まだまだ使える日本製二眼レフカメラ名機&メーカー9選+α
中判カメラのなかでも独特な見た目で人気が高い二眼レフカメラ。
中古の中判カメラというと一眼レフカメラの人気がぐんぐん上がっている印象がありますが、二眼レフカメラにもそれに負けない魅力がありますよ。
軽快に撮影できること、よい意味で構造が単純なので壊れにくいこと。
そしてなにより、日本製のかずかずの名機を味わうことができること。
1950年代、日本ではかずかずの二眼レフカメラがつくられました。
この記事では、そのなかでも「実用」をキーワードに、おすすめの日本製中古二眼レフカメラを紹介します!
目次
2023年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ、迷ったらこの一台!
価格と性能のバランスが取れた名機です!
どこでも持ち歩ける相棒です。
おすすめの日本製中古二眼レフカメラ
まず、二眼レフカメラの簡単な解説と、日本製の二眼レフカメラの歴史を紹介します。
二眼レフカメラとは
二眼レフカメラとは、このようなクラシカルな見た目の、レンズが上下に2つ並んだフィルムカメラのこと。
2010年くらいのカメラブームの頃にはフィルムカメラのなかでもとくに人気が高かった印象があります。
この記事を書いている2022年現在では、中判カメラ同士ではPENTAX 67やMamiya RB、Mamiya RZなどの一眼レフに人気を譲った感がありますが、二眼レフの魅力がけっして劣るわけではありません!
軽快に撮影できて中古価格がお手頃な二眼レフカメラなら、もっと気軽に中判カメラが楽しめるんです。
レンズが2つある理由
さて、二眼レフカメラのレンズが2つ並んでいる理由は、上のレンズはピント合わせに、下のレンズは撮影に使う仕組みになっているからです。
図のように、上のレンズ(ビューレンズ)はファインダーのスクリーンへ、下のレンズはフィルムへと光を導いています。
ピントを合わせる操作を行うと、上下のレンズが同時に前後に動きます。
↑レンズがついた板が前へ繰り出されている
上のレンズを通った光を見ながらピント合わせを行うと、下のレンズもフィルムの面にピントが合うように動く構造になっているのです。
↑二眼レフカメラのファインダーを覗いたところ。カメラはローライコード。
レンズが1つ=一眼レフとの違いは?
でも、なぜレンズが1つではいけないのでしょうか?
レンズが1つのカメラとは、つまり一眼レフカメラのことです。
一眼レフカメラでは、撮影するときだけ、ファインダーへ光を導くミラー(鏡)が上へ跳ね上がる構造になっています。
言葉で表すと簡単に聞こえますが、じつはミラーを跳ね上げる構造は複雑でコストがかかります。
それに対して、二眼レフカメラではレンズが2つあるかわりに、ミラーは固定でOKです。
レンズを2つつけて連動させるほうが、ミラーを跳ね上げるよりも安く、しかも精度の高いカメラを作ることができたのです。
(1950年代までは小型の一眼レフカメラという形式自体が発展途上だったという理由もあります)
二眼レフカメラについてはこちらの記事でも解説しています。
あわせてご覧ください。
日本製二眼レフカメラの簡単な歴史
二眼レフカメラという形式のカメラ自体は、じつは19世紀から存在しました。
なので、よくいわれるローライフレックスが二眼レフの元祖というのは厳密には異なるのですが、実際問題として、近代的な二眼レフカメラというのはすべて、Rolleiflex(ローライフレックス)の影響下にあるということは間違いないといえるでしょう。
さて、日本製の二眼レフカメラは第二次世界大戦以前、1930年代から製造がはじまります。
戦前の日本製二眼レフとしては、初期のミノルタフレックス、栗林(のちのペトリ)が製作したファーストレフレックス、さまざまなバリエーションがあり名称も有名なロールコンター、そのほかにも複数の機種がありました。
ただし戦前の機種については、この記事のコンセプトである「実用」というよりも、クラシックカメラ愛好家向けの色が強いといえるでしょう。
1950年代、二眼レフカメラの時代
上でも書いたように、二眼レフカメラには構造が簡便で、精度のよいカメラが作りやすいという特徴があります。
そこで、日本の戦後復興がひと段落し、朝鮮戦争の影響もあり景気がよくなった1950年代前半、日本では二眼レフカメラのブームが発生したのでした。
↑リコーフレックスVII型
よく引き合いに出される機種としては、理研光学(のちのリコー)が製造したリコーフレックス(III型からVII型にかけて)があり、実際、この時代を代表する機種であるといえます。[1]例として『カメラレビュー クラシックカメラ専科No.10 … Continue reading
ですがもちろん、売れたのはリコーフレックスだけではありません。
この記事で紹介するような、比較的しっかりとした機種から、リコーフレックスのデッドコピーのような出所が不明な機種まで。
二眼レフの頭文字がAiresflex(アイレスフレックス)やAlpenflex(アルペンフレックス)のAからZenobiaflex(ゼノビアフレックス)のZまで揃っていたという逸話で知られる(実際には抜けがありましたが)ように、無数ともいえる二眼レフが送り出されたのでした。
無名メーカーのカメラについては、下で触れるスプリングカメラとともに「四畳半カメラ」という単語であらわされることがあります。
これは、四畳半の部屋で家内手工業的に製作されたカメラという意味です。
(ですが実際には、それなりの規模の工場で製造されたカメラも四畳半カメラ扱いされることがままあります)
二眼レフカメラとスプリングカメラで市場を二分
1950年代前半までの日本では、カメラで使われるフィルムの種類として最も一般的なのは120フィルムでした。
35mmフィルムを用いる小型のカメラは、まだ普及の途上にあったのです。
(120フィルムには赤窓による巻き上げが行えること、巻き戻しが必要がないことにより、カメラの構造が単純でよいというメリットがありました)
120フィルムを用いるカメラのなかでも二眼レフはブームを引き起こしましたが、もうひとつ、スプリングカメラというジャンルもあります。
高級機としては、66判ではマミヤシックス(旧マミヤシックス)。645判では小西六(のちのコニカ)のパールが有名。
そのほかにも、距離計つきではオリンパスシックス、高嶺光学のミネシックス、三浜精工のミハマシックス、第一光学のゼノビアセミなど、二眼レフに負けず劣らず多くの機種が存在していました。
1950年代前半の日本においては、66判の二眼レフカメラと66判や645判のスプリングカメラが(プロではない)一般の撮影に用いられるカメラだったといって間違いないでしょう。
ですが1950年代後半になると35mmフィルムが普及し、二眼レフカメラやスプリングカメラは過去のものとなっていくことになります。
実用的な日本製二眼レフカメラを選ぶポイント
この記事では日本製の二眼レフカメラを紹介しますが、1950年代の二眼レフカメラから、実用に向いているものを選ぶにはどのような点に気をつけたらよいのでしょうか。
1.レンズにバヨネットがついていると作りがよい可能性が高い
二眼レフカメラをいくつも見比べると、レンズのまわりに3つの突起がついているものと、ないものがあることに気がつくかもしれません。
この突起は、フィルターやフードといったアクセサリを取り付けるためのものです。
レンズのバヨネットマウントと同様、これもバヨネットと呼ばれます。
このバヨネットは「BAY1」と呼ばれています。
ドイツのRollei(ローライ)に由来する規格です。
日本製二眼レフカメラのバヨネットの多くはBAY1と互換性があるサイズになっています。
さて、このBAY1のバヨネットがある場合、比較的信頼のおける構造をしている可能性が高くなります。
製造年代が比較的新しい(1950年代はじめではなく中ごろ)と推測できるためです。
1950年代における日本の工業力の向上はすさまじく、たった数年で品質が大きく異なってきます。
また、1950年代前半に無数誕生したメーカーが1950年代中ごろになると淘汰されてくるため、生き残ることができたということ自体が、ある程度品質を保証してくれるのです。
ただし、これだけでは判断せず、下で述べるほかの特徴と併せて考えるのがおすすめです。
2.SEIKOSHA、CITIZEN、COPALのシャッターがついている
二眼レフカメラのシャッターは、ユニット化されたものを専門メーカーから買ってきて使用するのが普通です。
このシャッターの部分に、SEIKOSHA(精工舎、セイコー)かCITIZEN(シチズン)、そしてCOPAL(コパル)のものがついていれば、カメラ全体の品質がある程度担保されていると判断できるでしょう。
具体的には、レンズの周りにシャッターメーカーの刻印があります。
セイコーとシチズンはどちらも21世紀になった現在でも日本を代表する時計メーカーとして有名ですが、じつはカメラのシャッターにおいても高級メーカーでした(カメラの機械式シャッターと機械式時計には共通する技術が用いられています)。
そしてもうひとつのCOPAL(現 日本電産コパル)もまた、21世紀になった現在でもカメラ用シャッターのトップメーカーです。
いっぽう、シャッターユニットにNKS(日本光測機)やRECTUS(富士精密、富士フィルムとは無関係)がついているものは一段落ちる印象があります。
それ以外の銘がついているものは、知識のあるマニア以外は避けたほうが無難です。
3.あえて赤窓式も「あり」
二眼レフカメラのフィルムの巻き上げにはいくつかの方式があります。
主なものとしては、
- クランク式(高級)
- 自動巻き止めつきのノブ巻き上げ(中級)
- 赤窓式のノブ巻き上げ(廉価)
があります。
機能面で便利なのは、クランク式や、
↑ヤシカマットのクランク式巻き上げ
自動巻き止めつきのノブ巻き上げです。
↑リコーフレックス ニューダイヤの自動巻き止めつきノブ巻き上げ
ですが、筆者の意見としては、あえて赤窓式を選ぶのもアリです。
↑赤窓式巻き上げのリコーフレックスVII型
もちろん、しっかりと整備がおこなれている場合には巻き止めのついたクランク式やノブ式のほうが便利です。
ですが赤窓式には、とにかく壊れる場所がないというメリットがあります。
誤って多重露光しないように注意は必要ですが、フィルムカメラで撮影すること自体が不便を楽しむことである現在、赤窓もまた味だといえるのではないでしょうか。
赤窓式の機種には中古価格が安いというメリットもあります。
もちろん、しっかりと整備済みのものを選ぶ分には、どれでもOKです。
「赤窓をおすすめする」のではなく「赤窓を避けなくてもよい」ということです。
4.ギア連動よりも前板繰り出しが便利
二眼レフカメラのピント合わせの一般的な方法(レンズを前後に移動させる方法)は以下の2種類です。
前板繰り出し式
上の画像(例はローライコード)のようにレンズのついた部分自体が前後に移動する方式です。
二眼レフカメラのピント合わせの方式としては多数派です。
レンズの周りがギザギザしたギアになっていなければ、ほとんどの場合前板繰り出し式です。
(米国製等の固定焦点機をのぞく)
ギア連動式
画像のように、レンズの周りがギザギザしたギアになっていて、上下のレンズが連動して回転する方式です。
廉価な機種に多く、リコーフレックスの多くの機種、初期のビューティフレックス、戦後のマミヤフレックスの一部などが代表例です。
必ずしもこの方式が悪いというわけではないのですが、廉価機種が多いためどうしても、精度や素材が悪いものが散見されます。
ギア連動式の機種は、RICOHFLEX以外は避けたほうがよいかもしれません。
5.基本的に整備がおこなれたものを購入するのがおすすめ
1950年代の二眼レフカメラは、どんなに新しくても60年以上前の機械です。
未整備ではほぼ、撮影には使用できません。
一見きれいに見えても、シャッターユニットは定期的なオーバーホールが行われることが前提の構造をしています。
シャッター羽根や絞り羽根には経年で必ず油が回ります。
確実に中判での撮影を楽しむためには、整備が行われた中古を選ぶようにするとよいでしょう。
二眼レフカメラで撮影するときのポイント
この記事で紹介するような二眼レフカメラで撮影する場合、少し使い方が異なる場合があります。
簡単にポイントを解説します。
使用するフィルムは120フィルム(の場合が多い)
多くの二眼レフカメラでは、120フィルム(ブローニーフィルム)を使用します。
2022年現在、120フィルムはカラーネガ・カラーポジ・モノクロネガどれも入手が可能です。
おすすめの120フィルム
中判カメラで使う120フィルムは、以下のものがおすすめです。 ポジフィルム(リバーサルフィルム)で撮影するなら、富士フイルムのPROVIA 100Fが定番です。その他のフィルム
そのほかにも、4×4判で使用する「127フィルム」、1960年代後半以降の一部機種で使用可能な「220フィルム」などもあります。
どちらもかわうそ商店(外部リンク)さんなどでモノクロフィルムの入手が可能です。
ほとんどの機種は露出計がない
ミノルタオートコードの一部、ヤシカマットの一部、ローライフレックスの一部などを除き、基本的に多くの二眼レフカメラには露出計はありません。
慣れていない場合は、スマホに露出計アプリをダウンロードして使ったり、単体露出計を使用するのがおすすめです。
おすすめの露出計
露出計のないフィルムカメラの使用にあたっては、アクセサリーシューに取り付けられる露出計を使用するのがおすすめです。 中国製の小型クリップオン露出計としては以下のものが。二眼レフカメラの使い方解説記事
日本製二眼レフカメラの使い方については、当サイトのRolleicord(ローライコード)の解説記事をご覧ください。
というのは、日本製二眼レフカメラの多くは、Rolleicordのコピーにはじまっているため。
それぞれ独自の改良が施された機種も、Rolleicordの使い方さえ知っていれば、問題なく使用することができるでしょう。
Rolleicord 使い方解説記事はこちら
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おすすめの日本製二眼レフカメラ9選
それでは、主に1950年代に製造された日本製の中古二眼レフカメラを紹介します。
本記事では基準として、状態が悪くても整備を行えば撮影に使用できる可能性が高い=もともとのつくりがよいということを基準としました。
1.東京光学 PRIMOFLEX(プリモフレックス)各種
東京光学は、TOPCON(トプコン)のブランドで各種のカメラを製造したメーカーです。
戦前には日本陸軍の光学兵器を製造し、海軍の光学兵器を製造した日本光学(のちのニコン)とともに、海のニッコー、陸のトーコーと並び称されました。
さて、そんな東京光学が製造した二眼レフカメラが、PRIMOFLEXです。
PRIMO(プリモ)というのは、代理店であった大沢商会のブランド。
1960年代に相次いでメーカーが自社で販売を行うようになるまで、メーカーよりも代理店の力が強く、このようにカメラが代理店のブランドを名乗ることはよくありました。
プリモフレックスは1952年のI型にはじまり、120判では1957年のPRIMOFLEX AUTOMAT Lにかけて多くの機種が製造されました。[2]図録『板橋と光学vol.3』2020年、板橋区立郷土資料館、p.36-37, 108[3]すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.123-124(No.2213-2222)
そのほかに127フィルムを使用するPRIMOFLEX Jr.が存在します。
レンズ性能は折り紙つき
東京光学は伝統あるメーカーだけあって、レンズの性能はとても良好です。
3枚玉のTOKO(トーコー)、3群4枚のTopcor(トプコール)、初期のものにみられる3群4枚のSimlar(シムラー)と、写りについては問題を感じることはないでしょう。
トプコールは二眼レフの名玉のひとつ。
3枚玉の廉価なTOKOについても、他メーカーに供給された際には高級レンズとして扱われているくらいなのです。
では、プリモフレックスのうち、実用におすすめな機種を詳しく紹介します。
PRIMOFLEX AUTOMAT/PRIMOFLEX AUTOMAT L
↑画像はPRIMOFLEX AUTOMAT
- PRIMOFLEX AUTOMAT(1956年)
- PRIMOFLEX AUTOMAT L(1957年、シャッターをライトバリュー式としたもの)
この2つの機種は、東京光学の二眼レフとしては後の時期の機種で、明確に高級機種として製造されたものです。
特徴は、クランク巻き上げであること、
そしてレンズが3群4枚のトプコールであるということ。
この2機種は殿堂入りレベルの名機です。
値段もそこそこしますが、しっかりとオーバーホールされて売られている可能性が高いので、安心して実用に供することができるでしょう。
ぜひトプコールの描写を味わってみませんか?
PRIMOFLEX Va型 ビューレンズにも絞りがついた二眼レフ
ユニークな機種としてPRIMOFLEX Va型があります。
二眼レフのファインダー用レンズ(上のレンズ、ビューレンズ)には、普通、絞りがありません。
ですが、PRIMOFLEX Va型では上のレンズにも絞りがあるのです。
これは被写界深度を確認するため。
ですが実用上はあまり意味がなかったようにみえ、この機種限りの機構となっています。
比較的珍しく、状態のよいものは上で紹介したAUTOMATほどではないですが中古価格が高めです。
PRIMOFLEX IV/IVa
PRIMOFLEX IVとPRIMOFLEX IVa(1954年)は、レンズの周りにバヨネットのついた機種です。[4]すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.124(No.2219)にはPRIMOFLEX … Continue reading
それ以外の面では、レンズは3群3枚のTOKO(トーコー)、シャッターは富士精密のRECTUSとそこそこのスペックですが、東京光学の製品だけありつくりは抜群です。
状態にもよりますが、このIVa以前のものは中古価格が手ごろな場合が多いといえるでしょう。
それより前の機種
PRIMOFLEX IVより前はバヨネットがない外観となります。[5]すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.123-124(No.2213-2222)
基本的にはレンズは3群3枚のTOKO付きが多いですが、上にも書いた通り、レンズの描写について不安はありません。
ただし、TOKO付きのものについてはジャンクとして、状態が悪いまま売られていることも多いのが難点です。
また、IVa型以前の機種はシャッターがRECTUSかNKSなのも少々不安ではありますが、カメラそのもののつくりは、東京光学の製品であることもあり良好と感じます。
2.RICOHFLEX(リコーフレックス)各種
理研光学(のちのリコー)のRICOHFLEXは、日本製の二眼レフカメラを代表する機種です。
ギア連動式機種
RICOHFLEX(リコーフレックス)が日本製二眼レフの代表とされるのは、とにかく売れに売れたため。
価格が安く、しかも信頼のおけるメーカーの製品で品質がよかったため、一時はプレミア価格がついたこともあったといいます。
そんな逸話があるのは、リコーフレックスのなかでも「ギア式連動」の機種です。
具体的には、RICOHFLEX III型(1950年)~RICOHFLEX VII型(1954年)[6]すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.125-126(No.2228-2238)くらいの時期が全盛期だったようです。
その後リコーから上位機種が出ても、廉価版としてRICOHFLEX Million(リコーフレックス ミリオン、1957年)[7]すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.126(No.2238)に至るまで製造、販売が続けられました。
ギア連動式のリコーフレックスはおすすめの二眼レフ
これら、ギア連動式のRICOHFLEXは、同様の構造をした二眼レフカメラのなかでも別格の機種です。
単純な構造ながら精度がしっかりしていて、整備すれば撮影に実用することも問題ありません。
構造がとても単純なので壊れにくいのもメリットです。
整備しやすいため、オーバーホール済みのものとしては中古価格が安い場合が多いです。
上の解説で「ギア連動式はあまりよくない」と書きましたが、RICOHFLEXについては例外です。
もし、とにかく安く、整備済みの二眼レフカメラが欲しいなら、ギア連動式RICOHFLEXを探すのはよい選択肢ですね。
RICOHFLEX Dia/RICOHFLEX New Dia(リコーフレックス ダイヤ/ニューダイヤ)
リコーフレックスのうち、比較的上位機種寄りの機構をもったもので中古を探しやすいのが、
- RICOHFLEX Dia(リコーフレックス ダイヤ、1955年、バヨネットなし)
- RICOHFLEX New Dia(リコーフレックス ニューダイヤ、1956年、バヨネットが付いた)
です。
↑画像はリコーフレックス ニューダイヤ
これらの機種は、自動巻き止め式のノブ巻き上げ、前板繰り出し式のピント合わせと、二眼レフカメラとしては使いやすい機構を備えています。
「廉価で作りがよい二眼レフ」が持ち味だったリコーの製品だけあり、当時の価格はけっして高くなかったにもかかわらず、精度も仕上げも非常によいです。
リコーフレックス ダイヤ系の機種の特徴が、ピント合わせの方法です。
他社に多い、ボディ側面のノブによるピント合わせではなく、ボディ前面の左右についたシーソー式レバーでピント合わせを行うのです。
慣れるととてもスムースな操作が可能となります。
ここではリコーフレックスダイヤとニューダイヤの二機種を挙げましたが、ピント合わせをはじめ同様の構造の機種はほかにも存在します。
リコーの二眼レフカメラは基本的に品質面でハズレはないので、整備済みの実用機を選ぶなら狙い目といえるでしょう。
(ただし、露出計つきの機種については、露出計の動作はあまり期待しないようにしましょう)
3.MINOLTA AUTOCORD(ミノルタ オートコード)
MINOLTA(ミノルタ)の二眼レフカメラ、AUTOCORDシリーズは、日本製の二眼レフカメラとしては最上位機種といって間違いないでしょう。
レンズはミノルタが誇るロッコール↓
ボディ下部のレバーによるピント合わせ↓
側面のクランクによる巻き上げとシャッターチャージ↓
などなど、日本製二眼レフカメラの中でも構造面の独自性が強いことでも知られています。
どの機種も人気が高く、中古価格は日本製二眼レフカメラとしてはもっとも高い部類です。
その分、完璧に整備されたうえで販売されていることも多いため、価格さえ気にしなければ状態の良いものが探しやすいともいえます。
ミノルタ オートコードは日本製の二眼レフとしては遅い時期まで製造が続き、1960年代に入っても新機種が登場しています。
日本の工業技術は1950~1960年代にかけてどんどん向上していったため、1960年代のミノルタ オートコードは、1950年代製の二眼レフカメラとは品質の次元が違います。
ほかの記事で詳細に解説しているため、ここでの解説は簡単なものにとどめますが、末永く使える、つくりのよい高級二眼レフカメラが欲しい方にはぜひおすすめです。
詳しくはこちら
ほかのミノルタ製二眼レフカメラもおすすめ
ミノルタ オートコードの人気に隠れていますが、ほかのミノルタ製二眼レフカメラも、日本製二眼レフカメラのなかでは作りがよく、整備さえ行われていれば十分におすすめできます。
MINOLTACORD AUTOMAT
MINOLTACORD AUTOMAT(ミノルタコード オートマット)は、実質的にはミノルタ オートコードと同様のカメラです。
というよりも、この機種がもととなり、ミノルタ オートコードというシリーズが始まりました。
巻き上げやピント合わせなど、ほぼミノルタ オートコードそのものの機構を持っています。
MINOLTACORD
MINOLTACORD(ミノルタコード、1954年)[8]ミノルタの歩み 1954 | コニカミノルタ製品アフターサービス – 株式会社ケンコー・トキナー2022年3月24日閲覧は、ノブ巻き上げ、レバー式ピント合わせながら、ミノルタ オートコードやミノルタコード オートマットとは別種のカメラです。
ノブやレバーの形状もオートコードとは異なります。
じつはこの機種、チェコスロバキアのメオプタが製造したフレクサレットの強い影響を受けているといわれています。
作りはそこそこですが、ほかの日本製二眼レフとは異なる雰囲気を持ったカメラです。
MINOLTAFLEX 各機種
↑ミノルタフレックスIII型
そのほかの、ノブ巻き上げ、前板繰り出しの一般的な機構をもつMINOLTAFLEX(ミノルタフレックス)各機種も、日本製二眼レフとしては比較的よいつくりをもっています。
整備さえされていれば、撮影に実用することも十分できるでしょう。
二眼レフカメラの買取ならサンライズカメラ
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4.Yashicaflex(ヤシカフレックス)各種
Yashicaflex(ヤシカフレックス)は、日本のヤシカ(八洲光学/ヤシカ)が製造した二眼レフカメラ。
リコーフレックスと並んでとくに製造台数が多く、日本製二眼レフカメラの代表機種のひとつといえます。
ヤシカフレックスの販売戦略は、他社よりも高機能なカメラを低価格で売るというものでした。
リコーフレックスの廉価版機種はギア式連動の低廉な構造でしたが、ヤシカフレックスはどの機種も、前板繰り出し式の高度な機構をもっていました。
それでいて、同種の構造をした他社製カメラよりも安く販売されたのです。
ヤシカフレックスには、
- 自動巻き止め付きか、赤窓式か
- 巻き上げがノブ式か、クランク式か
- シャッター・絞りのセットがダイヤルか、ノブか
- 露出計があるか、ないか
など多くのバリエーションがあります。
ですが、精度や品質については当時の国産二眼レフカメラのなかでも良好なほう。
整備が行われていれば十分撮影に実用できます。
また、マミヤCシリーズと並んで日本製二眼レフカメラとしてはもっとも遅い時期まで製造が続いた(1980年代まで)ため、新しいものについては非常にモダンな仕上げとなっています。
ヤシカマット系機種
クランク巻き上げ、セミオートマット(クランクを回すとシャッターもチャージされる)の機種です。
シャッターと絞りの設定もダイヤル式の高級な機構です。
1957年のYashica-mat(ヤシカマット)にはじまり[9]すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.133(No.2293)、1970年発売、1980年代になっても販売され続けたYashica-mat 124Gまで続きます。[10]『カメラレビュー クラシックカメラ専科No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.100 「現行二眼レフ」よりヤシカマット124G
日本製二眼レフカメラとしては高度な機構を備えたもののひとつで、ローライフレックスとほぼ変わらない(フィルム装填のみ異なる)操作方法です。
※ただし質感や操作感はローライとは異なります。
最終機種のヤシカマット124Gは、製造年代が新しいこともあり比較的中古価格は高めの印象です。
その他の機種も実用的
製造数が多く、整備済みの中古も探すことは不可能ではないため、その他の機種も実用品としては十分におすすめできます。
じつは実用を前提に考えた場合、メジャーな製品で品質が安定していることは重要な条件です。
品質がこなれている場合が多いうえ、修理業者にとっても扱いやすく、整備済み品が出回る可能性が多いためです。
その点、ヤシカの二眼レフは(リコーフレックスと並んで)その条件に合致するのです。
5.太陽堂光機 Beautyflex(ビューティフレックス)各種
↑画像はBeautyflex T型(1954年)[11]すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.103(No.2061)
太陽堂光機は、2010年代前半まで東京の神田神保町にあったカメラ店です。
じつは小売りだけでなく、1950年代、Beauty(ビューティー)という自社ブランドのカメラを作っていたことがありました。
なかでも二眼レフカメラがBeautyflex(ビューティフレックス)です。
前半の機種はギア連動、途中から前板繰り出しに
Beautyflexのうち、1950年代初頭の機種にはピント合わせが上下ギア連動のものがありました。[12]Beautyflex III型(1950年)、Beautyflex IV型(1952年)、Beautyflex V型等参考文献:すぎやまこういち他編 … Continue reading
↑ギア連動のビューティフレックス(左)
ですがそういった機種の製造と前後して、前板繰り出し式の中級機も作るようになります。
全体的に安定した品質
2018年頃に、筆者がBeautyflexで撮影した写真をサンライズカメラ公式TwitterにUPしたことがありました。
雨樹一期(あまき いちご)さん @amaki15 に触発されて多重露光してみました。
BeautyFlex beauty anastigmat 8.0cm F3.5
Pro160NS#多重露光#二眼レフ#フィルムカメラ#写真好きな人と繋がりたい#写真撮ってる人と繋がりたい#カメラ好きな人と繋がりたい#ファインダー越しの私の世界 pic.twitter.com/B7dEbQZ0mO— サンライズカメラ📷 (@SunriseCamera) July 16, 2018
完璧な夏。
BeautyFlex beauty anastigmat 8.0cm F3.5
Pro160NS#二眼レフ#フィルムカメラ#写真好きな人と繋がりたい#写真撮ってる人と繋がりたい#カメラ好きな人と繋がりたい#ファインダー越しの私の世界 pic.twitter.com/UrBvnIkall— サンライズカメラ📷 (@SunriseCamera) July 16, 2018
そのとき使用した機種は、おそらくBeautyflex U型(1952年)[13]すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.103(No.2057)だったのですが、レンズは3群3枚のBeauty Anastigmat 80mm F3.5、赤窓式、シャッターもEtoalという銘のほぼ無銘に近いものだったにもかかわらず、比較的しっかりと撮影を行うことができました。
1952年くらいの二眼レフカメラには作りがあまりよくないものもありますが、Beautyflexは、当時としては比較的信頼のおけるブランドのひとつだったこともあり、しっかりと整備すればまだまだ撮影に使える印象です。
前板繰り出し式の機種、かつ状態がよい中古であれば、二眼レフで中判の撮影を存分に楽しめることでしょう。
明るいレンズがついたBeautyflex 2.8
太陽堂光機の二眼レフカメラには特筆すべき機種があります。
それが、Beautyflex 2.8(1955年)です。
このカメラの特徴は、その名のとおり、開放F値F2.8の明るいレンズがついているということ。
二眼レフカメラのレンズは、一部を除いて開放でF3.5までが一般的。
F2.8のレンズがついているのは、Rolleiflex 2.8系など高級機に限られます。
その点、Beautyflex 2.8は日本製二眼レフとしてはとても珍しい存在なのです。
(ほかに国産としては、OLYMPUS FLEXにもF2.8がついたものがあります)
レンズはCanter F.C. 80mm F2.8。
シャッターもコパルのものがついており、1955年の製品ということもあり品質も一定程度に達しています。
目を引くスペックのため中古価格が高めのこともありますが、日本製二眼レフのなかでも面白い製品のひとつです。
6.興和 Kalloflex Automat
医薬品メーカーとして知られる興和(Kowa)ですが、かつてカメラも製造していたことが知られています。
そんな興和の二眼レフカメラが、Kalloflex Automat(カロフレックス オートマット)です。
kalloflex AutomatにはI型(1954年)とII型(1956年)があり[14]すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.112(No.2130, 2131)、セイコー製のシャッターのモデルなど細部が異なります。
Kalloflex Automatは二眼レフカメラとしては明白に高級機種です。
名称にAutomatとあるように機構的にもセルフコッキング(巻き上げるとシャッターがチャージされる)となっています。
特徴的なのは操作系で、カメラを構えたとき右手側に、巻き上げクランクとピントノブが同軸に配置されています。
レンズはもちろんコーワの誇る銘レンズのProminar(プロミナー)。
カタログスペックだけでなく、金属加工の美しさも抜群の、日本の二眼レフの中でもとくにつくりのよい名機だといえるでしょう。
7.小西六 KONIFLEX(I型・II型)
小西六(のちのコニカ)の二眼レフカメラがKONIFLEX(コニフレックス)です。
コニフレックスにはI型(1952年)とII型(1955年)がありますが[15]『クラシックカメラ専科 No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.79、主なカタログスペックは同じ。
II型では、多重露光が可能になる、内面反射防止のバッフルがつくなどの改良が行われています。[16]『クラシックカメラ専科 No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.73-74
二眼レフとしては焦点距離の長いHEXANON 85mm
コニフレックスのレンズは、銘レンズとして名高いHEXANON。
特徴的なのは焦点距離です。
二眼レフの多くは75mmか80mmのレンズを装着していますが、KONIFLEXのテイクレンズはHEXANON 85mm F3.5。
85mmという、二眼レフとしては珍しい焦点距離のレンズなのです。
そのままではカメラが大型化してしまうため、撮影しないときは無限遠よりも奥にレンズを収納しておいて、ピントノブで繰り出す機構が設けられています。
品質抜群の二眼レフ
小西六は伝統あるメーカー、かつ当時は高級メーカーとしての色が強かったこともあり、KONIFLEXの品質は抜群です。
I型は1952年ですが、この年代だと品質に怪しい部分があるカメラも少なくない中、KONIFLEXについては問題は一切ありません。
ジャンクとして販売されてしまうことも多いですが、筆者の意見としては、ミノルタオートコードと同じくらいの評価は受けてもよいのではないかと思っています。
8.アイレス写真機製作所 AIRESFLEX(アイレスフレックス)中期以降のもの
アイレス写真機製作所は、東京の高田馬場~火災による移転後は現在の歌舞伎町にあったカメラメーカーです。
1950年代においては中堅メーカーとしての立ち位置を占めていました。
アイレスの市販された二眼レフカメラは、1951年のアイレスフレックスY型にはじまります。[17]『クラシックカメラ専科 No.23 … Continue reading
アイレスはその後35mmレンズシャッターカメラを製品の中心に据えるようになりますが、二眼レフカメラは1955年まで新製品を出していたようです。[18]『クラシックカメラ専科 No.22 アイレスのすべて』1992年、朝日ソノラマ、p.13
アイレスのカメラは小西六(のちのコニカ)やマミヤのような高級機メーカーの仕上げには劣るものの、当時の日本製カメラの水準としては悪くない品質を持っています。
初期のものをのぞき、SEIKOSHAやCOPALのシャッターユニットを採用しているのもいいですね。
以下、特徴的なおすすめ機種を紹介します。
AIRESFLEX Z(アイレスフレックスZ)・AIRES Automat ニッコールのついた二眼レフ
↑アイレスフレックスZ ニッコール付
アイレスの二眼レフカメラのなかで逸話とともに語られるのは、やはり日本光学のニッコールレンズがついた機種でしょう。
ニッコールレンズがついたのは以下の機種。
- AIRESFLEX Z(アイレスフレックスZ、1951年)
- AIRES Automat(アイレス オートマット、1954年)
1951年に発売したAIRESFLEX Z(アイレスフレックスZ)は、当初、日本光学のNIKKOR Q. 7.5cm F3.5を搭載していました。[19]『クラシックカメラ専科 No.22 アイレスのすべて』1992年、朝日ソノラマ、p.10
機構的にはオーソドックスなローライコード系のつくりをしています。
いっぽう、1954年のAIRES Automat(アイレス オートマット)はクランク巻き上げ、セルフコッキングの高級機。
アイレスの二眼レフとしてはもっとも高度な機構をもったカメラです。
二眼レフカメラでニッコールをつけたものはほかになく、それだけでニッコールのついたアイレスの二眼レフは高値で取引されています。
とくにアイレスフレックスZ型については構造自体は年代なりのため、ニッコールがついているからこその評価であるといえるでしょう。
すべてがニッコール付きではない――コーラルつきが狙い目
ただしAIRESFLEX ZとAIRES Automatはすべてがニッコール付きではありません。
どちらにも、ニッコールつきのもののほかに、昭和光機のCoral(コーラル)付き、オリンパスのZuiko(ズイコー)付きがあります。
レンズ自体の供給量が少なかったとのことで、[20]『クラシックカメラ専科 No.22 アイレスのすべて』1992年、朝日ソノラマ、p.10むしろニッコール付きではないもののほうが多いくらいです。
ただし実用として考えると、必ずしもニッコールにこだわる必要はないでしょう。
お買い得で狙い目だといえるのが、昭和光機のCoralがついたものです。
というのも、当時のオリンパス Zuikoレンズは経年劣化でほとんどが曇ってしまうためです。
いっぽう、昭和光機のCoralレンズは比較的状態がよい場合が多いです。
ニッコール付きのアイレスフレックス各機種は値段が高い場合が多いので、整備済みのものがあればCoralレンズつきはよい選択肢です。
その他の機種もコーラルレンズのものが狙い目
それ以外のアイレスフレックスについても、オリンパスのZuikoがついたものよりも、昭和光機のCoralレンズつきがおすすめです。
自動巻き止めのついた一般的な中級機種のアイレスフレックスU型。[21]『クラシックカメラ専科 No.22 アイレスのすべて』1992年、朝日ソノラマ、p.13
そして赤窓式の廉価機種、アイレスフレックスIV型が該当します。[22]『クラシックカメラ専科 No.22 アイレスのすべて』1992年、朝日ソノラマ、p.14
9.Mamiyaflex Cシリーズ
Mamiya(マミヤ)はスプリングカメラのマミヤシックスにはじまるメーカーですが、戦後、早い時期から二眼レフカメラを製造していました。
レンズ交換式ではない、通常の二眼レフカメラのマミヤフレックスも作りがよく、整備済みであれば実用は難しくありません。
ですが特筆すべきはやはり、レンズ交換式二眼レフカメラのマミヤCシリーズでしょう。
とくに、1960年代以降のC330系、C220系の各機種はしっかりと整備された中古も多くみられます。
レンズが交換式のため、光学系やシャッターの状態がよい中古をじっくりと選べるのもメリットですね。
大きさと重量こそネックになりますが、多機能で安定した品質・性能のため、近年値上がりの著しいMamiya RB67やRZ67の代替としてもおすすめかもしれませんね。
Mamiya Cシリーズは以下の記事でも解説しています。
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ほかにもある特徴的な日本製二眼レフ
おまけとして、特徴がある面白い機種について簡単に解説します。
- 整備済みで販売されることが少ないもの
- 持病があるもの
など、マニア向けですがぜひご覧ください。
八陽光学 Alpenflex(アルペンフレックス)
↑アルペンフレックス(中央)
長野県にあった八陽光学の二眼レフカメラがAlpenflex(アルペンフレックス)です。
アルペンフレックスの特徴が「ニッコールと同じガラスで作った」レンズがついていると広告されていたこと。
八陽光学は戦時中に長野県の塩尻に疎開した日本光学の工場を継承したメーカーであったため、日本光学のニッコールと同じ硝材の供給を受けることが可能であったようです。[23]山下雄司「光学・精密加工技術 の伝播・拡大に関する予備的考察 … Continue reading
第一光学 Zenobiaflex(ゼノビアフレックス)
↑アサヒカメラ1953年5月号広告より
第一光学のZenobiaflex(ゼノビアフレックス)は、それがどんなカメラであるかよりも、名称がZからはじまる二眼レフであることで有名な機種です。
「二眼レフカメラには頭文字がA~Zまであった」という逸話のZこそが、このZenobiaflexなのです。
ですが、第一光学は一時は中堅どころのメーカーであったこともあり、そこそこの品質を持っています。
自社製のDaiichi-Rapidシャッターは1/500秒を備えた高級な機構。
Neo-Hesper 7.5cm F3.5レンズも3群4枚のものがついています。
整備されて販売されることはあまりないですが、日本製二眼レフのなかでも目を引くもののひとつといえるでしょう。
OLYMPUSFLEX(オリンパスフレックス)
オリンパスのOLYMPUSFLEX(オリンパスフレックス)は、デジタルカメラの時代に至るまでカメラ市場で生き残ったオリンパスの製品だけに、当然ながら高級機種のひとつです。
それなのに、おすすめ機種ではなくこちらで紹介しているのは、レンズに持病があるため。
1950年代のOLYMPUSのZuikoレンズには、ズイコー曇りと俗称される、経年変化で曇ってしまう特性があるのです。
(このことはアイレスフレックスの項でも紹介しました)
開放F値がF2.8のレンズを搭載したモデルもあるなど、特徴的で魅力はあるのですが、購入にあたってはレンズの状態をしっかりと見極める必要があるのが難しいところです。
FUJICAFLEX AUTOMAT(フジカフレックス オートマット)
富士写真フイルム(現 富士フイルム)の二眼レフカメラ、FUJICAFLEX AUTOMAT(フジカフレックス オートマット)は、日本製二眼レフとしては最高級機種です。
ローライフレックスのようなオートマット機構を実現した日本製二眼レフであるうえに、レンズはFUJINONの83mm F2.8。
それ以外の仕上げも、当時としては最高のものです。
中古価格は高いですが、とても貴重な機種のため、整備が行われて売られているのは確実。
実用も可能でしょう。
ですが本機種は、とても珍しいためどちらかといえばコレクターズアイテムの色が強いです。
どんどん撮影に実用するという目的に使えるだけの品質はあるのですが、レア機種すぎて難があり、参考にした『クラシックカメラ専科 No.10』の執筆者も、これを実用するならプラナーF2.8付きのローライフレックスのほうがよい、とまで言い切っています。[24]『カメラレビュー クラシックカメラ専科No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.104 … Continue reading
日本製二眼レフカメラを楽しんでみませんか?
二眼レフカメラというとどうしてもローライばかりが注目されがちですが、日本製の二眼レフカメラを使うのも楽しいもの。
日本のカメラ産業がまだまだ発展途上だった時期ならではの個性豊かなメーカーたち。
高級機メーカーの機種から、詳細のわからない謎の二眼レフまで。
日本製二眼レフカメラには、この記事ではまったく語り切れていないほどのとてもディープな世界が広がっています。
オーバーホールされたものなら中判での撮影に実用できるので、ぜひあなたもお気に入りの二眼レフを見つけてみませんか?
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脚注
↑1 | 例として『カメラレビュー クラシックカメラ専科No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.101収載の「実用になる国産二眼レフ」にはリコーフレックスについて「戦後の二眼レフブームはこのカメラたちが創ったといっても過言ではないだろう」と記されています。 |
---|---|
↑2 | 図録『板橋と光学vol.3』2020年、板橋区立郷土資料館、p.36-37, 108 |
↑3, ↑5 | すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.123-124(No.2213-2222) |
↑4 | すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.124(No.2219)にはPRIMOFLEX IV(IVaではない)がバヨネット付きで掲載されているため、それをもとに判断しました。 |
↑6 | すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.125-126(No.2228-2238) |
↑7 | すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.126(No.2238) |
↑8 | ミノルタの歩み 1954 | コニカミノルタ製品アフターサービス – 株式会社ケンコー・トキナー2022年3月24日閲覧 |
↑9 | すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.133(No.2293) |
↑10 | 『カメラレビュー クラシックカメラ専科No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.100 「現行二眼レフ」よりヤシカマット124G |
↑11 | すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.103(No.2061) |
↑12 | Beautyflex III型(1950年)、Beautyflex IV型(1952年)、Beautyflex V型等 参考文献:すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.103(No.2056, 2058, 2059) |
↑13 | すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.103(No.2057) |
↑14 | すぎやまこういち他編 『国産カメラ図鑑』1985年、ザ・クォータープランニング/朝日ソノラマ、p.112(No.2130, 2131) |
↑15 | 『クラシックカメラ専科 No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.79 |
↑16 | 『クラシックカメラ専科 No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.73-74 |
↑17 | 『クラシックカメラ専科 No.23 名レンズを探せ!! トプコン35mmレンズシャッター一眼レフの系譜』1992年、朝日ソノラマ、p.127「アイレスカメラ補遺」より前号訂正記事 |
↑18, ↑21 | 『クラシックカメラ専科 No.22 アイレスのすべて』1992年、朝日ソノラマ、p.13 |
↑19, ↑20 | 『クラシックカメラ専科 No.22 アイレスのすべて』1992年、朝日ソノラマ、p.10 |
↑22 | 『クラシックカメラ専科 No.22 アイレスのすべて』1992年、朝日ソノラマ、p.14 |
↑23 | 山下雄司「光学・精密加工技術 の伝播・拡大に関する予備的考察 -日本光学の塩尻への疎開と八陽光学によるカメラ製造を中心として-」日本大学経済学部経済科学研究所 紀要 No.50、2021年、p.83-103 |
↑24 | 『カメラレビュー クラシックカメラ専科No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.104 「実用になる国産二眼レフ」よりフジカフレックスオートマット |
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