[フィルムカメラぶらり撮影散歩14] Nikon S3がもっと好きになる!2本のNikkorレンズ撮影記
こんにちは、雨樹一期(あまきいちご)です。
今回はレンジファインダーのフィルムカメラ紹介です。作例をご紹介するのは、1958年に発売されたNikon S3。
ニコンのレンジファインダーでは、ニコンSPが有名ですが、それを簡略化したようなカメラがニコンS3になります。
ってのは今調べて分かっただけで、「ニコンSP」の存在も知らなかったです(笑)。
僕自身はカメラの歴史には疎いので、そこは少し割愛して、魅力と作例中心のコラムとなります。
今回のコラムでは、レンズを2本使用しました。標準レンズのNikkor-S 5cm F1.4と、望遠レンズのNikkor-Q 13.5cm F3.5になります。
どちらも個性的で魅力的でした。
【フィルムカメラぶらり撮影散歩 前回の記事はこちら】
目次
2024年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ。一度は手にしたい逸品!
FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
Nikon S3の魅力
まずは、今回作例を撮影したNikon S3がどんなカメラなのか紹介です。
ステキ過ぎる外観
まずは、このクラシックな外観。ステキ過ぎませんか?描写や機能面はさて置き、めちゃめちゃ好みです。
描写の魅力を伝えるコラムですので、さて置いてはいけないのですが(笑)、フィルムカメラ選びって描写と機能に続いて、「見た目」が重要ではないでしょうか?
僕の中でNikon S3はその点を余裕でクリアーしています。
操作はフルマニュアル
Nikon S3はフルマニュアルのカメラになります。露出計も内臓されていないため、初心者の方には手軽さこそありませんが、露出の勉強には最適。

Silberra Color 160で撮影
Nikon S3の発売は60年以上前。僕が生まれる前からあるカメラ。描写には荒削りな部分こそありますが、充分しっかり撮れることに驚きです。
そしてこの(いまからみると)荒削りな部分が、オールドレンズと同じく魅力なんですよね。
たくさん作例も載せているので、ぜひ最後までご覧ください。
使用する上での注意点
さて。今回2本のレンズで撮影しましたが、レンズを交換するとき注意したい点があります。
それがファインダー。
Nikon S3のファインダーは、レンズを交換して焦点距離が変わっても、ファインダー内から見える景色は同じなのです。
言い方を変えると、135mmのレンズを使っているのに、ファインダーから見えるのは50mmのレンズの世界。
たとえば、ポートレートを何も考えずに撮ります。全身写真は顔が見切れて、バストアップで撮った写真は顔面のドアップになっちゃいます。
実際には、ファインダー内に大(3.5cm)・中(5cm)・小(10.5cm)のフレームがあるので、それを目安にすればいいのですが、いまのカメラではレンズを交換すれば、当たり前のようにファインダーの視野は変わりますからね。
ついつい、いつもの感覚で撮影して、はじめの数枚は失敗しました。
Nikon S3の紹介記事
以下の記事でNikon S3について詳しく解説しています。
Nikon S3+ Nikkor-S 5cm F1.4の作例
まずは標準レンズでの作例をご紹介します。の前に、この「見た目」。ほんと、めっちゃ好きです。飾ってるだけでも絵になりますね。Nikon S3にはNikkor-S 5cm F1.4を付けて持ち歩きたいです。
Nikkor-S 5cm F1.4の作例では2種類のカラーネガフィルム「Kodak Gold 200」と「Silberra Color 160」を使用しました。
存在感のあるボケ

Kodak Gold 200で撮影
まずは、一番お気に入りの写真から。
絞りは開放のF1.4です。玉ボケの雰囲気も良いですね。Nikkor-S 5cm F1.4は大人しいボケではなく、存在感のあるボケって感じ。

Kodak Gold 200で撮影
F1.4なので、被写界深度はかなり浅いですね。紫陽花の手前の花びらにだけピントが合っています。
レンジファインダーのカメラって僕がどちらかというと苦手。使い慣れていないというのもありますが、ピント外した写真がたくさんありました。
「Nikkor-S 5cm F1.4」の最短撮影距離は3.5フィートなので、約1mですね。あまり寄って撮ることはできません。
F1.4のボケは個性的

Kodak Gold 200で撮影
先ほど存在感のあるボケと書きましたが、この作例写真は四隅に向かってボケが走ってるような感じ。ぐるぐるボケとはまた違った個性的なボケですね。
好みにもよりますが、ボケの動きが背景を埋めてくれていますね。面白い。

Kodak Gold 200で撮影
こちらの作例も同じくボケが流れています。玉ボケや木漏れ日のような光がある方が面白いですね。

Kodak Gold 200で撮影
描写はふわっとしています。そしてしっとり。湿度を含んだような写真になります。「Leica Summicron 5cm F2」で撮ったとき(作例記事はこちら)も同じようなことを思いました。
1950〜60年頃のレンズの特徴なのでしょうか。
他にはない雰囲気ありますね。

Kodak Gold 200で撮影
光の影響なのか、人物がぽわっっーとしてます。

Kodak Gold 200で撮影
こちらの作例写真の方が分かりやすいですね。人物だけ明瞭度が低くなっているみたいで、不思議な感じ。

Silberra Color 160で撮影
いきなり場面が変わりますが、白い部分、明るい部分が飛んでいますね。

Silberra Color 160で撮影
いずれの作例も絞り開放で撮影していますが、それなりのシャープさはありますが、基本的には緩めですね。

Silberra Color 160で撮影
まさに、昭和に撮られた写真のよう。いまのパキパキのデジタルのレンズとは違います。
フィルムカメラやオールドレンズが好きな方からすると、Nikon S3+Nikkor-S 5cm F1.4は絶妙な性能です。

Silberra Color 160で撮影
コントラストが強いというよりも、明るい部分が飛びやすいです。
絞って撮影した作例

Silberra Color 160で撮影
少し絞って、F8で撮影。キュッと引き締まっているのが分かります。

Kodak Gold 200で撮影
フィルムスキャニングの性能もあがっているとはいえ、60年以上前からこういう写真が撮れていたことに驚きです。

Kodak Gold 200で撮影
以前作例を撮影したKonica C35のようなコンパクトフィルムカメラに比べると、さすがにシャープですね。

Silberra Color 160で撮影

Silberra Color 160で撮影

Silberra Color 160で撮影

Silberra Color 160で撮影
絞るとパリっとするけど、ある意味物足りないような(笑)。

Silberra Color 160で撮影
やっぱり開放でじゃんじゃん撮る方が個性が強く出て面白いですね。

Silberra Color 160で撮影
やっぱりレンジファインダーは、ピント合わせるのに時間がかかります。
開放でもピント位置はこんなにシャープ!

Silberra Color 160で撮影
だから僕と同じく不慣れな方は、まずは動かない被写体で練習するのがいいですね。
ジャスピンで撮れると、かなりシャープ!
Nikkor-S 5cm F1.4を、すばらしいレンズと感じた一枚です。

Silberra Color 160で撮影
距離が離れるほどピント合わせがシビアになるのでご注意を。

Silberra Color 160で撮影

Kodak Gold 200で撮影
まとめると、Nikkor-S 5cm F1.4のピントはまずまずシャープだけど、光の当たり方などによっては白飛びしたり、ふわっとした描写になります。
F5.6〜くらいで撮影するとカリッとしてきます。
だけど、開放のF1.4での撮影がオススメ!他にはない、流れるような独特のボケが面白いです。
Nikon S3 + Nikkor-Q 13.5cm F3.5の作例
続いては望遠レンズのNikkor-Q 13.5cm F3.5で撮影した作例です。
ルックスに関しては先ほどのNikon S3+Nikkor-S 5cm F1.4をつけたときと比べると、見劣りしちゃいますね。クラシック感はあるんだけど、Nikkor-S 5cm F1.4を付けていたい。
「見た目」的には、うーんって感じだけど(笑)、描写は好きでした。
ちなみに、Nikkor-Q 13.5cm F3.5はオールドレンズのコラムでもご紹介しました。合わせてご覧ください。
Nikkor-Q 13.5cm F3.5の作例では2種類のカラーネガフィルム「Kodak Gold 200」と「FUJICOLOR 100」を使用しました。
自然で静かなボケ

FUJICOLOR 100で撮影
さて。単純な描写力ですがなんとなく、Nikkor-S 5cm F1.4よりもNikkor-Q 13.5cm F3.5の方がいいような気もします。

FUJICOLOR 100で撮影
雰囲気もありますね。
先にオールドレンズのコラム用に、SONY α7で撮影していたのですが、ボケの雰囲気がいいんですよね。
望遠レンズということもありNikkor-S 5cm F1.4のボケとは別物です。
「Nikkor-Q 13.5cm F3.5」のボケはとても自然。安心感と安定感があります。

FUJICOLOR 100で撮影
描写もシャープなんですよね。SONY α7に装着して撮った写真と遜色がない気もします。

FUJICOLOR 100で撮影

FUJICOLOR 100で撮影
コントラストが強くて鮮やかってことはありませんが、落ち着いた雰囲気。
変な言い方ですが、静かな描写。

FUJICOLOR 100で撮影
とろっとしたボケがとても魅力的ですね。
ファインダーのフレームに注意

Kodak Gold 200で撮影
冒頭の注意点でも書いたのですが、焦点距離135mmのレンズを使っているのに、ファインダーから見えるのは50mmのレンズの世界です。
それを忘れて撮ると、こんな感じに。
ファインダー内に目安となるフレームがあるんですけどね。忘れちゃう。
※サンライズカメラ スタッフ注:今回のNikon S3には135mm用フレームはないため、本来は外付けファインダーを取り付けて使用することになります。内蔵フレームで撮る場合、多少アバウトになりますが105mm用を使うとよいでしょう。

FUJICOLOR 100で撮影
これもきっと、50mmとして撮っています。自分の撮り方の癖的には、この構図では撮らないんですよね。
でも、そんな写真が数枚あって、逆に少し面白かったです。

Kodak Gold 200で撮影
出来上がりを見ていいなと思ったのは、Nikkor-Q 13.5cm F3.5の写真。
主張しすぎない世界観があります。

Kodak Gold 200で撮影
これは露出を失敗しましたが、フィルムの失敗写真ってどこか味がありますよね。
絞って撮影するとこんな感じ

Kodak Gold 200で撮影
この作例はF8まで絞って撮った一枚。うん、まぁキレイに撮れてる。
けどやっぱり、古いレンズは開放で撮る方が面白いですよね。

FUJICOLOR 100で撮影
望遠レンズなので、距離を取る猫ちゃんを撮ることもできます。
ただ、遠くなるほどピント合わせはシビアですが。

FUJICOLOR 100で撮影
最後はフィルムの一枚目。光が当たって半分写ってませんが、これもフィルムの楽しさですね。

FUJICOLOR 100で撮影
いやー、やっぱりこのボケ感が好き。
Nikon S3を使ってみた感想
ずっと愛していけるカメラ
今回は2本のレンズで作例を撮り比べたので、レンズの感想が多めになってしまいましたが、Nikon S3は操作性がとてもよく、フィルムカメラを使い慣れている方なら、説明書がなくても使っていただけると思います。
適度な重量感が持ち手にフィット。Nikkor-S 5cm F1.4はコンパクトなレンズなので、カメラの前面が重たくなることもなく手によく馴染みます。
首から下げるよりもずっと手に持っていたいカメラです。
意外とこういう部分って大切で、ずっと愛していけるカメラって得てしてそういうものだったりしますよね。
ファインダーもクリアーで見やすいです。

Kodak Gold 200で撮影
レンズに関しては、どちらもボケが個性的。しかもそれが真逆なのでどちらも手に入れたくなります。
Nikkor-S 5cm F1.4は動きのあるボケ。
Nikkor-Q 13.5cm F3.5は静かなボケ。
絵作りがしやすいのはNikkor-S 5cm F1.4ですね。自然な柔らかさを求めるならNikkor-Q 13.5cm F3.5になります。
本体のみ購入して、Nikkor-Q 13.5cm F3.5だけを購入する方はあまりいないはず。
多くの方はNikkor-S 5cm F1.4のみで使用されるのだと思いますが、Nikkor-Q 13.5cm F3.5もぜひ試して頂きたい、魅力的なレンズです。
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Nikon S3と今回使用したレンズ 簡単な解説
ここからは、中古フィルムカメラとオールドレンズのサンライズカメラ スタッフが、今回作例を使用したNikon S3、Nikkor-S 5cm F1.4、Nikkor-Q 13.5cm F3.5について簡単に解説します。
Nikon S3
形式 | 機械式レンジファインダーカメラ |
シャッター | B、1秒〜1/1000秒 機械式 横走り布幕フォーカルプレーンシャッター (最終型はチタン幕) |
露出計 | なし |
ファインダー倍率 | 等倍(アルバダ式) |
ファインダー枠 | 35mm、50mm、105mm |
レンズマウント | ニコンSマウント |
巻き上げ | レバー式、1ストローク |
巻き戻し | クランク式 |
発売年 | 1958年、2000年(復刻版) |
Nikon S3は日本光学のレンズ交換式レンジファインダーカメラです。
もととなった機種は、1957年に登場した日本光学のレンジファインダーカメラの最高峰、Nikon SP。
Nikon SPは28mmから135mmまでのレンズに対応する高機能なファインダーを備えていましたが、今回作例を撮影したNikon S3は、主にファインダーを省略するなど廉価版としての立ち位置になっています。
Nikon SPの標準~望遠域のファインダーは採光式のブライトフレームを備えていますが、Nikon S3のフレームはアルバダ式。
とはいえ、もともとNikon S2で用いられていたファインダー光学系を受け継いでいるだけあって実用性は十分以上です。
Nikon SP同様シャッターダイヤルは1軸の不回転式。
レバー巻き上げのモダンな仕様と相まって、露出計がないことを除けばその後の時代のマニュアル操作のフィルムカメラ同様に使用可能です。
よく知られているように2000年に発売した復刻版も存在します(下の写真)。
中古フィルムカメラの価格が上昇している昨今ですが、復刻版のほうが中古価格はずっと高い印象があります。
実用機を探している方は、むしろ当時製造されたものを中古で探すのもおすすめかもしれないですね。
Nikon S3の関連記事
Nikkor-S 5cm F1.4
今回の作例に使用したNikkor-S 5cm F1.4はNikon SPやNikon S3のための標準レンズです。
構成自体はそれまでのニコンS系機種用の標準レンズ同様のゾナータイプ。
雨樹さんが作例の描写に感じた「昭和っぽさ」は、その後主流となったガウスタイプとの写りの違いゆえのものかもしれないですね。
さて、Nikon S3のボディはその後東京オリンピックに合わせて再生産されますが、その際には今回撮影したNikkor-S 「5cm」 F1.4ではなくNikkor-S 「50mm」 F1.4というレンズがセットになりました。
Nikkor-S 50mm F1.4はゾナータイプではなくガウスタイプ。
詳しくはニコン公式Webサイトのニッコール千夜一夜物語 第七十七夜(外部リンク)で詳しく解説されています。
Nikkor-Q 13.5cm F3.5
Nikkor-Q 13.5cm F3.5はNikon S系機種用の望遠レンズです。
135mmという焦点距離は、レンジファインダーカメラとしては精度の面でほぼ限界に近いといえるでしょう。
さて、雨樹さんの文章中にも注を入れましたが、Nikon SPなら問題ないのですが、Nikon S3には105mmまでしかフレームが内蔵されていません。
もしNikon S3で使用する場合、本来なら外付けファインダーを併用するのがおすすめ。
135mm用の外付けファインダーはあまり人気がないので、中古の価格も安いです。
(本レンズ自体も、レンジファインダーカメラ用の望遠レンズということもあり中古価格は低めです)
ただし外付けファインダーは撮影の機動性が損なわれてしまうので、いっそのこと105mmのフレームを利用して、多少アバウトでもよいから撮影してしまうのもよいかもしれないですね。
このNikkor-Q 13.5cm F3.5についてはミラーレス一眼カメラでの作例記事で詳しく解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
Nikon S3を使ってみませんか?
Nikon S3と2本のオールドレンズで撮影した作例をお届けしました。
Nikon S3は日本光学のカメラだけあって非常に良好なつくり、もちろんニッコールレンズの描写は今回の作例のように抜群です。
M形ライカほどには中古価格が上昇していないので、もしかするといまが狙い目かも?
ぜひあなたもNikon S3を使ってみませんか?
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