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カメラ用レンズの修理まとめ お店から自分でDIYまで徹底解説

レンズの修理

カメラのレンズが壊れてしまったら?
壊れていたり、状態が悪いレンズを修理したいと思ったら?

今回は、そんなときのノウハウについて解説したいと思います。

カメラのレンズには、さまざまな故障やトラブルが発生する可能性があります。

レンズのガラス面へのカビ、クモリ、キズ、バルサム切れ。
ピントリングのグリス抜けや、ピント位置のずれ。
絞りの粘り。
オートフォーカスや手ぶれ補正の故障。
フィルター枠の曲がり。

そのようなトラブルが起きたとき、どうやって対処したらよいのでしょうか?

デジタルカメラ用などの新しいレンズで、純正修理が可能な場合には、製造元に修理・オーバーホールを依頼するのがベスト。
フィルムカメラ時代の古いレンズ(オールドレンズ)の場合、専門のカメラ修理店に依頼することで、復活させることができますよ。

また、愛好家の間では、自分でレンズを修理することも行われています。

レンズの種類や製造された年代など、さまざまな場合ごとの修理方法を紹介するので、ぜひ大切なレンズを復活させる参考にしてみてくださいね。

目次

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カメラのレンズの修理まとめ デジタル用からオールドレンズまで

オールドレンズ

カメラのレンズにはさまざまなトラブルが発生することがあります。

そんなときでも、適切な修理を行えば、再び撮影に使える状態に戻すことが可能です。

カメラのレンズに発生するトラブルの内容

まず、カメラのレンズに発生する、修理が必要なトラブルにはどんなものがあるのか解説します。

1.レンズのカビ

カメラのレンズのトラブルで、最も多いのがレンズのカビです。

こちらの写真をご覧ください。

レンズのカビ

レンズのカビ

レンズのガラスの部分に、蜘蛛の巣のような跡がついています。
これがレンズのカビ。
お風呂や台所のカビと同じように、身の回りにいる菌類が原因です。

レンズにカビが生じると、撮影した写真の画質が悪くなります。
ぼんやりと、もやがかかったようになってしまいます。

レンズの表面にカビが繁殖しているので、修理にはカビの除去が必要です。

2.レンズのクモリ

レンズのクモリ

カメラ用レンズの表面が白く曇ってしまうトラブルです。
こちらも写真の画質が悪くなり、もやがかかったようになります。
レンズの素材の経年変化や、内部のグリスなどの化学製品の影響が原因です。

レンズに使われるガラスそのものが曇ってしまう場合と、レンズ表面に施されたコーティングが劣化して曇っている場合があります。

軽いものでは表面を拭くだけで取れることもありますが、拭いても取れない場合には、専門店でレンズ表面を研磨してもらうなどの重修理が必要になることがあります。

3.レンズのキズ

レンズのキズ

レンズのガラス部分の表面についた物理的なキズです。
こちらも写真の画質低下の原因となります。

上で紹介したカビやクモリはあくまでもレンズの表面で起きたトラブルなのに対して、キズはガラス自体が物理的に破損しているため、修理が難しくなります。

レンズのキズのなかでも、薄っすらと細かくついたキズのことを「拭き傷」と呼ぶことがあります。
固いティッシュや布などで拭くことが原因です。

また、レンズのガラス部分が割れてしまった場合には修理は困難です。

4.バルサム切れ

バルサム切れ

複数枚のレンズを貼り合わせた箇所が劣化するトラブルです。
レンズの内部の色が変わったように見えます。

「バルサム」とは、かつてレンズの貼り合わせに使われていた植物性の接着剤のこと。
現在では化学的に作られた接着剤が使われるようになっていますが、いまでも
「バルサム切れ」と通称されています。

修理は難しいことが多いです。

5.ピントリングのグリス抜け・固着

マニュアルフォーカス(手動でピントを合わせる)のレンズに多いトラブルです。

マニュアルフォーカスのレンズは、スムースにピントリングが回るようにグリスが塗られています。
グリスが経年劣化すると、回転がスカスカになったり、逆に固くて回せなくなったりしてしまいます。

専門の業者に依頼することで修理が可能です。

6.ピントのずれ

レンズの個体差や経年劣化、不適切な修理などによって、見た目には問題がないのに、撮影した写真のピントが微妙にずれてしまうトラブルです。

具体的には、下の画像のように、ピントリングの位置が無限遠なのに、ピントが無限遠に合っていないような状態になります。
(※画像の例はマウントアダプターの精度が原因で、レンズ本体は正常です)

レンズは無限遠になっている

オーバーインフでピントが合っていない

デジタルカメラ用など新しいレンズは、メーカーでピント調整を行ってもらうことができます。
例としては、ニコンのデジタルカメラ用レンズは、サービスセンターで2,200円で調整を依頼可能です(2022年8月現在)。
参考:https://www.nikon-image.com/support/showroom/servicecenter/maintenance.html

いっぽう、フィルムカメラ時代のオールドレンズでピントがあきらかにずれている場合、専門家ではない誰かが修理しようとして、誤った組付けをしてしまったことが考えられます。
この場合、専門修理店に依頼することとなります。

7.自動絞りの粘り

主に一眼レフ用のレンズに生じる故障です。

一眼レフカメラ(デジタル・フィルムともに)用のレンズには、撮影時に瞬間的に絞りを動かす「自動絞り」という機構があります。

この自動絞りの部品に油などが付着して、動作が遅くなってしまうことがあります。

このトラブルは、カメラ本体の設定は間違っていないのに、撮影した写真の露出がおかしい(明るすぎる写真になる)という失敗の原因になります。

8.絞りの油

レンズ内部の「絞り」の表面に油が付着するトラブルです。

一眼レフ用のレンズでは、上で解説した「自動絞りの粘り」の原因となります。

そのほかの、レンジファインダーカメラ用やミラーレス一眼用などのレンズでも、動作不良や部品の破損の原因となります。
これは、油が動作の抵抗になって、部品に大きな負担がかかるためです。

9.オートフォーカスや手ぶれ補正などの電子的な故障

オートフォーカスのレンズの、内部の電子部品の故障です。

カメラの電源を入れても正常に動かないことで判別できます

基本的にはメーカーに修理を依頼することとなります。

10.フィルター枠曲がりなど物理的な破損

レンズ外装の物理的な破損です。

もっとも多く見られるのが「フィルター枠の曲がり」です。
レンズの先端部分を固いものにぶつけてしまい、外側の丸い枠が曲がってしまうことがあります。
(プラスチック製の外装の場合、割れたり欠けてしまうこともあります)

安易にラジオペンチなどで元に戻そうとするとキズがついてしまうので、メーカーや専門修理業者に依頼するのがおすすめです。

フィルター枠曲がりに限らず、物理的破損があるレンズは、レンズ自体の精度が落ちてしまっている可能性があります。
できる限り、メーカーや修理業者に状態チェックを行ってもらうのがおすすめです。

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カメラのレンズを修理する方法 デジタルカメラ用レンズ・AFレンズの場合

それでは、故障してしまったレンズを修理するにはどうしたらよいのでしょうか?

まず、製造が新しい、デジタル一眼レフやミラーレス一眼などデジタルカメラ用レンズ。
そしてフィルムカメラ用でもオートフォーカス(AF)レンズの場合です。

デジタル用レンズ・AFレンズはメーカー修理を依頼

AFニッコール35mm F2G

基本的にデジタル用レンズは、製造したメーカーに修理を依頼するのがおすすめです。

デジタルカメラ用のレンズは内部に多数の電子部品が使用されており、外部の修理業者や、ましてや自分でのDIY修理は困難です。

フィルムカメラの時代に製造されたレンズでも、オートフォーカスのレンズの場合、基本的には同様です。

各メーカーとも、サービスセンターでの修理受付や、宅配での修理受付を行っているため、公式サイトから修理方法を確認しましょう。

カメラメーカー 修理受付一覧

エルタワー
ニコンのサービスセンターがある新宿エルタワー

ニコン(Nikon) 公式サイト
キヤノン(Canon) 公式サイト
ペンタックス・リコー(PENTAX・RICOH) 公式サイト
オリンパス(OLYMPUS) 公式サイト
パナソニック(Panasonic) 公式サイト
富士フイルム(FUJIFILM) 公式サイト
ソニー(SONY) 公式サイト
コニカミノルタ(Konica MINOLTA) 株式会社ケンコー・トキナーが修理引き継ぎ
修理ページ
シグマ(SIGMA) 公式サイト
タムロン(TAMRON) 公式サイト
トキナー(TOKINA) 公式サイト
ライカ(Leica) 公式サイト

メーカー修理不能な場合

ただし、メーカーでも修理不能な場合があります。

物理的破損などあまりにも致命的な故障の場合には買い換えるしかありません。

もし、
・メーカーに修理部品がない
・古すぎて修理を受け付けていない

などの場合、次善の策として、専門修理業者に相談するのがおすすめです。
電子的故障の場合には難しいこともありますが、それ以外のトラブルの場合には対応できることもありえます。

修理店については次の「フィルムカメラ用レンズの場合」で紹介します。

[oldlens]

フィルムカメラ用レンズ(オールドレンズ)の場合

それでは、フィルムカメラ用レンズの場合にはどうしたらよいのでしょうか?

1.メーカー純正修理

メーカー純正修理

たとえばニコンのマニュアルフォーカス用レンズなど、メーカー純正修理を受け付けているものも、まだまだ存在します。

純正修理やオーバーホールが可能な製品については、まずはメーカーに問い合わせてみましょう。

2.専門修理業者での修理

専門業者での修理

カメラやレンズの修理を専門とする業者での修理です。

当店、サンライズカメラでも、古いカメラやレンズを、提携の専門修理業者で職人の方に修理していただいたうえで販売しています。

フィルムカメラ時代のオールドレンズは、現代のデジタル用レンズに比べて比較的構造が単純で、専門修理業者にオーバーホールしてもらうことで、良好な状態に復活させることが可能です。

そもそもフィルムカメラ時代のレンズは、現代のプラスチックが多用された製品と異なり、メンテナンスを行って末永く使うことを前提としていたことも大きな要因です。

詳しくは、下で解説する修理店紹介をご覧ください。

3.自分で修理する

愛好家の間では自分で修理することも行われています。

ただし、素人の修理では、レンズを「新品同様の」状態に戻すことはできません

一見カビやクモリが取れているように見えても、レンズ表面の状態はもとに戻りません。
精密な部品の動作も、レンズのピントにも、厳密にはずれが生じてしまいます。

あくまでも好事家の趣味に過ぎないので、基本的にはおすすめしません。

カメラのレンズ修理店の選び方とおすすめ修理店5選

おすすめ修理店

では、専門修理店にカメラのレンズの修理を依頼する場合、どんなお店がおすすめなのでしょうか?

選び方と、おすすめのお店を紹介します。

カメラのレンズ 修理店の選び方

レンズの修理

日本にはカメラのレンズを修理してくれるお店が多数存在します。

選ぶときに注意したいポイント。
それが、これまでの修理実績です。

カメラ・レンズの修理専門店には、それぞれ得意とするメーカーや分野があります。

例えば、ペンタックスの修理なら日本一。
例えば、レンズ表面の研磨なら日本一。

修理を依頼する場合、あなたの持っているレンズのメーカーや、トラブルの症状をもとに、どのお店に依頼するのがよいかあらかじめ調べましょう。

下で解説するおすすめ修理店紹介でも、それぞれの定評ある得意分野を記載しているので参考にしてくださいね。

また、修理専門店は日本中にあります。
必ずしも、家から近いお店を選ぶ必要はありません。
宅配便で受付をしてもらえるので、お店の修理実績を中心に選びましょう。

フォト工房キィートス:ニコンの修理におすすめ

ニコン(日本光学)のニッコール(NIKKOR)レンズの修理なら、フォト工房キィートスがおすすめ。

ニコンの修理では日本一有名といっても過言ではない修理業者です。

有限会社フォト工房キートス
東京都品川区西大井1-8-1 西大井舘野ビル2F
http://photo-kiitos.co.jp/

長谷川工作所:ペンタックスならここ

東京、上野(銀座線稲荷町駅)にある長谷川工作所は、ペンタックス製品の修理で有名です。
筆者もかつてペンタックスSPとレンズのオーバーホールを依頼したことがあります。

他にも、オリンパスとミノルタの修理店に認定されています。

有限会社長谷川工作所
東京都台東区東上野6-4-12
http://hasegawa-repair.watson.jp/

三葉堂寫眞機店:若手修理技術者の親切修理

三葉堂寫眞機店

東京、日暮里にある若手スタッフが運営するフィルムカメラ・オールドレンズの専門店です。
各種オールドレンズを、親切なスタッフの方に修理してもらうことができますよ。

三葉堂寫眞機店
東京都荒川区東日暮里5-32-6
https://www.mitsubado.com/

ハヤタ・カメララボ:クラシックレンズにおすすめ

クラシックカメラでトップクラスの知名度を誇る、東京、浅草にある早田カメラの修理工房です。

国内メーカーやライカレンズなどメジャーな製品に留まらず、エンスー好みの非常にマニアックなクラシックカメラ・レンズまで、ここに任せればまず間違いはないでしょう。

ハヤタ・カメララボ
東京都台東区浅草1-34-7 井上ビル2F
https://www.hayatacamera.co.jp/

山崎光学写真レンズ研究所:レンズ研磨なら日本一

東京都新宿区にある、カメラ用レンズ修理で有名な工房です。

山崎光学写真レンズ研究所の特色が、レンズの「研磨」が可能だということ。
レンズ表面の拭き傷など修理が非常に難しいトラブルでも、美しい写真が撮れる状態に蘇らせることができるのです。

対象となるのは、主にライカ(Leica)などの高級品が主です。
技術的には可能でも、研磨には時間と料金がかかるため、修理代金をかけるに値する(と顧客が判断する)レンズが、どうしても中心となってしまうようです。

山崎光学写真レンズ研究所で研磨されたレンズは「山崎磨き」と呼ばれ、一種のブランドとして珍重されています。
ライカレンズなど高級レンズの最後の駆け込み寺としておすすめです。

山崎光学写真レンズ研究所
東京都新宿区北新宿4-4-9
(公式サイトなし)

[oldlens]

オールドレンズを自分でDIY修理する

レンズを自分で修理する

最後に、自分でカメラ用レンズを修理することについて触れたいと思います。

フィルムカメラやオールドレンズを自分で修理してみたい。
そう思うのは当然でしょう。

ただ、カメラやレンズを分解したり、修理するというのはリスクが高い行為でもあります
そもそも、素人が修理を行うのは、カメラやレンズの価値をゼロにしてしまう行為でさえあるのです。

筆者もプライベートでは趣味として分解を行うことはありますが、あくまでも「趣味」としてのことです。

※サンライズカメラでは、カメラ・レンズの修理はすべて専門業者に依頼しています。

カメラ用レンズを自分で修理するときの注意点

カメラ用レンズを自分で修理するときに気をつけたいことについてまとめました。

自分で分解したレンズは「ジャンク品」になる

もし「修理に成功した」と思っても、実際にはレンズの状態は新品同様にはなりません
また、修理店で修理してもらったのと同じ状態にもなりません

レンズのガラス部分、機械的な部品、ともに素人には厳密な精度を出すことはできないため、素人が分解したレンズは、基本的に「ジャンク品」になってしまうのです。

「素人が分解したとわかるはずがない」と思うかもしれませんが、各部についた工具の跡や、レンズ表面の状態などを見れば、よほど熟練した(プロ顔負けの技術の)愛好家の仕事でない限り、中古カメラ専門店のスタッフにも、知識のある愛好家にも、ひと目で素人分解品だと判別できます。

あくまでも「壊れてしまってもよい」レンズだけを分解するようにしましょう。

(価値のあるレンズと価値のないレンズを分けて考えること自体、批判が存在します。ただ実際には、製造数がとても多かったり、人気がとても低いレンズは素人分解の材料になりがちなのが現実です)

自分で分解したレンズを売らない

オークションやフリマアプリで、自分で分解したレンズを売らないようにしましょう。

仮に処分する場合でも、素人分解品と明記したうえで、それに沿った値段(ジャンク品としての値段)で売るようにしましょう

素人分解品を、状態良好や、オーバーホール済みと書いて売るなどはもってのほかです。

価値の高いレンズを分解しない

Mズミクロン 1st

たとえばライカレンズのような、価値が高いレンズ、希少なレンズの分解はやめましょう。

もし自分で修理をしてみたいという場合、比較的価値の低い(という表現にも語弊がありますが)ものから行うようにしましょう。

古いレンズは素人には調整不可能

とくに1960年代以前のレンズに多いですが、製造時に手作業で調整されたものがあります。

そのようなレンズは分解してしまうと精度が(光軸など)狂ってしまい、元の性能は発揮できなくなります
このような意味でも、効果なレンズの分解はやめましょう。

例としては古いライカレンズなどです。

必要以上・実力以上の分解はしない

無理な分解は破損や部品の紛失につながります。

無理だと思ったら素直に分解をやめましょう。

こまめに写真を撮る・メモをする

部品の組み付けの順番や、もともとあった位置などを記録しておきましょう。

適切な工具を揃える

後述しますが、カメラやレンズの修理には工具が大切です。

不適切な工具や代用品の使用は、レンズの破損の原因になりますし、時間も手間も大幅に増してしまいます。

インターネット上には工具の自作方法も多数掲載されていますが、それらは、知識のある愛好家の方だからこそできる工夫です。

まずは専用の修理用品を用意しましょう。
幸い現在では、中国製などの廉価かつ精度のある工具もネットで購入可能です。

自分でレンズを修理するのに必要な工具

ぜひ揃えたい工具を解説します。

1.精密ドライバー

精密ドライバー

ネジを回すドライバーです。

100円ショップでも売っていますが、精度が悪いためおすすめしません。
専門の工具メーカーのものを選ぶとよいでしょう。

上の画像は日本のホーザン(HOZAN)のもの。

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本格的に行うならベルジョンのものがよいようです。

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2.カニ目回し

カニ目回し

レンズを固定するリングを回す工具です。
リングの外側に2箇所設けられている、穴やスリットに引っ掛けて回します。

筆者は通販で購入した中国製のものを使っています。

各種商品がAmazon等で購入可能です。

ただし、上記のような工具を買ったからといってそれですべて分解できるわけではありません。
レンズの構造によって創意工夫が必要です。

また、キズを付けるのを避けるため、できるだけカニ目回しではなく下で紹介するようなゴムを使って回すのも重要です。

3.吸盤オープナー

吸盤オープナー

上に書いた、カニ目回しを引っ掛ける穴やスリットのない、円形の部品を回すのに使います

ゴム製の円錐状のリングで、各種のサイズがセットになっています。
押し付けてゴムの摩擦力で回します。

ジャパンホビーツールの製品が購入可能です。

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椅子のゴム足などで代用することができなくもないですが、筆者がかつて代用していた経験から言うとおすすめできません。
専用品を買ってから、作業効率が非常に上がりました。

4.レンズサッカー

レンズサッカー

レンズを吸着して、手で触ることなく取り外すための道具です。

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UN(ユーエヌ)の製品が購入可能です。

5.シルボン紙/ダスパー

ダスパー

レンズを拭くときに使う専用のペーパーです。

割り箸に巻き付けて使います。

「小津産業」の「ダスパー」が定番です。
ニコンからも「シルボン紙」として販売されていますが中身は同じです。

6.無水エタノール

無水エタノール

清掃に使うアルコールです。

薬局、ドラッグストアで購入可能(身分証など必要なし)。
写真はマツモトキヨシで購入したものです。

薬局で販売されているエタノールには「無水エタノール」と「消毒用エタノール」がありますが、レンズ修理に使えるのは「無水エタノール」です。
「消毒用エタノール」には添加物が入っているので使えません。

ちなみに「無水エタノール」は値段が高く見えますが、その理由は酒税がかかるからです。
お酒に入っているアルコールと成分が同一なので、税法上お酒扱いされてしまうのです。

可燃性なので火気に気をつけましょう。

7.オキシドール

オキシドール

小学校の理科の実験で使った過酸化水素水です。

こちらもレンズ表面の清掃に使用します。

無水エタノール同様、ドラッグストアで購入可能です(身分証など必要なし)。

8.ハンドラップ

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無水エタノールのような薬品を入れて、適切な量を取り出すための専用容器です。

カメラ修理の愛好家は、中にビー玉を入れて、見かけの内容量を減らして使うことが多いです。
これは、ハンドラップは密閉されておらず、そのままだと高価な無水エタノールがどんどん揮発して量が減ってしまうため、入れっぱなしにする量を少しでも減らすためです。

9.ベンジン

ベンジン

レンズの絞りが油を引いてしまったり、粘ってしまったりしたときに、部品を洗浄するのに使います。

薬局、ドラッグストアで購入可能です。

こちらも可燃性なので注意しましょう。

10.グリス

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レンズのピントリングのグリスを交換する場合、必要となります。

※グリス等のケミカルには各種のものがあります。詳しくはネット上の情報を検索してください。

※上記の商品リンク先では、各種の硬さのものを選択可能です。

11.ブロワー

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レンズ表面のホコリを吹き飛ばすのに使います。

普段使っているものでOKです。

12.プラスチックケース

分解した部品を小分けに保管するためのケースです。

100円ショップのものでOKです。

レンズ素人修理の実際

それでは一例として、オールドレンズを自分でDIY修理している様子を解説します。

ここではPENTAXのオールドレンズ、Super Takumar 200mm F4を分解してみます。

1.修理前の状態

スーパータクマー200mm F4

PENTAX SPなど用のM42マウントオールドレンズ、Super Takumar 200mm F4です。

まず、レンズにどのような故障があるか確認します。

確認したところ、レンズ内部にカビが発生しています。
カビはレンズ前玉と後玉にあるようです。

レンズのカビを確認

レンズのカビを確認

自動絞りはスムースに動作しているようです。

レンズのカビを確認
自動絞り連動ピンを指で押して、スムースに動くことを確認

このことから、今回は絞り関係には触らず、レンズのカビを取ることだけを行うことにしました。

2.前玉を分解する

まずは前玉のカビを除去します。

レンズ前玉は、押さえリングで固定されています。

押さえリング

押さえリングは周りがネジになっていて、レンズの前からねじ込まれています。

吸盤オープナーを押し付けて回します。

吸盤オープナーを押し付けて回す

リングが外れました。

押さえリングが外れた

レンズサッカーを使ってレンズを取り外します。

レンズサッカーを使う

レンズ前玉が外れました。

前玉が外れた

3.前玉のカビを取る

割り箸の先端にシルボン紙を巻き付けて、無水エタノールやオキシドールなど洗浄用の薬品を染み込ませます。

薬品を染み込ませる

レンズ表面を、円を描くようにして清掃します。

レンズの拭き方

レンズの拭き方

ちなみに今回、最初は無水エタノールを使ったのですが、カビがうまく取れませんでした。
オキシドールを使ったところ、無事カビを取ることができました。

4.前玉を組み付ける

レンズ前玉をもとの位置にはめこみ、固定リングを元のようにねじ込みます。

押さえリングをねじ込む

このとき、中にホコリが入らないように、ブロワーで念入りに吹き飛ばしましょう

ブロワーでホコリを飛ばす

これで前玉が固定されました。
画像のように、カビがなくなっています。

清掃前
清掃前

清掃後
清掃後

5.さらに分解する

レンズ内部のカビを取るために、さらに分解します。

このレンズ、スーパータクマー200mm F4は、レンズ前部を手で掴んで回すことで、前玉をごっそりと外すことができます。

スーパータクマー200mm F4の前玉を外す

スーパータクマー200mm F4の前玉を外す

内部の状態を確認します。
前玉最後部と、後玉最前部にカビが発生しています。

内部のカビの状態

内部のカビの状態

絞りを挟んだ場所で、レンズのなかでもとくにカビが発生しやすい場所です。

6.後玉のカビを取る

前玉同様にカビを取ります。

拭く

今回はあくまでも趣味としての分解のため、これ以上はバラさず、レンズが鏡筒についた状態で清掃しました。

下の写真は清掃前と清掃後の比較です。

前玉後部清掃前
前玉後部清掃前

前玉後部清掃後
前玉後部清掃後

後玉前部清掃前
後玉前部清掃前

後玉前部清掃後
後玉前部清掃後

7.組み立てる

元通りに組み立てます。

組み立てる

これで清掃完了です。

8.カニ目回しの使い方

今回の清掃ではカニ目回しを使いませんでした。

そこで最後に、参考として、カニ目回しの使用方法にも触れておきたいと思います。

カニ目回し
カニ目回し

カニ目回しとは、スリットや穴に先端を引っ掛けて、リングを回すための工具です。

スリット

穴

使い方自体は簡単です。

先端をスリットや穴に噛み合わせて……

スリットに先端を噛み合わせる

回します。
これだけです。

回す

ただし、注意したい点があります。

それが、少しでも手元が狂うと、先端が滑ってキズをつけてしまうこと。

たとえば、下の画像のレンズには、明らかに素人が修理の際につけたキズがついています

カニ目のキズ

もし先端がレンズのガラス部分に当たれば、当然キズをつけてしまいます。

先端が滑らないように、細心の注意をもって使いましょう。

カニ目回しでも吸盤オープナーでも回せる場合は吸盤オープナーで回す

このように、カニ目回しを使う場合にはキズをつけないようとくに注意が必要です。

場合によっては、カニ目用のスリットや穴があっても、吸盤オープナーなどゴムを押し付けることで回せることがあります。
そのようなときは、カニ目回しを使わず、吸盤オープナーなどで分解するようにしましょう。

9.試写

さっそくマウントアダプターを使って試写してみます。
今回はSONY α7(初代)にK&F Concept製のM42マウントアダプターで取り付けて撮影しました。

PENTAX Super Takumar 200mm F4試写

PENTAX Super Takumar 200mm F4試写

PENTAX Super Takumar 200mm F4試写

一見して、実用に耐えうる画質の写真が撮れているように見えます。

ただし、これはあくまでも、とりあえず使える、という程度のもの。
当然ですが専門修理業者に依頼すると、さらに良好な性能になることでしょう。

症状別 自分でDIY修理する方法

レンズのトラブルの症状別に、どんな修理を行えばよいか解説します。

1.レンズのカビ

上で解説したように、分解して清掃します。

2.レンズのクモリ

軽いものは、カビと同じように拭くだけで取れることもあります。

取れない場合には、自分でDIY修理するのは困難です。

3.レンズのキズ

自分でDIY修理するのは困難です。

4.バルサム切れ

自分でDIY修理するのは困難です。

5.ピントリングのグリス抜け・固着

レンズのピントリング部分を分解して、ベンジンなどで元のグリスを除去します。
新しいグリスに入れ替えて組み付けます。

ただし、組み立てを間違えると、ピントがずれるトラブルを招きます。

6.ピントのずれ

レンズのピントリング部分を分解して、正しい位置に組み付け直します。

7. 自動絞りの粘り

絞りの部品を分解して、不要な油を除去します。

必要な箇所にだけ、最低限の注油を行います。

8.絞りの油

絞りの部品を分解して、不要な油を除去します。

9.オートフォーカスや手ぶれ補正などの電子的な故障

自分でDIY修理するのは困難です。

10.フィルター枠曲がりなど物理的な破損

自分でDIY修理するのは困難です。

曲げ直すことはできますが、素人レベルでは見た目が非常に見苦しくなります。

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レンズをよい状態に保つには

ここまで、カメラ用レンズの修理について解説してきました。

ですが、一番よいのは、レンズを修理不要な状態に保つこと。

最後に、そのための方法を解説します。

1.防湿庫や防湿ボックスで保管

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レンズのトラブルで最も多いのがカビ。

カビの発生は、湿度の管理でかなりの割合を防ぐことができます。

湿気を防ぐための用品として「防湿庫」や「防湿ボックス」があるので、レンズの保管に活用しましょう。

もしない場合には、風通しのよい、湿気の少ない場所で保管するだけでも効果があります

カメラバッグやレンズケースに入れっぱなしにするのは、湿気の原因となるのでやめましょう。

2.保護フィルターを付ける

レンズの前面には保護フィルター(プロテクター)を付けましょう。

前玉のキズを防ぐことができます。

また、レンズ先端をぶつけたりした場合にも、保護フィルターが代わりに壊れてくれて、レンズ本体へのダメージを軽減できます

保護フィルターは画質の低下につながるとして、好まない向きもあります。
筆者も以前はその立場でしたが、大切なレンズを守るために、いまでは基本的に装着しています。
現代のプロテクトフィルターは高性能なため、ほぼ画質に影響しないと思ってよいでしょう。

3.フードをつける

レンズフード

レンズ先端、フィルター枠の歪み、凹みなどは、レンズフードをつけっぱなしにすることでも軽減可能です。

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適切な方法でレンズを修理しましょう

レンズの調子が悪くなった場合、基本的にはメーカー修理や、専門修理業者での修理がおすすめです。
とくに、デジタル用のレンズなどメーカー純正のサポートが問題なく提供されている場合、迷う余地はありません。

オールドレンズについては、各地にある修理業者に依頼することで、とても良好な状態に戻すことができますよ。

いっぽう、自分でDIY修理するのは、あくまでも趣味
カメラ・レンズの楽しみを大幅に広げてくれるものではありますが、専門修理業者の修理とはまったく異質なものであることを自覚しておくとよいでしょう。

もし本格的に修理について知りたい場合、修理講座を開いている修理店やカルチャースクールもあるので調べてみるのもおすすめです。

ぜひ、あなたのレンズを大切に使ってあげてくださいね!

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更新履歴

2022年8月22日

Nikonの点検料金を2022年8月時点の価格に修正。
メーカー修理サービスへの外部リンクを現時点のURLに修正。

著者紹介: サンライズカメラ

サンライズカメラは、いまでは数少なくなってしまった「フィルムカメラ専門店」の使命として、フィルムカメラに関する情報を公開し続けています。 「こんな記事が読みたい」というご要望がありましたら、お気軽にFacebook、Twitter、お問い合わせフォームなどからご連絡ください。カメラ愛好家のみなさん、これからフィルムを始めたいみなさんとお話できることを楽しみに待っています。

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