OLYMPUS(オリンパス)PEN Fシリーズ/独創性あふれるハーフサイズ一眼レフ
OLYMPUS PEN Fシリーズ。
PEN F・FT・FVの3種類があり、どれも中古フィルムカメラの中でもとても人気が高い名機です。
PEN Fシリーズの最大の特徴。
それが、ハーフサイズなのに一眼レフカメラだということ。
小さなボディながら、ハーフサイズカメラのなかでもいちばんの本格派。
絞りやシャッタースピード、ピントや背景のボケを自在に操って、思い通りの写真を撮ることができますよ!
見た目もほかに似たカメラがひとつとしてない独特なもの。
流れるようなデザインが実現できたのは、ひとえにオリンパスが誇る光学技術者、米谷美久のアイデアあふれる設計によるものです。
日本のフィルムカメラ史に燦然と輝く、ハーフサイズカメラでもトップクラスの名機、それがOLYMPUS PEN Fシリーズ。
ぜひあなたも、PEN Fを中古で手に入れて撮影してみませんか?
目次
OLYMPUS PEN F
まず最初に、オリンパス PEN Fシリーズならではの特徴について解説します。
OLYMPUS PEN Fシリーズ共通の特徴・スペック
形式 | ハーフサイズ一眼レフカメラ |
シャッター | B、1秒~1/500秒 機械式 チタン幕 ロータリー式フォーカルプレーンシャッター |
露出計 | PEN FT のみ内蔵 TTL平均測光 |
ファインダー | ポロプリズムによるアイレベルファインダー |
レンズマウント | PEN Fマウント |
電池 | ※PEN FTのみ MR-9水銀電池 x1 ※販売終了品のため、代替電池PX-625(Amazon) もしくはボタン電池用アダプター(Amazon)にて代替 |
発売年 | 1963年(PEN F) 1966年(PEN FT) 1966年(PEN FV) |
オリンパス PEN Fシリーズの特徴
オリンパス PEN Fシリーズは、オリンパスが1960年代に発売した、ハーフサイズのフィルム一眼レフカメラです。
ハーフサイズカメラとは、画面サイズが35mmフィルムカメラ(もっともよく使われているフィルムサイズのカメラ)の半分で、そのかわりに2倍の枚数撮影できるもののこと。
ハーフサイズカメラと通常の35mmフィルムカメラ(写真はPEN EE2)
ハーフサイズカメラについては以下の記事で解説しているので、そちらもご覧ください。
オリンパス ペン Fシリーズは、中古フィルムカメラのなかでもとくに人気が高い機種のひとつ。
その秘密は、やはりヨーロピアンかつ流麗なボディラインだといえるのではないでしょうか。
優美な曲線を描く、ボディ上面の軍艦部。
一眼レフなのに表面はフラットで、そこに刻まれた「OLYMPUS PEN」のゴシック体のロゴが優美さをさらに高めています。
長方形のシャッターボタンや、後年のオリンパス製フィルムカメラにも共通するオレンジ色のカウンター指標など、オリンパス PEN Fの魅力の多くは、秀逸な工業デザインにあるに違いありません。
小さなボディを手にすると、メカが詰まっていることがわかる重量感。
それでいて取り回しはとてもよく、快適に撮影を楽しむことが可能です。
質感あふれる中古フィルムカメラがほしいなら、オリンパス PEN Fはおすすめの選択肢のひとつだといえるでしょう。
ハーフサイズ一眼レフカメラの誕生
ハーフサイズのフィルムカメラのなかでも、一眼レフカメラは実質的にこのPEN Fシリーズが唯一無二のものといって差し支えないといえるでしょう。
2倍の枚数撮れる経済性が特徴だったハーフサイズカメラ。
なのに、なぜ複雑かつ高価な本格一眼レフカメラが生まれたのでしょうか?
(厳密にはコニカAutorexやレンズ固定式の京セラ サムライなども存在します)
オリンパス PENは、最初、「初任給の半分の値段で買えるカメラ」として始まりました。
1959年、初代PENの誕生です。
初代PEN
当時の大卒初任給の約半分、定価6000円で買える初代PENは大ヒット。
ですが、初代PENの時点で、写りに直結する部分にはコストをかけて高性能レンズを搭載していたように、大事な部分にはけっして手を抜いていませんでした。
それにより、PENシリーズはカメラ愛好家にも受け入れられます。
愛好家から上がった、「ハーフサイズにも一眼レフがほしい」という声。
そこで1963年。
満を持して、フィルムカメラのPENシリーズに最上級機が登場するのです。
それがオリンパスPEN F。
PENシリーズの最高級機であるとともに、ハーフサイズカメラの最高級機でもありました。
[olympusb]
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オリンパス PEN Fの独特の設計
そんなオリンパス PEN Fは、ほかのフィルムカメラでは類を見ない独特の設計をしていることでも知られています。
このカメラの魅力のひとつ、平坦な軍艦部のラインも、じつは内部の機構に由来するものなのです。
ハーフサイズ一眼レフカメラのためのオーダーメイドの設計
ハーフサイズの一眼レフカメラをつくるには、一からの新しい設計が求められました。
画面のサイズが半分で、しかも35mmフルサイズの横長から、ハーフサイズは縦長の画面になるので、そのままの設計を流用することはできません。
そこで、オリンパス PEN Fでは他のフィルムカメラでは類を見ない新機軸をいくつも盛り込みました。
横向きにスイングするミラー
ポロプリズム
チタン幕のロータリーシャッター
です。
ミラーは横向きに動く
一眼レフカメラは、内部のミラーで光を反射させて、ファインダーへと導くようになっています。
撮影時にはミラーが移動し、フィルムへと光を導く構造です。
通常の一眼レフカメラでは、ミラーは下から上へ、跳ね上げるように移動しています。
通常の一眼レフカメラのミラー
ところが、ハーフサイズカメラのボディの大きさに収めようとすると、その構造では縦長のミラーを大きく動かさなくてはなりませんでした。
仮にそのままの機構をとっていたとすれば、レンズマウント部分が大きく張り出し、PEN Fの流麗なボディラインは生まれることはなかったでしょう。
この問題を解決するために考えられたのが、ミラーを「横に動かす」ということ。
PEN Fシリーズのミラー 縦長のミラーが左に動く
撮影時にはミラーが正面から見て左側に動きます。
これにより、縦長画面のハーフサイズカメラに最適な、無駄のない動きを実現することができたのです。
ポロプリズムを採用したファインダー
一眼レフといえば、三角形に突き出たファインダーがトレードマーク。
これはファインダーに「ペンタプリズム」を用いているためです。
ところがオリンパス ペンFの上面はフラットです。
これは、内部に「ポロプリズム」を使用しているため。
オリンパス ペンFはミラーを横向きにしたため、他の一眼レフカメラのようにペンタプリズムを使えなくなりました。
そこで、ファインダーへペンタプリズム同様に正立像(上下左右がそのまま見える状態)を導くことができ、小さなボディ内にも収めることができる「ポロプリズム」を採用したのです。
ペンタプリズムと異なり、ミラーボックスの横に収納されているため、上面はフラットになりました。
そう、オリンパスPEN Fのデザインは機能に依頼されたデザイン。
機能美が産んだ流麗さなのです。
ちなみにこのポロプリズムは、オリンパスの初期のデジタル一眼レフカメラ、E-300とE-330でも復活し採用されました。
チタン幕ロータリーシャッター
また、オリンパスPEN Fはシャッターも独特。
チタン幕のロータリーシャッターを採用しています。
当時一般的だった横走り布幕のフォーカルプレーンシャッターは、ミラーボックスの左右に、幕を巻き取るドラムを置いています。
しかし、オリンパスPEN Fはミラーが横向きで、本来ならドラムがある位置にはポロプリズムが鎮座しています。
そこで、ミラーやプリズムと干渉しないシャッターとして開発されたのが、半円状の金属幕が回転するロータリーシャッターでした。
ロータリーシャッターには、強度を高めるために約0.06mm厚のチタン幕が使われています。
ロータリーシャッターが採用できたのは、ハーフサイズカメラならではともいえます。
円盤である以上、シャッターの内周と外周には微妙な時間差が生じます。
画面サイズの小さいハーフサイズカメラなら、その時間を誤差の範囲に納めることが可能だったのです。
なおその機構上、シャッターダイヤルはボディ前面に配置されています。
このように、独創的な機構をもった流麗なカメラ、それがオリンパス PEN F。
機能と美しさが同居した、奇跡のフィルムカメラだといえるでしょう。
(この節まで参考文献 オリンパス公式サイト「米谷美久が語る開発秘話 セミオリンパスI~ペン、ペンFシリーズ」 2018年5月24日閲覧)
[olympusb]
オリンパス PEN F各機種解説
オリンパス PEN Fシリーズには3種類の機種が存在します。
基本的な性能は同じで、主に露出計の有無が大きな違いとなります。
オリンパス PEN F(1963年)
最初に発売されたのが、初代PEN F。
この最初のPEN Fは、他の2機種とはひと目で見分けることができます。
その理由が、正面から見て右側の大きな「F」の花文字。
これはデザイン上、この部分に部品がなにもないと、デザインに間が抜けてしまうために刻印されたものといわれています。
この花文字は大成功。
PEN Fの流麗さをさらに高めているといえるでしょう。
機構上も違いがあり、この初代PENのみ、レバー操作が2回巻き上げとなっています。
セルフタイマーはありません。
ファインダーは全面マットです。
オリンパスPEN FT(1966年)
1966年のモデルチェンジ機種。
最大の特徴が露出計を内蔵したこと。
CdS受光素子によるTTL開放測光で、1960年代としては先進的なスペックを誇ります。
もし中古で購入する場合には、露出計がしっかりと整備されているものを選ぶのがおすすめです。
デザイン面では、ボディ正面右側にセルフタイマーレバーを追加。
そのため、初代PEN Fの花文字は姿を消しました。
ファインダーには、中央部にマイクロプリズムが追加されました。
電池について
OLYMPUS PEN FTは整備して使い続けられるフィルムカメラですが、唯一、電池については水銀電池を使用していたため製造が終了しています。
代替品として「PX625」アルカリ電池を使用するか
関東カメラサービスほか各社から販売されている、ボタン電池を変換するアダプターを使用することで露出計を問題なく作動させることができます。
オリンパス PEN FV
オリンパス PEN FVは、PEN FTから露出計を省略したモデル。
その他はほぼ同一で、外観上もボディ上面の刻印以外ほとんど変わりません。
当時は露出計を省略した機種が廉価版や、露出計不要なユーザー向けにいくつかのメーカーから販売されていましたが、Nikomat FSなどと同様、このPEN FVも製造数が少なく、コレクターズアイテムとして中古が比較的高値で取引されています。
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オリンパスPEN Fシリーズ用のおすすめ交換レンズ
一緒に購入したい中古レンズについて解説します。
PEN Fはフルサイズ換算28mmから、望遠側は換算1000mm超までのレンズが用意されたシステムカメラ。
ハーフサイズカメラなのに、多彩な場面で活躍できることでしょう。
なおハーフサイズは画面サイズがAPS-Cサイズと近いので、マウントアダプターを使ってミラーレス一眼カメラでも使えます。
F.Zuiko 38mm F1.8
もっともメジャーな標準レンズ。
中古にはこれがついていることが多いです。
G.Zuiko 40mm F1.4
開放値F1.4の上級版レンズ。
38mm F1.8ほどではないですが数が出ていて、比較的見つけやすいレンズです。
H.Zuiko 42mm F1.2
オリンパス PEN F用の最高級レンズ。
F1.2の超大口径からは、このカメラへのオリンパスの気合いを感じます。
OLYMPUS PEN FTの作例・レビュー記事
大阪で活動中の写真家、雨樹さんによるOLYMPUS PEN FTのレビュー記事です。
ぜひご覧ください。
流麗なオリンパス PEN Fでフィルムカメラを楽しもう!
これから中古フィルムカメラを手に入れるとき、とにかく見た目が素敵なカメラがほしいなら。
オリンパス PEN Fは最良の選択肢だといえるでしょう。
機能が依頼したデザインは、日本製カメラのなかでも最高傑作。
質感あふれる、小さな本格派フィルムカメラはあなたの大事な相棒になってくれるはず。
ぜひ、オリンパスPEN Fで撮影を楽しんでみませんか?
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