おすすめの大判フィールドカメラ6選 今こそ中古で大判を楽しもう!
大判カメラを手に入れるとしたらどんな機種がおすすめなのでしょうか?
今回は、屋外でも室内でもオールマイティに撮影を楽しめる、大判フィールドカメラを中古で購入するときのおすすめ機種を解説します。
大判カメラとは、非常にざっくりと定義するなら「シートフィルム」を用いて、大画面で撮影するフィルムカメラのこと。
昔、写真館で撮影するときにカメラマンが使っていた蛇腹のついた大きなカメラ。
そのようなカメラをイメージすると、印象としては近いものになるといえるでしょう。
そんな大判カメラは、じつはいまでもフィルムを購入して、撮影をすることが可能です。
中古のボディも、中古レンズも以前よりずっと安価に手に入れることができるようになっており、まさに、大判カメラを始めるにはうってつけ!
一枚一枚撮影するのにたしかに手間はかかりますが、大判カメラでの撮影はフィルムカメラ趣味の最終到達点といっても過言ではないでしょう。
では、そんな大判カメラで撮影するならどんな機種がおすすめなのでしょうか?
中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが、おすすめ中古機種と必要な道具について解説します。
目次
おすすめの中古大判カメラ
中古で大判カメラを購入するなら?
まず購入時のポイントを解説します。
大判カメラとは
まず最初に、大判カメラとはいったいどんなものなのでしょうか。
簡単に定義するなら「大判のシートフィルムを使うカメラ」だということができます。
シートフィルムとは、その名の通り平らなシート状のフィルムのこと。
35mmフィルムカメラや中判カメラでは、長いフィルムを巻いた「ロールフィルム」を使って、ひとつのフィルムで何枚も撮影することができます。
それに対し、大判カメラでは、1回の撮影ごとに1枚のフィルムを使うのです。
すなわち、1枚撮ったらフィルムを入れ替えることになります。
4×5シートフィルムと35mmロールフィルム
大判カメラの特徴
大判カメラで使うシートフィルムは大面積。
画像をみればわかるとおり、通常の35mmフィルムカメラに比べ、ずっと大きな画面で撮影しています。
すなわち、35mmフィルムカメラとは比べ物にならない高画質になるのです。
非常に乱暴ですが画面サイズをもとに、どれくらいの高画質なのか計算してみます。
35mmフィルムカメラの画面サイズ(フルサイズ)は36x24mm。
それに対し、4×5インチ(シノゴ)の大判カメラは120x95mmなので約13倍。
8×10インチ(エイトバイテン、バイテン)では250x200mmなので約58倍。
35mmフィルムカメラの画素数をざっくりと1000万画素相当とした場合、4×5のカメラは1億3000万画素相当。
8×10に至ってはなんと5億8000万画素に相当する途方もない高画質ということになるのです。
アオリ
さらに大判カメラでは「アオリ」という特殊な操作が可能です。
アオリとは、フィルムの面とレンズの面の相対位置を変化させる操作のこと。
広い範囲にピントを合わせたり、逆にピントの合う範囲を極端に狭くしてミニチュアのような写真を撮ったり、遠近感のパースを整えたりすることが可能です。
アオリについてはまた記事を分けて解説したいと思います。
大判カメラのサイズ
ひとくちに大判カメラといっても、画面サイズによりいくつかの種類があります。
メジャーなものとしては、4×5インチのものと8×10インチのものが挙げられます。
5×7インチのものもありますが、フィルムの入手性がかなり劣ります(基本的に個人輸入が必要です)。
4×5インチは、通称「シノゴ」。
大判カメラのなかでは最も小さな画面サイズかつ、最も普及しているフォーマットです。
4×5のトヨフィールド
これから大判カメラに入門するなら、まずはシノゴのカメラを中古で購入することになるでしょう。
※ちなみに筆者は大判ではシノゴでしか撮影したことがありません。
8×10インチのサイズは、「エイトバイテン」または「バイテン」と呼ばれます。
8×10のトヨフィールド
8×10インチというのは、六切印画紙のサイズとまったく同一。
コピー用紙のサイズでいえばB5とA4の間になるといえば、その大きさがよくわかるでしょう。
印画紙にプリントする場合には密着焼きとなることが多いようです。
バイテンのカメラは、フィルムカメラ愛好家の終着駅といっても過言ではありません。
余談ですが世界にはさらに大きなサイズのフォーマットの大判カメラも存在しています。
そうなってくるとそもそもフィルムなどの感材自体の入手が難しくなりますが、アメリカの大手写真用品通販サイト、B&Hを確認したところ、特注となりますが、2018年4月現在、20×24インチのシートフィルムは購入することができるようです。
(20×24=508x610mm=印画紙では大全紙相当)
20×24インチのシートフィルム販売ページのスクリーンショット
大判カメラを中古で購入するならフィールドカメラがおすすめ
さて、大判カメラには画面サイズと並んで、「フィールドカメラ」と「ビューカメラ」(モノレールカメラ)という2つの種類があります。
「フィールドカメラ」とは、小さく折りたたんで持ち運ぶことができる大判カメラのこと。
フィールドカメラの例:リンホフマスターテヒニカ
いっぽう「ビューカメラ」(モノレールカメラ)とは、持ち運びは考慮せず、スタジオ(屋内)での使用を前提とした大判カメラのことです。
ビューカメラの例:リンホフカルダン
これから中古で大判カメラを手に入れるなら、風景や人物は外で撮ることが多いので、用途を考えると基本的にはフィールドカメラがおすすめ。
もちろんビューカメラを外で使うこともできなくはないですが、かなり無理があります。
中古価格についてはフィールドカメラのほうが高め。
ビューカメラはそもそも、デジタルカメラへの移行で用途を失ってしまったのでとても安価、捨て値といってもよい状況です。
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おすすめの大判カメラ機種(メーカー)6選
さて、それではこれから大判カメラを中古で手に入れるならどんなものがおすすめなのでしょうか?
大判カメラは機種というよりもメーカーで選ぶことが多いですが、おすすめのものを紹介していこうと思います。
1.リンホフ(スーパーテヒニカ、マスターテヒニカ)
ドイツの大判カメラメーカー、リンホフ(Linhof)は大判カメラの最高峰とも呼べる存在。
中古の大判カメラのなかでもとくに人気が高いメーカーで、大判愛好家にとってはあこがれのカメラだといえるでしょう。
特徴はなによりもその仕上げ。
ドイツのカメラといえば、35mmのライカや中判のローライなど、ゲルマン魂あふれる職人的な仕上げで知られていますが、大判カメラでは、このリンホフこそがその立ち位置にあるのです。
さて、ライカがレンジファインダーカメラのスタンダード、ローライが二眼レフカメラのスタンダードであるのと同様に、リンホフもまた大判カメラのスタンダードでもあります。
大判カメラのレンズ装着には「レンズボード」という部品を使いますが、そのデファクトスタンダードとなっているのが「リンホフ規格」(リンホフボード)。
純正リンホフボードのついたレンズ
戦後、リンホフはスーパーテヒニカ(Super Technika)シリーズで、現在イメージされる大判カメラの形態を確立しました。
そのこともあり、この記事で後述する日本製大判フィールドカメラも、リンホフ テヒニカシリーズを強く意識しています。
中古はそれなりに高価ですが、持つ喜び、使う喜びを存分に味わえる名機です。
リンホフについて詳しくはこちら
2.トヨフィールド45
トヨフィールド45AII
日本製大判カメラの代表格がトヨフィールド45シリーズ。
製造元は大阪、豊中市のメーカー、サカイマシンツールズ。
多くの日本人写真家が愛用した機種で、実用性・耐久性とも折り紙つきのカメラです。
山岳写真家にも愛用された質実剛健なカメラですが、それがリンホフとは対称的な機能美をかもしだし、使えば使うほどに味が出るカメラに仕上がっているといえるでしょう。
なお現行品でもトヨフィールド45AII型が販売されています。
トヨフィールドを使うときに気をつけたいのが、そのままではリンホフ規格のボードがつかないということ(トヨフィールド45AII Lを除く)。
リンホフボード用のアダプターが必要となるので、トヨフィールドを中古で購入するときには併せて用意しましょう。
トヨ規格のレンズボードが付いた状態
実用性と価格の面で、大判カメラを手に入れるなら最もおすすめできる機種のひとつであるといえます。
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3.ウイスタ45
ウイスタ45(Wista 45)は日本のカメラメーカー、ウイスタの大判フィールドカメラ。
ウイスタは東京都板橋区のメーカーで、かつては武蔵野光機という名称でした。
トヨフィールドと並び、日本製のフィールドカメラの代表格となります。
魅力はなんといってもヨーロピアンな外観。
どちらかといえば直線基調なトヨフィールドに比べ、各所がアールのついた造形で仕上げられたウイスタはとても流麗なデザインです。
茶色基調・木目調の仕上げのものも存在。
リンホフと並びスタイリッシュな大判カメラとして、ぜひ中古で手に入れたいおすすめ機種だといえます。
またウイスタには金属製のほか、木製のウッドカメラ、ウイスタ フィールド(Wista Field)もありこちらもおすすめです。
4.タチハラ フィルスタンド
タチハラは戦前1933年から、つい最近2013年まで大判カメラを作り続けていたメーカー。
これまで紹介してきたカメラは金属製のボディでしたが、こちらは木製のボディであることが特徴となります。
木製のカメラというとまるで骨董品のようにも思えますが、大判カメラの機能=暗箱であることを満たす上で、機能的に不足はありません。
さらに木製のカメラは、金属製にくらべとても軽量。
どうしても機材が大きく、重くなる大判カメラにおいて、多大なアドバンテージをもっているのです。
木製カメラは英語から「ウッドカメラ」とも呼ばれ、いまでも多くのファンが存在しています。
さて、そんなタチハラは、日本製ウッドカメラの代表格。
工芸品的な仕上げは、マスプロ製品の日本製カメラとは全く異なる魅力をたたえています。
海外でも評価の高かった木製フィールドカメラを中古で入手して、大判カメラを初めてみませんか?
5.エボニー
エボニーも日本の大判カメラメーカー。
2016年に廃業するまで、上質な大判カメラを送り出してきました。
こちらも木製のウッドカメラです。
エボニー=黒檀というメーカー名が表しているように非常に素材にこだわっており、金属部分にはチタンも採用。
日本製の職人芸あふれるカメラ。
ぜひおすすめしたい逸品です。
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6.ディアドルフ
ディアドルフ(Deardorff)はアメリカの大判カメラメーカーにして、ウッドカメラの最高峰。
金属製の大判カメラのトップがリンホフなら、木製カメラの到達点こそがディアドルフだといえるでしょう。
仕上げ。
精度。
使用感。
すべてにおいて最高・至高の大判カメラ。
大判で作品制作を試みる写真作家は、皆最終的にはディアドルフにたどり着きます。
美術品といっても過言ではないカメラ。
それがディアドルフなのです。
いつかは8×10のディアドルフで撮影してみたいものです。
大判カメラ 中古購入時のポイント
さて、そんな大判カメラを中古で買うときに、ぜひチェックすることをおすすめしたいポイントについて解説します。
とにもかくにも蛇腹の状態
大判カメラで最も大切な状態確認ポイント。
それは蛇腹です。
蛇腹に穴(ピンホール)があいていないかを念入りにチェック。
また、折りたたみ時に変なクセがついてしまっていることもあるので、明らかに蛇腹が変形している個体は避けたほうがよいでしょう。
なお大判カメラの蛇腹は基本的には交換ができますが、それなりの金額がかかることが多いです。
各部の動作がスムースか
ネジやギアなどの部品がスムースに、ガタなく操作できるかチェックしましょう。
筆者はピントの繰り出しのラック&ピニオンがナメてしまっていてどうにもならないトヨフィールドを見たことがあります。
大判カメラの撮影に必要なもの
さて最後に、大判カメラで撮影するときに最低限、必要なものについて解説します。
1.レンズ
大判カメラではレンズは別に購入します。
基本的には大判カメラの構造は単なる「暗箱」で、レンズは単にボディにくっついているだけです。
動作は一切連動しません。
レンズはボディ前面に装着します。
シャッターはレンズに組み込まれたレンズシャッター。
中古購入時には動作、とくにスローをチェックしましょう。
また大判用レンズにはカメラに取り付けるための「レンズボード」が必要。
「リンホフ規格」のボードがデファクトスタンダードになっているので、購入時にはリンホフボードを付けるとよいでしょう。
大判カメラ用のメジャーなレンズメーカー
富士フイルム(Fujinon)
大手フィルムメーカーとして、そして現在ではデジタルカメラや化粧品メーカーとして有名な富士フイルム。
富士フイルムのレンズ「Fujinon」(フジノン)は大判カメラ用レンズのなかでも高性能なことで知られています。
ニコン(Nikkor)
ニコンも大判用ニッコールを製造していました。
富士フイルムと並ぶ国産大判用レンズの雄ともいえる存在です。
シュナイダー
ドイツのレンズメーカー、シュナイダー(Schneider)は大判レンズの定番。
じつは古い「ジンマー」(Symmar)レンズは国産レンズより安価に中古で手に入るので、大判入門にも最適です。
コンゴー(山崎光学)
日本製の大判レンズのなかでも安価かつ高性能で有名だったのが山崎光学のコンゴ―(Congo)レンズ。
2013年の廃業まで長らく製造を続けたいぶし銀のメーカーでした。
ローデンシュトック
ドイツの高級レンズメーカー、ローデンシュトック(Rodenstock)。
中古ではシュナイダー製ほど見かけない印象です。
2.三脚
大判カメラでは三脚も重要。
カメラ自体が重く、またスローシャッターの使用頻度も高いため、ある程度重く、剛性のある三脚が求められます。
おすすめの定番三脚としては以下のようなものが挙げられるでしょう。
クイックセット ハスキー
質実剛健なアルミ製三脚、ハスキー。
もともとはアメリカのクイックセット(Quickset)社の製品でしたが、現在では日本のトヨ商事が製造を引き継いだ国産品になっています。
新品では5万円強。
中古では状態によりますが2万円台から実用的なものが見つかります。
段数により各種存在しますが、大判での撮影なら三段でよいのでは。
筆者もハスキー三段を使っています。
特段派手なところはない堅実な三脚で、「偉大なる【普通】」とさえいえる名品。
一生ものの三脚が欲しいならぜひハスキーがおすすめ!
ジッツオ3型
フランスのメーカー、ジッツオ(Gitzo)の三脚は、上記のハスキーと並ぶ定番品。
ジッツオの製品はサイズが大きくなるほど1型、2型、3型……と数字が増えていくのですが、大判カメラでの使用なら3型がバランスがよいといえるでしょう。
シンプルなハスキーに比べ、ジッツオの三脚は質感が非常によいです。
グレーがかったメタリックな仕上げは、遠くから見てもそれがジッツオの製品だとわかるほどのもの。
ジッツオというと現代ではカーボン三脚が人気ですが、大判での使用ならアルミ三脚を中古で手に入れるのもよいでしょう。
3.カットフィルムホルダー
シートフィルムを入れるためのホルダーです。
新品と中古の価格差がとても大きいため、基本的には中古で購入することになります。
遮光に問題がないか、本番での使用前にテストしてチェックできるとベストです。
なお、カットフィルムホルダーへのフィルム装填はあらかじめ練習が必要。
感光してしまったフィルム(ヤレフィルム)を使って練習するとよいでしょう。
装填はダークバッグでも可能ですが、フィルム面にホコリがついていると、撮影した写真にもその跡が残ってしまうので、全暗の暗室で行えるとベストです。
4.ケーブルレリーズ
シャッターにねじ込んで、シャッターを切るのに使います。
中古でとても安価に(数百円)入手可能です。
5.ルーペ
ピントグラスを拡大してピントを合わせるのに使います。
6.被布
遮光性のある布です。
ピントグラスを見るときに外の光を遮断するのに使います。
言ってしまえば布ならなんでもよいのですが、専用品があればそれにこしたことはないです。
7.露出計
大判カメラには露出計がありません。
そのため、露出を測るには露出計を使うことになります。
露出計については以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
(大判に興味を持つ方は、露出について深く理解している場合が多いかもしれませんが……)
8.シートフィルム
さて、大判のフィルムは現在でも入手可能です。
有名所では富士フイルム、コダック、イルフォード。
ただし2018年に富士フイルムはモノクロ感材から撤退してしまうため、カラー(ポジ・ネガ)ならコダック、モノクロではコダックかイルフォードが現実的選択。
また中国製の「上海」ブランドのものもあります。
新規参入メーカーではローライ(Rollei)ブランドのフィルムも存在します。
ただし大判カメラはデジタルカメラとは異なる世界の存在のため、仮に大手メーカーがなくなったとしても、今後数十年はフィルム自体が手に入らなくなることはないのでは。
大判、とくに8×10ではモノクロで撮影する人が多い印象です。
9.やる気・根気・知識
大判カメラの撮影は基本的にすべて手動。
根気がいる作業ですし、当然ながらカメラの操作についての基本的な知識は必須です。
さらに機材も大きく重いのでやる気も必要です。
しかし、そうして撮影した結果は、35mmや中判とはまったくレベルの異なるアウラに満ちたものであることは間違いありません。
いちど撮ったらやめられない大判の世界。
ぜひあなたも踏み入れてみませんか?
大判カメラで撮影してみませんか?
いま人気のフィルムカメラ、なかでももっともマニアックな部類に入るのが大判カメラだといえるでしょう。
これから大判カメラを始めるなら、まずは4×5(シノゴ)から始めるのがおすすめ。
35mmやブローニーのロールフィルムとはまったく異なる世界に、魅せられることうけあいです。
写真表現の到達点ともいえる豊穣な世界に、ぜひ足を踏み入れてみませんか?
シノゴで大判をはじめたら、その先には8×10での撮影や、古典技法といったさらにマニアックかつ楽しい世界があなたのことを手招きして待っていますよ!!!
大判カメラをお探しの際は、ぜひ当店、中古フィルムカメラ専門店サンライズカメラ公式サイトもご覧ください!
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