フィルムピッカーの使い方 誰でもできる写真フィルムの先端を引き出す方法
フィルムカメラを使っていて、間違えてフィルムの先端を引き込んでしまったことはありませんか?
今回は、そんなときに使う道具「フィルムピッカー」について解説します。
中古フィルムカメラの多くが使う35mmフィルム(135フィルム)は、遮光用の缶(パトローネ)のなかに入っています。
ところが、一度フィルムの先端をパトローネのなかに引き込んでしまうと、そのままでは取り出すことができないのです。
でも大丈夫。
「フィルムピッカー」を使うことで、フィルムの先端を引き出して、また使えるようにすることができますよ。
フィルムピッカーは使い方に少しコツがいるので、画像を交えて細かく解説したいと思います。
また、すでにフィルムピッカーを知っている方も、パトローネの中からどのような原理でフィルムを引き出しているのか再現したのでぜひご覧ください。
目次
フィルムピッカー
写真用フィルムをパトローネから取り出す道具「フィルムピッカー」について解説します。
フィルムピッカーとはこのような道具。
でも、どうしてフィルムピッカーが必要なのでしょうか?
フィルムの先端を缶のなかに引き込んでしまった!
いま人気の中古フィルムカメラ。
写真用のフィルムにはいくつかの規格があるのですが、なかでももっとも広く使われているのが「35mmフィルム」です。
35mmフィルム
中古フィルムカメラを使っている方なら、きっとこのフィルムを見たことがあるはず。
35mmフィルムとは、横幅が35mmのフィルムで、この写真のように「パトローネ」と呼ばれる缶に入っています。
ところで、フィルムカメラを使っていて、フィルムを1本取り終わってしまったら、フィルムはどんなふうになっていますか?
きっと、下の写真のように、フィルムの先端がパトローネ(缶)のなかに引き込まれた状態になっているのではないでしょうか。
次の写真は、撮影前のフィルムと撮影後のフィルムを再現したもの。
このように、写真用の35mmフィルムは、撮影前は先端が出ていて、撮影後は先端がパトローネのなかに収納されているのが普通です。
そして、一度収納したら簡単に取り出せないようになっています。
先端を収納できるのは「間違えて2回使わないため」
撮影後に先端が収納されて、引き出せなくなっている理由。
それは「間違えて2回撮影しないようにするため」です。
もし先端が出ていると、そのフィルムが「未使用」か「撮影済み」かわからなくなってしまいます。
間違えて撮影済みのフィルムをもう一度入れてしまうと、1回目と2回目の写真が重なって写る、「多重露光」という状態になってしまうのです。
そこで「撮影済みフィルムは先端が収納されている」ようにすることで、そのようなミスを防止するようになっています。
ところが……
間違えて先端を収納してしまうと出すことができない
間違えて2回撮影してしまわないように、フィルムの先端は簡単に取り出せないようになっています。
ということは、
間違えて未使用フィルムの先端を引き込んでしまうと、
そのフィルムは使えなくなってしまう
のです。
フィルムの値段は500円〜1,000円前後。
1,000円以上のフィルムだっていくつもあります。
諦めるにはもったいない金額ですよね。
先端を引き出して、もう一度使える状態にすることはできないのでしょうか?
……大丈夫。
そんなときこそ「フィルムピッカー」の出番なのです。
フィルムピッカーの購入方法
35mmフィルムの先端をパトローネ(缶)から引き出すのに必要な道具。
それがこの、フィルムピッカーです。
他にはとくに必要なものはありません。
フィルムピッカーはだいたい1,000円前後で、ヨドバシカメラやビックカメラのようなカメラ用品店で購入することが可能です。
メーカーはHCL(堀内カラー)とHAKUBA(ハクバ)製がありますが、ブランドが違うだけで同一製品。
使い方や性能に違いはありません。
(余談ですがかつてはコニカ→コニカミノルタ製が定番でした)
フィルムピッカーでフィルムを引き出す方法
それでは、35mmフィルムをパトローネ(缶)から引き出すにはどうするのでしょうか?
具体的に見ていきたいと思います。
1.フィルムピッカーの構造
まず、フィルムピッカーの構造を解説します。
フィルムピッカーをこのように横にしてみたときに、
「A」「B」と書いてある部分(取っ手)があります。
「A」と「B」の部分はそれぞれ左右にスライドするようになっており、スライドするとそれぞれ、内部から黒くて薄い板が出てきます。
「A」を動かした状態
「B」を動かした状態
フィルムピッカーは、この薄い板をフィルムパトローネの内部に挿入して、フィルムの先端を引き出す構造になっています。
では、具体的に取り出す順番の解説に移ります。
2.先端をフィルムパトローネに入れる
あらかじめ、「A」と「B」を両方とも片側に寄せて、薄い板が収納された状態にしておきます。
フィルムピッカーの薄い板の先端を、フィルムパトローネの中に入れます。
入れる場所は、フィルムが出てくるのと同じ場所です。
このとき、複数枚ある黒い板がすべて中に入るようにします。
3.ひとつめの取っ手「A」をスライドさせる
先端をフィルムパトローネのなかに挿入したら、2つあるうち、「A」の取っ手を横にスライドさせます。
端から端まですべて移動させましょう。
「A」をスライドさせた状態
4.フィルムの軸を指で回転させる
さて、ここがフィルムピッカーの使い方で一番のポイントです。
ひとつめの取っ手「A」をスライドさせたら、フィルムの軸を手で回します。
フィルムの軸とは、フィルムの缶から飛び出ているこの場所。
ここを指でつまんで、画像のように「巻き取る方向に」回転させます。
回転させていると、たまに「カチッ、カチッ」と音がする瞬間があるのではないでしょうか。
この音こそが最大のポイントなのです。
5.「カチッ」と鳴ったら軸を回すのを止める
この「カチッ」という音は、
さきほど挿入した薄い板「A」の先端をフィルムの先端がはじいたときの音。
この音が鳴ったら、フィルムの軸を回すのを止めましょう。
このとき、フィルムの先端がふたつめの薄い板「B」を入れるのに適した状態になっています。
6.ふたつめの取っ手「B」をスライドさせる
「カチッ」という音が聞こえて回転を止めたら、
もうひとつの取っ手「B」をスライドさせます。
先ほどと同じように、端から端まですべて移動させます。
「B」をスライドさせた状態
7.フィルムピッカーをフィルムから引き出す
そうしたら、パトローネのなかに挿入したフィルムピッカーの先端をゆっくりと引き抜きます。
すると……
このように、フィルムの先端が一緒に引き出されるのです。
先端が少ししか引き出されていなかったときは、手でもう少しだけ引き出してから、フィルムケースに入れるとよいでしょう。
これで、フィルムピッカーを使ったパトローネからのフィルム先端引き出しは完了です。
フィルムピッカーでの引き出しは、慣れていても一度ではうまくいかないことがあります。
うまくいかないときは何度か試してみましょう。
フィルムピッカーを使う様子 動画
フィルムピッカーを使う様子を動画にしてみました。
ぜひ参考にしてみてください。
「カチッ」という音も録れているので参考になるかと思います。
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フィルムピッカーの原理
ところで、フィルムピッカーはどうやってフィルムの先端を引き出しているのでしょうか?
フィルムピッカーは摩擦でフィルムを引き出している
結論からいえば、摩擦力でフィルムを引き出しています。
フィルムピッカーに使われている薄い板は曲がりやすいので、巻かれているフィルムに沿ってパトローネの中で曲がるようになっています。
2枚の板を、1枚(A)はフィルムの外側に、もう1枚(B)はフィルムの内側に沿わせることで、両面からの摩擦力で引っ張り出しているのです。
2枚の薄い板でフィルムを挟んでいる様子
テスト用のフィルムの中身を出して再現してみました。
まず、1枚目の薄い板「A」をフィルムの内部に挿入したとき。
このように、フィルム先端の「外側」に沿うようになっています。
次に、2枚目の薄い板「B」をフィルムの内部に挿入したとき。
今度は、フィルム先端の「内側」に沿ってパトローネのなかに入る状態になっています。
「カチッ」といったときに軸の回転を止めるタイミングにもよりますが、実際にはこの写真よりも深く奥に入っており、摩擦が生じる面積が大きくなります。
そのため、ただの「板」の摩擦力だけでもフィルムを引き出すことができるのです。
※これはテスト用のフィルムです。撮影に使うフィルムをこのように開けるとフィルムが感光して使えなくなってしまうので注意しましょう。
※ここで使ったのは古いフィルムなので簡単にパトローネ(缶)が開封できるようになっていますが、現在販売されているフィルムは上下がカシメられていて開けられなくなっています。
フィルムピッカーを使うときの注意点
フィルムピッカーを使う場合、間違えて2度撮影してしまわない、などの注意したいポイントがあります。
1.多重露光に注意
最初に解説したように、間違えて撮影済みのフィルムの先端をフィルムピッカーで引き出してしまうと、多重露光(二重写し)してしまう可能性があります。
(もちろん、意図的に多重露光を技法として使う場合はOKです)
基本的には、意図的に多重露光したい場合や、後述する現像のために先端を引き出す場合を除いて、フィルムピッカーを使うのは間違えてフィルム先端を引き込んでしまった場合だけにするとよいでしょう。
2.パトローネ内部への光漏れに注意
フィルムのパトローネは、内部が完全に遮光された状態です。
フィルムの出入り口は「テレンプ」と呼ばれる遮光性のある繊維で覆われていて、通常は光が漏れることはありません。
ただ、万一のことを考えて、フィルムピッカーを挿入したまま強い力がかかるようなことは避けたほうがよいでしょう。
光線漏れの原因になります。
フィルムピッカー豆知識
その他にも、フィルムピッカーには使いみちがあります。
フィルムピッカーを使うその他の重要場面「現像」
フィルム写真愛好家にとって、フィルムピッカーをもっとも多用する場面はこちらかもしれません。
モノクロフィルムを自分で現像するときにも、フィルムパトローネから中身を引き出す必要があります。
このときにも、まったく同じ方法でフィルムピッカーを使うのです。
なおモノクロ現像を自分で行う場合、他にも「栓抜き」のような道具でパトローネを破壊して開ける人もいます。
ただ、筆者はパトローネを再利用してモノクロフィルムの詰替えをしていたので破壊したくなかったのと、現像用リールに巻くときに、パトローネに入った状態のほうが巻きやすかったので基本的にはフィルムピッカーを使っていました。
もし外出先でフィルムピッカーを持っていなかったら
そんなときは、街のカメラ屋さんに駆け込みましょう。
街のカメラ屋さん・写真屋さんは基本的にフィルムピッカーを常備しています。
お店にもよりますが頼んでみるとよいでしょう。
料金についてはお店で尋ねましょう。
フィルム写真を楽しむなら一家に一本フィルムピッカー
これから中古フィルムカメラを楽しむなら、ぜひフィルムピッカーを用意するのがおすすめ。
今後、モノクロフィルムの現像をしてみたくなったときにも利用できますよ。
フィルムカメラを楽しむなら、ぜひ1つ持っているのがおすすめです。
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