[オールドレンズ撮り比べ5] Leitz Elmar 5cm F3.5で目の前の景色を切り取ろう!
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F9
こんにちは、雨樹一期です。ミラーレス一眼カメラとフィルムカメラでオールドレンズの撮り比べ、第5段。今回使用するレンズは、Leitz(ライツ) Elmar 5cm F3.5です。
名前を見てもピンとこないかもしれませんが、Elmar 5cm F3.5はライカの標準レンズ。
Elmarは「エルマー」と読みます。
目次
Elmar 5cm F3.5をフィルムカメラとミラーレス一眼カメラで撮り比べ
今回撮り比べに使うElmar(エルマー) 5cm F3.5とLeica IIIfは、どちらも「クラシックカメラらしいクラシックカメラ」「オールドレンズらしいオールドレンズ」ですね。
中古カメラの王道といってもいいかもしれません。
ブレッソンのように撮ってみたい!
Elmar 5cm F3.5はレンズ部分が沈胴式(レンズがボディーに引っ込む)なので非常にコンパクト。
見た目もとても格好いいです。
今回使用したフィルムカメラは当然ライカ。その中でも、名機で(いまから見ると)癖の強い元祖フィルムカメラでもある、「バルナックライカ」です。
型はバルナックライカの完成形とも言われている、「ライカIIIf」。品質も安定しているので、中古で購入するならもっともオススメの型になります。
バルナックライカはM型ライカより中古価格がずっと安いのもいいですね。
アンリ・カルティエ=ブレッソン(20世紀を代表する写真家)になった気分でストリートを撮ってみるだけでも、ワクワクするカメラです。
その勢いもあって、今回の作例ではモノクロフィルムを使いました(笑)。
TOPの猫が二匹並んだ作例写真はバルナックライカで、下の写真はミラーレス一眼カメラで撮影しましたが、僕は圧倒的に上が好きですね。
絞り優先/ISO 200/F3.5/露出補正−2
Leica Elmar 5cm F3.5 + SONY α7で撮影した作例
それではミラーレス一眼カメラで撮影した作例から見ていきます。
使用したボディはSONY(ソニー) α7(初代、ILCE-7)。
中古の価格もかなりこなれてきたフルサイズ機です。
マウントアダプターは定番中の定番、K&F Conceptブランドのものを使用しました。
モノクロで撮影した作例
ミラーレス一眼カメラでの作例ですが、とりあえず、勢いそのままに「クリエイティブスタイル」を「白黒」に設定して撮影。
「カラーで撮って後から変換すればいいじゃない」と思う方はいるかもしれませんが、カラーで撮る時とモノクロで撮る時では、見るもの(被写体)も変わりますし、より光と影を意識します。せっかくだからこだわりたいですよね。
絞り優先/ISO 160/F69/露出補正−1 2/3
露出補正はモノクロの時は-1か2くらいで暗めに撮影しています。単純にその方が黒の締まりが良くてかっこいいからです。
Elmar(エルマー) 5cm F3.5はもともとは1920年代のレンズですが、F9で撮影するとピントはくっきりですね。
絞り優先/ISO 160/F6.3/露出補正−1 2/3
違うアングルから撮影した作例。手すりと葉っぱのボケのお陰でこちらの方が奥行きが出ますね。
カラーで撮影した作例
絞り優先/ISO 200/F3.5/露出補正+2
カラーでも作例を撮ってみました。露出補正はモノクロとは逆にプラスにして明るく撮っています。
コントラストは強すぎることもなく、トーンも落ち着いているのでゆるふわにも使えそうです。
絞り優先/ISO 200/F3.5/露出補正+2
さすがに逆光には弱いですが、フレアやゴーストはオールドレンズの醍醐味とも言えます。
Elmar(エルマー) 5cm F3.5というライカレンズの定番でこういう攻めた撮影ができるなんて、ミラーレス一眼カメラさまさまですね。
絞り優先/ISO 200/F3.5/露出補正−1 2/3
ゴーストの入る位置を探って撮影した作例。猫の顔はちゃんと写っていませんが、ここはゴースト優先の構図。
画面を切り裂くような光、すごいですね。
絞り優先/ISO 500/F6.5/露出補正−1
カラーでもこの通り、右に輪っかが。って、さすがにここまでド逆光だとたいていのレンズはゴーストが入りそうですけどね。
カラーとモノクロを撮り比べ(ミラーレス一眼カメラ)
絞り優先/ISO 500/F6.5/露出補正+1
絞り優先/ISO 500/F6.5/露出補正−1
カラーとモノクロでの撮り比べです。白黒の猫ちゃんの足元写真ですが、モノクロの方が味がありますよね。
手前の草など、全部を見せない(黒で隠す)というのもモノクロならではの表現法です。
絞り優先/ISO 400/F9/露出補正−1 1/3
絞り優先/ISO 400/F3.5/露出補正−1 2/3
レンズの最短距離は1mですが、クローズアップフィルターを使って接写も出来ます。
これで撮影の幅はグンと広がりますが、あえてレンズのスペックのみで勝負するのもアリですよね。
撮ってみて、「なんかこの撮り方違うなー」って思いました。
Elmar(エルマー) 5cm F3.5にクローズアップレンズをつけるのはさすがに遊びすぎかも(笑)。
もちろん、無理にレンズのスペックにこだわる必要もありませんが(笑)。
絞り優先/ISO 200/F3.5/露出補正−1 2/3
必ずしも今回の作例のように「白黒モード」に設定して撮って出しする必要はありませんが、Elmar 5cm F3.5はぜひモノクロにも挑戦してみて欲しいレンズですね。
現代風の撮り方もできるレンズ
絞り優先/ISO 500/F9/露出補正+1
一応書いておきますが、ちゃんと、しっかりと、キレイに撮ることも出来ます。
このあたり、Elmar 5cm F3.5はさすがライカ用の純正レンズだと感じます。
絞り優先/ISO 500/F6.3/露出補正−1 2/3
SONY α7の力もあるとは思いますが、レンズの古さは全く感じさせませんね。
今回の作例はミラーレス一眼カメラで先に撮りました。
「Leitz Elmar 5cm F3.5」+「ミラーレス一眼カメラのモノクロ」いいなーと思っていたら、フィルムはさらに良かったです。
と言うことで、続いてフィルムでの作例です。
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バルナックライカで撮影した作例(フィルムカメラ)
Elmar 5cm F3.5 + バルナックライカ(Leica IIIf)で撮影した作例です。
作例を撮り比べてみて気づいたのですが、フィルムのほうがグレー部分の階調が滑らかです。「黒!」じゃなくて、濃い黒といった感じ。
そのあたりぜひご注目ください。
モノクロフィルム KOSMO FOTOで撮影
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F3.5
KOSMO FOTOというモノクロフィルムを使用して、大阪のディープスポットで撮影しました。
最近流行りのオシャレ・レトロな街ではなく、本当に昭和なまま残っているような場所ですが、バルナックライカとの相性はめっちゃ良かったです。
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F9
気分的に、作例の撮影場所はカメラの発売された年代に合わせたくなります。だからミラーレス一眼カメラよりも、フィルムを持って行きたいんですよね。
ここはフルサイズのデジタル一眼じゃないぞ、と。
魅力や特徴をあれだこれだと言うよりも、たくさん写真を見るのが一番伝わるかと思います。
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F9
なぜか室外機に惹かれます(笑)。
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F6.3
路地裏に入っていくと、外に放置された謎の金庫を発見。四角いものを撮ってしまう性分なのか。
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F9
ハレーション(フレアやゴーストと同じ意味)はノスタルジーを増長してくれますね。
今回の作例は猫ばっかり撮ってしまいましたが、最近カメラ持って歩いていたら猫がどんどん現れるんです(笑)。
この日はほんの数時間で20匹くらいの出会いがありました。
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F9
出ました、ハート柄の猫ちゃん。なぜそこにおさまっているんだ?
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F6.3
こちらは眉毛が『八』ですね。どちらの作例もモノクロで撮影したので、白黒柄はより目立ちます。
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F9
手焼きプリントすればもっと深みが出ると思いますが、グラデーションやザラ付き、ピントの甘さはデジタルよりも味わいがあります。
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F9
明暗差が激しい場所もいいですね。
Elmar 5cm F3.5というレンズ的には逆光は苦手だと思いますが、屋根の表現しきれなくなっている部分がまた良かったりします。
ISO 100・シャッタースピード 1/100・F4.5
手持ちだったので、手ブレしないギリギリのシャッタースピードで撮影。
※1/60秒より遅いとほぼ手ブレしてしまいます。
ISO 100・シャッタースピード 1/75・F4.5
こちらはかなりアンダーになってしまいました。
三脚を付けて撮るのではなく、もっと感覚的に撮っていくカメラだと思うので、これも許容範囲かな、と。
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F6.3
なんだか本当に猫ばっかし撮ってしまいましたが、「バルナックライカ」+「モノクロ」は少しはまっちゃいそうです。
絞りに関してはF9までをメインに使ってみました。
いつものコラムとは違いボケのない写真が並びましたが、花などをキレイにボカす為に作られたレンズではないですからね。
Elmar 5cm F3.5は、ピントはカリカリ過ぎず、甘過ぎず。あー、これぞオールドレンズだなーと。
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Leica IIIfとElmar 5cm F3.5について解説
ここからは、雨樹さんが語るLeica IIIfの魅力と、中古フィルムカメラとオールドレンズのサンライズカメラ スタッフによるElmar 5cm F3.5の解説です。
バルナックライカ(ライカIIIf)の魅力(雨樹)
バルナックライカというフィルムカメラの癖や個性は、今のデジタル時代からは欠点かもしれません。でも機械イジリが好きな人にとってはこんな面白いカメラは他にありません。
描写も気に入りましたが、フィルムの装填から巻き取り、そして撮影までを思う存分楽しめるカメラです。
外観もめっちゃ格好いいですし、写真をやっている方は「ライカ」への憧れもあるだろうし(笑)、持っているだけでもちょっとテンションが上がります。
フィルムカメラというのは基本的に操作が個性的なものが多いです。その中でも「バルナックライカ」はかなりの変わり者かもしれません。
特にフィルムの入れ方は特殊。how to が必須です。
使い方はこちらの記事で解説しています。
ぜひご覧ください。
Leica IIIfについて
Leica IIIf(ライカIIIf)は、いわゆるバルナックライカと呼ばれるカメラのひとつです。
第二次大戦中に登場し、ボディがダイキャスト化されたライカIIIcをもとに、フラッシュ同調機構を追加。
ほかにも(IIIcの一部に使われていた)シャッターにボールベアリングが使われ、製造途中からはセルフタイマーも内蔵されるようになりました。
ですが、そういった機構やスペックよりもライカIIIfの魅力として重要なのが、仕上げの良さ、つくりの良さだといえるでしょう。
戦後の混乱も落ち着き、ドイツの工業製品がもっとも爛熟した時期に製造されたライカIIIf。
バルナックライカの次機種IIIgはM型ライカからのフィードバックが行われていることもあり、IIIfこそが伝統的なスタイルのバルナックライカの到達点であるといっても過言ではありません。
バルナックライカは中古価格も手頃
バルナックライカは、ライカM3をはじめとするM型ライカに比べて中古の価格が廉価なのもうれしいところ。
もちろんファインダーの見えは比べるべくもないですが、ドイツ製の「精密機器」としての魅力はかわりありません。
こんな精密な機械がこんな安い価格で買えるなんて、じつは本当にありえないことなのです。
シャッター幕の交換をはじめオーバーホールが行われたものでもかなり安い価格で購入可能なので、ライカというカメラにまずは触れてみたい方は、バルナックから入門するのもよいかもしれないですね。
Elmar 5cm F3.5について
マウント | L39マウント Mマウント |
構成 | 3群4枚 |
メーカー | Ernst Leitz(エルンスト・ライツ) |
Elmar 5cm F3.5について簡単に解説します。
Elmar 5cm F3.5(エルマー 5cm F3.5)は、ライカの標準レンズです。
そもそもは1925年からバルナックライカに採用、最後はM型ライカ用のMマウントのものに至るまで、ライカの標準レンズの代表格でした。
Elmar 5cm F3.5のレンズ構成はテッサー型と同じ3群4枚ですが、絞りの位置が違うというのがよく知られているところです。
製造期間が長いだけあってライカの純正レンズとしては中古価格は低め。
かといって安物レンズというわけではなく、至ってシンプル、それでいて味わい深い写りという末永く楽しめるレンズです。
ただし状態によって価格はかなり上下するので、購入時には光学的な状態をきちんとチェックしましょう。
(それでいて、旧エルマーのように中古で珍重されるマニアックなアイテムもあるのが、ライカのレンズの奥深さを物語っています)
この文章を書いているスタッフもプライベートで使用していたことがありますが、雨樹さんの作例でも触れられているように、手頃な値段の1930年代のものでさえ80年以上経っているのに、撮影条件によっては現代のレンズと遜色なく撮影できることに、本当に驚いたのでした。
バルナックライカに沈胴すると本当に薄くなる、とても小さなF3.5のレンズ。
写真というのはこれでいいのだと感じるレンズ。
それがElmar 5cm F3.5なのです。
ぜひ中古で探してみませんか?
ミラーレス一眼カメラでは沈胴は「NG」
この記事の前半ではミラーレス一眼カメラのSONY α7(初代)を使用しましたが、気をつけたいのが「沈胴」です。
Elmar 5cm F3.5はレンズをボディの中に収納する沈胴という機構がありますが、ミラーレス一眼カメラにマウントアダプターで取り付けたときに沈胴してしまうと、カメラの中、最悪の場合デジタルカメラのシャッターやイメージセンサーを傷つけてしまう可能性があります。
もしマウントアダプターで使用するときは、レンズの鏡筒に、パーマセルテープなどの跡の残らないテープを貼って、沈胴できないようにするとよいでしょう。
↓いわゆるパーマセルテープ(シュアテープ)は高いので、スタッフの私はこちらのmt fotoシリーズを使用しています。
使用感はパーマセルテープとほぼ同じです。
今回使用したミラーレス一眼カメラについて
このシリーズでは、中古価格が最も安いフルサイズのミラーレス一眼カメラ、SONY α7を使用しています。
中古で廉価なフルサイズのミラーレス機が欲しい方にはSONY α7が。まとめ
ISO 100・シャッタースピード 1/200・F6.3
とまぁ、ブレッソンの構図には遠く及ばないし、そこまで意識をして撮っていませんが、バルナックライカにモノクロ入れて昭和な街を撮っただけで僕は大満足なのです。
絞りもシャッタースピードもいっそ固定して、思いつくがままにシャッターを切る。
Elmar 5cm F3.5とバルナックライカを手にすると、そんな「撮り方」をしてみたくなりました。
写真なんてものは、正しく撮る必要もなく、絶対こうしないとダメという縛りもありません。ただ、楽しければいいんですよね。
もちろん上手くなるには技術も知識も必要ですが、そこから自分なりに写真とどう向き合っていくか、こだわっていくかです。
これからも引き続きコラムを書かせていただきますが、思わず撮影に行きたくなるような、写真って楽しいんだなーと感じて頂ければ幸いです。
次回の記事はこちら
オールドレンズ撮り比べ、次回はオリンパスOM用のオールドレンズ、G.ZUIKO AUTO-S 50mmF1.4 & ZUIKO AUTO-W 35mm F2をお届けします。
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