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[オールドレンズ探訪記] シネレンズを日常撮影に!TAYLOR-HOBSONの本当の実力とは?

こんにちは、雨樹一期(あまきいちご)です。オールドレンズ探訪記と題しまして、いくた りかさんと共にさまざまなレンズをミラーレス一眼カメラで撮影して作例をご紹介していくコーナー。

今回ご紹介するのは「TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6(テーラー・ホブソン クック キネタル)」になります。
イギリスのテーラー・ホブソン社が製造です、っていうか僕もはじめて聞いた名前です。

元は映画撮影用のレンズ、いわゆるシネレンズで、アリフレックス(Arriflex)のために作られたものとのこと。
あまり世に出回らないオールドレンズですね。

【オールドレンズ探訪記 前回の記事はこちら】

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TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6(テーラー・ホブソン クック キネタル)について

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6は映画などを撮影するのに使われた、いわゆるシネレンズですね。

焦点距離は75mm、開放はF2.6。
ただしシネレンズらしく、F2.6のほかにT2.8も併記されています。

レンズの構造も少し変わっていますね。ピントリングがボコッとしてます。
ミラーレス一眼カメラに取り付けるためのマウントアダプターはM42となっています。

M42のオールドレンズは定番ですね。前回ご紹介した「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」もM42でした。

※サンライズカメラ スタッフ注:本レンズはおそらくアリフレックス(Arriflex)用のものをM42マウントへ改造したものとなります。

独特の外観ではありますが、使いにくさなどは感じませんでした。

…あ、いや。そんなことはないですね。絞りの数字もありませんもんね。
ピント合わせるのにも、どこを回せばいいのやらですよね。カメラ側の凸凹が二つ連なった部分を回して、ピントを合わせます。

※サンライズカメラ スタッフ注:絞りリングはレンズ本来のもの、ピントリングは改造されたものとなります。

使ってみればすぐ慣れます。いろんなレンズを使ってきたからか、僕が使いにくさに鈍感になってきたかもしれませんが。

ミラーレス一眼カメラ用のマウントアダプターは通常のM42マウント用がそのまま使用できました。

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6の作例

それでは、TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6+ミラーレス一眼カメラの作例、いってみましょう。
今回もミラーレス一眼カメラのボディはSONY α7を使用。SONY α7 III も持っていますが、オールドレンズと使用する時はSONY α7を使っています。

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6は使いやすい描写

まずは開放で撮影した作例です。
良い、とても良いです。ピント面はキリッとシャープさもありつつ、ボケの雰囲気も好きです。

コントラストの強さも適度にありつつ、鮮やかな描写。
焦点距離が75mmなので中望遠になりますが、とても使いやすいと感じました。

逆光での描写を試した作例

逆光で撮影の作例。
少しふわっとしているけど、逆光に弱いレンズではない印象。

玉ボケの作例

僕の好きな玉ボケ。これもまた極端なレモン型にはなっていませんね。

前回ご紹介した「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」を、「TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6」で撮影。ややこしいですが。

いいボケ感ですよね。
全体的なバランスがとても良くって、癖の強さもなくって本当に使いやすいです。

さまざまな描写を試せるシネレンズ

オールドレンズなので描写はエモい系ではありますが、

ハイキー(明るく)に撮ればふんわり優しい描写にもなります。
初めて使ったテーラー・ホブソン社のレンズですが、恐るべし性能。

F8などに絞って撮影しても硬くなり過ぎないのもポイントです。

オールドレンズをご紹介するためにこうやって作例用の撮影をしているのですが、「TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6」はその撮影枚数が多かったです。

僕がこのオールドレンズの描写を気に入っちゃってる証拠ですよね。ついつい使っちゃう。

基本的にRAW現像してない写真を載せていますが、ホワイトバランスなどは撮影時にいろいろ変えています。
カメラ側の設定で、コントラストを調整したり、鮮やかにすることもありますが、極端に変えることはありません。
露出補正で明暗は頻繁に変更してます。

さわやか、ふんわり、こってり、ノスタルジー、どんな描写もサラッとこなしてくれます。
表現の仕方として合っているかわかりませんが、絵作りがしやすいレンズですね。

前回作例をご紹介した「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」と同じ場所で撮影しています。

この花の写真(芝桜かな)に関しては、「Carl Zeiss ULTRON 50mm F1.8(カール・ツァイス ウルトロン)」の方が好きですね。ぜひ、見比べてください。

花を撮影した作例

続いて、同じお花(アガパンサス)を、アングルなどを変えて撮影してみました。
個人的には3枚目が好きです。

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撮影Tips「光を入れ込んだ写真が映える」

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6」は光を入れ込んだ写真が映えますよね。
明るいなーとか、眩しいなーとか、光がキレイだと感じます。

ボケ部分の、光の雰囲気がほんと好き。

わざとどこにもピントを合わせないで撮りました。あの自転車置き場の陽だまり感、めっちゃ良くないですか?
ちょっとマニアック過ぎますか(笑)?

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6を使って感じたこと

シネレンズ、TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6の感想ですが――

晴れた日に持ち出したくなるレンズ

とにかく、晴れた日に持ち出したくなるレンズです。いまの新緑の季節なんかに最適かもしれませんね。
もちろん、バランスが良いオールラウンダーレンズなので、そこに限らず使って頂けるかと思います。

オールドレンズあるあるの『癖』などはあまり感じなかったので、僕の書いた記事だけでは「物足りない?」と感じるかもしれませんが、オールドレンズらしい柔らかさやエモさはあります。

だけどシャープ感もあり、ボケ味も良い。

焦点距離の75mmはポートレート撮影にも最適だし、常用オールドレンズとしても使って頂けます。

背景を明るめにすると美しい

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6」にオススメしたい撮り方は、背景を明るくすること。
ちょっと拡大↓

光がめっちゃキレイでしょ。

オールドレンズのコラムを書くときって、いいレンズだとどうしても文章が少なめになっちゃいます。
ここがダメって部分がある方が書きやすい(笑)。
あえて言うなら、一番はじめに書いたように絞りやピントの調整リングでしょうか。

ほんとそれくらいで、描写に関しては「TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6」では欠点が見つかりませんでした。
撮影した写真をPCで大きくして見ると、さらにその描写力に驚かされます。

全体的なバランスが優れているんですよね。フォクトレンダーのオールドレンズもバランスが良いですが、「TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6」はさらに光がキレイ。

もちろん、撮影条件が良かったというのもありますけどね。

インスタなどでは誇張したゴリゴリの雰囲気写真が多いですが(それはそれでいいのですが)、「TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6」はそれに比べるとナチュラルですね。

だから飽きがこない。初見で気に入った写真はずっと見ていられるし、ずっとお気に入りになることは間違いありません。

また欲しいオールドレンズが増えてしもうた。

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TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6について簡単な解説

ここからは、中古フィルムカメラとオールドレンズのサンライズカメラ スタッフが、今回作例を撮影したアリフレックス(Arriflex)用シネレンズ、TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6について簡単に解説します。
……これまでこのシリーズに加筆してきたレンズ解説に比べてマイナーな製品で専門外ではありますが、少しでもこのレンズがどんなレンズなのか伝われば幸いです。

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6

マウント Arriマウント(アリフレックス / Arriflex用)
※今回使用したものはM42マウントへ改造品
メーカー TAYLOR-HOBSON(テーラー・ホブソン)

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6は、イギリスの光学機器メーカー、テーラー・ホブソンで製造された映画撮影用のレンズ(シネレンズ)。
本レンズはおそらく本来はアリフレックス(Arriflex)用のもので、今回作例に使用したものが当店サンライズカメラに入荷した際は、最初の紹介の通りM42マウントに改造されていました。

作例でもわかるとおり、望遠寄りのレンズということもあってイメージサークルは(いわゆる)35mmフルサイズのイメージセンサーをカバーしています。

シネレンズ(映画用レンズ・動画撮影用レンズ)

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6

さて、ミラーレス一眼カメラが登場してオールドレンズに注目が集まるようになってから、シネレンズ、つまり動画撮影・映画撮影用のレンズにも注目が集まるようになりました。
2000年代まではCマウントやDマウントのレンズにはだれも見向きもしていなかったのに対して隔世の感があります。
(2020年代、少々中古価格が下がりつつある気もしますが……)

とはいえ、いわゆるシネレンズといっても非常に幅広い製品が存在します。
オールドレンズとして使われることが多いのはCマウント、そしてPENTAX Qシリーズなどで使いやすいDマウントのもの。
これらは廉価なもの、民生用のものも多く、性能も良かったり悪かったりでした。

いっぽう、今回撮影したTAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6は違います。
アリフレックス(Arriflex)といえばかつて業務用として用いられたムービーカメラの代表格。
そのこともあって、そのために製造されたレンズの描写も別格です。

今回、TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6の作例がどれも非常に美しかったのはそのためもあるのでしょう。

TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6

なお、テーラー・ホブソンの歴史については以下の公式Webサイトに詳しく書かれています。

TAYLOR-HOBSON 日本語公式Webサイトより「テーラーホブソン史」(2022年6月9日閲覧)

それによれば、テーラー・ホブソンのレンズ部門は1998年に分離、2022年現在、Cooke Optics(英語公式サイト 外部リンク)として映画用レンズを販売しています。

F値とT値について

ところで、TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6には「T2.8」と「F2.6」が併記されています。

静止画を撮影するカメラ(スチルカメラ)用のレンズは多くの場合F2.8のような「F値」だけが表記されています。
今回のレンズでは「F2.6」が相当します。

では、もうひとつの「T2.8」はなにかというと、これは「T値」というものです。

具体的には

  • F2.6(F値):レンズの焦点距離を有効口径で割った比の値
  • T2.8(T値):レンズを実際に通り抜ける光の明るさを表す値

を意味しています。

ようするに、撮影に使用する場合には「T2.8」のほうを意識して使えばよい、ということです。

このTAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6のようなシネレンズのほか、スチル用(静止画用)のレンズでもF値(焦点距離と有効口径の比)と実際に通り抜ける光の量が大きく異なる場合、T値が併記されることがあります。

当サイトでこれまでに紹介したレンズでは、MINOLTA STF 135mm F2.8 [T4.5]が該当していますね。

シネレンズの関連記事

アリフレックス(Arriflex)用のレンズについては触れていませんが、こちらの記事でシネレンズについて解説しています。

今回使用したミラーレス一眼カメラ

今回の記事でもこれまで同様、ミラーレス一眼カメラのボディにはSONY α7(初代)を使用しました。
ミラーレス一眼カメラ+オールドレンズを楽しむなら――

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シネレンズを使ってみませんか?

アリフレックス(Arriflex)用のシネレンズ、TAYLOR-HOBSON Cooke Kinetal 75mm T2.8 F2.6の紹介でした。
最高級のシネレンズの描写、どうだったでしょうか?

これまでの当サイトの中古オールドレンズ関連記事に対してとてもマイナーなレンズでしたが、逆に貴重なレンズの描写がどんなものなのか、参考になったのではないかと思います。

テーラー・ホブソンといえばカメラマニアがうなる名ブランド。
シネレンズにはまだまだ知らない銘玉がありますね!

次回もミラーレス一眼カメラでオールドレンズの作例をご紹介していきます。
お楽しみに!

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著者紹介: 雨樹 一期(Ichigo Amaki)

フィルムカメラ・トイカメラの多重露光などで作品撮りの傍ら、大阪・東京を中心に全国でフィルムカメラワークショップを開催。
2024年9月8日ラジオ番組【編集長 稲垣吾郎】(文化放送)に出演するなど、精力的に活躍中。 その他、カメラの個人レッスン、ペット・家族の撮影をしています。 基本、娘と猫と珈琲とカレーに生かされてます。

HP : 雨樹一期写真事務所
blog : フィルム寫眞手帖

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