Leica(ライカ)CL/ライツミノルタCL 日独の血が入り混じったコンパクト・ライカ
中古フィルムカメラのなかでも、誰もが憧れるライカ(Leica)。
ライツミノルタCL(ライカCL)は、ドイツのライカ(ライツ)と日本のミノルタが共同して開発した、他のレンジファインダーカメラのライカとは少々毛色が異なるライカです。
特色は、Mマウントを採用した他のライカ製レンジファインダーに比べてコンパクトなこと。
製造はミノルタながら、ドイツの本家ライカに負けず劣らずの精密感。
ライカMマウント互換のレンジファインダーカメラには、1990年代以降発売された機種が他にもありますが、本物の「ライカ」を名乗ることを許されただけあって、そのレベルは非常に高く保たれています。
その独特の出自も影響し、中古価格はM型ライカに比べぐっとリーズナブル。
コンパクトかつ取り回しの良いレンジファインダーカメラとして、中古でもなかなかにおすすめできる選択肢です。
今回は、そんなライツミノルタCL(ライカCL)について、中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが解説していきます。
目次
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ライツミノルタCL(ライカCL)
ドイツと日本が手を取り合ったライカ、ライツミノルタCL(ライカCL)。
性能や特徴について見ていきましょう。
ライツミノルタCL(ライカCL)の性能・スペック
形式 | 35mm レンズ交換式レンジファインダーカメラ |
シャッター | B、1/2秒~1/1000秒 機械式 縦走り布幕フォーカルプレーンシャッター ストロボ同調速度1/60秒 |
露出計 | TTLスポット測光 CdS受光素子 |
露出 | マニュアルのみ |
ファインダー | 一眼式レンジファインダー ファインダー枠 40mm、50mm、90mm パララックス自動補正 |
レンズマウント | ライカMマウント |
対応レンズ | 各種M・Lマウントレンズ (一部レンズには使用制限あり) |
電池 | MR-9水銀電池 x1 ※販売終了品のため、代替電池PX-625(Amazon) もしくはボタン電池用アダプター(Amazon)にて代替 |
発売年 | 1973年 |
ライツミノルタCL(ライカCL)は、1973年に登場したレンズ交換式のレンジファインダーカメラ。
最大の特徴は、ドイツのライカ(ライツ)と日本のミノルタが技術提携し開発・発売したということです。
そのため、日本国内向けと海外向けで名称が異なり、
日本国内向け:ライツミノルタCL(Leitz Minolta CL)
海外向け:ライカCL(Leica CL)
となっています。
ライカCL
海外向けの名称を見ても分かるとおり、ライツミノルタCLは、明白に本物の「ライカ」として生を受けたフィルムカメラ。
基本設計はドイツのライツ社が担当し、製造は日本国内でミノルタが行いましたが、各部の特徴や仕上げは、明確に「ライカのカメラ」そのもの。
1990年代以降、ライカMマウント互換のレンジファインダーカメラが登場していますが、それらは「KMマウント」(コニカ)やVMマウント(コシナ・フォクトレンダー)など厳密には別の名前を名乗っています。
いっぽう、こちらは純正の「Mマウント」。
国内ではミノルタとのダブルネームですが、このことからもライツミノルタCLが本物のライカであることがわかります。
ライツミノルタCL(ライカCL)の機構的特徴
ライツミノルタCL(ライカCL)は、それまでのM型ライカに比べ大幅な小型化・軽量化を成し遂げました。
名称もCompact Leicaに由来しています。
機能面でも、ライカM5に続き、露出計を内蔵しているのが大きな特徴。
これらのコンセプトを実現するため、他のM型ライカとも、日本製のカメラとも異なる独特の機構が採用されています。
ライカM5の機能を引き継いだ露出計
ライツミノルタCLの大きな特徴のひとつが、露出計を内蔵していることだといえるでしょう。
ライカのレンジファインダーカメラに露出計が内蔵されたのは、1971年のライカM5が最初。
露出計のCdS(硫化カドミウムセル)受光素子を、シャッター前にアームを伸ばして物理的に持ってくる機構でした。
ライツミノルタCLの露出計も、基本的にはこの方法を踏襲。
フィルムを巻き上げると、連動して受光素子のアームが出てきます。
そして、シャッターボタンを押し込むと、シャッターが切れる前に自動的にアームが引っ込んでくれるのです。
その構造上、CdS受光素子のある画面中央部でのみ露出を計測することになるので、露出計の特性はスポット測光となります。
1970年代のフィルムカメラで主流の中央重点測光に比べ、撮影者の意図が容易に反映されるため、画面内のどこを測光するかを考えながら露出を決めることになるでしょう。
レンズとの干渉には注意が必要
ただし。
この受光素子アームとの干渉のため、後玉が飛び出ている広角レンズは装着に注意が必要です。
同様に、沈胴レンズも沈胴させると干渉してしまいます。
ライツミノルタCLのシャッター
ライツミノルタCLのシャッターは、縦走り布幕フォーカルプレーンシャッター。
35mmフィルムカメラの布幕シャッターは、横走りのほうが一般的。
縦走りといえば金属幕シャッターのイメージが強いかもしれません。
しかし、ライツミノルタCLのシャッターは布幕。
これも、限られたスペースに機構を収める工夫のゆえ。
シャッターダイヤルもボディ正面に設けられ、ボディ上面は平滑で取り回しが良くなっています。
ちなみにシャッターダイヤルはシャッターボタンの前に微妙に飛び出ており、カメラをホールディングした際に指先で回すことが可能。
この操作性はライカM5のシャッターダイヤルとも共通しています。
シャッター速度はファインダー内にも表示されるため、目を離さずに迅速な操作が可能です。
明確に広角レンズでの使用を意識した距離計
ライツミノルタCL(ライカCL)の距離計(レンジファインダー)も、それまでのM型ライカの距離計とはコンセプトを変えています。
具体的には、基線長(距離計の2つの窓の距離)を短縮。
M型ライカのライカM3からM5までは、距離計の基線長は68.5mmでした。
これは、ある程度の望遠レンズにも対応できることを意識していたといえるでしょう。
しかし、1960年代にはすでに、望遠域での撮影は一眼レフカメラが主流となっており、レンジファインダーカメラは、広角レンズを得意とするものとされるようになっていました。
そこで、ライツミノルタCLは基線長を31.5mmに短縮。
ファインダー自体にも実際より広く見える倍率がかかっているので、厳密な精度の面ではM型ライカに譲ることになります。
しかしそれと引き換えにダウンサイジングが可能となったのです。
40mmレンズの使用が前提
広角レンズを意識したことは、専用のレンズ設定にも現れています。
標準レンズは、MロッコールQF 40mm F2(日本国内)またはズミクロンC 40mm F2(海外)。
それまでのライカでは、基本的に標準レンズを50mmとしていましたが、ライツミノルタCLでは、常用するレンズの焦点距離を、少し広めの40mmに変更したのです。
ファインダー枠は、40mmと50mmのレンズを装着したときは40mm・50mmの双方を表示。
その他に90mmレンズ用のフレームも内蔵しています(40mmは表示されたままとなります)。
速写性の高さが持ち味のレンジファインダーカメラ。
その特性に沿った設計は、一眼レフカメラが主流となるなかでライカが自身の立ち位置を明確にしようとする試行錯誤のあらわれだったのでしょう。
なお28mmへの対応は、ミノルタが開発した後継機、ミノルタCLEまで待つことになります。
携行性を考えた外装
ライツミノルタCLは、日本のカメラメーカーだけではなし得なかった、ドイツ製ならではのスマートな工業デザイン。
直線主体ながら、カメラ側部のアールが手によくなじみます。
ストラップ金具は縦吊り用。
これはライカM5とも共通しています。
さらに、本体をコンパクトにするため、巻き戻しクランクは底部に設置。
裏蓋は1970年代としては少々クラシックですが取り外し式(底蓋ごと外れる、ローライ35のような方式)で、M型ライカに比べればフィルム装填がずっと楽になりました。
[leicab]
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ライツミノルタCL(ライカCL)の誕生
では、なぜこのように、名門中の名門、ライカが日本と手を組んだのでしょうか?
安価な日本製カメラに押されるドイツ製品
それは、1960年代以降、本格的に高級カメラでも日本製のフィルム一眼レフカメラが販売攻勢を掛けたことに由来します。
いまでこそ中古カメラ愛好家の評価が非常に高いレンジファインダーカメラですが、当時の実用のカメラとしては、日本製のフィルムカメラが第一の選択肢。
日本製フィルムカメラは安くて優秀。
しかもレンジファインダーカメラに比べ、一眼レフなら望遠撮影やマクロ撮影も可能。
ドイツのかずかずの名門カメラメーカーは、急速に苦戦を強いられる状況に追い込まれました。
それはライカも同様。
一眼レフカメラのライカフレックスシリーズや、露出計を内蔵したライカM5も販売成績では苦戦していました。
主戦力だったM型ライカは、当時唯一のレンズ交換式レンジファインダーカメラ製品となるくらいに、レンジファインダーという形式自体が前時代化してしまっていたのです。
そこでライカは日本のメーカーと手を組むことを選んだのです。
ライカとミノルタの提携
ライカを製造していたエルンスト・ライツ(Ernst Leitz)社が相手に選んだのはミノルタ(Minolta)。
ドイツ製カメラの難点は、精度や設計では日本以上に蓄積がありましたが、効率のよい生産技術では大幅に遅れをとっていました。
そこで、カメラの大量生産技術に長けていたミノルタの協力で、より安価で手に入れやすい、コンパクトなライカを作ろうと試みたのです。
その試みは、このライカCLとして結実します。
ところが……。
1975年。
エルンスト・ライツ社は経営が困難となり、このライツミノルタCLも販売が終了してしまうのです。
ミノルタに与えた影響
ライツミノルタCLの経験はミノルタにとって大きく活かされました。
1981年には、ライツミノルタCLの直接の後継機、ミノルタCLEを発売。
この機種も本来はライカとの提携により発売するはずだったとのことですが、ライカ側の設計や製造へのこだわりから折り合いがつかず、ミノルタ単体での販売となったといわれています。
ライカのカメラへのこだわり。
M型ライカをはじめとする、珠玉のカメラのかずかずを生み出しました。
しかし、フィルムカメラが廉価な大量生産品になるにつれ、変化に対応できなくなってしまったのも歴史の事実でした。
その後、ライカはM型ライカ本来のルックスに露出計を組み込んだM6で復活。
ラグジュアリーな高級カメラという路線で、現在も歩みを続けています。
いっぽう、ライカの復活までの期間は、同じくミノルタとの提携により日本で生産したフィルム一眼レフカメラ、ライカRシリーズにより、ライカの血脈をかろうじてつなぐことができたのでした。
[leicab]
ライツミノルタCLの後継機 ミノルタCLE
上で触れた、ミノルタが開発したMマウントのレンジファインダーカメラ、ミノルタCLE(MINOLTA CLE)。
外観デザインはCLを受け継いでいますが、機能的にはまったく刷新されたカメラです。
ここで簡単に解説します。
ライカになれなかったカメラ
CLEは、上にも書いたように、ライカとミノルタの間で折り合いがつかず、ライカとして発売できなかったカメラ。
ミノルタとしては合理的な設計を行ったはずだったのですが、ライカ側としては満足できず、ライカ銘を与えずに終わったのでした。
これは廉価機種のフィルム一眼レフ、ミノルタXG-Eからパーツを流用していたことが理由かと思われます。
しかし上述したように本物のMマウントを採用していることにその名残を残しているのです。
では、機能的にはどんな特徴があるのでしょうか。
1.絞り優先AEが使える電子式シャッター
ミノルタCLEは、ライツミノルタCLとはうってかわって電子式シャッターと絞り優先AEを採用。
じつは、絞り優先が使えるレンジファインダーカメラというのは、その他には1990年代になるまで登場することはありませんでした。
いまでこそフォクトレンダー ベッサのAEモデルやヘキサーRF、そしてライカM7といった選択肢がありますが、長らくミノルタCLEは孤高の選択肢であり続けたのです。
2.ファインダーは28mmに対応
ライツミノルタCLのフレームは40mm・50mmと90mmでしたが、ミノルタCLEは28mmにも対応。
レンジファインダーカメラが得意とするスナップに最適な焦点距離が使えるようになりました。
いっぽうで、40mmを標準レンズとしているのはCLと同様です。
3.ダイレクト測光の応答性のよい露出計
ミノルタCLEの露出計は、フィルム面を直接計測するダイレクト測光。
レンジファインダーカメラでは構造上、一眼レフカメラのようにファインダー部に受光素子を置くことができないため、このダイレクト測光の採用ではじめてAEが可能となりました。
CLやM5のようなアームの動作がないため、シャッターの反応性も良好です。
ミノルタCLEについてはこちらの記事で解説しています。
CLもよいですが、復刻やマニア向けではない本気の日本製レンジファインダーとして最後の機種、ミノルタCLEもとてもよい機種ですよ!
ライツミノルタCL(ライカCL)中古購入のポイント
では、ライツミノルタCL(ライカCL)を中古で買うならどんなことに気をつけたらよいのでしょうか。
ライツミノルタ銘かライカ銘か
ライツミノルタCLとライカCLは、名称は異なりますが、中身は完全に同一のカメラです。
性能には一切差がありません。
ただし、人気が高いのはライカ銘のほう。
それでも、M型ライカに比べれば中古価格はとても安いので、非常識なほどの差はありません。
ライカという名前にこだわるならライカCLでしょうが、実用なら、どちらの中古でもよいといえるでしょう。
[leicab]
ライカのレンズとミノルタのレンズ
いっぽうで、当時専用に販売されたレンズについては、ライカブランドとミノルタブランドでは人気が大きく異なります。
専用レンズとして、
・ズミクロンC 40mm F / Mロッコール 40mm F2
・エルマーC 90mm F4 / Mロッコール 90mm F4
が発売されましたが、人気が高いのは断然ライカのほう。
しかし設計は同一で、撮れる写真の違いは実質的に気分の問題といえるでしょう。
中古を探す際には価格と相談するのがおすすめ。
また、クモリのある中古も多いので注意しましょう。
傾斜カム
なお、これらCL用レンズは、距離計連動部が異なり「傾斜カム」となっています。
これはボディの露出計連動部と接するカム部分が微妙に斜めになっているもの。
CLでの使用には問題ありませんが、他のM型ライカでは距離計精度が微妙に出ない可能性もあるので注意が必要です。
露出計の動作と精度
製造から年数が経ち、露出計が動作しない中古も散見されます。
頻繁に測光するたぐいのカメラではないかもしれませんが、露出計の劣化から他の部分の経年変化も予想されるため、適切にメンテナンスされた、保証のある中古を選ぶのがおすすめです。
Leitz minolta CL おすすめの関連商品
電池関連
Leitz minolta CL(ライツミノルタCL)は整備して使い続けられるフィルムカメラですが、唯一、電池については水銀電池を使用していたため製造が終了しています。
代替品として「PX625」アルカリ電池を使用するか
関東カメラサービスほか各社から販売されている、ボタン電池を変換するアダプターを使用することで露出計を問題なく作動させることができます。
L-Mリング
もちろん多彩なL39マウント(ライカマウント)のレンズも使用可能。
各社のL-Mリングを使用することで取り付けできます。
フィルム
35mmフィルムはこちらがおすすめです。ライツミノルタCLも本物のライカ
本家M型ライカに比べ、廉価版かつ日本製と一段下に見られがちなライツミノルタCLですが、撮れる写真も質感もやはりライカ。
ぜひ、多彩なMマウントレンズを取り付けて楽しんでみたいものです。
中古価格は安価で、整備された個体はきっと軽快な相棒になってくれるはず。
ぜひあなたも、中古でライツミノルタCL(ライカCL)を手に入れて、レンジファインダーカメラで景色を切り取ってみませんか?
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写真・動画どちらもハイクオリティ。一度は手にしたい逸品!
FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
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