Contax (コンタックス)I・II・III/旧コンタックス Contaxレンジファインダーカメラ徹底解説 Contax I・II・IIIとは?
Contax(コンタックス)のレンジファインダーカメラは、戦前にLeica(ライカ)と覇権を競ったクラシックカメラの代表格。
この記事では、そんな旧Contaxのレンジファインダーカメラ各機種について解説します。
いまでも写真用レンズの頂点として知られているCarl Zeiss(カール・ツァイス)ですが、1932年、その傘下のカメラメーカーであるZeiss Ikon(ツァイス・イコン)からレンズ交換式のレンジファインダーカメラが登場します。
それが最初のContax、Contax I(コンタックスI型)です。
Contaxというカメラはその後、第二次世界大戦を挟んで数奇な運命を辿っていくこととなります。
東西ドイツの分断をはじめとする荒波に巻き込まれたことから、Leica(ライカ)に比べてどちらかといえばマニアックなイメージがつきまとうようになってしまった旧Contaxのレンジファインダーカメラ。
戦前のI・II・III型や戦後の各機種、そしてKievに至るまで、中古のContaxレンジファインダーカメラを触るうえで最低限知っておきたい知識を解説するので参考になれば幸いです。
目次
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レンジファインダーカメラのContax
まず、レンジファインダーカメラの旧Contax(コンタックス)とはどのようなものか、簡単に説明します。
レンジファインダーカメラのContaxとは
レンズ交換式でフォーカルプレーンシャッターを内蔵したレンジファインダーカメラといえばLeica(ライカ)が有名ですが、それと並んで代表格といえるのがContax(コンタックス)です。
はじめにも書いたように、一番最初のContax、Contax Iが登場したのは1932年のこと。
そして根本的な改良機種である1936年のContax II型、当時としては非常に先進的である露出計が組み込まれたContax III型と、どれも35mmフィルムを用いるカメラの頂点といって間違いのないものが送り出されました。
そして第二次世界大戦後には小型化をはかったContax IIa型やIIIa型が登場することとなります。
コンタックスとライカの違い
それでは、どちらも35mmのレンジファインダーカメラであることは共通しているコンタックスとライカには、いったいどんな違いがあるのでしょうか。
結論からいうと、コンタックスは超高級カメラであり、ライカは実用のカメラであった、ということが最大の違いだったといえるのでしょう。
これは竹田正一郎 『コンタックス物語 ツァイス・カメラの足跡』(クラシックカメラ選書38 2006年、朝日ソノラマ、初版)で指摘されていることなのですが、戦前のContax(やコンタフレックス)は、ツァイス・イコンのカメララインナップの頂点に位置する製品でした。
すなわち、実用品に求められるコストパフォーマンスを度外視した、その時点で可能な最高の技術を盛り込んだ製品であること。
それが戦前のContax(コンタックス)の特徴でした。
同書ではコンタックスというカメラをガジェットにも例えています。
たとえば、1930年代時点で露出計が組み込まれていたContax IIIなどはわかりやすい例といえるでしょう。
Contaxは高級カメラ
例えるなら、いまでいう機械式の超高級腕時計。
実用するだけなら1000円で売っているクオーツの腕時計で十分ですし、仕事で着用を求められないならスマートフォンの時計で事足ります。
ですが、数百万円以上する時計はいまでも存在しています。
また、現在におけるLeica(ライカ)の立ち位置は、戦前におけるContax(コンタックス)の立ち位置そのものであるといえるでしょう。
NikonやCanonの最上位機種には何十万円もするものがありますが、それでも、あくまでも主な目的は実用です(2020年代に入り、徐々に風向きが変わりはじめてはいますが)。
いっぽう、ライカのデジタルカメラの主な目的は(もちろん、実用として用いられることもありますが)「ライカというカメラを使うこと」だといえるでしょう。
↑現代のライカの立ち位置は戦前のContaxの立ち位置と似ている
「ライカ1台 家1軒」という格言があったことからもわかるように、ライカもまた高額なカメラではありました。
ですが、上掲した『コンタックス物語』でも指摘されているように、ライカの内部構造はよい意味で非常に単純、非常に実用的です。
第二次世界大戦に際して、各国が軍用カメラとしてコピーしたのがライカであり、コンタックスではなかったことが、ライカの実用性を物語っています。
もちろん、ロバート・キャパがコンタックスを愛用していたことが知られているように、コンタックスが実用的ではなかったわけではありません。
ですが、そもそもの立ち位置に愛玩物――ガジェットとしての意味合いが込められていたことこそが、中古カメラに興味を持ったとき、多くの人が目を向けるのがライカであり、コンタックスではないということの要因になっている気がしてならないのです。
レンジファインダーContaxと一眼レフのCONTAXって違うの?
レンジファインダーカメラのコンタックスと、一眼レフカメラのコンタックスは、結論からいうと別物のカメラです。
この記事で解説しているレンジファインダーカメラのContax(コンタックス)は、1960年代はじめに製造が中止されます。
また、日本のカメラが世界を席巻していくなか、ツァイス・イコン自体も1971年にカメラの製造から撤退してしまいます。
一度はなくなってしまったツァイスのカメラ。
ですが1975年、CONTAXという名前のカメラが復活します。
それが、いわゆる「ヤシカ・コンタックスマウント」の一眼レフカメラ、CONTAXだったのです。
※なお、Contaxと刻印された一眼レフカメラ自体はそれ以前にも東ドイツのツァイスが製造したものが存在しました
CONTAXの一眼レフは、日本のヤシカとツァイスの提携により生まれたもの。
レンジファインダーカメラと一眼レフカメラの違いがあるため、もちろんレンズをはじめ互換性はありませんし、機構的にもまったく別のカメラです。
ですがこれにより2005年に京セラ(1983年、ヤシカを合併)がカメラ事業から撤退するまでの間ですが、CONTAXという名前をもつさまざまなカメラが生み出されていったのです。
なお名称のアルファベット表記についてですが、ロゴの字体から、レンジファインダーカメラのコンタックスはContax(1文字目だけ大文字)、一眼レフカメラのコンタックスはCONTAX(すべて大文字)と書かれる場合が多いです。
ヤシカ・京セラのコンタックスについては、こちらの記事で解説しています。
レンジファインダーContax 各機種解説
それではここから、レンジファインダーカメラのContax(コンタックス)の各機種について特徴を解説します。
中古でContaxを買い求める際にもぜひ参考になれば幸いです。
Contax I(コンタックスI型)
形式 | レンズ交換式レンジファインダーカメラ |
シャッター | 1:1/25秒~1/1000秒 2:1/2秒~1/1000秒 3:1/2秒~1/1250秒(非実在?) 鎧戸式の縦走りフォーカルプレーンシャッター |
露出計 | なし |
ファインダー | 二眼式のレンジファインダー |
レンズマウント | コンタックスマウント |
巻き上げ・巻き戻し | ノブ式 |
製造年 | 1932年~ |
1932年に登場した最初のコンタックス、Contax I(コンタックスI型)は、黒いボディが特徴で、ブラック・コンタックスとも通称されています。
ライカにおいてもそうですが、1930年代はじめまで、カメラというものは黒いボディが当たり前で、本機種でもその感覚が踏襲されています。
Contax I(コンタックスI型)は製造期間を通して改良が重ねられていきましたが、全体に共通する特徴もあります。
シャッター
まず、シャッター。
これは、このあとに紹介する他のコンタックスにも共通することですが、鎧戸のような形状の縦走り、金属製シャッターが用いられています。
このシャッターは、店舗が閉店する際に下ろす(まさに)シャッターのように横に長い金属の部品同士が重なり、噛み合う構造になっており、左右両端には繊維製のリボンが通されています。
布幕の横走りシャッターを内蔵したライカとは、素材、シャッターの走行する向きともに好対照を為しています。
さて、このシャッターについては1932年の登場時点ですでに1/1000秒が搭載されていました。
同時期に登場したライカII型(ライカDII)のシャッターは1/500秒まで、翌1933年のライカIII型(ライカDII)でも同様で、ライカに1/1000秒が搭載されるのは1935年のライカIIIaを待たなければなりません。
シャッター速度
Contax I型のシャッター速度は大きく3つに分かれます。
まず最初は1/25秒から1/1000秒まで。
そして、製造期間の途中からスローが設けられ、1/2秒から1/1000秒までとなりました。
このとき、シャッター速度の全体を4群に分け、それぞれにシャッター幕の走行速度を変えるようになりました。
最後に、シャッターの最高速度を1/1250秒としたものがあったといわれていますが、実在は確認されていないようです(前掲 竹田 p.74)。
前面のノブ
Contax Iの巻き上げとシャッター速度の設定は、正面から見て左側、カメラの前面に設けられたノブで行います。
この配置については、露出計の内蔵を考慮していたがゆえのものといわれています。
前面にノブがあるということは回転方向を90度、変えなくてはいけないわけで、内部には精密なベベルギア(傘歯車)が用いられています。
距離計
距離計については、前期のものと、1934年半ば(前掲 竹田 p.69)以降のものでは大きく異なります。
前期のものについては、鏡を稼働させて二重像を動かすという、二重像合致式のレンジファインダーとしては一般的な構造のものです。
ファインダーそのものは二眼式となっており、距離計窓とフレーミング用の窓は分かれています。
また正面から見ると、距離計窓が外側、フレーミング用窓はその間に挟まる配置となっています。
↑フレーミング窓(画像では8.5cmのマスクが出ている)が内側にある
後期のものでは構造が変わり、精度も大きく上がりました。
具体的には、鏡に変えて「ドレーカイル」と呼ばれる、クサビ型をした2つの円形プリズムを回転させることにより、レンズの回転を距離計に連動させるようになりました。
このドレーカイルは同時期のツァイス・イコンのカメラ、たとえばイコンタにも用いられていますが、たとえば以下の画像では矢印で指している箇所に丸いプリズムが設けられていることがわかります。
また後期のものでは、カメラを構えたときに右手側にあるドレーカイルから、左手側のファインダー窓へ光を導く部分がガラスの棒で埋められた構造になっています。
ファインダーの配置自体も、2つの距離計窓の外側にフレーミング窓が置かれるように改められています。
↑後期のI型。フレーミング窓(大きな窓)が右端に移動している。
中古で購入するなら
Contax I(コンタックスI型)は、中古のクラシックカメラとしてはどちらかといえばマニアックな機種です。
というよりも、レンジファインダーカメラのContax全般がクラシックカメラのマニアとしてある種の領域へ踏み入れる境界線上にある機種であるといえるかもしれません。
それだけに、もし中古で購入するなら(他の中古カメラにも、他のコンタックスにももちろんいえることですが)信頼のおけるところで整備を受けたものを探すことが重要だといえるでしょう。
とくにContax Iは、II型以降に比べるとより工芸品としての色が強いカメラです。
Contax II(コンタックスII型)
形式 | レンズ交換式レンジファインダーカメラ |
シャッター | 1/2秒~1/1000秒(初期) 1/2秒~1/1250秒 鎧戸式の縦走りフォーカルプレーンシャッター |
露出計 | なし |
ファインダー | 一眼式のレンジファインダー |
レンズマウント | コンタックスマウント |
巻き上げ・巻き戻し | ノブ式 |
製造年 | 1936年~ |
Contax II(コンタックスII型)は、黒色だったContax I型とはうってかわって、クロームメッキとなったコンタックスです。
一般にレンジファインダーカメラのContax(コンタックス)といえば、どちらかといえばこのカメラの見た目が想像されるのではないでしょうか。
鎧戸式のシャッターなど基本的な構造は受け継いだうえで、全体的に非常にモダンに改められています。
測距窓とフレーミングが1つになったファインダー
このContax II型の最大の特徴は、なんといってもフレーミングと距離計の窓が1つになったファインダーだといえるでしょう。
ファインダー視野の中央に距離計の二重像が見えるのは、後年のレンジファインダーカメラでは当然のことですが、この時点ではとても先進的な構造でした。
ライカにおいて距離計とフレーミングが1つになるのは戦後、1954年のライカM3まで待つこととなります。
距離計の構造自体は、I型のドレーカイルから「シュヴェンクカイル」方式という、2つのレンズを組み合わせたものに変わりました。
上部の巻き上げノブ
巻き上げノブとシャッターダイヤルはボディ上部に移動しました。
シャッター速度の設定も、ノブの下に設けられた目盛りに、巻き上げ前にノブを持ち上げて合わせる構造となりました。
中古で購入するなら
Contax II(コンタックスII型)はContax Iに比べると格段に現代的になり、戦後のレンジファインダーカメラに近くなりました。
(というよりも、本機種を模範として多くの機種が開発されたのですが)
そのため、もし初めて中古のContaxを探すなら、こちらのContax IIのほうがとっつきやすいといえるでしょう。
中古の値段もContax Iよりも安く、中古カメラ店に置いてあることも多いです。
Contax III(コンタックスIII型)
形式 | レンズ交換式レンジファインダーカメラ |
露出計 | セレン受光素子 |
製造年 | 1936年~ |
備考 | その他はContax IIに準じる |
Contax III(コンタックスIII型)は、1930年代としては最先端技術である電気露出計を組み込んだコンタックスです。
具体的には、セレン受光素子による露出計が組み込まれています。
セレンの露出計というと、戦後の1950~1960年代に広く普及したため、旧い世代の方式のものという印象を受けるかもしれませんが、そもそも電気による露出計というものが存在していなかった時代、露出計が内蔵されたカメラは、まさに夢の存在そのものでした。
露出計自体は、カメラの上部に飛び出る形で組み込まれています。
また巻き戻しノブ部分に露出計関連のダイヤルが組み込まれています。
ただ、そのことがカメラ全体の見た目を大きく変えてしまってることと、いまとなってはセレン受光素子の露出計を実用しない場合が多いことから、中古ではあまり人気がないという印象があります。
Contax IIa(コンタックスIIa)
形式 | レンズ交換式レンジファインダーカメラ |
シャッター | 1秒~1/1250秒 鎧戸式の縦走りフォーカルプレーンシャッター |
露出計 | なし |
ファインダー | 一眼式のレンジファインダー |
レンズマウント | コンタックスマウント |
巻き上げ・巻き戻し | ノブ式 |
製造年 | 1950年~ |
後述しますが、第二次世界大戦でドイツが敗戦したことにより、カール・ツァイスは東西に分割される憂き目に遭うこととなりました。
そのうち、西側・シュトゥットガルトのツァイス・イコンで戦後に作られたのがContax IIaとIIIaです。
Contax IIaは露出計のないモデルです。
鎧戸式のシャッターなど特徴自体は受け継いでいますが、部品や設計そのものは、戦前のContaxから全体的に改められています。
大きな違いとしては、カメラ全体が小型化したこと。
そして、距離計窓がカメラの内側へ移動し、基線長が短くなったことです。
(これは前掲の『コンタックス物語』でも指摘されていることですが)超高級カメラであった戦前のContaxに比べて、戦後のコンタックスIIaやIIIaは一般に用いられるカメラであるという印象を受けるところがあります。
Contax IIIa(コンタックスIIIa)
形式 | レンズ交換式レンジファインダーカメラ |
露出計 | セレン受光素子 |
製造年 | 1951年~ |
備考 | その他はContax IIaに準じる |
Contax IIIaは、戦前のContax IIとContax IIIの関係と同様、Contax IIaに露出計がついたカメラです。
時代の経過を反映して、露出計ダイヤルの見やすさなどが改善されています。
Contax IIaとIIIaを中古で購入するなら
どちらも戦後のカメラということもあり、Contax II同様、中古カメラ店でよく見かける印象があります。
それでも、中古クラシックカメラ全般にいえることですが、信頼のおけるところでオーバーホールを受けたものを買うのがよいのはいうまでもありません。
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写真・動画どちらもハイクオリティ、迷ったらこの一台!
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Kiev(キエフ) 旧ソ連のコンタックス
最後に、戦前のContax IIとContax IIIの流れをくむカメラ、Kiev(Киев、キエフ)について簡単に解説します。
Kievとは
第二次世界大戦で敗北したドイツは、連合国によって占領されることとなります。
西側各国と旧ソ連とはドイツの科学技術を手に入れようと、工業用の機器、そして人材を連れ去ったのですが、その流れにより、旧ソ連国内で製造されるようになったカメラこそが、Kiev(Киев、キエフ)なのでした。
製造に用いる機器も、製造に携わる人材もそのままだったことから、初期のキエフはコンタックスII型そのものだったといいます。
長年にわたり製造されるうち、徐々に変化していくのですが、基本的な構造は最後までコンタックスを受け継いでいたのでした。
名称について
本記事、またこれまでの当Webサイトの記事で、このカメラのことをロシア語読みのКиев(Kiev、キエフ)と書いていますが、これは、このカメラの大多数にはキリル文字のКиев、ラテン文字のKievと刻印されているためです。
ただし(現物の写真素材がないのですが)、本カメラにはウクライナ語にてКиїв(Kyiv、キーフ)と刻印されたモデルも存在しています。
旧Contax系のKievについて
※なお、Kiev(Киев)という名称のカメラには旧コンタックスを受け継いだもの以外にも多くの種類があります。
Kiev II・III・2a・3a
Contax IIとIIIを比較的そのまま受け継いでいる時期のカメラです。
Kiev II(キエフII)
Kiev IIは、Contax IIを旧ソ連国内で製造したものです。
基本的にはContax IIそのものです。
見た目の特徴としては、カメラの底部の三脚穴にContax II同様の前後に動かすことのできる脚がついていることで見分けられます。
(この部分はKiev 4では省略されます)
↑画像はContax IIの底部 三脚穴の周りに可動式の脚がありますが、Kiev IIも同様の構造をしています。
旧ソ連製のカメラ全般にいえることですが、1950年代くらいのものがもっとも品質が良く、その後、徐々に落ちていきます。
その点で、キエフのなかではもっともおすすめできるモデルといえるでしょう。
旧ソ連のカメラ全般にいえることですが、中古の価格はどれも非常に廉価です。
ただし整備されているものはほぼゼロで、とくに(コンタックスもそうですが)シャッターのリボンは経年劣化で確実に切れる(交換することが前提の構造となっている)ため、中古のキエフがそのまま使えることはないと考えたほうがよいでしょう。
Kiev III
Kiev IIIはKiev IIの露出計つきバージョン、すなわちContax IIIの旧ソ連版です。
Kiev 2a
Kiev IIにシンクロ接点がついたモデルです。
Kiev 3a
Kiev IIIにシンクロ接点がついたモデルです。
Kiev 4・Kiev4a
Kiev 4と4aでは徐々に変化が生じていきます。
Kiev 4a(露出計なし)
このKiev 4aから旧ソ連色がついてきます。
1950年代後半から1970年代にかけて製造されたモデルです。
基本的にはKiev II、つまりContax IIを受け継いでいるのですが、カメラ下部の脚が省略されるなど、省略可能な部分は徐々に削られていきます。
↑三脚穴周りの可動式の脚が省略されている(画像はキエフ4Mですが形状はおおむね同様)
それでも基本的なスタイルはそのままで、十分にContaxのエッセンスを感じることはできるでしょう。
Kiev 4(露出計つき)
Kiev 4aに対して、露出計がついているモデルがこちらのKiev 4となります。
こちらも1950年代後半から1970年代にかけて製造されたモデルです。
露出計のついている外観が不人気なため、中古では非常に廉価、ジャンク箱行きになっていることもあります。
Kiev 4M・4aM
旧Contaxの流れをくむKievとしては末期のモデルです。
Kiev 4M(露出計つき)
1970年代後半から1980年代にかけて製造された露出計つきモデルです。
この時代になると、内部構造はContaxそのままにもかかわらず、ギアが部分的にプラスチック製に変更されていたりします。
また巻き戻しがクランクになっていますが、その部分だけデザインが浮いている印象です。
↑84からはじまるシリアルナンバーが見えますが、製造年が1984年であることを表しています。すでにContax Iの登場から50年以上が経過していました。
Kiev 4aM(露出計なし)
1980年代に製造されたモデルで、露出計のないバージョンです。
こちらも上部のダイヤルのデザインが変更されています。
性能的にはContax IIのものが受け継がれています。
Contaxのエッセンスを感じることはできますが、中古でKievを探すなら、値段は変わらないのでこちらよりも4aを選んだほうがよいかもしれません。
Kiev 4AMや4Mは冷戦下の日本にも輸入されており、旧ソ連との貿易を行っていた商社、メイボーオプテルの広告を当時のカメラ雑誌で見ることができます。
Kiev 5
鎧戸式のフォーカルプレーンシャッターを内蔵した、旧Contax – Kievの流れをくむカメラの終着駅。
それがKiev 5です。
当店で扱った商品画像が用意できないため伝えるのが難しいのですが、旧コンタックスのボディ下部の上に、セレン露出計とブライトフレームつきのファインダーを載せた異形のデザインをしています。
年代が前後するのですが、1960年代後半~1970年代前半にかけて製造されました。
※この機種のみ、レンズマウントは外爪のみとなり、内爪のレンズは装着できません(マウントについてはこの下で解説)。
Contaxのレンズマウントについて
Contaxのレンズマウントについて簡単に解説します。
レンジファインダーContaxのマウント
レンジファインダーカメラのContaxは、バヨネット式のレンズマウントをもっています。
構造上の特徴が、「内爪」と「外爪」という2種類の爪をもっているということ。
つまり、マウントの穴があいている内側の爪だけでなく、マウント部分の外周にも外側へ向かって飛び出る爪があるのです。
交換レンズについては、50mmレンズについては内爪だけを使用。
それ以外のレンズについては外爪を使って固定します(外爪を使うレンズについても、距離計との連動には内爪を使う構造となっています)。
↑外爪を使うレンズ(旧ソ連製のKiev用レンズ、Jupiter-12 35mm F2.8)
↑Contax IIaのマウント部と、内爪のみを使うレンズ(Sonnar 5cm F2)
ContaxのマウントとNikonのマウント
Contaxのレンズマウントと非常に似通ったマウントをもつカメラに、Nikon(ニコン)のレンジファインダーカメラがあります。
ニコンS2やSPなどの、いわゆるS型ニコンです。
ニコンのレンジファインダーカメラ用マウント(Sマウント)は、構造上はContaxのマウントと同様です。
ですが微妙に寸法が異なり、望遠レンズでは距離計とのずれが大きくなるため正確にピントを合わせることができません。
ContaxとS型ニコンは別のカメラ
触れるのが遅くなりましたが、外観のデザインやギアによるピント合わせなど一見するとContaxと似通っているようにみえるNikonのレンジファインダーカメラは、内部機構についてはまったく別のカメラです。
解説したように、Contaxは鎧戸式の縦走りシャッターをもっています。
いっぽう、Nikonのレンジファインダーカメラは、バルナックライカの流れをくむ布幕の横走りシャッターを採用しているのです。
外観とレンズマウントこそContaxの影響がありますが、ニコンのレンジファインダーカメラは(いわゆる)ライカコピーに近いカメラです。
Nikonのレンジファインダーカメラ 関連記事
KievのマウントはContax同様
いっぽう、旧ソ連のContaxコピー、Kievは、その出自がContaxそのものであったこともあり、Contaxと共通のレンズマウントをもっています(Kiev 5をのぞく)。
(ただし、時代が下ると個体差でつかない場合も出てくるようです)
レンジファインダーContaxのマウントアダプターについて
レンジファインダーContax用レンズも、もちろんミラーレス一眼カメラでマウントアダプターを介して使用することが可能です。
ただし、レンジファインダーContaxレンズ用のマウントアダプターは高価なものが多いです。
最大の理由が、標準レンズを使うにはマウントアダプター内にヘリコイドを仕込む必要があるため。
定評あるものとしては、ベネズエラ製のマウントアダプター、Amedeo Adapter(外部リンク)があります。
ほかにも中国製のL39マウント等へのアダプターも存在しているようです。
また、ミラーレス一眼カメラで外爪レンズだけを使うだけなら、比較的安価に以下のようなアダプターを入手することも可能です。
Contaxでクラシックカメラをさらに深く楽しんでみませんか?
シンプルな構造のライカとは違う、愛玩する喜びを感じるボディ。
そしてレンズはもちろんツァイス。
レンジファインダーカメラのContaxを知ることで、よりマニアックにクラシックカメラを味わうことができることは間違いないでしょう。
またコンタックスというクラシックカメラの王道とは違う立ち位置ですが、旧ソ連製のKievも、カメラというものが歴史とともにあったという事実を感じさせてくれます。
レンジファインダーのコンタックスという数奇なカメラたち。
ぜひあなたの手で操ってみませんか?
2023年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
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編集履歴
2022年2月27日
キエフの項、カメラ名について追記
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