【撮影基礎講座3】レンズの「絞り」徹底解説!被写界深度でボケとピントを操ろう。
今回はカメラのレンズにある「絞り」について解説していきます。
カメラのレンズの中にある、「絞り」。
絞りは、写真の露出を操るとともに「ピント」にも関係するとても重要な概念です。
絞りを操作すると「写真の明るさ」と「ピントが合う範囲」が変わります。
ピントが合う範囲が狭いと「背景がボケた写真」が。
ピントが合う範囲が広いと「全体にピントがくっきり合った写真」が。
印象がまったく異なる写真を撮ることが可能になりますよ!
では、具体的に絞りについて見ていきましょう。
目次
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絞りで変わる写真の表現
絞りを使うと、どんな写真が撮れるようになるのでしょうか?
背景がボケた写真
お気に入りのカメラでぜひ撮ってみたい写真といえば。
そう、背景がボケた写真。
「絞り」を操ることで、ボケを使った写真が撮れるようになりますよ!
ピントが広い範囲に合った写真
こちらは、背景までピントが合った写真。
背景をボケさせることができるということは、逆に絞りを使うことで「ボケ」させないこともできるのです。
たとえば観光地で、手前にいる人物と遠くの景色、両方にピントを合わせたい。
たとえばネットでいらないものを売るときに、商品の全体をくっきり写したい。
そんなときにも、絞りを操ることでより便利に写真を撮ることができますよ。
絞りとは?
では、絞りとはいったいどのようなものなのでしょうか?
カメラの「絞り」とは
絞りとは、カメラのレンズのなかにある部品です。
レンズの中を見てみると、瞳の黒い部分のような、黒い板でできた部品が見えます。
これが絞り。
基本的には、ほぼすべてのカメラに存在します。
この絞りという部品の役割は、見ての通り、レンズを通った光の量を制限するというものです。
絞りを操作すると広がったり閉じたりします。
絞りの役割
このような機構があるのは、露出を制御するためです。
※露出の概念についてはこちらの記事で解説しています
絞りで露出を制御する、とはどういうことでしょうか。
このように、絞りが開いているときは、たくさんの光がレンズを通ります。
いっぽうこのように絞りが閉じている、絞り込まれているときには光は少ししか通りません。
つまり。
明るいときは、絞りを絞り込むことで光がたくさん入りすぎるのを防ぐことが。
暗いときには絞りを開く、絞り開放にすることで、より多くの光をフィルムやデジタルカメラのイメージセンサーに取り込むことができるというわけです。
このように絞りの最も大きな役割は、カメラに取り込む光の明るさ(露出)を決めることなのです。
絞りの数字:F値
絞りの値は、F1.4、F2、F2.8、F4〜といった数字で表されます。
この数字を「F値」(えふち)といいます。
F値は、フィルムカメラではレンズの絞りリングに、デジタル一眼カメラの多くでは、ボディの液晶画面に表示されています。
(※表示される場所は機種により異なることがあります)
絞りとシャッター速度の相関性
F値はシャッター速度と相関性があります。
適正露出のときに、F値が1つ明るくなる(数字が小さくなる)と、シャッター速度は1段早くなる(暗くなる)。
F値が1つ暗くなる(数字が大きくなる)と、シャッター速度は1段遅くなります。
※いま、「1段」という単語を使いましたが、絞りとシャッターに共通する、露出の1ステップのことを「段」という言葉で表現します。
豆知識:明るいレンズと暗いレンズ
ところで、レンズにはF値が小さいレンズとF値が大きいレンズがあり、
・F値が小さいレンズ=明るいレンズ 例:50mm F1.2、28-70mm F2.8
・F値が大きいレンズ=暗いレンズ 例:50mm F2.8、24-105mm F4
といいます。
おおむね、
単焦点レンズ:F2以下
ズームレンズ、超望遠レンズ:F2.8以下
が明るいレンズと呼ばれることが多いです。
明るいレンズの例:58mm F1.2
暗いレンズの例:50mm F3.5
明るいレンズは高級レンズ
基本的には、焦点距離(○○mm)が同じなら、F値が小さい、明るいレンズのほうが高級品であるのが普通です。
「50mm F1.2」と「50mm F2」なら50mm F1.2のほうが。
「28-70mm F2.8」と「28-70mm F3.5」なら28-70mm F2.8のほうが。
より高級なレンズとなります。
基本的には解像力などの性能も明るい高級レンズのほうが高いことが多いです。
ただし、主に1960年代以前には明るいレンズは特殊レンズだったため、オールドレンズでは、少し「暗め」のレンズのほうが性能が安定していることもあります。
絞りの値による表現の違い 被写界深度とピントが合う範囲
絞りの役割は露出だけではありません。
絞りによって、写真の表現も変わってきます。
絞りを変えるとピントが合う範囲が変わる
この記事の最初で紹介した写真のように、絞りの値を変えると、「ピントが合う範囲」が変化します。
具体的には、
絞りを開く(F1.4やF2のように絞りのF値を小さくする)
→ピントが合う範囲が狭くなる(背景がボケる)
絞り開放(F2)で撮影
絞りを絞り込む(F16やF22のように絞りのF値を大きくする)
→ピントが合う範囲が広くなる(背景がボケない)
絞り込んで(F22)撮影
絞りのF値と被写界深度
ここで大きく関係してくるのが被写界深度(ひしゃかいしんど)という概念です。
被写界深度とは「見かけの上でピントが合っているように見える範囲」というもの。
ピントが合っているとき、厳密には焦点が合う場所は1カ所しかありません。
ですが、その前後にも人間の目で見たときに「実質的にピントが合っているように見える」範囲があります。
この範囲こそが「被写界深度」なのです。
※被写界深度の範囲はレンズの焦点距離によっても変化します(後述)。
被写界深度は絞りが開いていると浅くなる
絞りが開放に近い、つまり絞りが開いていると、
被写界深度は少なく、浅くなります。
つまり、狭い範囲にしかピントが合わない状態になります。
被写界深度は絞りが閉じていると深くなる
いっぽう、絞り込んでいる、絞りが閉じている(絞り込んでいる)状態では、
被写界深度が深くなります。
つまり、広い範囲にピントが合います。
この被写界深度を活かすことで、写真の表現を大きく変えることができます。
背景がボケた写真を撮ったり、画面全体にピントが合った写真を撮ったりできるのです。
背景がボケた写真の撮り方
デジタル一眼レフやミラーレス一眼を買った理由が、「背景がボケた写真が撮りたい」だった方も多いのではないでしょうか。
絞りを操作すれば、ボケた写真を撮るのは簡単です。
絞りを開いた状態、つまりF1.4やF2、F2.8といった絞り開放に近いF値で撮影することで背景がボケた写真を撮ることができるのです。
ただし、ピントが合う範囲が狭くなるとその分ピンぼけしやすくなるので、ピント合わせには気をつけましょう。
画面全体にピントが合った写真
こちらの写真は画面の手前から奥まで、つまりカメラから近い場所から遠いところまで、ピントがぴったりと合っています。
このような写真を「パンフォーカス」の写真といいます。
パンフォーカスの写真は、絞りを絞り込む、つまりF16やF22といった、F値の数字が大きい状態にすることで撮影できます。
絞りの操作方法
では絞りはどうやって操作したらよいのでしょうか。
絞りの操作はカメラの機種によって異なります。
デジタルカメラではボディのコマンドダイヤルを操作
デジタルカメラではボディのコマンドダイヤルで操作します。
上でも解説したように、絞りの値は液晶画面に表示されます。
フィルムカメラでは「絞りリング」を操作
フィルムカメラで多い方式は、レンズについている「絞りリング」を操作するというものです。
絞りリングにはF値が刻印されており、それを見ながら絞りを設定します。
なお、ミラーレス一眼カメラにフィルムカメラ時代のレンズ(オールドレンズ)を取り付けた場合も、ボディのダイヤルではなく「絞りリング」を操作して設定します。
具体的な操作についてはカメラの説明書や、当店公式サイトに掲載しているカメラの使い方記事を参照してください。
絞り優先AE(Aモード)で簡単に絞りをコントロール!
さて、初心者の方でも簡単に絞りを操ることができる方法があります。
それが絞り優先AE(Aモード)を使うことです。
絞り優先AEとは
絞り優先AEとは、カメラの絞りの値をマニュアルで設定することで、その他の露出に関する値をカメラが自動で設定してくれるモードです。
絞りを自分で設定するだけで、カメラが適正露出を求めてくれます。
※適正露出についてはこちらの記事もご参照ください
絞り優先AEの使い方
では、絞り優先AEを使うにはどうしたらよいのでしょうか?
カメラを絞り優先AEモードにする
まず、カメラ本体のモードを絞り優先AEに設定します。
デジタルカメラでは「A」モードもしくは「Av」モード(名称はメーカーにより異なる)に設定します。
フィルムカメラでは、シャッターダイヤルを「A」や「AUTO」位置に設定します。
(こちらもメーカーにより名称や設定位置が異なります)
絞りの値を設定
レンズの絞りの値を設定します。
デジタルカメラではボディ側のダイヤルで。
フィルムカメラではレンズの絞りリングで。
すると、自動的にシャッター速度が決まり、適正露出になります。
あとはシャッターを切るだけです。
絞り優先AEの搭載されたカメラ
絞り優先AEは非常に多くのカメラに搭載されています。
現代のデジタルカメラならほとんどが内蔵。
フィルムカメラにも、絞り優先AEを内蔵したものが多く存在しています。
具体的には、ニコンF3、ペンタックスLX、ニコンFM3A、オリンパスOM-2など。
ほかにも絞り優先AE機は数多いです。
絞り優先AEは初心者の方におすすめ
絞り優先AEはとくに初心者の方にオススメできるモード。
操作が直感的なため、露出を覚えるのにも最適です。
絞りを変化させると、連動してシャッター速度が変化する。
その様子を見ながら撮影していると、すぐに露出の概念をすぐに覚えることができるでしょう。
背景がボケている魅力的な写真。
そんな写真が簡単に撮れる絞り優先AEを、ぜひ使ってみませんか?
絞りに関係するさらに詳しい解説
絞りに関連する、さらに覚えておきたい知識を紹介します。
被写界深度は焦点距離によって変わる
ピントが前後に合う範囲、被写界深度。
じつは、これはレンズの焦点距離によって変化します。
具体的には、
広角レンズほど被写界深度が深くなる(ピントが合う範囲が広くなる)
望遠レンズほど被写界深度が浅くなる(ピントが合う範囲が狭くなる)
という特徴があります。
たとえば、同じ場所で広角レンズと望遠レンズを使って「同じF値で」撮った場合を見てみましょう。
広角レンズで撮った場合
レンズ:28mm 絞り:F8
広角レンズで撮影した場合。
絞り値F8相当で撮影していますが、
手前の植え込みの草から、遠くの高層ビルまで、広い範囲にピントが合っています。
望遠レンズで撮った場合
レンズ:200mm 絞り:F8
こちらは望遠レンズの場合。
上の写真と同じ植え込みの草にピントを合わせていますが、
遠くの高層ビルはボケていて、ピントが合っていません。
このように、同じ場所で撮った場合でも、
広角レンズのほうがより被写界深度が深く(広い範囲にピントが合う)
望遠レンズのほうが被写界深度が浅い(狭い範囲だけにピントが合う)
のです。
同じことを、「望遠レンズのほうが背景がボケやすい」と表現することもできます。
画角と被写界深度は無関係
ところで、デジタルカメラを使っている方のなかには、ひとえに「焦点距離50mmのレンズ」といっても、標準レンズになるときも、望遠レンズになる場合もあることを知っている方がいるかもしれません。
デジタルカメラはイメージセンサーの大きさの違いにより、同じレンズを使っても、写真に写る範囲が違います。
センサーサイズの小さい、APS-Cやマイクロフォーサーズといった規格では、画面の中央部分だけを切り抜いて使っている状態になります。
そのため、同じ50mmレンズを使っても、中望遠レンズや望遠レンズになるのです。
画角と焦点距離についてはこちらの記事で解説しています。
では、APS-Cやマイクロフォーサーズでは、同じ50mmレンズでもボケやすくなるのでしょうか?
焦点距離が同じなら被写界深度は同じ
同じ焦点距離のレンズを取り付けた場合、フィルムやイメージセンサーのサイズに関係なく被写界深度は同じとなります。
つまりフィルムやイメージセンサが小さいAPS-Cサイズやマイクロフォーサーズのカメラボディに50mmレンズをつけたときと、イメージセンサーが大きい35mmフルサイズのボディにレンズをつけた場合ではボケの出方が同じになるということです。
これは、一見「望遠レンズ」になったように見えますが、実際には「中央部だけを切り抜いている」だけのため。
たとえば、背景がボケた写真をパソコンで切り抜いても、ボケている画自体は変わらないですよね。
それとまったく同じことなのです。
イメージセンサーが小さいデジタルカメラはピンぼけしにくい
これを利用することでピンボケを減らすこともできます。
イメージセンサーの小さいデジタルカメラでは、同じ画角(写真が映る範囲)でも焦点距離が短くなるので、ピントが合う範囲が広くなります。
そのため、初心者でもピントを合わせるのが簡単になるのです。
たとえば、スマートフォンのカメラはとても小さいサイズのイメージセンサーを持っています。
すると、デジタル一眼レフやミラーレス一眼カメラより広い範囲にピントが合うので、ピンボケが発生しにくくなります。
(そのかわり背景がボケた写真を撮るのは苦手です)
「絞り」の設定の限界 被写界深度(ボケ)の表現には制限がある
最後に。
絞りを操作することで被写界深度(ボケ)を変化させることができますが、じつは操作できる範囲には限界もあります。
それが、「露出」の設定範囲を超えてしまった場合です。
「露出」の範囲内でしか絞りを変化させることはできない
絞りを操作すると、「露出」と「被写界深度」(ボケ)という2つのパラメータが変化します。
ただし覚えておきたいことがひとつあります。
それが、優先されるのは「露出」だということ。
つまり、適正露出の範囲だけでしか、被写界深度(ボケ)を使った表現はできないということなのです。
具体的に見てみましょう。
例1:暗いところでパンフォーカスの写真を撮りたいとき
たとえば、夜中など暗いところでパンフォーカスの写真を撮りたいとき。
絞りをF16やF22といった、少ししか光を取り込まないF値に絞り込む必要があります。
すると、シャッター速度は非常に遅くなってしまい、手持ちでは撮影できません。
撮影するためには、
・ISO感度を上げる(画質が悪化する)
・三脚を立てる
といった工夫が必要になります。
感度を上げると高画質の写真は撮れないですし、三脚を立てると構図やシャッターチャンスが制限されます。
このように、どうしても暗すぎる場所では表現に制限が生じてしまいます。
例2:明るいところで背景をボケさせたい
さらに難しいのがこちら。
カメラの性能上、そもそもそのような表現が不可能なシーンさえ生じてしまう例です。
とても明るいところで、絞りをF1.4など開放にしてボケを使いたいとき。
明るいところで背景をボケさせたい
ISO感度を最低(ISO100など)に下げて、シャッター速度を1/4000秒や1/8000秒など最高速にしても、露出オーバー(明るすぎ)になってしまうとき……。
そんなとき、基本的には物理的に、そのような写真は撮ることができません。
まれな例ではありますが、最低ISO感度が高めのデジタルカメラや、古いフィルムカメラでシャッター速度の最高速が遅い場合などに、この問題が生じることがあります。
※もしそのような条件で撮影したい場合、「NDフィルター」という濃いグレー(無色)のフィルターをレンズの前に取り付けることで対応自体は可能です。
制限があるからカメラはおもしろい
このように、絞りを使った写真の表現には制限があります。
暗すぎるところでの撮影は難易度が高いもの。
また背景をボケさせる写真も撮るのが難しいもの。
でも、だからこそ写真やカメラは楽しいんです!
限られた絞りやシャッターの値をパズルのように組み合わせる。
きっと、そんな操作がどんどん楽しみになっていきますよ!
絞りを使いこなして写真を覚えよう!
レンズの絞りには、被写界深度で表現を変えるという非常に大きな役割があります。
また絞り優先AEは、初心者の方でも簡単にカメラの露出について知ることができるモード。
カメラについて学ぶのにも最適です。
初心者の方は、最初は絞り優先AEからはじめて、徐々にマニュアル露出を覚えていくのがおすすめ。
絞り優先AEでは絞りを決定すると自動的にシャッタースピードが決まるので、はじめのうちは、シャッタースピードが1/125秒〜1/250秒になるように絞りを設定してみるとよいでしょう。
慣れてきたら絞りを開いてみたり、閉じてみたりして、表現を変化させてみましょう。
カメラの露出には絞りのほかにシャッター速度と感度という概念があります。
シャッター速度と感度についてはこちらの記事で解説しています。
ぜひ併せてご覧ください!
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