CONTAX(コンタックス)N1/時代に翻弄された悲運のAF一眼レフ
CONTAXの一眼レフカメラのなかでも、中古フィルムカメラファンでN1を実際に手にしたことのある方は少ないかもしれません。
レンズのマウントを含めすべてを一新し、2000年に鳴り物入りでCONTAXが送り出したNシリーズ。
はじめからデジタル一眼レフの展開を視野に入れ開発された、野心的なシリーズでした。
CONTAX Nシリーズは35mmフィルムカメラとしてはN1、NXが発売され、予定していたとおり2002年にはフルサイズデジタル一眼レフのCONTAX N DIGITALもリリースされました。
しかし、CONTAX Nシリーズはそれ以降展開することはなく、京セラのCONTAXブランドも2005年に終了してしまうのです。
いまでは中古でしか手に入らない悲運のカメラ、CONTAX N1。
いったいどのようなカメラなのでしょうか。
中古フィルムカメラ専門店サンライズカメラのスタッフが紹介します。
目次
CONTAX N1
マウント変更とAFへの移行。
それまでのCONTAXとまったく違うカメラ、CONTAX N1について紹介します。
CONTAX N1の性能とスペック
形式 | 35mmフィルム一眼レフカメラ |
シャッター | B、32秒〜1/8000秒 電子式 縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッター |
露出計 | 評価測光 中央重点測光 スポット測光 |
AE | 絞り優先AE シャッター優先AE プログラムAE |
AF | 5点測距 |
ファインダー | 視野率約95% 倍率約0.73倍 |
レンズマウント | コンタックスNマウント |
使用電池 | 2CR5リチウム電池(Amazon)x1本 |
発売年 | 2001年 |
CONTAX N1は2000年に発売された、京セラ・CONTAXのAF一眼レフカメラ。
それまでのCONTAX一眼レフから、すべての面において革新をみせたカメラです。
最大の特徴はAFを採用したこと。
5点測距のAFは同時代の他社製一眼レフにもひけをとらないもの。
マウントは完全に電子化され、口径もヤシカ・コンタックスマウントから拡大。
デジタル一眼レフを見据え、そのための道は完全に整えられました。
操作系も、MF時代の一眼レフの操作系を濃厚に残したヤシカ・コンタックス時代のカメラから大きく変わり、モダンなコマンドダイヤルが装備されました。
それでいて左肩部のシャッターダイヤルは受け継がれ、以前からのCONTAXユーザーも違和感なく移行可能です。
連射速度は秒間3.5コマ。
専用レンズも50mmと85mmのプラナー単焦点レンズをはじめ、ズームレンズを中心に揃えられました。
CONTAX 645との互換性
そして、このCONTAX Nシリーズは、同時期にリリースされたCONTAX 645との互換性も最初から考慮されています。
新規開発のCONTAX Nマウントは、純正マウントアダプターを介することでCONTAX 645マウントのレンズが使用可能になっています。
CONTAX Nマウントの単焦点は50mmと85mm、400mmとマクロの100mmだけですが、CONTAX 645には35mmのディスタゴンをはじめ単焦点レンズがいくつも用意されているため、より幅広くレンズを楽しむことが可能です。
蜷川実花も愛用した美しいカメラ、CONTAX 645とはデザイン面でも統一感があり、CONTAXが21世紀の新しいカメラを生み出そうとした意気込みが感じられます。
しかしながら、CONTAX Nシリーズが続くことはありませんでした。
N1と普及期のNXだけで、Nシリーズ、ひいては京セラのCONTAXブランドは終わりを告げてしまったのです。
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CONTAX有終の美を飾ったNシリーズ
CONTAX最後の一眼レフ、N1。
なぜNシリーズは終わりを告げてしまったのでしょうか。
ヤシカ・京セラとAF一眼レフ
CONTAXのブランドネームは、CONTAX RTSが発売された1975年以降、ヤシカ、そして京セラのカメラに名付けられていました。
ドイツ・ツァイスのレンズが使えることからも愛用者は多く、CONTAXの高級コンパクトカメラも今なお多くのカメラファンに中古が探し求められています。
しかし、ヤシカ・京セラのCONTAXは、N1のリリースまで本格的にAF化することはありませんでした。
1986年の京セラ230AFから1993年の300AFまで、京セラブランドでAF一眼レフを販売したことはありました。
しかし、少数の機種だけで京セラはAF機から撤退。
CONTAXとしてもフィルム側を動かすことでMFレンズでAFを実現するCONTAX AXを1996年に送り出しましたが、ボディが大きすぎることと高価なこと、そもそもAFが遅かったことから、市場に受け入れられたとは言い難い状況でした。
それでもCONTAX AXは中古で珍重されているのだからまだよいほうで、Nシリーズは中古でも非常にマイナーな存在となってしまいました。
遅すぎたAF対応
そこで、カメラのデジタル化という時代の大転換に合わせて、CONTAXは賭けに出ます。
このN1をはじめとするCONTAX Nシリーズへの移行です。
AF一眼レフ、そしてデジタル一眼レフとして十分なスペックを持ったNシリーズは、起死回生の策となりました。
しかし……。
時は既に遅すぎたのかもしれません。
すでにNikonやCanon、PENTAX、そしてKONICA MINOLTAはそれぞれにAF一眼レフとレンズの資産を豊富に持ち、ユーザーも数多く獲得していました。
そのKONICA MINOLTAでさえ間もなくカメラ事業から撤退してしまう時代です。
イチからAF一眼レフに移行してもらうのは、想像以上に難しいことだったのです。
また、豊富なツァイスのレンズ資産が、マウント変更により活かせなくなることも大きかったといえるでしょう。
ツァイスレンズは高価なため、中古で過去のレンズが使えたら嬉しいもの。
その点、新型のN-1は、もともとのレンズが高く、しかも新製品のため安く中古でレンズを揃えることもできなくなってしまいました。
CONTAX N DIGITALとCONTAXの終焉
2002年、はじめから予定されていた通り、CONTAX N DIGITALが発売されました。
N1はフィルム一眼レフですが、N DIGITALはフルサイズのデジタル一眼レフ。
2002年には高価なフルサイズセンサーを搭載した一眼レフは数少なく、一般に購入できるものはCanon D1sと、Nikon F80をベースにしたコダックDCS Pro 14nしか存在しませんでした。
それゆえ、新時代の幕開けを告げるN DIGITALは諸手を挙げて歓迎されるかに見えたのですが……。
こちらは逆に、早すぎたのかもしれません。
定価は80万円。
まだデジタル一眼レフの普及が端緒につきはじめたばかりの時代です。
高価なうえ、AF一眼レフの開発経験で勝るCanonやNikonに使いやすさでも勝ることはできませんでした。
そしてこのN Digitalも、急速なデジタル一眼レフの進歩の前にすぐに陳腐化。
いまでは中古は完全にコレクターズアイテムになっており、当然ながら性能面で実用は厳しくなって久しいです。
ツァイスが使えるという絶対的利点はあるものの、CONTAX Nシリーズはふるわず、N1やN DIGITALは、2005年の京セラ・CONTAXの撤退とともに姿を消すこととなったのです。
CONTAX N-1を中古で手に入れるなら
それでは、CONTAX N-1を中古で入手するときにはどんなことに気をつけたら良いのでしょうか?
まず基本的なところとして、電子カメラのため内部機構が壊れていたら修理が難しい可能性が高いのは他の中古カメラと同様です。
中古購入時には保証付きのものを、しっかりとチェックした上で、信用のおける中古カメラ店で探すのは前提です。
さて、そのうえで気をつけたいこと。
それがレンズです。
実はN-1は、ボディ自体はそこまで高価ではありません。
しかしCONTAX Nマウントのレンズは、はっきりいって値段が高めです。
標準ズームでも中古は平気で3万円以上はするので、他メーカーの価格に慣れた方は度肝を抜かれるでしょう。
しかし、中古価格が高いのは、それだけレンズの描写がよいことの現れ。
現時点でCONTAX Nマウントのレンズは、最新の部類に入るツァイスレンズです。
最新のツァイスを中古で味わう。
中古でNシリーズを手に入れるときは、ぜひレンズにもこだわってみましょう。
美しいAF一眼レフ CONTAX N1
それでも、ツァイスが使えるAF一眼レフ、CONTAX N1の価値が損なわれるようなことはありません。
これからN-1を中古でぜひ手に入れたい理由。
それがCONTAX 645にも通じる、直線基調の端正なデザインです。
持っているだけでスタイリッシュなることができる美しいカメラは、道行く人が思わず振り返るほどのもの。
そしてカメラファンにとっても、時代に翻弄されたという物語性がこのカメラの魅力を否応なしに高めています。
21世紀に入ってからのフィルムカメラとして、非常に中古の魅力が高いもののひとつです。
時代とともに眠りについたCONTAX Nシリーズ。
CONTAX N1を中古で手に入れて、あなたの手元で蘇らせてみませんか?
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記事修正履歴
2021年3月29日
誤字修正
京セラのカメラ事業撤退についてソースを追加
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