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カール・ツァイス・イエナ銘レンズ11選 東ドイツ製で廉価に楽しむツァイスの魅力

MC Flektogon 35mm F2.4

今回は、東ドイツのツァイスである、カール・イエナ・イエナの中古レンズについて紹介します。

いま人気が高まっている中古のオールドレンズ。
そのなかでも、皆が憧れるレンズといえば、やはりツァイスの銘玉なのではないでしょうか。

ツァイスの美しい描写を楽しみたい。
でもツァイスのレンズは高い……。

実はそんなときに、とても廉価に、上質な描写を味わうことができる選択肢があるんです。
それが、東ドイツの「カール・ツァイス・イエナ」(Carl Zeiss Jena)のレンズ

第二次世界大戦後に東西に別れたカール・ツァイス。
ハッセルブラッドやローライで知られているのは西独のツァイスですが、実は東ドイツのツァイスも、西側に負けず劣らずの名玉揃い。

しかも、西側ツァイスのレンズに比べて中古をとても安価に手に入れることができますよ。

東ドイツのカール・ツァイス・イエナのレンズの特徴として、35mm一眼レフカメラ用レンズがとても多く存在していることも挙げられます。
M42スクリューマウントのオールドレンズも数多いので、マウントアダプターを介してミラーレス一眼で撮影するのも容易。

ツァイスの銘レンズを手軽に味わうなら、東ドイツのカール・ツァイス・イエナ。
今回は、中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが、カール・ツァイス・イエナのオールドレンズ・中古レンズについて紹介します。

フィルムカメラもデジカメ・レンズも最高値の買取を約束します!

カール・ツァイス・イエナの中古レンズ

カール・ツァイス・イエナとは、東西に分断された冷戦時代のドイツのうち、東ドイツ側のツァイスのこと。

いったい、カール・ツァイス・イエナの中古レンズとはどのようなものなのでしょうか。
また、どんな魅力があるのでしょうか。

カール・ツァイス・イエナとは

カール・ツァイス・イエナのレンズが付いたプラクチカ一眼レフ

カール・ツァイス・イエナ(Carl Zeiss Jena)とは、東ドイツのカール・ツァイスのことです。

戦前から世界を代表する光学機器メーカーだったカール・ツァイス。

第二次世界大戦でドイツが敗戦することにより、ドイツは東西に分裂。
カール・ツァイスも東西に分割される憂き目に遭います。

そもそも、戦前にはカール・ツァイスの本拠地は、のちの東独に位置するイエナ(Jena)にありました。
戦後、ドイツの技術の争奪競争に乗り出したアメリカとソ連ですが、アメリカがカール・ツァイスの技術者など人的資源を西側へ逃がそうとしたのに対して、ソ連は地の利を活かし、イエナの工場をそのまま手中に収めます。

ソ連が手にしたイエナのカール・ツァイス工場。
これが、戦後、共産圏の光学産業の礎となります。

ここで学んだ技術をソ連に持ち帰って生まれたのが、コンタックスコピーの「キエフ」(Kiev)。
そして旧ソ連のレンズの元にもなりました。

参考記事

旧ソ連製おすすめオールドレンズ・中古レンズの魅力とは?

いっぽう東ドイツ国内においても、イエナのカール・ツァイスが東側で最高峰の光学機器メーカーとして発展していくこととなるのです。

カール・ツァイス・イエナという名前

Biotar 75mm F1.5

しかし、なぜ、わざわざカール・ツァイス・「イエナ」という、地名のついた名前を名乗らなければならなかったのでしょうか。

そこには商標の問題がありました。

東西に分裂したカール・ツァイスの間で、どちらがカール・ツァイスという名前を名乗るかという争いが起きたのです。

裁判の結果として、西側のツァイスがカール・ツァイス(Carl Zeiss)を、東側のツァイスはカール・ツァイス・イエナ(Carl Zeiss Jena)を名乗ることとなりました。
東側が譲歩した形となりましたが、カール・ツァイス・イエナも源流は西側と同じ。
けっして質的に劣るものではないのが重要なところです。

裁判中には互いにカール・ツァイスを名乗れずに、東側ツァイスはaus Jenaなど、西側ツァイスはZeiss Optonなどと刻印した製品を残しています。

35mm一眼レフカメラに強いカール・ツァイス・イエナ

プラクチカスーパーTL1000

さて、そんなカール・ツァイス・イエナ(Carl Zeiss Jena)には大きな特徴があります。

それが、35mm一眼レフに非常に強いということです。

戦後すぐの1950年代、西ドイツや日本では、主力のカメラはレンジファインダーでした。

いっぽう、東ドイツでは世界に先駆けて一眼レフカメラを開発
例えば、ペンタプリズムを始めて採用し、世界初の正立正像ファインダーを実現した一眼レフカメラ、コンタックスS(Contax S)は、1948年、東ドイツのツァイス・イコンの製品です。
なおコンタックスSはM42マウントを採用した初めてのカメラでもあります。

東ドイツで発展を始めた初期の一眼レフカメラに、カール・ツァイス・イエナは積極的に新レンズを供給。
とくに1950年代には、一眼レフカメラ用レンズの技術で世界トップクラスの実力を誇ることとなったのです。

なお余談ですが、カメラファンの間でカール・ツァイス・イエナは、アルファベット表記の「Carl Zeiss Jena」を略して、「CZJ」と表記されることがあります。

カール・ツァイス・イエナのレンズの中古は安価

MC Pancolar 80/1.8

さて、源流をたどると本物のツァイス、そして戦後には技術で世界をリードしたカール・ツァイス・イエナ。

そんなレンズたちですが、中古価格は比較的安価です。

その理由は、「旧共産圏のレンズ」だから。
旧共産圏では、労働者だれもが購入できるカメラ・レンズを目指し、開発・製造が進められました。
(実際に購入できるかは別として)

そのため、ハッセルブラッド用に代表される極度の高級品となった西側ツァイスと異なり、東側のツァイスは安く高性能なレンズを数多く作るようになったのです

とはいえ、光学設計や描写の質については、方向性こそ違っても、けっして西独ツァイスに劣らないもの。

東ドイツのカール・ツァイス・イエナのレンズは、「普段着のツァイス」とも呼べる存在なのです。

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カール・ツァイス・イエナの中古レンズの種類(レンズマウント)

さて、そんなカール・ツァイス・イエナの中古レンズにはどんな種類があるのでしょうか?
主にレンズマウントによって、いくつかに大別することができます。

M42マウント

MC Pancolar 80mm F1.8

1960年代以前、フィルム一眼レフカメラのユニバーサルマウントだったM42マウント
カール・ツァイス・イエナのレンズは、初期のM42マウントを支えた存在で、非常に多くの種類が存在しています。

フィルムカメラでの使用も、マウントアダプターでの使用も非常に容易です。

ただし、1960〜1970年代のプラクチカ用M42マウントレンズには、マウント面に電気接点があるものがあり、引っかかって外れなくなるなどのトラブルには注意が必要です。

Carl Zeiss Jena Pancolar 50mm F1.8
電気接点(金色の部分)のあるMC Pancolar 50mm F1.8

M42マウントのマウントアダプター

Exakta(エキザクタ/エクサクタ)マウント

Biotar 75mm F1.5

Exaktaマウント(エキザクタマウント/エクサクタマウント)は、M42マウントと並ぶかつてのユニバーサルマウント。

カール・ツァイス・イエナのレンズでも、M42マウントと並び数が多いものです。

エキザクタマウントとは、一眼レフのエキザクタや、日本製のトプコンの一眼レフなどが採用した、小口径のバヨネットマウントのこと。
かつては対応ボディが少なかったため人気が低かったのですが、ミラーレス一眼でマウントアダプターを介しての利用が可能となったため人気が急上昇しています。

ただし、レンズ脇にレリーズボタンを備えるレンズの一部に、マウントアダプターやボディと干渉して取り付けが難しい個体が存在するので注意が必要です。

Exaktaマウントのマウントアダプター

プラクチカBマウント

Prakticar 50mm F1.8 プラクチカB用

プラクチカBマウント(プラクチカバヨネットマウント)は、1980年代以降、東ドイツの一眼レフ、プラクチカが採用した独自のバヨネットマウントです。

Prakticar 50mm F1.8 プラクチカB用

プラクチカBマウントのレンズのうち一部の製造を、カール・ツァイス・イエナが担当しています。

かつてはデジタルでの使用が困難で中古は捨て値だったのですが、マウントアダプターを介してミラーレス一眼で使用できるようになったため、こちらも人気が上昇しています。

マイナーなレンズマウントながら、マウントアダプターも入手可能です。

プラクチカBマウントのマウントアダプター

ペンタコンシックスマウント

クセノタール80/2.8(ペンタコン)
(上記画像は非カール・ツァイス・イエナ製の、シュナイダー クセノタール80mm F2.8)

ここまで紹介してきたのは35mmフィルムカメラ向けのレンズマウントでしたが、こちらは6×6判の中判一眼レフカメラ、ペンタコンシックス向けのマウントです。

ペンタコンシックスなどの中判一眼レフカメラで使うだけでなく、マウントアダプターを介してイメージサークルの中央部だけを贅沢に使うことも可能です。

詳しくはペンタコンシックスの記事も参考にしてくださいね。

Pentacon Six(ペンタコンシックス)シリーズ/ペンタコンシックスマウントの中判カメラたち 6×6判で手軽にツァイスを味わおう

ペンタコンシックスマウントのマウントアダプター

※上記はミラーレス一眼カメラ用ではなく、一眼レフのNikon Fマウントへ変換するマウントアダプターです(マウントアダプターを多段で使用してミラーレス一眼カメラに取り付けることは可能)。

カール・ツァイス・イエナの中古レンズの楽しみ方

さて、そんなカール・ツァイス・イエナの中古レンズを楽しむにはどんな方法がおすすめなのでしょうか。

1.フィルムカメラで楽しむ

中古フィルムカメラ専門店サンライズカメラのスタッフとしてぜひおすすめしたいのが、フィルムカメラを使ってフィルムで撮影するという本来の楽しみ方。

とくに、M42マウントのカール・ツァイス・イエナ製レンズなら、数多くのM42マウント中古ボディを母艦とすることが可能です。

M42マウントのボディとしては、数が多く整備された個体も多いペンタックスSPか、モダンな設計のベッサフレックスTMがおすすめです。

PENTAX(ペンタックス)SP・SPOTMATIC/60年代フィルム一眼レフカメラのスタンダード

Voigtlander Bessaflex TM(フォクトレンダー・ベッサフレックス)/21世紀に蘇ったペンタックスSP

2.マウントアダプターで楽しむ

カール・ツァイス・イエナ製レンズの人気急上昇の秘密。

それはやはり、ミラーレス一眼でマウントアダプターを介して使えるようになったからでしょう。

M42マウントは以前から使うことができましたが、エキザクタマウントやプラクチカBマウントのレンズは、ミラーレス一眼が登場するまでは、事実上使用することはできませんでした。

これまで使うことのできなかったレンズを楽しめる。
マウントアダプターを使うことで、カール・ツァイス・イエナの名レンズに新しい命を吹き込むことができるのです。

マウントアダプターについて詳しくはこちらもご覧ください

ミラーレスカメラとオールドレンズの使い方 取り付けと本体の設定方法徹底解説

フィルムで使うもよし、デジタルで使うもよし。
ぜひあなた好みのカール・ツァイス・イエナ製レンズを見つけてみてくださいね。

[oldlens]

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カール・ツァイス・イエナ 銘レンズ11選

さて、それではここから、カール・ツァイス・イエナのぜひ使ってみたい中古レンズについて紹介していきます。

ツァイスの血筋を受け継いだ直系のレンズには、どんな魅力があるのでしょうか?

1.Pancolar 50mm F1.8

Carl Zeiss Jena Pancolar 50mm F1.8

東独カール・ツァイス・イエナのオールドレンズのなかでも最も知られているものといえば。

それがこの、Pancolar(パンカラー)50mm F1.8だといえるのではないでしょうか。

50mm F1.8という、非常に標準的なスペックからわかるとおり、東ドイツ製一眼レフの「プラクチカ」各機種の標準レンズとして大量に生産されました。

入手性がとても良いレンズのため、ともすれば中古カメラファンからはスルーされてしまいがちな存在ですが、しかし、カール・ツァイス・イエナのレンズを語るとすれば、このレンズから紹介しない訳にはいかないでしょう。

Pancolar 50mm F1.8には、前身として1959年に登場した50mm F2が存在します。
それをF1.8に明るく改良したものが、ここで紹介するF1.8モデル。
F2よりもF1.8のほうが多く存在しているのは、同じM42マウントの国産レンズ、Super Takumarとも似ています。

Pancolarをレンズ構成の面から見ると、構成自体はオーソドックスなダブルガウスタイプ。
すなわち、西側のツァイスでいえばPlanar(プラナー)に相当する存在であることになります。

Carl Zeiss Jena Pancolar 50mm F1.8

西側ツァイスのPlanarを買おうとすればそれなりの金額を払わなければならないのに対し、Pancolarは名前が違うだけでとても廉価に購入可能。
それでいて描写も非常に上質なのが凄いところです。

描写については比較的落ち着いたもの。
ヴィヴィッドさを求めるよりも、空気感あふれる静謐な描写を得意とするといえるかもしれません。

ではここから、各世代について簡単に解説します。

Pancolar 50mm F1.8前期(ゼブラ)

Pancolar 50mm F1.8前期(ゼブラ)

レンズ構成 4群6枚
マウント M42・Exakta
備考 アトムレンズ

1965年から1970年にかけて製造されたのが、「ゼブラ」と呼ばれる前期モデル。
その名の通り、黒と銀色の縞々模様の鏡筒が特徴です。

この前期モデルは、性能向上のため、放射性物質を含んだトリウムガラスを使っていた、いわゆるアトムレンズであることでも知られています。
(放射性物質といっても健康には影響がないので安心してください)

アトムレンズの常として、このPancolar 50mm F1.8は多くの個体が光学系に黄変を起こしています。

かつては、カラーフィルムで撮影すると色が黄色に転んでしまったため、ほとんど中古で値段がつかなかった時代もありました。

ですが、いまならデジタルカメラで自動的にホワイトバランスを補正できるため、問題なく使用することが可能です。

Pancolar 50mm F1.8前期(ゼブラ)

中古オールドレンズ本来の、フィルムカメラでの使用には向きませんが、ミラーレス一眼でぜひ味わってみたいレンズ。
それがPancolarの前期型なのです。

Pancolar 50mm F1.8 後期(ゼブラ)

レンズ構成 5群6枚
マウント M42・Exakta
備考 非アトムレンズ

同じゼブラ鏡筒で光学系が変わったものが、1970年から1975年にかけて製造された後期モデルです。

上記の前期型で採用したアトムレンズに、黄変などの問題があることが判明したため、レンズ構成を変更し、トリウムガラスを廃しました

実際のところは不明ですが、微妙に解像力などの性能も上がっているとの噂です。

MC Pancolar 50mm F1.8(黒鏡筒)

レンズ構成 5群6枚
マウント M42
備考 マルチコート

1975年から1981年にかけて製造されたのが、MC Pancolar 50mm F1.8

カール・ツァイス・イエナのM42マウント標準レンズとしてほぼ完成に近づいたものといえるかもしれません。

レンズ構成はゼブラの後期型と同一。
変更点は、マルチコートになったことと、鏡筒のデザインが変更されたこととなります。

その後、カール・ツァイス・イエナがプラクチカの一眼レフカメラに供給するレンズは、プラクチカバヨネットマウント(プラクチカBマウント)用のMC Plakticarへ移行していくこととなります。

2.Biotar 58mm F2

Biotar 58mm F2

レンズ構成 4群6枚
マウント M42・Exakta
備考 プリセット絞り

さて、次に紹介するのは、次代が前後しますが、上述したPancolarのご先祖様にあたるレンズ。

Biotar(ビオター) 58mm F2です。

Biotarとは、東独のカール・ツァイス・イエナがダブルガウス型のレンズに付けたブランドネーム。
すなわちBiotarもまた、西側でいうPlanarに相当する名前ということになります。

Biotar 58mm F2の発祥は、戦前、1930年代まで遡るもの。
M42マウントやエキザクタマウントのモデルは、Pancolarと交代する直前の1959年まで製造されました。

改良が重ねられともすれば優等生的になってしまったPancolarに比べると、こちらのBiotar 58mm F2は、いかにもオールドレンズらしい、とても癖のある描写が楽しめるレンズ。

ピントの合った箇所の立体感や質感はとても上質。
それとは対称的なことに、ボケの部分はまさに「暴れる」ような描写となります。

高級レンズならではの緻密な描写と、そこからは想像もつかないような暴れる玉ボケ
そのギャップを楽しむことができる、ぜひ開放で使ってみたいレンズだといえるのではないでしょうか。

なお、このレンズは旧ソ連でコピーされ「Helios-44」として大量に生産されています。

Helios-44M-4

値段も安いので、Biotarゆずりの描写を楽しむならこちらもおすすめです。

Helios-44 58mm F2 安価なM42マウント旧ソ連製オールドレンズの代表格

[oldlens]

3.MC Prakticar 50mm F1.8(初期型)

レンズ構成 5群6枚
マウント プラクチカB
備考 CZJ製は前期のみ

さて、ご先祖様の次に紹介するのはPancolarの子孫となるレンズ。

それが、MC Prakticar 50mm F1.8です。

MC Prakticar 50mm F1.8は、プラクチカバヨネットマウント(プラクチカBマウント)の標準レンズ
基本的にはPancolar 50mm F1.8の血脈を受け継いでおり、カール・ツァイス・イエナ製標準レンズの末裔ということになります。

ただし、1980年代前半でカール・ツァイス・イエナによる設計は終わり、途中でメイヤー(Meyer)系の設計に切り替わってしまうので注意が必要です。

Prakticar 50mm F1.8 プラクチカB用

↑この画像は後期のもの(最短撮影距離が長い)

カール・ツァイス・イエナ製のレンズは、まさにプラナーと見まごうほどの高性能。
描写の味も精密さも兼ね備えた銘レンズのひとつだといえるでしょう。

このプラクチカBマウントのレンズは、ミラーレス一眼が普及するまで完全に無視されてきた存在でした。
同じ東ドイツのレンズでも、M42マウントのレンズが以前から珍重されてきたのとは大きな違いです。
理由はやはり、ミラーレス一眼が登場するまで、マウントアダプターを介しての使用が難しかったため。

フィルムで撮影しようにも、プラクチカBマウントのフィルム一眼レフカメラは中古でも入手が困難で、もし手に入っても壊れていることが多いのでどうしようもなかったのです。

ミラーレス一眼とマウントアダプタで息を吹き返したプラクチカBマウントのレンズ。
東ドイツ製レンズの最終進化系をぜひ楽しんでみませんか?

4.Tessar 50mm F2.8

CZJテッサー ゼブラ

レンズ構成 3群4枚
マウント M42・Exakta
備考

カール・ツァイスのレンズの代表。
いや、それどころか、すべての写真レンズの代表かもしれないレンズ。

それがテッサー(Tessar)

もちろん、東ドイツのカール・ツァイス・イエナもテッサーを作っていました。

マウントはM42とExakta。

テッサーということはレンズ構成は至って普通の3群4枚。
描写についても、「鷹の目」テッサーという渾名を受け継いだ、とても切れ味鋭いものです。

ここで紹介する50mm F2.8というスペックのテッサーが、カール・ツァイス・イエナで作り始められたのは1950年代半ばのこと。

幾度ものモデルチェンジが行われており、
1950年代は銀鏡筒。
1960年代初期は黒鏡筒。
1960年代後半から黒と銀のゼブラ

となり、
1970年代には上述したPancolar同様の黒鏡筒にリニューアルされます。

CZJテッサー ゼブラ

とはいえ、変わるのは外観だけで、中身についてはそう大きく変化していないのがカール・ツァイス・イエナのテッサーの特徴です。
1970年代にマルチコート化が進んだカール・ツァイス・イエナのレンズですが、このテッサー50mm F2.8については、廉価版ということもあり、最後までモノコートを貫いたのでした

テッサーだけに描写の面で間違いは一切ありません。
単純なレンズ構成のため値段も比較的安め。

CZJテッサー ゼブラ

カール・ツァイス・イエナの中古レンズのなかでも、気軽に楽しめる選択肢だといえます。

中古で購入する場合、ゼブラ外装のものがとくに人気が高いかもしれません。

5.Flektogon 35mm F2.8

Flektogon 35mm F2.8

Flektogon(フレクトゴン)35mm F2.8

カール・ツァイス・イエナの一眼レフ用広角レンズのなかでも最も有名なものです。

レンズ構成は、一眼レフ用広角レンズの標準的設計ともいえるレトロフォーカスタイプ。

というよりも、このFlektogon 35mm F2.8は、初期のレトロフォーカスレンズの代表的存在で、むしろ、このレンズを模倣することにより、初期の一眼レフ用広角レンズが発展した、という事情があります。

登場は1952年のこと。
初期の一眼レフ用広角レンズとしては良好に収差、とくにコマフレアが補正されており、画質は周辺部まで良好です。

もちろん、まだまだレトロフォーカスレンズが発展途上だった時代の製品だったこともあり、今の目から見ると、描写は味があるともいえるもの。
実用面で十分に写真が撮れることと、オールドレンズならではのオールドレンズならではの懐かしみのある描写を同時に楽しめるという点で、まさにオールドレンズらしいオールドレンズといえるかもしれません。

なお、このフレクトゴンのコピー製品として、旧ソ連のMIR-1(ミール1) 37mm F2.8が存在しています。

Flektogon 35mm F2.8には、大きく分けて3世代が存在します。
それぞれの特徴について見ていきましょう。

Flektogon 35mm F2.8 初代(銀鏡筒)

レンズ構成 5群6枚
マウント M42・Exakta
備考 プリセット絞り

初期のモデルは銀色のアルミ鏡筒。
絞りはプリセット絞りです。

この時点である程度レンズ構成は完成しており、5群6枚の構成は最後まで共通となります。

レトロな外装が魅力のモデルだといえるでしょう。

この初期モデルのみ、最短撮影距離は0.36mと、とくに目立つところのない数値となっています。

Flektogon 35mm F2.8 二代目(ゼブラ)

Flektogon 35mm F2.8

レンズ構成 5群6枚
マウント M42・Exakta
備考

1960年代の二代目フレクトゴンは、鏡筒は同時代の他レンズ同様ゼブラになっています。

この二代目以降の特徴が最短撮影距離。
なんと、0.18mまで寄ることが可能なのです。

マクロレンズ以外で、これほどまでに寄れるレンズというのはなかなか存在しません。

Flektogon 35mm F2.8 三代目(黒鏡筒)

レンズ構成 5群6枚
マウント M42・Exakta
備考

黒鏡筒となったフレクトゴンです。

こちらも最短撮影距離は0.18m。

1970年代以降のモデルとなります。

6.MC Flektogon 35mm F2.4

MC Flektogon 35mm F2.4

レンズ構成 4群6枚
マウント M42
備考 マルチコート

上で紹介したFlektogon 35mm F2.8より微妙〜に明るい。
それがMC Flektogon 35mm F2.4です。

特徴はF値の明るさ、そしてマルチコート化。

1972年に登場し、1990年代まで製造が続いた、非常に息の長いモデルとなります。

描写については年代のこともあり現代的。
はっきりいって、とても高性能です。

MC Flektogon 35mm F2.4

いわゆるオールドレンズとしての懐かしい描写を楽しむというよりも、日本製レンズとも西独製とも違う、東ドイツならではの描写、というものをメインで味わえる中古レンズだといえるかもしれません。

MC Flektogon 35mm F2.4

なお同一構成で名前だけ変わった「MC Plakticar 35mm F2.4」がプラクチカBマウント用に存在しています。

[oldlens]

7.Flektogon 25mm F4

Flektogon 25mm F4

レンズ構成 6群7枚
マウント M42・Exakta
備考

上述したFlektogon 35mm F2.8のように、一眼レフ用レトロフォーカス型広角レンズをリードしていた1950年代のカール・ツァイス・イエナ。

「広角に強い」カール・ツァイス・イエナが次に送り出した更に広角のレンズが、25mm F4でした。

登場は1959年のこと。
もちろん、当時の一眼レフ用レンズとしてはもっとも広角の部類です。

Flektogon 25mm F4

このような先進的設計を可能としたのがコンピュータの導入。
東側の旧共産圏というと、今の目から見ると西側に技術で劣っていたようなイメージがありますが、1950年代後半、とくに光学機器の分野では、東側の技術が世界をリードしていたのです。

また、現在では少なくなった25mmという焦点距離ですが、レンジファインダーカメラの広角レンズとしては比較的メジャーな数値でした。
あえて、カール・ツァイス・イエナが24mmではなく25mmという焦点距離を設定したというところも、時代が感じられて面白いところです。

カール・ツァイス・イエナの35mm用フレクトゴンは、35mm・25mm・20mmが存在していますが、製造数はこの25mm F4が一番少なくなっています。

中古でもし手に入れたら、カメラファンの間で自慢できる希少レンズだといえるでしょう。

Flektogon 25mm F4

8.Flektogon 20mm F4

Flektogon 20mm F4

レンズ構成 6群10枚
マウント M42・Exakta
備考

カール・ツァイス・イエナが1961年に送り出した超広角レンズが、Flektogon(フレクトゴン)20mm F4
フレクトゴン三兄弟の末弟です。

いまでは、一眼レフで「普通に」使える超広角レンズは当たり前の存在。
ですが1960年代初頭の時点では、まだそんなレンズはどこにもありませんでした

Flektogon 20mm F4

今でも有名な、ニコンのニッコール21mm F4のように、一眼レフカメラで超広角レンズを使いたければ、レンジファインダーカメラ用の設計のレンズを、ミラーアップして取り付けるしかなかったのです。

そんな時代に、このFlektogon 20mm F4は「ファインダーで使える」一眼レフ用超広角レンズとして非常にエポックメイキングな存在だったのです。

描写については、どちらかといえば柔らかめなもの。
現代のキレキレの超広角レンズとは明らかに異なる、優しい絵作りを楽しめます。

Flektogon 20mm F4

外観はゼブラのものが有名。
後継として、マルチコート化された、MC Flektogon 20mm F2.8も黒鏡筒で存在しています。

まさに新時代を切り拓いたレンズ。
カメラの歴史をオールドレンズで体感してみませんか?

9.Biotar 75mm F1.5

Biotar 75mm F1.5

レンズ構成 4群6枚
マウント M42・Exakta
備考 プリセット絞り

中古レンズの中でも常に人気が高い中望遠。

もちろん、東ドイツのカール・ツァイス・イエナのレンズにも、中望遠のレンズはラインナップされています。

その初代が、Biotar 75mm F1.5
戦前から続く伝統あるスペックのレンズです。

このBiotarという名前が表しているように、レンズ構成はダブルガウスタイプ。
次の節で紹介するMC Pancolar 80mm F1.8に至るまで、カール・ツァイス・イエナの中望遠のレンズ構成は、4群6枚という非常にオーソドックスなものとなっています。

Biotar 75mm F1.5

Biotar 75mm F1.5の描写はとても癖があるもの。
上で紹介した、同じBiotarの58mm F2と同様、開放近くでは暴れるような玉ボケが出現し、コントラストも低下しがち

もちろん天下のツァイスだけあって、ある程度絞れば解像度が急激に向上しますが、むしろオールドレンズとして、開放を乗りこなす楽しみを味わうのが本流といえる存在かもしれません。

Biotar 75mm F1.5

[oldlens]

10.Pancolar 75mm F1.4

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レンズ構成 4群6枚
マウント M42・Exakta
備考 非常に希少

上記のBiotarを受け継いだ、ダブルガウスタイプの中望遠。

75mmという、35mm一眼レフとしては比較的珍しい焦点距離のレンズが、Pancolar 75mm F1.4です。

Biotarに比べると描写は改善され、実用性は高まっていますが、それと同時にオールドレンズならではの懐かしさあふれる質感を楽しめるのも魅力です。

このレンズは非常に生産量が少なく(500本以下)、中古では高値で取引されていることでも知られています。
もし出会うことがあったら、ぜひ確保してみたいレンズだといえるでしょう。

11.MC Pancolar 80mm F1.8

MC Pancolar 80mm F1.8

レンズ構成 4群6枚
マウント M42・Exakta
備考 マルチコート

Pancolar 80mm F1.8
上で紹介した75mmの改良版で、レンズ構成はダブルガウスタイプ。

中望遠としては明るさが控えめで設計に無理がないため、安定した描写とボケ味を楽しむことが可能。
マルチコートなのも安定性の秘訣かもしれません。

MC Pancolar 80mm F1.8

ほぼ現代レンズと遜色ないともいえますが、それでもなお、レンズの味の独特さを保っているのは東ドイツ製ならでは。
線の細すぎない、ディテールを趣き深く描き出してくれるような描写が魅力です。

カール・ツァイス・イエナのレンズとしては数が少なく値段は高めですが、東ドイツ製中望遠レンズの進化系として、ぜひ中古で手に入れてみたいものだといえるでしょう。

MC Pancolar 80mm F1.8

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このように多彩な種類が存在するカール・ツァイス・イエナの中古レンズ。

廉価にツァイスが味わえる標準、レンズの歴史を追体験できる広角、マニアックな中望遠。
それぞれに、西側ツァイスとはまた異なる魅力が目白押し。

マウントアダプターで使うときも、独特の外観から一目でCZJのレンズだとわかるのもうれしいところです。

ぜひカール・ツァイス・イエナの中古レンズで、オールドレンズの魅力を味わってくださいね!

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更新履歴

2022年8月25日

画像が抜けていた箇所に一部画像を追加
Prakticar 50mm F1.8のバリエーションの一部、誤りの可能性があった箇所を削除

著者紹介: サンライズカメラ

サンライズカメラは、いまでは数少なくなってしまった「フィルムカメラ専門店」の使命として、フィルムカメラに関する情報を公開し続けています。 「こんな記事が読みたい」というご要望がありましたら、お気軽にFacebook、Twitter、お問い合わせフォームなどからご連絡ください。カメラ愛好家のみなさん、これからフィルムを始めたいみなさんとお話できることを楽しみに待っています。

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