[2024年版] おすすめモノクロフィルムまとめ! 白黒写真の特徴と魅力とは?
モノクロフィルムってどんなフィルム?
この記事では、フィルムカメラで写真を撮るのに使うモノクロフィルムとはどんなものかということと、おすすめの製品について紹介します!
モノクロフィルムは、白と黒との濃淡で表現をするフィルム。
わかりやすくいえば、昔の写真のような、色がついていない写真を撮ることができるんです。
……とだけいうと、色がついていたほうがいいじゃないかと感じるかもしれません。
でも、モノクロフィルムには「色がついていない写真ならではの格好良さ」という魅力があるんです。
さらに。
モノクロフィルムなら、自分の手で「フィルムの現像」「印画紙へのプリント」を行うこともできますよ!
ぜひ、あなたもモノクロフィルムの魅力を味わってみませんか?
目次
2024年版 おすすめモノクロフィルム ベスト3
まず、初心者の方にもおすすめのモノクロフィルム製品を紹介します!
1.Ilford FP4+ / HP5+
値段(35mm) | 約1,200円(36枚撮り) |
対応カメラ | 35mm・中判(120)・大判 |
おすすめ・定番のモノクロフィルムというと、写真愛好家の方にとっては意見が分かれるところかと思います。
ここではまず、イギリスのIlford(イルフォード)のFP4+(ISO125)とHP5+(ISO400)を挙げたいと思います。
理由はまず、古くからある定番のフィルムで、良い意味で枯れており安定しているということ。
そして同様に伝統的なタイプ、かつ定番品の「Kodak TRI-X(コダック トライX)」に比べて値段が安く、購入しやすいということです。
イギリスのイルフォードは伝統あるブランド。
近年、KodakやFUJIFILMといった有名メーカーに代わって、東欧などの新興ブランドの製品も増えてきているのですが、初心者の方が入門するなら、まずは伝統的なメーカーのものから扱うのがよいかと思います。
2.FUJIFILM NEOPAN 100 ACROSS II
※画像はモデルチェンジ前のもの(IIではない)
値段(35mm) | 約2,100円(36枚撮り) |
対応カメラ | 35mm・中判(120) |
FUJIFILM(富士フイルム)のモノクロフィルム、NEOPAN 100 ACROSS II(ネオパン100アクロスII)は、日本のフィルムメーカー、富士フイルムの製品ラインナップで最後に1つだけ残ったモノクロフィルムです。
かつて販売されていたNEOPAN 100 ACROSSの後継製品で、じつは製造は上記のイルフォードと同様、英国で行われています。
ですがフィルムの性能自体は、以前の製品と同様富士フイルムのオリジナルのものとされています。
NEOPAN 100 ACROSS IIの魅力は、モノクロフィルムの性能を極限まで追求した高性能。
非常に精密な表現が可能です。
ただし、感度がISO100と低めなので、使用時には手ブレなどに注意が必要です。
3.ORIENTAL NEW SEAGULL 100 / 400
値段(35mm) | 約1,200円(36枚撮り) |
対応カメラ | 35mm |
ORIENTAL NEW SEAGULL 100 / 400(オリエンタルニューシーガル)は、日本のサイバーグラフィックス社が取り扱っているモノクロフィルム。
サイバーグラフィックスという会社はもともと「オリエンタル写真用品」という名前で、「オリエンタル」「シーガル」というのは、古くからの写真愛好家なら皆知っている、伝統あるブランド名なのです。
そのブランド名を受け継いでいるだけあって品質は良好。
ISO100だけではなくISO400の製品も用意しているため、手ブレしにくく初心者の方でも安心です。
なお、フィルムの中身はイギリスのハーマン・テクノロジー社が扱っている「ケントメア」と同等品といわれているため、将来自家現像をしたいと思ったときにも、ケントメアのフィルム用の豊富なデータを利用することができますよ。
モノクロフィルム
フィルムカメラの撮影で使う「モノクロフィルム」とはどんなフィルムなのでしょうか?
モノクロフィルムとは
モノクロフィルムとは、白から黒への階調で表現を行うフィルムです。
簡単にいえば「色がついていないフィルム」のこと。
とだけ聞くと「写真を撮るなら色がついていたほうがいい」「どうして色がついていないフィルムで写真を撮るの?」と思うかもしれません。
実際、昔の写真は色がついていませんでしたが、カラーフィルムが普及すると、一般の人がモノクロフィルムを使うことはなくなっていきました。
でも、カメラが好きな人の間では、いまでもモノクロフィルムが使われています。
その理由は「モノクロフィルムならではの表現ができる」からなんです。
モノクロフィルムにしかできない表現
色というものがなく、白から黒への濃淡だけで表現を行うモノクロフィルムには、カラーの写真ではできない表現が可能です。
わかりやすく例えると、色のついた油絵に対する、墨の濃淡だけで表現する山水画のようなものといえるかもしれません。
画像引用元:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SESSHU-Haboku-landscape.jpg
また、色がついていないことで、撮影された物の「かたち」をより強調することもできるのです。
スマートフォンのアプリなどで、写真をモノクロに加工してみたことはありませんか?
少し加工しただけで、きっと被写体がまったく違うものに見えたはず。
モノクロフィルムを使うことで、より本格的に白と黒の陰影を味わうことができますよ。
この記事で使用しているモノクロ写真について、こちらの記事でより詳しく紹介しています!
モノクロフィルムの特徴
色がついていないこと以外にも、モノクロフィルムにはカラーフィルムにはない特徴があります。
自分で「現像」できる
最近フィルムカメラを始めたという方は、おそらく「カラーネガフィルム」を使っていると思います。
↑カラーネガフィルムとはこのようなフィルムのことです。
カラーネガフィルム(いわゆる普通のカラーフィルム)で撮影したら、お店に現像に出しますよね。
モノクロフィルムも、もちろん同じようにお店で現像することもできるのですが、じつは、自分の家で現像することもできるのです。
モノクロフィルムは、使用する薬品や現像の方法によって、写真の描写(コントラストや粒状感など)が大きく変化します。
そこで、自分の手で現像することで、もっと深くフィルムの性能を引き出して楽しむことができるんです!
専用の道具が必要になりますが、現像用品は中古を探したり、100円ショップやホームセンターで売っているものを流用することで安く揃えることができますよ。
※カラーフィルムも自家現像は可能で、実際に行っている愛好家もいます。ただ、一般にモノクロフィルムのほうが難易度はずっと低く、人口も多いです。
自分で「プリント」もできる
さらに、自分で印画紙に「プリント」することもできます。
昔のドラマや映画に、赤い照明の部屋で写真が浮かび上がってくる描写を見たことはありませんか?
あのシーンこそが写真の「プリント」なのです。
モノクロ写真のプリントも、引き伸ばし機などの用品を揃えることで自宅で行うことが可能。
真っ白い印画紙に写真が浮かび上がる幻想的なシーンを自宅で体験できますよ。
そう、モノクロフィルムを使うことは現像とプリントという楽しみへと一直線につながっているのです!
※プリントについては、自宅でのカラープリントは一気に難易度が跳ね上がります。モノクロプリントは比較的簡単です。
「現像」や「プリント」に興味がある方はワークショップへの参加もおすすめ
とはいえ、モノクロフィルムの現像やプリントは、道具を揃える必要があるなど敷居が高いのも事実。
そこでおすすめなのがワークショップです。
全国各地の写真ギャラリーや美術館、カメラ屋さんがモノクロ写真を体験するワークショップで現像やプリントの方法を教えてくれるので、初めての方はぜひ参加してみましょう!
(この記事を書いている当店スタッフも、初めてのモノクロ現像はそうやって教えてもらいました)
写真の「しくみ」「歴史」がわかる
さらに。
モノクロフィルムの現像やプリントを自分で行うことは、写真のしくみ、写真の歴史を追体験することでもあります。
写真が誕生したのは19世紀前半のこと。
もちろん最初はモノクロ写真でした。
いま購入できるようなモノクロフィルムとほぼ同じ仕組みが発明されたのは19世紀後半(写真乾板の発明)のことですが、モノクロのネガ(陰影が反転している)で撮影して、それをさらに印画紙に焼き付けるときに反転させるという仕組みは、最初期を除いてずっと変わらなかったのです。
また、カラーフィルムも基本的にはモノクロフィルムを起点として発展したしくみです。
そう、モノクロフィルムを使うことで、デジタルカメラが誕生するまでの写真のしくみを一気に学ぶことができてしまうというわけです。
モノクロフィルムを体験することで、きっと、もっと写真を好きになること間違いありません!
モノクロフィルムを使うのにかかる費用
では、モノクロフィルムで撮影するのにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
ざっくりと紹介します。
フィルム代
モノクロフィルムの具体的な商品については下で紹介していますが、安いもので、35mmフィルムの場合1本あたり700円程度から購入可能です。
(愛好家は海外からの個人輸入や、「長巻」と呼ばれる100ftのフィルムをカットして使うなどの方法でもっと安く使っている場合もあります)
現像代
2021年春の時点では、お店で現像する場合の値段は、フィルム1本あたりおおむね900~1000円前後となっています。
モノクロフィルムの現像は、ヨドバシカメラやビックカメラといったお店の場合でも、店舗内ではなく他の業者に外注するため、受け取りまで2週間程度かかるのが普通です。
参考:
ケイジェイ イメージング(Kodakのフィルムを取り扱う現像所)公式Webサイトより
「白黒ネガ現像/サービスサイズプリント/手焼き伸ばし 他」価格表(ページ最下部のリンク)http://www.kjimaging.co.jp/news/price.html
2024年版 おすすめモノクロフィルム一覧
ここで、当店スタッフがおすすめするモノクロフィルムを紹介していきます。
近年、写真用フィルムには新ブランドが頻繁に誕生していますが、基本的には安定して使い続けられる可能性が高いブランドを中心にチョイスしています。
(理由は、自家現像を行う場合、同じ銘柄を使い続けたほうが描写の癖を把握できて好ましいためです)
1.Ilford FP4+ / HP5+(イルフォード FP4+ / HP5+)
値段(35mm) | 約1,200円(36枚撮り) |
対応カメラ | 35mm・中判(120)・大判 |
イギリスの歴史ある感光材料ブランド、Ilford(イルフォード)のフィルムです。
現在はハーマン・テクノロジー社の製品となっています。
感度はFP4+がISO125。
HP5+がISO400です。
伝統ある製品だけあって描写に不満はありません。
フジのネオパンSSやプレストが廃盤になって久しく、コダックのトライXが非常に高価になってしまった現在、安定して使える選択肢として貴重といえるでしょう。
スタッフの私は、ISO125のFP4+については露出計のないカメラで勘露出の場合、実質的にISO100相当の使い方をしています。
HP5+はISO400でフィルムとしては比較的感度が高めなので、初心者の方でも使いやすいかと思います。
2.ORIENTAL NEW SEAGULL100 / NEW SEAGULL400(ニューシーガル)
値段(35mm) | 約1,200円(36枚撮り) |
対応カメラ | 35mm |
日本のサイバーグラフィックス社(旧オリエンタル写真用品)が販売しているモノクロフィルムで、感度はISO100とISO400が存在しています。
2021年初頭の時点では、他のモノクロフィルムに比べて販売価格が少し廉価であることが魅力です。
また、中身はハーマン・テクノロジー社の「ケントメア・パン」であるといわれており、現像データが海外のWebサイトに豊富に掲載されているため実用性も十分です。
描写についてはとくに不満はなく、伝統的な印象を受けるものとなっています。
ケントメア・パンにも共通することですが、他のモノクロフィルムの現像時間が9分以下(D76原液やロジナール1:25の場合)なのに対し、12分以上かかり少々長いという特徴があります。
3.ARISTA EDU 100 / 200 / 400(アリスタ EDU)
値段(35mm) | 約1,700円(36枚撮り) |
対応カメラ | 35mm・中判(120) |
ARISTA EDUはもともと海外で販売されていた廉価なモノクロフィルムで、EDUという名称は教育用に由来しています。
写真を学ぶ人が安価にモノクロで撮影するための製品、ということだったようです。
以前から愛好家には知られており、個人輸入して使う人も多かったのですが、近年ヨドバシカメラやビックカメラでも取り扱われるようになりました。
中身はチェコのFoma製といわれています。
自家現像する場合もデータは豊富で、コンセプト上簡単になくなる製品ではないと思われるので安心して使い続けることができるでしょう。
4.Kentmere Pan 100 / 400 (ケントメア・パン)
値段(35mm) | 約1,000円(36枚撮り) |
対応カメラ | 35mm |
イギリスのハーマン・テクノロジー社が製造しているモノクロフィルムで、感度はISO100と400があります。
上述のオリエンタル ニューシーガルのOEM元といわれています。
5.上海 GP3(シャンハイ)
値段(35mm) | 約1,300円強(36枚撮り) |
対応カメラ | 35mm・中判(120・220)・大判 |
中国製のモノクロフィルムです。
感度はISO400。
高感度で使いやすいだけでなく、じつは中国には独自のフィルムカメラ愛好家文化があるため、おそらくはすぐになくなることがないであろう点でも期待できる存在です。
(近年高級コンパクトカメラやライカが中国で人気を集めていますが、それだけでなくAliexpressやTaobaoといった通販サイトを見ると、写真・カメラ用品の充実具合には目をみはるものがあります)
また、35mmと120だけでなく、220フィルムが存在するのもうれしいところです。
6.FUJIFILM NEOPAN 100 ACROSS II(富士フイルム ネオパン100アクロスII)
※画像はモデルチェンジ前のもの(IIではない)
値段(35mm) | 約2,000円(36枚撮り) |
対応カメラ | 35mm・中判(120) |
2018年に製造中止となってしまったモノクロフィルム、ネオパン100アクロスが復活した製品です。
通称「アクロス」。
製造は日本から英国になり、ハーマン・テクノロジー社が担当しているといわれていますが、乳剤自体は以前のアクロスと変わらないようです。
ネオパン100アクロスは富士フイルムが最後に新開発したモノクロフィルムというだけあって、モノクロフィルムの集大成ともいえる存在でした。
とくに「相反則不軌」(長時間露光のときに実効感度が低下する)という問題を他のフィルムに比べ大幅に改善したことが知られています。
また描写そのものもとても精密で、とくに富士フイルムの現像液「ミクロファイン」との純正の組み合わせは、誰でも手軽に微粒子を楽しめるすぐれたものでした。
スタッフは冷蔵庫に製造中止前の旧アクロスをストックしているため現行品を使ったことがないのですが、性能自体に変化はないとのことなので、間違いなくおすすめできる製品です。
ただし、他社の製品にもいえることですが販売価格はかなり高くなってしまいました。
1990年代以降に開発された新タイプのモノクロフィルムは、他社にもイルフォードのDELTA、KODAKのT-MAXが存在していますが、富士フイルムのネオパン100アクロスがもっとも使いやすかった印象があります。
7.KODAK TRI-X 400(コダック トライX)
※画像はかなり古い時代のもの
値段(35mm) | 約2,000円強コダックのトライXは、モノクロフィルムの代表ともいえる存在です。 |
以前は、迷ったらこれを使えば間違いないと言い切ることのできる製品でした。
現在でもその性能は変わりなく、品質も安定していることでしょう。
しかしながら、1本あたりの価格が(35mm 36枚撮りで)1500円を超えてしまい、さすがに常用するには厳しいものとなってしまいました。
2000年代には1本300円台、2010年代前半でも1本400円台だったことを考えると、せめてこの記事で紹介した他社のフィルムくらいの値段だったら……と思ってしまうのでした。
2024年1月の終わりに大きなニュースが舞い込んできました。KODAK TRI-X 400が大幅値下げされるというフィルム愛好家にとっては大きなサプライズニュースです。
24枚、36枚撮り両方のフィルムが地域によっては最大30%も値下げされます。日本にはいつ、どれくらい値下げして販売されるかはまだ未定ですが、これはかなり要チェックです。
モノクロフィルムで写真の世界を味わい尽くしてみませんか?
モノクロフィルムの魅力は、撮影して終わりではないということ。
あなた自身の手で、ほんとうの意味で世界でひとつだけの写真を作り出すことができるでしょう。
モノクロフィルムはヨドバシカメラやビックカメラのようなお店、そしてネット通販で簡単に購入できるので、ぜひ魅力を体験してみてくださいね!
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