使用するのがおすすめです。 中国製の小型クリップオン露出計としては以下のものが。Leica IIIfの関連記事
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またこちらの記事ではLeica IIIfで撮影した作例を紹介しています。
ぜひご覧ください。
1台目のバルナックライカはIIIfがおすすめ
このように、バルナックライカを最初に中古で買うならIIIfがおすすめです。
状態も仕上げもよいので、古きよきドイツが生み出した精密科学製品のクオリティを、存分に味わうことができますよ。
さらに、バルナックライカはM型ライカよりも一般的に中古価格も安いので、気軽にライカを始めることが可能です。
ぜひあなたも、バルナックライカを中古で手に入れて、小型カメラの源流を感じてみてくださいね。
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更新履歴
2021年4月12日
バルナックライカの歴史についての部分
バルナックライカ以前にも35mmフィルムを使用したスチルカメラは存在していたこと
バルナックライカの登場がすぐに35mmフィルムを一般的な存在にしたのではなく、大衆機まで35mmが普及したのは第二次世界大戦後であることを追記
スペック表
(ミラーレス用の)Lマウント登場以前の執筆で、「Lマウント」と記載されていたため「ライカスクリューマウント(L39マウント、旧Lマウント)」に修正
フラッシュ同調機能が装備された理由(米国市場)について追記
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