Nikon(ニコン)EF/絞り優先一眼レフ・ニコンFE FMの陰に隠れた悲運の名機
「シンプルニコン」というニックネームで1978年に発売された、Nikon FE(ニコンFE)。
ニックネームの通り、すべてにおいてシンプル。
すべてのフィルム一眼レフのなかでも標準的な、優等生カメラだといえるでしょう。
ニコンならではの作りの良さはもちろんのこと、絞り優先AE搭載で、初心者にも使いやすく仕上がっています。
Nikon(ニコン)の中古一眼レフというとFMシリーズばかりが取り沙汰されますが、これがなかなか、FEもいいカメラなんですよ!
人気さを反映してか、Nikon FEは兄弟機種Nikon FM(ニコンFM)よりも中古が安いのもメリット。
特徴がないのが特徴。
そんなカメラ、Nikon FE(ニコンFE)とはどんな機種なのか。
中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが徹底解剖していきます。
目次
Nikon FE(ニコンFE)
「シンプルニコン」Nikon FE(ニコンFE)について、まずは性能・スペックから見ていきましょう。
Nikon FE(ニコンFE)のスペック
形式 | 35mm一眼レフカメラ |
シャッター速度 | B、1秒〜1/1000秒 機械式 横走り布幕フォーカルプレーンシャッター |
露出計 | TTL開放測光 SPD受光素子 |
AE | 絞り優先 |
ファインダー | 視野率約93% 倍率約0.86倍 絞り値直読み窓あり |
レンズマウント | ニコンFマウント |
対応レンズ | Ai以降の絞り環つきレンズ (それ以前の非Aiレンズは絞り込み測光可能) |
電池 | SR44(Amazon)x2もしくはLR44(Amazon)x2 |
発売年 | 1978年 |
Nikon FE(ニコンFE)の特徴
Nikon FE(ニコンFE)の最大の特徴は、なんといっても絞り優先AE。
使い方は簡単。
シャッターダイヤルをA位置に合わせるだけでOKです。
その他の機能も、35mmフィルム一眼レフとして至って標準的なつくりなので、このカメラを使いこなすことができれば、フィルムカメラのだいたいの機能は覚えることができるでしょう。
初めての中古フィルム一眼レフとしても、間違いなく! おすすめできるカメラです。
外観も、「カメラ」と言われてイメージする通りの、至ってオーソドックスなもの。
ニコンFEは、特徴がないのが特徴のカメラといえるかもしれません。
このカメラがマニュアル露出で使いこなせたら、どんな中古カメラでも使えるようになれますよ。
金属外装と電子シャッターのはざまで
ニコンFEはとてもよいカメラです。
しかし写真愛好家の間では、どうしてもFMの影に隠れてしまっている印象があるのではないでしょうか。
中古カメラ店でも、Nikon FMはガラスケースに並んでいるのに、Nikon FEはジャンク籠に入れられてしまっていることさえあります。
どうやら、新品での販売当時はとても人気があったのに、後の時代の中古カメラとしてはNikon FEよりもNikon FMのほうがずっと人気が高くなってしまったようなのです。
もちろん、ニコンならではの堅実な作りは中級機のNikon FEでも健在。
しかしながら、機械式シャッターではなく電子シャッターを採用したことが、その後の明暗を分けてしまったのです。
Nikon FE(ニコンFE)の登場
ニコンが露出系連動をAi方式に改めた1970年代後半、それまでのニコン製品より大幅に小型・軽量化したカメラを送り出しました。
まず、1977年のNikon FM。
こちらは機械式のカメラです。
そして1978年、絞り優先AEを搭載したNikon FEも、後を追うようにして登場するのです。
FMはニコマートFT系。
FEはニコマートEL系の後継機だといえるでしょう。
(ニコンの一眼レフについて詳しくはこちら)
Nikon FMとNikon FEはほとんど同じ外観をしており、サイズもほぼ同様です。
もちろん操作性も同一で、一見すると絞り優先AEの有無以外に差を感じにくいかもしれません。
↑Nikon FE(電子シャッター):下のNikon FMとは見た目が異なる。もっともわかりやすいのは巻き戻しクランク周辺に感度設定・露出補正のリングがあること。
↑兄弟機種のNikon FM(機械式シャッター):見た目ではシャッターダイヤル(オートがなく、感度設定窓がある)、レリーズボタン周りの造作、巻き戻しクランク周辺(感度設定・露出補正関連の部品がない)が異なる。
さて、AE搭載を搭載して小型化したことは、1976年のCanon AE-1の大成功を相当に意識したものに違いありません。
しかし、この絞り優先AE、そしてAE実現のための電子シャッター採用が、カメラファンにとってFEの存在を微妙なものとしてしまったともいえます。
絞り優先カメラとしてクリーンヒット
Canon AE-1からも大きな影響を受けたと思われるニコンFE。
AE搭載小型軽量一眼レフというトレンドに乗ったニコンFEは、当時のカメラユーザーに喜びをもって迎えられました。
Canon AE-1やPENTAX MEといったライバル機種とは比べ物にならない上質の仕上げ。
ニコンならではの堅牢性。
そして高性能なニッコールレンズ。
機械式で、悪く言えば保守的な設計のFMに比べて、新品発売当初はニコンFEのほうがユーザーにとって魅力的な機種だったことは間違いありません。
実際、中古店でもこころなしか、FMよりFEのほうが見かける印象があります。
機械式ブームで影に隠れる
ところが、90年代以降の中古カメラブームのなかでは、どうしてもNikon FMやNikon New FM2の人気に隠れた存在となってしまったのです。
その理由はやはり、シャッターが電子式であること。
外装が金属製であっても、シャッターが機械式ではないというその一点だけで、中古カメラファンから敬遠されがちになってしまったのです。
中古カメラファンには機械式信仰というものがあるのです。
仕上げは上質。
機能性も高い。
初心者でも使いやすい。
ニコンFEはとてもよいカメラです。
ところが、実用と趣味性の狭間で、運悪く日の当たらない存在になってしまったのです。
ただしそのために、中古の価格はFMよりは安くなり、手に入れやすいようにもなったので、功罪があるともいえるでしょう。
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Nikon FEの後継機種・系列機種
Nikon FEには後継・系列とされる機種があります。
簡単に紹介します。
Nikon FE2(ニコンFE2)
Nikon FE2はNikon FEの直系の後継機種です。
1983年発売。
名前の通り、Nikon FMに対するFM2(New FM2)に相当するポジションのカメラで、シャッター速度(露光時間)の高速側が1/4000秒に対応しました。
Nikon FA(ニコンFA)
Nikon FAはプログラムAEに対応するなど立ち位置が少々異なるカメラなのですが、電子シャッターの中級機ということで、Nikon FE系の機種に数えられる場合があります。
1983年発売。
Nikon FAについてはこちらの記事で解説しています。
Nikon FM3A(ニコンFM3A)
Nikon FM3Aは、機械式シャッターのFM系と電子シャッターのFE系を統合した機種。
高速側から低速側まで対応したハイブリッドシャッターという夢の機構を備えています。
実際にはFM3AよりもFE3Mという名称の方が相応しいというのはよく言われることです。
Nikon FM3Aについてはこちらの記事で解説しています。
Nikon FE(ニコンFE)中古購入時のポイント
ニコンFEを購入するときは、いくつかの点に気をつけましょう。
基本的には保証つきのものを中古購入すればOKです。
電子シャッターの状態に注意
Nikon FE(ニコンFE)の特徴、電子シャッターと絞り優先AE。
真っ先にチェックするのは、絞り優先AE時にきちんとシャッター速度が変化するかということです。
保証付きの中古品では問題ありませんが、保証なしで販売されているもののなかには、オートが壊れている個体も存在します。
具体的には、オートが故障している場合、ニコンFEはシャッターが全速、機械式の1/90秒で動作するようになってしまいます。
電池を入れて動作確認するのがおすすめです。
巻き上げを確認
こちらも保証ありの中古なら大丈夫なポイントですが、状態の悪いニコンFEには、巻き上げレバーが滑ってしまい、フィルム巻き上げもシャッターチャージも不可能な個体が存在します。
基本的には中古店でもジャンク扱いとなりますが、もしネット上で見つけたりしても、購入は控えたほうがよいでしょう。
モルトや電池室をチェック
これはNikon FE(ニコンFE)に限ったことではありませんが、裏蓋のモルト劣化や、電池室に液漏れがないかなど、中古カメラ購入時の一般的なチェックポイントもしっかり確認しましょう。
Nikon FEで使えるおすすめ用品
Nikon FEでは電池はSR44もしくはLR44を使用します。
Nikon FE(ニコンFE)に息を吹き込んでみませんか?
中古市場では、機械式のNikon FMの人気の陰に隠れてNikon FEは敬遠されがちです。
しかしながら、的確な露出を実現してくれる絞り優先AEはやはり便利なもの。
もちろんニコンならではのがっしりとしたホールディングも健在です。
電子式といいながら、作りのよさはやっぱりニコン!
なぜこのカメラが中古で人気がないのか、触ってみると不思議に思うはず。
堅実な設計のオーソドックスなカメラ、それがニコンFE。
ぜひ中古で手に入れて、あなたの手で、ニコンFEに新しい命を吹き込んでみませんか?
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更新履歴
2022年8月3日
画像を追加。
後継機種について加筆。
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