FUJIFILM(富士フイルム)TX-1・TX-2/世界をワイドに切り取る「本物」のパノラマカメラ
今回はFUJIFILM(富士フイルム)TX-1とTX-2(TXシリーズ)について解説します。
1990年代。
とあるブームがカメラ界を駆け巡りました。
それが「パノラマ」写真。
パノラマ写真とは、通常よりも横長の写真のこと。
しかし……。
当時販売されたパノラマ対応フィルムカメラにはとある問題があり、実際には本物のパノラマ写真ではなかったのです。
それに対し、1998年のTX-1にはじまるFUJIFILMのTXシリーズでは「本物」のパノラマ撮影を可能としました。
デジタルカメラで撮影した画像を合成したのとはまったく異なる、フィルムのパノラマ写真。
ぜひ中古フィルムカメラで楽しんでみませんか?
目次
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FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
FUJIFILM TX-1とTX-2
他のフィルムカメラでは例を見ない機構が特徴のレンジファインダー・パノラマカメラ。
それがFUJIFILM TXシリーズです。
いったいどんなフィルムカメラなのでしょうか?
パノラマ写真
「パノラマ写真」という写真があります。
パノラマ写真とは、普通の写真に比べてより広い範囲が写る写真のこと。
パノラマ
通常の写真
具体的には、通常の35mmフィルムカメラ(フルサイズ)では横36mm x 縦24mmの画面サイズなのに対し、今回紹介するFUJIFILM TX-1・TX-2では横65mm x 縦24mmと、ぐっとワイドな写真を撮影することが可能になっています。
パノラマカメラと普通のカメラ
1990年代前半のパノラマ写真ブーム
そんなパノラマ写真は、1990年代前半に一大ブームを引き起こしました。
カメラメーカーもフィルムメーカーも、こぞってパノラマ写真を宣伝。
販売されるフィルムカメラのほとんどに、パノラマ機能が搭載されたのです。
いま中古で手に入るフィルムカメラにも、ボディにパノラママークがプリントされていたり、パノラマ対応のシールが貼られていたりするものは少なくありません。
パノラママークが印刷されたカメラ(Nikon AF600)
しかし……
実は1990年代前半のパノラマカメラは、そのほぼすべてが「疑似パノラマ」だったのです。
疑似パノラマとは
疑似パノラマとは、写真を撮るときに上下をマスクして、フィルムの中央付近だけを使って写真を撮るシステムのこと。
下の画像のように、本来ならもっと広い範囲を撮影できるのに、中央付近の小さい面積しか使わないのです。
そのため、疑似パノラマ写真には大きな問題がありました。
それが「画質が悪い」ということ。
横長のパノラマ写真は、紙にプリントする場合、当然横長の大きな紙にプリントされました。
すると……。
フィルムから紙に拡大してプリントするときの拡大率が大きくなってしまうので、その分画質が低下してしまうのです。
これは、デジタルカメラで撮影した写真の中央部分だけをトリミングして解像度が下がると、画質が下がってしまうのと同じこと。
そんな技術が、なぜかユーザーにも受け入れられてしまったのでした。
疑似パノラマ写真に対応したカメラ
擬似パノラマ写真に対応したカメラは、通常の撮影(フィルム画面全体を使用)と疑似パノラマ撮影を切り替えられるようになっていました。
具体的には、疑似パノラマ撮影時にはフィルム部分の上下からマスクがせり出してきて、その部分を隠すのです。
さらには、疑似パノラマ撮影専用のフィルムカメラまで登場しました。
下のMINOLTA P’sもその例。
裏蓋を開けた写真を見れば一目瞭然。
疑似パノラマ写真の画面サイズが小さく、いかに画質の面で損をしているかがよくわかると思います。
疑似パノラマのカメラには、例えば24mmといった広角の焦点距離のレンズを搭載することで、写真が写る範囲を広くしたものもありましたが、いっぽうで、レンズはそのままで上下が狭くなるだけ、という製品も多くありました。
このように、疑似パノラマ写真は合理的とはいえない方法だったため、当時、カメラマンや写真愛好家からは見向きもされなかったのでした。
しかし、横長画面のパノラマの表現力はとても魅力的なもの。
愛好家からは、もっと本格的なパノラマカメラが待ち望まれていたのです。
FUJIFILMは、その期待に本気で応えました。
本物のパノラマカメラ FUJIFILM TXシリーズ
そんな状況に対して、「本物」のパノラマ写真というものを真っ向から叩きつけたメーカーがありました。
それがFUJIFILM。
1998年、TX-1の登場です。
TX-1の本物のパノラマ写真
1990年代前半のパノラマ写真は、あくまでも擬似的なもの。
それに対して、1998年にFUJIFILM(富士フイルム)が送り出したTX-1は、フィルムの面積を少しも無駄にしない、本物のパノラマ写真が撮影できるカメラでした。
もう一度、裏蓋を開けたフィルム開口部の写真を見てみましょう。
このように、フィルム開口部(フィルムアパーチャー)の上下寸法は通常の35mmフィルムカメラと同様。
それに対し横幅は65mmと、なんと1.8倍も広いのです。
当然、画質は疑似パノラマ写真と雲泥の差。
プロやハイアマチュアの使用にも耐えうる、本格的かつ使いやすいパノラマカメラが実現したのです。
2003年には改良が施された後継機のTX-2も登場しました。
レンズ交換式のレンジファインダーカメラ
機構的に見ると、FUJIFILM TX-1・TX-2はレンズが交換できる、フォーカルプレーンシャッター搭載のレンジファインダーカメラです。
ファインダー内に二重像合致式の連動距離計を搭載。
採光式ブライトフレームのファインダー枠、パララックス自動補正(被写体との距離が近づくとファインダー枠が移動する)の搭載と、高級レンジファインダー機に必須のスペックをすべて備えています。
レンジファインダーカメラですが、1990年代後半という発売時期もあり、当然のように露出計も搭載。
シャッター幕の明るさを測光するダイレクト測光で、スマートに露出計を組み込んでいます。
絞り優先AE・オーソドックスな操作系
露出モードは絞り優先AEとマニュアル露出。
レンジファインダーカメラとしては至って標準的な搭載モードです。
うれしいのが、伝統的な操作方法を踏襲しているということ。
シャッターダイヤルはボディ上面に。
絞りリングはレンズ先端に。
他のレンジファインダーカメラを使ったことがある方なら、操作するにあたって一切迷うことはないでしょう。
高級感あふれるチタンボディ
1990年代の高級機種だけあって、外装には豪華にチタンをおごっています。
初代機種のTX-1はチタン外装ならではのシャンパンゴールドのボディ。
二代目のTX-2はブラックボディとなっています。
いわゆる高級コンパクトカメラを送り出さなかった富士フイルムですが、このTXシリーズこそが、富士フイルムならではの高級カメラブームへの回答だったのかもしれません。
通常の35mmサイズとパノラマの途中切り替え可能
35mm状態
パノラマ状態
そして、このTX-1の特筆すべき点。
それが、パノラマ撮影だけでなく、36mm x 24mmの、いわゆる35mmフルフレーム(フルサイズ)への切り替えが可能だということです。
レンジファインダーカメラとしてもハイレベルな性能をもつフィルムカメラだけに、中古で手に入れたら心強いスナップシューターになってくれることでしょう。
しかも、35mmフルフレームとパノラマは途中切り替えもできるのです。
切り替え可能、と簡単にいいますが、単に左右にマスクをせり出させただけでは、フィルムのコマ間が広く空いたり、コマとコマが被ったりしてしまいます。
これは、FUJIFILM TX-1・TX-2のフィルム巻き上げが高度に電子制御化されているからこそ実現した機能だといえるでしょう。
「普通のカメラ」の形状でパノラマ撮影を実現
じつは、FUJIFILM TX-1・TX-2のような普通のフィルムカメラの形状でパノラマ撮影を実現しているということも凄いのです。
TX-1・TX-2以前にもパノラマカメラというジャンルの製品はありました。
しかしそれらは、「レンズ自体を左右に動かして広い範囲の写真を撮る」というもの。
下に画像を挙げる「Panon WIDELUX」もその例。
一見してわかるように普通のカメラとは異なる外観をしていますし、機能的にもシャッター速度が限られるなど、特殊カメラの域を出ないものでした。
いっぽうFUJIFILM TX-1・TX-2では、広い範囲を撮るために、レンズ自体のイメージサークル(写真が写る大きさ)を拡大して対応しています。
レンズ自体は、フィルムがより大きい中判カメラ用に匹敵するスペックのもの。
しかもレンズ交換まで可能なのです。
(レンズについては後述します)
このようなコンセプトのカメラは、中古カメラは数あれどFUJIFILM TX-1・TX-2をおいてほかにありません。
[fujifilm]
ではTX-1・TX-2の性能・スペックについて見てみましょう。
FUJIFILM TX-1の性能・スペック
形式 | レンズ交換式レンジファインダーカメラ 35mm・フルパノラマ切替式 |
シャッター | B、8秒~1/1000秒 電子式 縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッター ストロボ同調速度1/125秒 |
露出計 | TTLダイレクト測光 |
露出 | 絞り優先AE マニュアル |
ファインダー | 一眼式レンジファインダー パララックス自動補正 45mm・90mmレンズで倍率をズーム切り替え |
画面サイズ | パノラマ時:横65mm x 縦24mm 35mm時:横36mm x 縦24mm |
レンズマウント | 専用マウント |
対応レンズ | TXシリーズ用レンズ |
電池 | CR2リチウム電池(Amazon)x2 |
発売年 | 1998年 |
1998年に登場した、FUJIFILM TXシリーズの第一弾です。
この時点で機能的にもとても高度に仕上がっており、中古で手に入れたら縦横無尽に活躍してくれることでしょう。
ボディ色はシャンパンゴールド。
バリエーション:Hasselblad XPAN
じつはFUJIFILM TX-1はHasselblad(ハッセルブラッド)と共同開発されたカメラでもありました。
TX-1のハッセルブラッドバージョンが「XPAN」。
基本的にはTX-1と同じ内容のカメラです。
中古での金額はとても高価なのでコレクターズアイテムの色も強いですが、ボディに輝くHasselbladのエンブレムは何物にもかえがたいものです。
FUJIFILM TX-2の性能・スペック
形式 | レンズ交換式レンジファインダーカメラ 35mm・フルパノラマ切替式 |
シャッター | B、8秒~1/1000秒 電子式 縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッター ストロボ同調速度1/125秒 |
露出計 | TTLダイレクト測光 |
露出 | 絞り優先AE マニュアル |
ファインダー | 一眼式レンジファインダー パララックス自動補正 45mm・90mmレンズで倍率をズーム切り替え |
画面サイズ | パノラマ時:横65mm x 縦24mm 35mm時:横36mm x 縦24mm |
レンズマウント | 専用マウント |
対応レンズ | TXシリーズ用レンズ |
電池 | CR2リチウム電池(Amazon)x2 |
発売年 | 2003年 |
2003年発売のTX-2は、カタログスペックの面ではTX-1とほぼ変わりありません。
異なるのはファインダー。
ファインダー内のシャッタースピードや露出情報が充実し、撮影がより便利になっています。
ボディ色はブラックです。
[fujifilm]
FUJIFILM TXシリーズ用交換レンズ
TXシリーズには3本の交換レンズがリリースされました。
広角、標準、望遠が揃っておりひととおりの撮影は可能。
特徴は、横幅65mmの画面をカバーするイメージサークル。
なにせ中判カメラで使われる120フィルムの画面サイズ幅、56mmよりも広いのです。
TX用レンズは、645判並のイメージサークルとして設計されています。
レンズ自体はオーソドックスなマニュアルフォーカスのレンズなので、マウントアダプターを使ってミラーレス一眼に取り付けるのもおすすめです。
Super EBC FUJINON TX 45mm F4
FUJIFILM TXシリーズの標準レンズです。
開放値がF4と少し暗めなのは、中判カメラ並のイメージサークルであることを考えると致し方ないところです。
Super EBC FUJINON TX 90mm F4
望遠レンズ。
45mmとこの90mmはレンズ交換時にファインダーがズームして、画角が切り替わります。
Super EBC FUJINON TX 30mm F5.6
非球面レンズを贅沢におごった広角レンズ。
こちらはファインダーが外付け式です。
FUJIFILM TXシリーズを中古で手に入れてみませんか?
横長の広い範囲をパノラマで撮りたい。
もちろんデジタルで撮影した写真を合成したり、スマホのパノラマ機能でも可能です。
ですが、中古フィルムカメラなら、合成をまったく行っていない、本物のパノラマ撮影が可能!
長いフィルムが巻かれているという、フィルムカメラの特徴を活かした機能だといえるでしょう。
富士フイルムは元来フィルムメーカー。
それだけに、フィルムの性能をより引き出すということは、このTXシリーズの開発動機だったのかもしれません。
また、せっかく開発した高画質フィルムの性能を無駄にしていた疑似パノラマの存在も、苦々しく思っていたことでしょう。
フィルムとカメラ。
その両方を作っていた富士フイルムだからこそなし得た独自性の高い機種、TX-1とTX-2。
ぜひ中古で手に入れて、中古フィルムカメラ「ならでは」の写真を撮ってみませんか?
2024年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ。一度は手にしたい逸品!
FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
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