Canon (キヤノン) FTb/徹底解説してみた!”よい意味で普通”が持ち味のいぶし銀MF一眼レフカメラ
今回は、Canonの中古フィルム一眼レフカメラ、Canon FTb(キヤノン FTb)について紹介します。
いまでもミラーレス一眼カメラをはじめ、多くのカメラ製品を送り出し続けているCanon。
そんなCanonがマニュアルフォーカスの時代に発売した一眼レフカメラのなかでも、Canon FTbは代表的な機種のひとつです。
なんといっても特徴は、よい意味で普通、それでいて押さえるべきところをしっかりと押さえたカメラであること。
巻き上げレバーやシャッターダイヤルといった操作部品の配置はとてもオーソドックスで、マニュアル操作の中古フィルムカメラへの入門にもぴったり。
機械式シャッターや内蔵露出計はとてもタフで、発売から50年以上経った中古品でも問題なく動作するものが当たり前に存在しています。
Canon F-1やAシリーズのような派手さはないものの、使えば使えば味が出るいぶし銀のカメラ。
Canon FTbはいったいどんなフィルムカメラなのでしょうか?
目次
2024年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ。一度は手にしたい逸品!
FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
Canon FTb(キヤノンFTb)
まずはCanon FTbがどんなフィルムカメラなのか、数字に表れるスペック面からみていきましょう。
Canon FTb(キヤノンFTb)のスペック・性能
↑Canon FTb(キヤノンFTb)
↑Canon FTb-N(キヤノンFTb-N)
形式 | 35mmフィルム一眼レフカメラ |
シャッター | B、1秒~1/1000秒 機械式 横走り布幕フォーカルプレーンシャッター ストロボ同調速度1/60秒 |
露出計 | TTL開放中央部分測光 CdS受光素子 追針式 |
露出 | マニュアルのみ |
ファインダー | 固定式 視野率約94% 0.85倍 |
レンズマウント | Canon FDマウント |
対応レンズ | Canon FDレンズ New FDレンズ |
電池 | MR-9水銀電池 x1 ※販売終了品のため、代替電池PX-625(Amazon) もしくはボタン電池用アダプター(Amazon)にて代替 |
発売年 | 1971年 1973年 FTb-Nにマイナーチェンジ |
参考文献:
「FTb – キヤノンカメラミュージアム」(2023年3月31日閲覧)
「FTb-N – キヤノンカメラミュージアム」(2023年3月31日閲覧)
Canon FTbが登場するまで
Canon FTbは、1971年の3月に登場した、マニュアルフォーカスのフィルム一眼レフカメラです。
この1971年は、Canonの一眼レフカメラにとってとても重要な年。
もともと1960年代初頭まで、高級なレンジファインダーカメラではNikon(ニコン)とともに日本のトップメーカーだったCanonですが、一眼レフカメラにおいては立ち遅れていました。
もちろん大手メーカーの一角として、Canon FX、Canon PELLIX、Canon FTといった一定水準以上の一眼レフカメラを送り出してはいましたが、不動のプロ機Nikon Fや、旭光学(PENTAX)やミノルタの大衆機に比べると、その時代のCanonの一眼レフはどこか不明瞭な立ち位置のカメラだったといわざるをえないでしょう。
ですがCanonも手をこまねいていたわけではありません。
この1971年3月、Canonは5年の歳月を掛けたプロ向け35mm一眼レフカメラ「Canon F-1」(旧F-1)を発売。
↑Canon F-1(旧F-1)
その後の歴史はカメラ愛好家に知られている通りで、Canonの一眼レフカメラは一気にプロ機種のシェアをNikonと二分するようになるのです。
さて。
この記事で紹介しているCanon FTbは、じつはCanon F-1(旧F-1)と同時に発売した一眼レフカメラなのでした。
FDマウントの中核を担う一眼レフ
プロ向けMF一眼レフのCanon F-1(旧F-1)に対し、Canon FTbはあくまでアマチュア向けのカメラです。
違いがわかりやすい点としては、Canon F-1が当時のプロ向け35mm一眼レフカメラの条件であった交換式ファインダーを備えているのに対して、Canon FTbは固定式ファインダーであることが挙げられるでしょう。
そのほかの点も、カタログスペックだけを見ればCanon FTbはとてもベーシック。
1/2000秒までのメタルフォーカルプレーンシャッターを備えた旧F-1に対して、Canon FTbは1/1000秒までの布幕シャッター。
過剰なまでに多彩なアクセサリーが揃えられたCanon F-1に対して、Canon FTbの拡張性は限られています。
でも。
交換式ファインダーや、1970年代としてはハイテクである無人撮影装置がアマチュアユーザーに必要だったでしょうか。
いっぽうで撮影に必要な機能については妥協はみられません。
そう、Canon FTbがすごいのは、Canon F-1から不要な点を省いていながら、カメラにとって本質的な点は一切省略していないということなのです。
↑ボディ底面にモータードライブのカップリングなどもなくシンプル
中級機よりもあきらかにワンランク上のカメラ
賞賛に値するのは、カメラとしての構造に対して、一切の手抜きが見られないということです。
カメラを持って「精密だ」と感じるのはどんなときでしょうか?
サンライズカメラ スタッフの私にとってはカメラから「剛性」を感じるのがそんなときです。
この剛性感は、出そうとして出せるものではありません。
外装のトップカバーとダイキャスト製フレームがしっかりと嚙み合っている。
よい金属素材が使われている。
操作部品にあそびやガタを感じない。
そういった、工業製品として本当に品質がよいカメラだけが、手に持ったときのかっちりした剛性感をかもし出すことができるのです。
Canon FTbは、そんな良好な感触を味わえる数少ない中古フィルム一眼レフカメラのひとつです。
Canon FTbはジャンク品になるとともすれば1000円以下で売られてしまうこともままあります。
でも、そんな中古フィルムカメラのなかにも、本来はハイレベルな精密さを持ったものが混ざり込んでいます。
Canon FTbはまさに、日本製精密機器のよい時代をいまに伝える中古フィルムカメラのひとつなのです。
経年変化の少ないシャッターと電気露出計
作りのよさについて特筆すべき点が2つあります。
シャッターと露出計です。
Canon FTbのシャッターは布幕の横走りフォーカルプレーンシャッター。
制御はバネとゼンマイによる機械式です。
この形式のシャッターはとくに、機種によっては整備が行われていないとスローが粘ったり、幕自体が劣化したりしているものが散見されます。
ですがCanon FTbのシャッターは、同じくらいの年代の中古フィルム一眼レフカメラのなかでは比較的劣化しにくく、軽快に動いている印象があります。
また露出計についても、電池が液漏れさえしていなければ、ネガフィルムには十分な精度でメーター指針が動くものが多い印象です。
この信頼性は、Canon FTb発売時点ですでに事務機器などで地位を築いていたCanonの強みがカメラにフィードバックされたものなのかもしれません。
素性がよいということは整備したときもより良好な状態に戻しやすいということ。
素材の面でも良好なCanon FTbは、中古のフィルム一眼レフカメラを探すとき、じつはねらい目な機種といえるかもしれません。
巻き上げの感触は特筆レベル
カメラの剛性感をはじめ、つくりのよさについて言及しましたが、巻き上げの感触の良さについては同時代のアマチュア向けフィルム一眼レフカメラではトップクラスかもしれません。
剛性感だけをみれば、プロ向け以外の機種ではCanon FTbよりも日本光学のNikomat FTNのほうが上です。
ですが、Nikomat FTNの巻き上げの感触は正直いってあまりよくありません。
これは、Nikomat FTNがユニット化されたコパルスクエアSを使用したカメラであることと関連しているのでしょう。
コパルスクエアを用いたカメラは、どうしてもコパルスクエアっぽい巻き上げ感触になってしまうというところがあります。
それに対して、Canon FTbの巻き上げ感触はしっとりしていて最高です。
巻き上げの重さが最初から最後まであまり変わらず、ゴリゴリしたところもない。
構造的にはそれまでのCanon製一眼レフのものを受け継いでいることから、多少保守的であることがプラスに働いているのかもしれません。
残すべき機能をきちんと残した切り分けのうまさ
ここまでカメラとしての質の面にばかり着目してきましたが、機能面についてももちろん充実しています。
もちろんCanon F-1(旧F-1)と比較してしまうと、Canon FTbは機能が省かれたカメラという印象を受けてしまうかもしれません。
でも。
ライバルとなるカメラと比較すると、Canon FTbの強みがよくわかるのです。
それを最も象徴しているのが、ボディ前面にあるセルフタイマーレバー。
このレバーは絞り込みレバーを兼用しています。
マウント側に倒すとレンズの絞りを絞り込んで被写界深度の確認が可能。
そしてその状態でレバーと同軸のスイッチをスライド(回転)するとミラーアップするのです。
絞り込みプレビューだけなら同時代のアマチュア向け一眼レフにも可能なものはいくつもありました。
でもミラーアップとなると、できない機種は少なくありません。
わかりやすい例としてはASAHI PENTAX SPはミラーアップできません。
このあたりの機能は、一定以上の水準の一眼レフカメラを作るときにどの機能は残した方がよいかということを、Canonがきちんと認識していたことの証明だといえるでしょう。
Canon FTbは切り分けのうまい一眼レフカメラでもあったのです。
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Canon FTbのバリエーション
Canon FTbは、1971年に登場した最初のモデルと、1973年に登場したマイナーチェンジモデル「FTb-N」に大別できます。
ここではそれぞれの特徴を簡単に見ていきましょう。
Canon FTb(キヤノンFTb)
1971年に登場したモデルです。
外観上は巻き上げレバーやセルフタイマーレバーにプラスチックの指当てがないのが特徴です。
Canon FTb-N(キヤノンFTb-N)
Canon FTb-Nは1973年に登場したマイナーチェンジモデルです。
巻き上げレバーとセルフタイマーレバーにプラスチックの指当てがつきました。
見た目からわからない重要な改良点として、ファインダー内にシャッター速度が表示されるようになりました。
多彩なFDレンズのオールドレンズ母艦としておすすめ
さて。
このCanon FTbはCanonのマニュアルフォーカス時代のレンズマウント、FDマウントを採用。
FDレンズ・New FDレンズのオールドレンズ銘玉を味わうことが可能です。
製造数の少ない明るい単焦点からマイナーなオールドズームレンズまで。
ぜひCanon FTbで多彩なオールドレンズをフィルムで使ってみませんか?
ここからは少々、Canon FDマウントのオールドレンズで撮ることができる作例を紹介します。
(ボディは他機種を使用)
Canon New FD 50mm F1.4の作例
Canon FTbとは年代がずれますが、Canon New FD 50mm F1.4は1980年前後のCanonを代表する標準レンズ。
作例は雨樹一期さんによるものでボディはCanon New F-1を使用しています。
オーソドックスな標準レンズで、Canon FTbと同年代のFD 50mm F1.4 S.S.Cと並び最初の一本として不足はないオールドレンズですね。
↓↓↓作例の続きはこちら↓↓↓
[オールドレンズ撮り比べ14] Canon New F-1 / New FD 50mm F1.4の実力をまだあなたは知らない(作例あり)
Canon New FD 85mm F1.2 Lの作例
新しめのNew FDレンズ、Canon New FD 85mm F1.2 Lの作例です。
こちらも雨樹一期さん撮影、ボディはCanon New F-1です。
高級ラインの赤鉢巻レンズ。
1980年代にして性能もボケ味も抜群です。
↓↓↓作例の続きはこちら↓↓↓
[オールドレンズ撮り比べ15] Canon New FD 85mm F1.2 Lはポートレートにかなり相性の良いボケ感を持った有能レンズ(作例あり)
Canon New FISH-EYE FD 15mm F2.8の作例
魚眼レンズです。
撮影はいくた りかさん、ボディはミラーレス一眼カメラのSONY α7Rにマウントアダプターで取り付けています。
↓↓↓作例の続きはこちら↓↓↓
[オールドレンズ探訪記] めちゃくちゃ面白い! 魚眼レンズCanon New FISH-EYE FD 15mm F2.8でマンネリ解消! (作例あり)
Canon FDマウントのレンズには相当なバリエーションがありましたが、オートフォーカスへの移行時にマウントを変更したため、近年まであまりきちんと評価されてこなかった印象があります。
オールドレンズを楽しむうえで、FDマウントにはまだまだ鉱脈が残されているかもしれないですね!
実用にぴったり!Canon FTbは上質な一眼レフカメラ
Canon FTbは、プロ向けのフィルムカメラ以外にもいいカメラがたくさんあるんだ!ということを教えてくれるフィルムカメラかもしれません。
Canon F-1やNikon Fといったプロ向けフィルムカメラがよくできているのは当然。
でもじつは、このCanon FTbのような中級機種も、21世紀のいまからは想像できないくらいの手間をかけて作られた精密機器なんです。
中古フィルムカメラの魅力、それは精密な機器を自分の手で「扱う」ということ。
一見派手ではない中古フィルムカメラを、これからあなたの相棒へと育てていってみませんか?
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