[オールドレンズ探訪記] 75年の歴史がここに。Canon SERENAR 5cm(50mm)F3.5(作例あり)
今回は、Canon(キヤノン)のレンジファインダーカメラ用沈胴レンズ、SERENAR(セレナー)5cm F3.5(50mm F3.5)+ミラーレス一眼カメラで撮影した作例をご紹介します!
この世に数えきれないほどの種類が存在するオールドレンズの中から、サンライズカメラがおすすめできるレンズを1本1本紹介していく、「オールドレンズ探訪記」と第したコーナー。
これまでに数々のオールドレンズを使ってきた雨樹一期さんと、まだまだ初心者な私いくたで、一緒に様々なオールドレンズで撮影をした作例をご紹介していきます。
なかなか出かけれらない今のご時世だからこそ、改めてじっくり試してみたいレンズを見つける手助けになれば嬉しいです^^
【オールドレンズ探訪記 前回の記事はこちら】
ぐるぐるボケで新しい表現を!Minolta(ミノルタ)SUPER ROKKOR 5cm F2(作例あり)【オールドレンズ探訪記】
目次
2024年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ。一度は手にしたい逸品!
FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
Canon(キヤノン)SERENAR 5cm F3.5(L39マウント)について
まずはSERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)がどんなオールドレンズなのか紹介します。
Canon(キヤノン)SERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)とは
今回ご紹介するのは、Canon(キヤノン)の自社製レンズの第1号と言われているSERENAR 5cm F3.5。発売はなんと1946年!!その時代を知らない私でも、時代を感じさせられる見事な佇まいです。
SERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)のスペック
マウント | 初期は独自のねじマウント 途中からL39マウント(ライカマウント) |
構成 | 3群4枚 |
最短撮影距離 | 1m |
重量 | 170g |
フィルター径 | 46mm |
発売時価格 | 9,800円(1946年10月のもの)[1]『クラシックカメラ専科 No.31 … Continue reading 参考:普及型ボディと合わせて3,900円(1945年12月頃のもの)[2]『クラシックカメラ専科 No.31 … Continue reading |
発売 | 1946年[3]『クラシックカメラ専科 No.31 … Continue reading[4]本記事ではレンズの外観的特徴から、「キヤノンカメラミュージアム」のI型、『クラシックカメラ専科 No.31』のII型と判断した。 |
メーカー | 精機光学/キヤノン |
参考文献:「Serenar 50mm f/3.5 I – キヤノンカメラミュージアム」(2022年6月21日閲覧)
『クラシックカメラ専科 No.31 キヤノンハンドブック』1994年、朝日ソノラマ、p.114
SERENAR 5cm F3.5の外観
オールドレンズブームの先頭を走る、バルナックライカのマウント、L39マウントのオールドレンズ。
人気な有名どころ以外にも、掘り出しものレンズはたくさん!
今回撮影したレンズ、Canon(キヤノン)SERENAR 5cm F3.5もその一つ。
L39マウントのオールドレンズはフランジバックが短いので、ミラーレス一眼カメラに取り付けると、一眼レフカメラ用のレンズに比べてずっとコンパクトです。
L39マウントとマウントアダプターについて
L39マウントはスクリューマウントといって、マウント自体がネジになっているので、取り付けや取り外しのときには、レンズ自体をくるくると回すというとても単純な構造になっています。
SONY(ソニー)α7Rに取り付けた感じ、タコさん口みたいで不恰好ですが笑、こんな単純な装着方法でいいのか!と少し疑ってしまうくらいアナログな取り付け方です。
マウントアダプターは、K&F ConceptさんのL39マウント→SONY Eマウントのものを使用しました。
価格と精度のバランスが取れていておすすめです。
Canon(キヤノン)SERENAR 5cm F3.5の作例紹介
それでは、SERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)+ミラーレス一眼カメラで撮影した作例をご紹介していきますっ!
オールドレンズライクな写り
わお。全体的にもやぁ〜っと曇っていますね。これぞオールドレンズライクといったかんじでしょうか。
コントラストが低めで、色彩も薄め。明るめの露出で撮影すると少し味気なくなってしまう感じがしたので、いつもよりはアンダー露出で撮影してみました。
↓最初に撮影して、薄い!と思って少しだけ露出を下げて撮影したのがこちら↓
ボケの様子
画面の真ん中の玉ボケはとってもきれいなまん丸に。一方画面の端へいけばいくほど楕円系になっています。
オレンジや黄色、黄緑色の色の違いも激しくないので、強い色彩の被写体を写しても柔らかい印象に仕上がります。
普通に撮影するとどぎつい色味も、ふんわり柔らかくなりますね!
味のある描写
どこか哀愁漂いつつも、温かみのある描写。なかなか個性的で、味のある表現ができます。
撮影Tips!虹を入れてみよう!
Canon(キヤノン)SERENAR 5cm F3.5の面白いポイント、虹の直線が出没するんです!
この虹の帯は「ゴースト」といって、レンズに強い光を当てたときに反射してできるものです。
ゴーストを出現させる方法はとっても簡単。
- 逆光で撮る
- 太陽を画面の端っこあたりに差し込ませる(もしくは太陽が入るか入らないかくらいのところで調整)
初心者の方でも、ミラーレス一眼カメラで撮影をしている方なら、画面を確認しながらゴーストの位置を調整できます^^
ちょっとずらすと半円の虹が左下に発生しました。盛大にフレアが出て画面全体がぼやぁっと白く。これもまた良き良き。
フレアやゴーストは、光をどこに・どれくらい・どの角度から、レンズに差し込ませるかで変幻自在!
表現の正解は己のみぞ知る。ぜひ遊び心を持ってオールドレンズならではの描写をたのしんでみてくださいね^^
詳しくは下記記事でも撮影のコツを紹介していますので、ぜひチェックしてみてください!
Canon(キヤノン)SERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)で撮影した感想
ライカL39マウントを採用したレンズ、Canon(キヤノン)SERENAR 5cm F3.5。
ライカの純正レンズやカメラに手を出そうと思うとどうしても高額になってしまいますが、非純正としてこのレンズのような、より中古が手頃な価格帯で手に入れるというのもありではないでしょうか。
他にも初心者の方にもおすすめできるL39マウント(ライカマウント)のレンズはたくさんありますので、下記記事もぜひチェックしてみてください!
2024年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
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どこでも持ち歩ける相棒です。
Canon(キヤノン)SERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)簡単な解説
ここからは、今回作例を撮影したSERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)について、中古フィルムカメラとオールドレンズのサンライズカメラ スタッフが簡単に解説します。
Canon(キヤノン)SERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)
マウント | 初期は独自のねじマウント 途中からL39マウント(ライカマウント) |
構成 | 3群4枚 |
最短撮影距離 | 1m |
重量 | 170g |
フィルター径 | 46mm |
発売時価格 | 9,800円(1946年10月のもの)[5]『クラシックカメラ専科 No.31 … Continue reading 参考:普及型ボディと合わせて3,900円(1945年12月頃のもの)[6]『クラシックカメラ専科 No.31 … Continue reading |
発売 | 1946年[7]『クラシックカメラ専科 No.31 … Continue reading[8]本記事ではレンズの外観的特徴から、「キヤノンカメラミュージアム」のI型、『クラシックカメラ専科 No.31』のII型と判断した。 |
メーカー | 精機光学/キヤノン |
参考文献:「Serenar 50mm f/3.5 I – キヤノンカメラミュージアム」(2022年6月21日閲覧)
『クラシックカメラ専科 No.31 キヤノンハンドブック』1994年、朝日ソノラマ、p.114
今回作例をご紹介したレンズ、SERENAR(セレナー)5cm F3.5(50mm F3.5)は、精機光学/キヤノンが戦後、自社のレンジファインダーカメラ用に製造した標準レンズです。
3群4枚のいわゆるテッサー型で沈胴式と、バルナックライカの影響下にあるカメラの50mmレンズとしてはオーソドックスなもの。
外観は、絞り環が銘板の後ろにあり、少し内側に引っ込んでいるのが特徴的です。
戦後のレンジファインダーキヤノンは最初の頃、L39マウント(ライカマウント)を採用しようとしたものの、独自のスクリューマウントになってしまいました。
このSERENAR 5cm F3.5も、はじめは独自のマウントで製造され、途中からL39マウントに変更されます。
さて、戦前に精機光学が製造したハンザキヤノンには、日本光学のニッコールレンズが装着されていたことが知られています。
ですが、終戦までは光学兵器を製造していた日本光学が民需に転換し、精機光学/キヤノンは日本光学のレンズから離れることとなりました。
『クラシックカメラ専科 No.31 キヤノンハンドブック』のp.133によれば、日本光学からのレンズ供給は1948年の春が最後になったとのことです。
そこで、民生用としては初の自社製レンズとして、3群4枚テッサー型のSERENAR 5cm F3.5が生まれることとなったのでした。
その後、キヤノンのレンジファインダーカメラ用レンズは独自に発展、わずか数年で、同時代のニッコールよりも、ライツのレンズよりも写るといわれることもある、SERENAR 50mm F1.8(Canon Lens 50mm F1.8 I型)を生み出すに至るのです。
SERENAR(セレナー)という名称
戦後しばらくの間、精機光学/キヤノンの自社製レンズにはSERENAR(セレナー)という名称が与えられていました。
しかしながら、当時の顧客は進駐軍、そして海外。
となったときに、社名の精機光学、カメラ名のCanon(キヤノン)、レンズ名のSERENAR(セレナー)がすべて異なるのはわかりづらく不都合であるということで、1947年、社名を「キヤノンカメラ」に[9]「キヤノンの歴史 1933-1961 | キヤノングローバル」、追って1950年代前半にはレンズもCanon Lensへと統一されることになったのでした。
SERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)を中古で買うなら
Canonのレンジファインダーカメラ用レンズというと、もっと年代の新しい1950年代後半のものは硝材にクモリが生じてしまっているものが多くみられますが、今回の作例撮影に使用した中古も、残念ながらそこまで状態はよくなかったようです。
経年変化で状態があまりよくない中古も多いので、価格が多少上がってしまっても、光学系の状態を第一に選ぶとよいでしょう。
また、Canonのレンジファインダーカメラ用レンズは、メジャーなメーカーであることもあり、中古では性能に比べて低めの価格で取引されている印象があります。
上述したように、同時代にはCanon Lens 50mm F1.8が他の国産レンズやライツのレンズよりも高性能であると評されていたにもかかわらずです。
だからこそ逆に、Canonのレンジファインダーカメラ用レンズはお買い得な中古レンズであるということができるのではないでしょうか。
もっと明るいSERENARは珍重されて中古価格が上昇しているものもあるようですが、SERENAR 5cm F3.5はいまだにそこまで価格が上がっていません。
しっかりとメンテナンスしてあげて、ぜひあなたのライカマウントのカメラやミラーレス一眼カメラで使ってみませんか?
今回使用したミラーレス一眼カメラについて
今回も、ミラーレス一眼カメラのボディはSONY α7Rを使用しました。
中古価格が手頃かつ、ローパスレス機なのも魅力なボディですね。
触れるのが遅くなりましたが、今回撮影に使用したSERENAR 5cm F3.5のような沈胴レンズをマウントアダプターで取り付ける際には、誤って沈胴してマウント内を傷つけないように、跡が残らないテープ等を使って、沈胴できないようにするのがおすすめです。
※ただし今回のSERENAR 5cm F3.5のようにメッキの状態が悪いものについては、あえてそれを行わないのも手かもしれません……。
さて、ほかにもオールドレンズを取り付けて楽しむのにおすすめなボディとしては――
中古で廉価なフルサイズのミラーレス機が欲しい方にはSONY α7が。SERENAR 5cm F3.5(50mm F3.5)まとめ
今回はCanonの歴史を感じるオールドレンズ、SERENAR 5cm F3.5+ミラーレス一眼カメラで撮影した作例をご紹介しました。
ライツのレンズやニッコールに比べると軽んじられがちで中古価格が安いものも多い精機光学/キヤノンのL39マウントレンズですが、当然ながら負けず劣らずの魅力を持っています。
あえてライカにSERENARやCanon Lensを付けるのも「粋」かもしれませんね。
オールドレンズ探訪記 次の記事はこちら
次回は雨樹一期さんの執筆で、M型ライカの標準レンズ、ELMAR-M 50mm F2.8(黒鏡筒の新しいもの)+ミラーレス一眼カメラで撮影した作例をお届けします。
ぜひご覧ください。
[オールドレンズ探訪記] Leica(ライカ) ELMAR-M 50mm F2.8のキレ味と発色の良さに惚れた(作例・撮影Tipsあり)
2024年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ。一度は手にしたい逸品!
FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
脚注
↑1, ↑3, ↑5, ↑7 | 『クラシックカメラ専科 No.31 キヤノンハンドブック』1994年、朝日ソノラマ、p.114では、1946年10月にSII型標準レンズとして発売したものをII型としている。一方、「キヤノンカメラミュージアム」では1946年1月発売のものをI型、1952年8月発売のものをII型としている。 |
---|---|
↑2, ↑6 | 『クラシックカメラ専科 No.31 キヤノンハンドブック』1994年、朝日ソノラマ、p.114では、1945年12月頃に「普及型」と合わせて販売されたものをI型としている。 |
↑4, ↑8 | 本記事ではレンズの外観的特徴から、「キヤノンカメラミュージアム」のI型、『クラシックカメラ専科 No.31』のII型と判断した。 |
↑9 | 「キヤノンの歴史 1933-1961 | キヤノングローバル」 |
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