CONTAX(コンタックス)G1/孤高のAFレンジファインダーカメラだ
今回は「オートフォーカスレンジファインダーカメラ」ことコンタックスG1(CONTAX G1)について紹介します。
いま人気の中古フィルムカメラ。
なかでも、1990年代のフィルムカメラの世界で独自の地位を築いたのが、京セラ・コンタックス(CONTAX)なのではないでしょうか。
高級コンパクトカメラのT2やTVSが大ヒット。
チタン外装の「特別な」カメラは、当時のカメラ愛好家に大歓迎されました。
その流れでコンタックスは、レンズ交換式の新たなカメラを送り出します。
それがコンタックスG1。
かつてのレンズ交換式レンジファインダーカメラを強く意識していながら、オートフォーカスでの使用を前提とした、これまでにないコンセプトの機種です。
しかも、カール・ツァイスと提携している京セラ・CONTAXならではの高性能・高描写レンズを新開発。
ツァイスが生み出した超広角レンズの金字塔、ホロゴンやビオゴンを現代の技術で蘇らせました。
中古フィルムカメラ愛好家にとって夢のようなカメラ、コンタックスG1。
いったい、コンタックスG1とはどんなフィルムカメラなのでしょうか?
目次
コンタックスG1(CONTAX G1)
それではまず、コンタックスG1(CONTAX G1)の特徴について見ていきましょう。
コンタックスG1の性能・スペック
形式 | 35mm オートフォーカスレンジファインダーカメラ |
シャッター | B、1秒〜1/2000秒(マニュアル時) 16〜1/2000秒(AE時) 電子式 縦走金属幕フォーカルプレーンシャッター |
露出計 | TTL中央重点実絞り測光 装着レンズにより外部測光に切り替え |
AE | 絞り優先AE |
ファインダー | 実像式ズームファインダー |
フォーカス | パッシブ式オートフォーカス MF可 |
レンズマウント | コンタックスGマウント |
電池 | CR2リチウム電池(Amazon)x2 |
発売年 | 1994年 |
孤高のAFレンジファインダー コンタックスG1
1994年に登場したコンタックスG1(CONTAX G1)。
中古で愛用者も多いコンタックスのカメラのなかでも、独特な設計で知られています。
それが「オートフォーカスレンジファインダーカメラ」というジャンルのカメラであるということです。
この、AFレンジファインダーという種類のカメラは、コンタックスG1と、後継機のコンタックスG2の2機種をおいてほかにありません。
それでは、AFレンジファインダーカメラとは、いったいどのようなものなのでしょうか?
結論からいうと、いわゆるレンジファインダーカメラ(距離計連動カメラ)を完全に電子化したものとなります。
コンタックスG1のコンセプトは、
「フォーカスも、露出も、巻き上げ・巻き戻しも」すべてが自動化されたレンジファインダーカメラというもの。
「レンジファインダーカメラの操作感」を、オートフォーカスのカメラで体験できる。
コンタックスG1をはじめとするコンタックスGシリーズでは、そんな独特な体験を味わうことが可能なのです。
オートフォーカスだが「レンジファインダーカメラ」
「AFレンジファインダーカメラ」という形式のカメラは、このコンタックスGシリーズをおいてほかには存在しません。
そもそも、このコンタックスG1(と後継機のコンタックスG2)は、ファインダー内に連動距離計の表示さえ存在しないのです。
それなのに、なぜコンタックスGシリーズは、「AFレンジファインダーカメラ」を名乗っているのでしょうか?
その理由は測距原理にあります。
マニュアルフォーカスの一般的なレンジファインダーカメラは、光学的な三角測量の原理によって距離を合わせています。
ミラーやプリズムで2つの像を合わせることで、肉眼で光学的に三角測量を行っているわけです。
いっぽう、コンタックスG1のオートフォーカスの測距方法も、まさに三角測量の原理にほかなりません。
ボディ前面にある2つの窓は、MFレンジファインダーの2つの窓と同じ役割。
2つの窓は三角測量の証
連動距離計による測距を自動化した。
そのコンセプトを持つがゆえに、コンタックスG1はAFレンジファインダーカメラを名乗っているのです。
コンタックスG1の登場のきっかけとなった中古カメラブーム
そんなコンタックスG1の登場には、1990年代当時の時代背景が影響していました。
オートフォーカスの一眼レフカメラが普及し、すでにフィルムカメラは全自動が当たり前となっていた1990年代。
それとはまったく正反対の、クラシックカメラ、中古フィルムカメラの一大ブームが巻き起こっていたのです。
M型ライカやニコンの一眼レフをはじめとする中古フィルムカメラが注目され、古いカメラ・レンズの価値が見直される。
それは、自動化するカメラへのアンチテーゼであったのかもしれません。
田中長徳や赤瀬川原平の中古カメラについてのエッセイが人気を集めたのも1990年代のことです。
そんな1990年代、中古フィルムカメラのなかでもとくに大きな人気を誇ったのがレンジファインダーカメラ。
レンジファインダーカメラを現代の技術で蘇らせようという試みが行われるのは当然のことだったといえるでしょう。
高級カメラのブームもコンタックスG1の登場を後押し
また、1990年代に同様に流行していたのが「高級コンパクトカメラ」でした。
高級コンパクトカメラについては以下の記事で紹介しています。
チタンの外装や高級・高性能なレンズを特色とする高級コンパクトカメラ。
そもそもそのブームのきっかけとなったのも、このコンタックスG1と同じ製造元のコンタックスT2(CONTAX T2、1990年発売)でした。
コンタックスT2についてはこちらを参照
コンタックスG1は、同じ京セラのコンタックスT2や、そのズームレンズバージョンのコンタックスTVSから大きな影響を受けています。
設計や形状こそ大きく異なりますが、外観の仕上げやコンセプトは、コンタックスT2のものを大きく引き継いでいます。
シャンパンゴールドの外装色はコンタックスT2ゆずり。
右手親指で回す距離ダイヤルなどは、コンタックスT2と配置が同じです。
コンタックスG1の軍艦部
コンタックスT2の軍艦部
中古フィルムカメラ、なかでもレンジファインダーカメラのブームと、高級コンパクトカメラのブーム。
1990年代前半、日本のカメラ界を席巻した2つの潮流に多大な影響を受けたカメラ。
それがコンタックスG1。
もしかすると、1990年代という時代をもっとも象徴する機種とさえいえるかもしれません。
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コンタックスG1を使う
さて、そんなコンタックスG1を、これから実用するならどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?
また、使い方にはどんな特徴があるのでしょうか?
コンタックスG1の操作性
まずは、カメラそのものの操作性。
基本的には操作性は良好で、マニュアル操作も非常に行いやすいといえるでしょう。
絞りはレンズの絞りリングで操作。
オーソドックスな操作系で、戸惑うことはありません。
シャッターダイヤルもボディ上面。
絞りとシャッターという露出制御については、フィルムカメラの伝統的な配置を踏襲しています。
いっぽう距離はレンズ側ではなく、ボディ側で合わせます。
AFとMFの切り替え、MF時の距離合わせは、ボディを構えたときに右側、親指で操作する位置にあるダイヤルで行います。
上述したように、コンタックスT2のフォーカスダイヤルと共通する位置です。
それでは、オートフォーカスレンジファインダーカメラとして肝心要の、ピント合わせとファインダーについてはいったいどんな操作感なのでしょうか?
コンタックスG1の距離合わせ
コンタックスG1のファインダーは、基本的には素通しのビューファインダーです。
解説したとおり、センサーによって電子的に三角測量を行うので、光学的に距離を合わせるMFのレンジファインダーカメラのように、ファインダー内に二重像が表示される、ということはありません。
その代わりに、ファインダー下部の液晶に現在合っている距離が表示され、それによって合焦を判断することとなります。
肝心のピント精度ですが、1990年代のカメラということを考えれば及第点だといえるのではないでしょうか。
コンタックスT2のような顕著な中抜けほどにはひどくないですが、厳密にどこにピントが合っているか確認できないのは、コンタックスG2の弱点ではあります。
ただし、後述する、コンタックスGマウントの超広角レンズを使う場合には、そこまで厳密なピント精度は求められないので、気にする必要はないともいえるでしょう。
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コンタックスGマウントの多彩なツァイスレンズ
そんなコンタックスG1の魅力は、やはり多彩なツァイスレンズ。
コンタックスGマウントのカメラは、このG1と後継機のG2しかありませんが、中古で安価な母艦を探しているならコンタックスG1は手軽な選択肢としておすすめです。
コンタックスGマウントは広角が魅力!
コンタックスGマウントとは、このコンタックスG1の登場に合わせて新設計されたレンズマウント。
AFレンジファインダーカメラ用のマウントということもあり、一眼レフ用に比べて自由度の高いレンズ設計が可能となっています。
レンジファインダーカメラ特有のレンズ構成といえば、やはり対称型広角レンズ。
一眼レフカメラ用のレトロフォーカス型とは全く異なる、無理なく収差を補正した、ヌケが良く歪みのない描写が魅力です。
しかも、コンタックスG1で使えるレンズは、コンタックスならではのカール・ツァイス。
ホロゴンにビオゴン。
ツァイスならではの「本物」の対称型広角レンズを味わうことができますよ。
ホロゴンT* 16mm F8
ビオゴンT* 21mm F2.8
もちろん、標準や望遠のプラナーの描写も絶品です!
コンタックスGマウントをはじめとしたヤシカ・ツァイスレンズについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
レンズ交換でファインダーが可変
古くからレンジファインダーカメラでは、レンズ交換時のファインダーの扱いが問題となっていました。
ライカではファインダーのブライトフレームを切り替え。
キヤノンではファインダーを変倍式に。
その問題は、オートフォーカスレンジファインダーのコンタックスG1でも同じ。
では、どうしたのかというと、ズーム式のファインダーを採用することで解決しています。
コンタックスG1のファインダーは実像式のズームファインダー。
MFレンジファインダーカメラでは対応する焦点距離が限られることが普通ですが、コンタックスG1では28mm以上の交換レンズに対応。
電子接点から焦点距離を読み取ることで、自動的に倍率が切り替わります。
※ただしホロゴン16mmとビオゴン21mmは外部ファインダーとなります。
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コンタックスG1 中古購入のポイント
では、コンタックスG1をこれから中古で手に入れるなら、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか?
ボディの中古価格は安め
コンタックスG1は、京セラ・コンタックスのカメラとしてはボディは安め。
後継機のコンタックスG2に比べると安価なため、ボディは安く抑えて、レンズにお金をかけるのもよいといえるでしょう。
電子カメラなので経年劣化に注意
コンタックスG1は、フィルムカメラとしては新しめの機種ではありますが、この記事を書いている2018年時点で、既に製造から20年以上が経過しています。
コンタックスG1は電子カメラ。
そのため故障すると修理ができない可能性も。
中古を購入するときは、状態がよいものを選ぶよう心がけましょう。
液晶の液漏れに注意
この記事で掲載した個体にも発生しているものがありますが、経年劣化により、液晶に液漏れが生じることがあります。
動作自体には差し支えないですが、中古購入時にはチェックするとよいでしょう。
後継機のG2とどちらがおすすめ?
コンタックスG2
後継機であるコンタックスG2の主な改良点は以下の通り。
・最高シャッター速度が1/4000秒(AE時1/6000秒)に
・赤外アクティブAFを併用することによりAF精度が向上
・連射速度が向上(G1:毎秒2コマ/G2:毎秒4コマ)
中古価格はG1のほうが安めなので、機能と価格を比較して、どちらを入手するか決めるのがおすすめです。
コンタックスG2については以下の記事で紹介しています。
コンタックスG1は孤高のAFレンジファインダーカメラ
AFレンジファインダーカメラは、このコンタックスGシリーズの後が続かないジャンルとなりました。
しかし、現在中古市場でコンタックスG1を比較的頻繁に見かけるのは、当時、市場に受け入れられたカメラであるがゆえ。
1990年代の高級カメラを牽引した京セラ・コンタックスの製品だけあり、シャンパンゴールドのボディの輝きはいまも色あせません。
ぜひあなたも、コンタックスG1でツァイスレンズを味わってみませんか?
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