Canon(キヤノン)EOS 3/フラッグシップの高性能を先取りした軽快なAFフィルム一眼レフ
今回は、中古カメラのなかから、Canonのオートフォーカスフィルム一眼レフカメラ、EOS 3について解説します。
現代のデジタル一眼レフカメラにまで続くCanon EOSシリーズ。
高速かつ高精度なオートフォーカスを武器に、1990年代、フィルムカメラの世界を席巻しました。
Canon EOSシリーズは、明確にエントリー機、中級機、フラッグシップ機を分けています。
EOS 3は、一桁の数字からもわかるように、準フラッグシップとして開発された機種。
1998年の発売ですが、この時点ですでに2000年発売のEOS-1Vの機能を部分的に先取り。
発売当時のフラッグシップ、EOS-1N以上の高機能を誇ったことでも話題となりました。
これから中古フィルムカメラを始める方にとっては、信頼性がとても高いオートフォーカスと露出制御が魅力。
難しい操作はカメラ本体に任せて、フィルムならではの独特の空気感を楽しむことができる、美味しいカメラなのです。
中古価格も最近では急上昇し、すっかり人気機種となったこちらのEOS 3。手軽に高性能のフィルムカメラを手に入れることができますよ。
EOS 3はいったいどんなカメラなのでしょうか?
中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが解説します。
目次
2024年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ。一度は手にしたい逸品!
FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
Canon EOS 3
まず、Canon EOS 3の性能やスペック、特徴から見ていきましょう。
Canon EOS 3の性能・スペック
形式 | 35mmフィルム一眼レフカメラ |
シャッター | B、30秒~1/8000秒 電子式 縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッター |
露出計 | 評価測光 部分測光 中央部スポット測光 マルチスポット測光(8回まで) 中央部重点平均測光 ※21分割SPC受光素子を使用 |
AE | プログラムAE シャッター優先AE 絞り優先AE 深度優先AE E-TTLプログラムストロボAE A-TTLプログラムストロボAE TTLプログラムストロボAE |
ファインダー | 固定式アイレベル 0.72倍 視野率97% |
レンズマウント | キヤノンEFマウント |
対応レンズ | キヤノンEFレンズ |
連射速度 | 単体時 4.3駒/秒 パワードライブブースターPB-E2装着時は 7駒/秒(高速連射時)、3駒/秒(低速連写時) |
電池 | 2CR5リチウム電池(Amazon)x1(単体時) 単3乾電池x8またはNi-MHパックNP-E2(パワードライブブースターPB-E2装着時) 単3乾電池x4または2CR5リチウム電池x1(バッテリーパックBP-E1装着時) |
発売年 | 1998年 |
1998年に送り出された、Canonの準フラッグシップ機、EOS 3。
EOS 3は、部分的には当時のフラッグシップ機を上回る高機能を実現したことで話題を呼びました。
オートフォーカスの測距点は45点。
さらに、シャッター速度や露出制御などはカタログスペック上、フラッグシップのEOS-1シリーズに匹敵する性能を備えていたのです。
操作体系もEOS-1系列と統一されています。
またボディ下部に取り付けるバッテリーパックもEOS-1系列用と互換性あり。
このように、EOS 3は明白に、プロがEOS-1やEOS-1Nのサブ機として使用することを前提として開発されたフィルムカメラでした。
そして逆に、EOS 3の機能はフラッグシップ機のEOS-1Vにもフィードバックされていったのです。
45点AFをEOS-1Vに先んじて採用
EOS 3の性能面で特筆すべき最大の特徴。
それが、45点のオートフォーカス測距点です。
撮影画面の中で、被写体との距離を測ることができる箇所。
これは、現在でもそうですが、多ければ多いほうがきめ細やかな制御を行うことが可能です。
CanonのEOSシリーズはもともと動体撮影に強みをもつカメラでしたが、EOS 3もこの多測距点により、その特徴をよりつきつめた機種となりました。
さらに、この45点測距は、当時のCanonのフラッグシップ、EOS-1Nを上回るものでもあったのです。
当時の最上位機種、EOS-1Nは1994年発売で、測距点は5点。
一挙に上位機種をスペックで突き放す、まさに下剋上カメラなのでした。
[canonb]
迷機能?視線入力AF
さて、45点もオートフォーカスの測距点があると、どれを選択するのか煩雑になると思うかもしれません。
そこでCanonはEOS 3に「視線入力AF」という機能を盛り込みました。
視線入力AFは、EOS 3の前代にあたるEOS 5(1990年)にも搭載された機能で、ファインダーを覗いた目の向きに合わせて測距点を自動で選んでくれる機能。
これにより、撮影シーンにより適切な測距点が選べるようになったのです!!!
……といいたいところですが、視線入力はその後、フィルムカメラからデジタルカメラへの移行とともに消えた機能となってしまいました。
人間の眼はひとりひとり異なり、またたった1日のなかでも、疲れ目になったりして状態が変わり、Canonが想定したようには使えなかったのです。
ボディにも誇らしげにEYE CONTROLの文字がプリントされていますが、どちらかといえば、この時代のカメラならではのギミックとして、ガジェット的に楽しむのがおすすめかもしれません。
シャッター、露出制御、連射に死角なし
さて、測距点の数は上位機種を上回っていましたが、他の面についても性能に死角はありませんでした。
当時の各社上位機種の例に漏れず、シャッターの最高速は1/8000秒。
露出計も評価測光で、一切の危うさなく適正露出を求めてくれます。
また連射速度も、カメラ単体で4.3駒/秒、パワードライブブースターPB-E2を装着すると7駒/秒と、こちらも地味にEOS-1Nを上回ってしまっています。
(EOS-1Nは単体時3駒/秒、パワードライブブースター装着時6駒/秒)
この超高速連写は、カメラ単体では約8秒強、高速連写時は約5秒で36枚フィルムを撮りきってしまうというもの。
EOS-1Vの最速10駒/秒には劣りますが、プロの道具として不足はない高性能でした。
EOS-1V登場までプロの道具として第一線で活躍
EOS-1Nを上回ってしまった、下剋上カメラEOS 3。
実際そのスペックから、プロの中にもEOS-1NではなくEOS 3をあえて選ぶ人が続出したといいます。
後述しますが、EOS 3は各部の堅牢性もプロ機に準じており、高い信頼性が必要な仕事の道具として、十分以上に活躍することができたのです。
2000年に発売したCanon最後のフィルムフラッグシップ機、EOS-1VがEOS 3をさらに上回ったことによりトップの座こそ譲りましたが、それ以降も実用的なカメラとして、デジタル化が完全に進むまでプロやハイアマチュアのカメラバッグの中に収まっていることも多かったようです。
準フラッグシップならではの堅牢・真面目な設計
EOS 3は、プロが使うカメラであることを前提として、堅牢性にも十分に気を配って設計されていました。
ボディ各所にはシーリングが施され、防塵防滴設計となっています。
シャッターの耐久性も10万回を保証。
EOS-1シリーズ顔負けの耐久性を実現していました。
細かいところでは、Canon EOS上級機種の証である、金属製のフィルムレールもうれしいところ。
裏蓋をあけたときに見える銀色のフィルムレール。
じつはCanon EOSシリーズの中級以下のモデルでは、ここがプラスチック製になっていることが一般的です。
EOS 3の直下のグレードに位置する中級機のEOS-7/EOS-7sでさえプラスチック製となっているのです。
中級機のEOS-7ではプラスチックの一体成型
もちろん、プラスチックでも一般的な撮影で不具合が出ることはありませんが、よりコストをかけた、耐久性のある構造をしていることは、EOS 3を末永く使ううえでの信頼感につながっているといえるでしょう。
EOS-1Vとは印象が異なるボディライン
外装についても触れます。
外装は、EOS 3が本当のフラッグシップ、EOS-1シリーズと比較したときにもっとも異なるところ。
EOS-1Vの外装がマグネシウムなのに対し、EOS 3はプラスチック製なのです。
とはいえ、1998年のEOS 3登場時のフラッグシップ、EOS-1Nも外装がプラスチックなのは同様。
この部分は、1990年代という時代を考えると致し方ないところだったといえるかもしれません。
プラスチックでも、上級機だけあって一定の質感は備えています。
ボディのデザインは直線的で、曲面の印象が強いEOS-1シリーズとはまた異なるもの。
とくに、ペンタプリズム部の処理が大きく異なります。
ずっしりとした塊感があるEOS-1NやEOS-1Vに比べスタイリッシュで軽快な印象が強いので、これから中古でフィルムのEOSシリーズを手に入れるなら、見た目で選んでしまうのもおすすめです。
Canon EOS 3を中古で購入するときの注意点
さて、そんなEOS 3を中古で手に入れるなら、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか?
Canon EOSシリーズは1987年の登場以来改良が重ねられ、1990年代後半ともなると、もう変更するところがないくらいに完成に近づいています。
EOS 3は、EOSシリーズ特有の不具合も対策されているので安心して中古で購入できます。
電子部品の状態
完全に電気で動くカメラのEOSシリーズ。
EOS 3も、内部の電気部品の状態がもっとも重要です。
2015年にメーカー純正修理が終了してしまっているため、中古を探す際には状態チェックがしっかり行われたものを選びましょう。
プロが酷使したものも多いので、外観のキズ・スレを基準とするのもよいでしょう。
ダンパーゴムの劣化は心配不要
1990年代中盤までに製造されたEOSには、ダンパーゴムの劣化という不具合がつきものでした。
これは、シャッター機構内部に使われたゴム部品が劣化してべとべとになり、シャッター羽根に付着してしまうというもの。
この症状が起こると正常にシャッターが開かなくなってしまうという致命的な故障です。
幸い、1998年と製造時期が新しいEOS 3は対策済みなので心配ありません。
そもそも、フラッグシップのEOS-1シリーズにはダンパーゴム劣化は発生しないともいわれているので、準フラッグシップのEOS 3の発売が仮にもう少し新しくても、問題は発生していなかった可能性も高いのではないでしょうか。
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Canon EOS 3のライバル機種
Canon EOS 3には、非常に似通ったコンセプトのフィルムカメラが存在します。
それがNikonのF100。
フラッグシップに比類する高性能を誇り、プロに愛用されたという点で兄弟のようなカメラです。
EOS 3とF100
1998年は、プロも使う準フラッグシップカメラが同時に登場した年でした。
ひとつはこのCanon EOS 3。
もうひとつはNikon F100。
どちらも、シャッターやオートフォーカス、連射といった面では本来のフラッグシップに迫るか追い越しているという高性能。
さらに、フラッグシップ機に比べ小型・軽量なことで使いやすいという点でも似通っていました。
ライバル機種であるEOS 3とF100ですが、これから中古で手に入れることを考えた場合、どちらもとても完成度が高く、優劣を付けることは難しいです。
唯一、F100は外装がマグネシウム製であることが目を引くくらいでしょうか。
もし中古のオートフォーカス一眼レフカメラを手に入れる場合、見た目やメーカーの好みで選んでしまってよいでしょう。
ただし、現在Canonのデジタル一眼レフカメラを持っているという場合には、レンズマウントが同一かつ、操作系が同じなのでEOS 3が断然おすすめです。
関連記事
EOS 3とF100の設計思想の違い
余談ですが、結果として似たカメラとなったCanon EOS 3とNikon F100ですが、コンセプトは異なります。
EOS 3はこの記事でも紹介したように、フラッグシップ機EOS-1に先んじて新機能を採用した機種。
いっぽうF100は、フラッグシップ機F5から機能を省略した機種なのです。
こうして比べてみると、トップダウン方式のニコンに対して、先進的かつ挑戦的なCanonの思想がよくわかります。
安心して使えるAFフィルムカメラ EOS 3
このように、EOS 3は最上位機種顔負けの高性能フィルムカメラ。
これから中古でフィルムカメラを使いたいという方にとっても、ピント・露出ともに確実に自動で合わせてくれるため、安心して使うことができるおすすめの機種だといえるでしょう。
ぜひEOS 3を携えて、フィルムならではの味のある写真を撮ってみませんか?
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