【闇鍋オールドレンズレビュー】第6回 EBC FUJINON 55mm F1.8(M42)
M42マウントのレンズが数本届いた。
白いプチプチにしっかりと包まれたレンズ達の中から今回はこれを選んだ。
「EBC FUJINON 55mm F1.8 (M42)」である。
【前回の記事はこちら】
目次
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EBC FUJINON 55mm F1.8について
今回のレンズについては全然知らん。全く初めてのレンズだ。今からレビュー記事を書くのにこれは酷い、何もわからん。仕方ないのでGoogle先生に尋ねてみた。
1970年に富士フィルムから発売されたフィルムカメラ「ST701」用のセットレンズとして用意された標準レンズ「FUJINON 55mm/f1.8 (M42)」。後の1972年に発売されたフィルムカメラ「ST801」からはマウント面に「開放測光機能」が附加されたのでレンズのマウント面にも対応した「開放測光用の爪」が用意された。
と、どこかの親切な人が教えてくれている。
記事リンク
http://pakira3.sakura.ne.jp/wp/?p=17592
SONY α7にEBC FUJINON 55mm F1.8 (M42)を付けるとこんな感じ。
見つけた記事の内容に沿って手元のレンズを調べてみるとどうやら後期型のようだ。ローレットがゴムでしかも全面ギザギザになってるし(写真を見ながら確かめた)銘板がプラになってる。うん、間違いないこの個体は後期型やな。っていうか「EBC」と刻印がある時点で中期モデル以降になるのか。因みに「EBC」とはエレクトロ・ビーム・コーティングの略だそうだ。微妙に恥ずかしくもあり、また懐かしいような気もする。余談だがストロボ測光の「TTL」が「 Through The Lens 」の略だと知った時には頭を掻きむしった。2つ目の「T」は「The」の「T」かよ、それだったら「TL」でよくないかと。まあ、カメラ業界には謎のネーミングが山程あるから細かいことは気にしないほうがいいな。
気を取り直して室内で試し撮りしてみたら、これがどうして凄く派手な発色なので驚いた。それになんかボケが綺麗な感じがする。
EBC FUJINON 55mm F1.8のスペック
とりあえずスペックを記す。
【FUJINON 55mm F1.8】
焦点距離 55mm
絞り F1.8~F16
最短撮影距離 45cm
絞り羽根枚数 6枚
絞り羽根は6枚。この前のNIKKOR 28mmは5枚、Hektor 13.5cmは15枚だった。レンズによって様々絞り羽根の枚数は違っていて面白い。理想は円形絞りって事なのかもしれないが、コストの問題もあるのだろう。聞いた話によると奇数絞りの方が回折現象軽減には有利だとか。
EBC FUJINON 55mm F1.8の外観
この年代特有の派手な刻印。パット見で分かりやすいようにとの配慮か?ローレットのゴムは傷んでいる。
後期型はレンズ銘板がプラ製らしい。確かにプラだがよく見ないとわからない。
絞りを動かすピン。カチャカチャと元気に動いている。
オールドレンズが好きな人には当たり前の事だが、今となってはレンズのマウントがネジ式になっているとか有り得ない構造だよな。急いでレンズ交換する時なんかイライラしそう。しかも何回もグルグル回すから金属同士の接触が増えて摩耗も早いだろうしね。落とさないように慎重にレンズを取り付けよう。
EBC FUJINON 55mm F1.8の作例
それでは試し撮りに出かける。場所は京阪天満橋の周辺。
絞り値ごとの描写
とにかく色の派手さに驚く。めちゃめちゃ派手。
F1.8 周辺減光が激しいがオールドレンズ遊びとしては良いことかもしれない。周辺の解像も物凄く甘い。中心もシャープとは言い難い。
F2.8 F1.8よりはマシだがまだかなり周辺減光がある。解像力は随分回復。
F4 画面全体が均一になりコントラストも上がった。これはすごく良い。
F5.6 更に締まった画面になる。普段はf4かf5.6あたりが使い所かも。
F8 ここからはあまり変化しない。
F11
F16 ちょっとシャープネスが落ちてきた。回折現象か?
という具合で、オールドレンズ遊びなら f1.8 、普段は f4 みたいな使い方で良さげだ。
逆光や難しい場面の描写は?
F1.8 で激しい逆光だとこうなる。まあ、こんな状況でレンズフードも無く開放だと仕方ない。写ってるだけありがたい。
その昔使ってたライカR用のズミクロンを思い出すな。緑の分離がとても良くて画面に重量感を感じる。
F1.8のまま水面の反射を撮る。ハイエストライトの周りのフリンジが気になるがそれでもこれぐらい写っていれば立派だと思う。
ピントを合わせきれなかったがF1.8で自転車をスナップ。なんか意味ありげな写真になった。
EBC FUJINON 55mm F1.8のボケ味や質感描写
手前から4本目の街頭にピントを合わせた。前後のボケが気持ちいい。
季節柄、少なめの花の写真。最短撮影距離45cmなのでこれぐらいまでは寄れる。やはり色が濃くてズシッとしている。
F1.8のままちょっと引きの絵を撮ると面白い。
無理やり作った玉ボケ。検索すると「状況によってはリングボケが出ることもある」となっているが、今回試した限りではリングボケは出なかった。もっと光源が小さくなるとリング状になるのかもしれない。中心を少し外れるとレモン型のボケになるが、十分に綺麗だ。
奥の暗部も潰れること無く粘っている。非常に上品な感じがする。F1.8。
F2.8 絞っただけで、かなりしゃきっとする。
前ボケも綺麗だ。
しかし、この緑は激しい。
F4 に絞るとめっちゃ優秀。
白壁のハイエストライトも頑張ってる。滲んでてもおかしくない状況なのに踏ん張ってる、エライ。
周辺もきっちり写っていて見下ろしの構図でも破綻しない。これもf4。
何度も言うが、やっぱり緑が凄いな。カメラの設定もLightroomでの処理も、何も特別な加工はしていないのにこの有様だ。
F5.6 に絞って水面の反射を入れると6本の光芒が出る。
遠景の描写も安定している。画面が凸凹していないのは好みだ。少しタル型歪曲収差があって、まっすぐ好きの俺としては残念だが、何もかもを求めてはいけないので許容する。
EBC FUJINON 55mm F1.8はとてもよく写るレンズ
初めて使った FUJINON 55mm f1.8 だが使い始めて直ぐに気に入ってしまった。大体この時代の55mmとか58mmとか中途半端な焦点距離のレンズはよく写るのが多い。いや、統計を採ったわけでは無いが経験上そんな気がする。ほんとは50mmにしたかったレンズを敢えて55mmにするのにはそれなりの理由があったはずだ。想像するに、いやあくまで想像だが「55mmにすることで設計が楽になりコストも下がってよっしゃ良い事尽くめじゃん」みたいな何か理由があるはずなのだ。そして商品を手にした顧客は「おまけで付いてきてこの写りなんだから別の交換レンズも買ってみよう」となって、宣伝効果抜群だったはずだ。まあ、想像だけど。
想像ついでに、もしこのレンズを買ったら何を撮るのかを考えた。そうさのう、緑が綺麗→緑は植物→植物といえば野菜→野菜ならサラダ→サラダは料理、ということで料理を撮ってみるのはどうだろうか?それは良いかもしれないぞ。45cmの最短撮影距離ならそれなりの料理撮影が出来るはずだ。自然光の入る明るい窓辺で料理撮影とか良いと思う。
EBC FUJINON 55mm F1.8は富士フイルムの名レンズ
良い商品を提供することが最大の広告であると現代の私達にも教えてくれる温故知新レンズ、あるいはつべこべ云わずとも結果を見て下され旅の人よ的、名レンズとでも言おうか。フィルムが無くなっても薬、化粧品、デジタルカメラで転生してゆく不死身の富士フイルムいや不死フイルムを感じさせる一本でした。安いし。
何故か Lightroom のレンズプロファイルに FUJINON 55mm f1.8 がありましたのでここにご報告申し上げます。(今回は使っていません)
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