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[オールドレンズ探訪記] Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8 ツァイスなのにウルトロン!?(作例・撮影Tipsあり)

こんにちは、雨樹一期(あまきいちご)です。オールドレンズ探訪記と題しまして、いくた りかさんと共にさまざまなレンズをミラーレス一眼カメラで撮影して作例をご紹介していくコーナー。

今回ご紹介するのは「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」になります。
あらためて僕はドイツのレンズのファンだなと感じました。

【オールドレンズ探訪記 前回の記事はこちら】

【オールドレンズ探訪記】Schneider Kreuznach C-Curtagon(シュナイダー クルタゴン) 35mm F2.8 M42で色鮮やかな春を満喫(作例・撮影Tipsあり)

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Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8はちょっとくせ者のレンズ

「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」ですが、ややくせ者レンズになりますね。

というのも、旧ソ連製のレンズかなと思ったくらい、描写が安定しませんでした。緩いのか硬いのか、シャープなのかソフトなのか、ちょっとよく分かりません(笑)。

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8は「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 MMJ」のようにいきなりマックスの表現をしてくれるオールドレンズではなく、スルメのような噛めば噛むほど味がでるオールドレンズです(笑)。

そこがまたオールドレンズマニアとして楽しめた要因ですね。

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)について

さて、ここでCarl Zeiss ULTRON 50mm F1.8がどんなレンズなのか解説です。

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8とは

焦点距離は標準の50mm、絞りは開放でF1.8。撮影最短距離も45cmなので、テーブルフォトにも使えますね。

ミラーレス一眼レフカメラに取り付けるためのマウントアダプターはM42となっています。
M42のオールドレンズは定番ですね。オールドレンズデビューの初期に購入したのですが、M42を使用するレンズにも頻繁に出会います。

ミラーレス一眼レフカメラでオールドレンズを使うなら、マウントアダプターは必須なのですが、レンズごとに接合部の形が違います。
新しいオールドレンズを購入すれば、マウントアダプターも買わなくちゃいけません。数千円で購入は出来るのですが、同じマウントアダプターで使えるって何だかお得です(笑)。

※サンライズカメラ スタッフ注:Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8はM42マウントだけでなくイカレックスバヨネットマウントのものもありますが、その点については記事の最後で解説します。

マウントアダプターでの撮影時の注意点

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8をミラーレス一眼カメラで撮影に使う際の注意点ですが、絞りを設定してもそのまま撮影すれば開放になってしまいます。開放以外で撮影する際は、上記の写真のように、リングを回転させて撮影する必要があります。少し使いにくさはありますね。

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)の作例

それでは、Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8+ミラーレス一眼レフカメラの作例、いってみましょう。
今回もミラーレス一眼レフのボディはSONY α7を使用。SONY α7 III も持っていますが、オールドレンズと使用する時はSONY α7を使います。

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8の魅力はクセの強さと独特のボケ味

まずは開放で撮影した作例。
なかなかの色のノリとシャープさですね。F1.8ではありますが立体感もあります。
ボケ感が独特で、お花が浮かび上がっています。奥行きを感じるボケ味。

心がグッと掴まれますよね。他のツァイスを名乗るレンズの立体感とはまた違います。

かと思いきや。こちらの作例はゆるふわ。光のベールに包まれているみたい。そしてちょっとグルグルボケ?
何日かに分けて作例を撮影したのですが描写が変化しました。

逆光に弱いというのか、光の入れ方によって描写がガラッと変わるんですね。ボケの雰囲気も違います。

少しアングルを変えて光の量を調整するだけでも、ガラッと変わりました。この金網でよく撮影しているので、その違いがよく分かります。
ツァイスを名乗るレンズでも、以下の「Carl Zeiss Jena Tessar 50mm F2.8」とは別物。

【オールドレンズ探訪記】Carl Zeiss Jena Tessar 50mm F2.8でドラマチックな質感を体験しよう(撮影Tipsあり)

ゴーストを出してみた作例

ゴーストも光の調節で変わりますね。ド逆光での撮影は適さないかもしれません。
うまく調整するだけで虹が横切ります。

コントラストも本流のカール・ツァイスレンズと比べると控えめですね。
ここらへんはRAW現像でどないでもなるのですが、僕はオールドレンズの持つ個性で撮影したい派です。

ホワイトバランスを変えた作例

ここまでの作例写真は補正なしです。以下の作例はホワイトバランスを暖色よりにしています。モードでいえば日陰マークになります。

こうして作例をみると、こってりとした印象はありませんね。柔らかめなふわっとした描写。まれに「おっ!これいい!!」と思える写真に出会えます。
よく『その場の空気まで写してくれる』なんて紹介されるオールドレンズはありますが、「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」はそれを自分でしっかりと閉じ込めてあげる必要があります。

絞り値での変化

F1.8の開放で撮影。

F11で撮影。

拡大してみるとF11の作例はかなりシャープになっていました。

F1.8で撮影。

F8で撮影。

F16で撮影。

絞るほど硬くなるのは当然ですが、開放で撮影した作例はやっぱり緩いかな。
ボケ感も特徴的なんですよね。言葉で表現しにくいんですが、他のレンズにはない緩さと硬さが混じったようなボケ。

室内で撮影した作例

室内でも作例を撮影しました。黒がグッとしまる感じではなく、なめらかな階調。

撮影Tips「撮影する時間帯でガラッと変わる描写」

次は野外で花を撮影。時間帯的には太陽が真上にある真昼間。ホワイトバランスをオートで撮影。
あれれ。いやー、鮮やか!こってりしましたね。

コントラストも強くなった気がします。

まるで絵画みたいな色の乗りですね。
ボケ感はやっぱり不思議なんですよね。グルグルしてるような、中心に向かってきてるような。
「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」でしか撮れない一枚ってありますよね。

この作例は絞りF8で撮影しています。ピントもバチバチでシャープ!

太陽を入れるとやっぱり光の幕がかかってる感じがしますね。

 

同じレンズとは思えない変化です。「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」の個性をそのままに使いたいのなら、昼間にこってり撮って、夕方はふんわり撮るのがオススメですね。

 

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)を使って感じたこと

無理くり褒めるというのは苦手なので、使った正直な感想です。
いつもより、うなりながら撮影したレンズです。カール・ツァイスのオールドレンズって僕の中では安定してどっしりしているので、一枚撮ればもう個性が分かるのですが、「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」はなかなか個性を掴めませんでした。

ただね、この日はシグマのアートレンズでキレキレシャープな写真も撮ったんですが、このピントが少し外れた「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」の写真の方が気に入ってます。

ウルトロンがシャープじゃないというわけではなくて、ボケ感がいいんですよね。ただボケるだけでなく、中心にある被写体を浮かび上がらせる、持ち上げるようなボケなんです。
「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」にしか撮れない一枚が確実に存在します。そこはかなりマニア受けするのではないでしょうか。

余談ですが、完璧な写真ってなんだろなーと考えちゃいますよね。性能面では上位になる「SONY α7 III +SIGMA 85mm F1.4」で撮った写真がつまらなく見えてしまって、、ウルトロンの方がいいやんって。

しっかり撮れたらそれで完結ではないんだなぁと。
いや、それが前提での遊びがあればいいんだなと思います。

オールドレンズが現行のレンズに入る隙間でもありますよね。
どれだけ性能の良いレンズでも、オールドレンズの個性やクセの面白さには敵いません。

仕事での撮影となれば使うのはほぼほぼ現行レンズですけどね。野外での家族撮影ではオールドレンズも少し使いますが、メインではなくおまけ。
でもそのおまけの中の一枚が一番気に入ってもらえることもよくあります。

何年間も続けてきたのに、まだ学べることがあるんですよね。写真は奥深い。
自分の写真も完成させることなく、らしい写真は求めつつも、進化していきたいです。

そこの表現にはオールドレンズやフィルムカメラは欠かせない存在になってきます。

僕の場合はその中に「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」のようなオールドレンズがスパッと入り込んでくるかもしれません。

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Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8について簡単な解説

ここからは、今回作例の撮影に使用したレンズ、Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8について、中古フィルムカメラとオールドレンズのサンライズカメラ スタッフが簡単に解説します。
カール・ツァイスなのにウルトロン!?
なぜそうなったのでしょうか。

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8

マウント M42マウント
もしくは
イカレックス用バヨネットマウント
構成 6群7枚[1]『クラシック専科 No.38 プラクチカマウント』1996年、朝日ソノラマ、p.52
メーカー Zeiss Ikon

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8という名前は、少しレンズについて知っていれば違和感たっぷりに感じられるはず。
それもそのはず、ULTRON(ウルトロン)といえばVoigtlander(フォクトレンダー)のレンズブランドなのです。

では、なぜ、カール・ツァイスのウルトロンが生まれたのでしょうか?

理由は明白、このレンズはツァイス・イコンにより発売されたからです。
フォクトレンダーは1965年、ツァイス・イコンと販売組織を統合。
そして1969年にフォクトレンダーはツァイス・イコンへ吸収されたのでした。[2]竹田正一郎「フォクトレンダー小史」『季刊クラシックカメラ No.15』2002年、双葉社、p.79

さて、このCarl Zeiss ULTRON 50mm F1.8は、そんなバックグラウンドのもとで、Zeiss Ikonの一眼レフカメラ、Icarex 35(イカレックス35)の標準レンズとして製造されたものとなります。

Icarex 35S
↑Icarex 35S(画像はバヨネットマウントのモデル)

構成は6群7枚。
前玉が凹レンズであることで知られています。

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8

イカレックス35にはバヨネットマウントのモデルとM42マウントのモデルがあり、今回使用したのはM42マウントのボディへ供給されたもの。
もちろん本レンズにはバヨネットマウントのものもあります。

M42マウントのマウントアダプターに比べて高めですが一応はミラーレス一眼カメラに取り付けることも可能。
M42マウントのモデルは中古人気も高いので、もし価格が安かったらバヨネットマウント版を使ってみるのもいいかもしれないですね。

本レンズはULTRONというネーミング、凹レンズが前玉にある独特の構成、そしてドイツ製の銘レンズであるということなど中古で人気が集まる条件が揃っています。
通好みのレンズということで今後価格が下がることもあまりないのではないでしょうか?

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8

とはいえ、イカレックス35が高級機ではなかったこともあり、ライカレンズのように価格が何十万円もする状態にはなっていません。
一味違うレンズを使いたい方にとって中古レンズの選択肢としておすすめできます。

一眼レフ用のULTRON(ウルトロン)

ところで2022年現在、一眼レフ用のULTRON(ウルトロン)を名乗るレンズは、コシナ・フォクトレンダーから現行品として販売されています。

そもそも2002年発売のULTRON 40mm F2 Aspherical SLにはじまるスペックのレンズですが、各社がミラーレス一眼カメラへ移行し一眼レフが縮小している昨今にあって、現行品として存在しているのは貴重であるといえます。

構成も見た目もまったく異なりますが、実用性と趣味性を兼ね備えたレンズとして、こちらもぜひ使ってみたい一本ですね。

今回使用したミラーレス一眼カメラについて

今回の作例撮影でも、ミラーレス一眼カメラは中古価格が手頃なことが魅力なSONY α7 初代を使いました。
買収先のメーカーで使われているブランドということで、αとULTRONは同じ立ち位置にありますね。

こういったオールドレンズを味わううえでは――

中古で廉価なフルサイズのミラーレス機が欲しい方にはSONY α7が。 新品でより高性能なフルサイズミラーレス機が欲しい方にはSONY α7 IIIα7 IVがおすすめです。

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8は狙い目オールドレンズ

Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8の作例をお届けしました。

西ドイツのカメラにとって波乱の時期だった1970年代初頭。
そんな時代の空気を閉じ込めたかのようなこのレンズ、あなたのミラーレス一眼カメラに取り付けたらきっと他の愛好家の目を惹くこと間違いないでしょう。

状態にもよりますが、ライカレンズほどには中古価格も高くないので、もしかしたらいまのうちに買っておいたほうがよい、狙い目の中古レンズといえるかもしれないですね。

オールドレンズ探訪記 次回の記事はこちら

オールドレンズ探訪記、次回は、もとはアリフレックス用のシネレンズをM42マウントへコンバートした改造レンズ。
TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6の作例を紹介します!

イギリス製のシネレンズ、本当に素晴らしい写りですよ!
ぜひご覧ください。

[オールドレンズ探訪記] TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6は晴れた日に持ち出したくなるシネレンズだった

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脚注

脚注
1 『クラシック専科 No.38 プラクチカマウント』1996年、朝日ソノラマ、p.52
2 竹田正一郎「フォクトレンダー小史」『季刊クラシックカメラ No.15』2002年、双葉社、p.79
著者紹介: 雨樹 一期(Ichigo Amaki)

フィルムカメラ・トイカメラの多重露光などで作品撮りの傍ら、大阪・東京を中心に全国でフィルムカメラワークショップを開催。
2024年9月8日ラジオ番組【編集長 稲垣吾郎】(文化放送)に出演するなど、精力的に活躍中。 その他、カメラの個人レッスン、ペット・家族の撮影をしています。 基本、娘と猫と珈琲とカレーに生かされてます。

HP : 雨樹一期写真事務所
blog : フィルム寫眞手帖

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