RICOH(リコー)AUTOHALF/レトロフューチャーなカメラはぜんまい仕掛け
今回は、中古フィルムカメラのなかでも「リコー オートハーフ」(RICOH AUTO HALF)について解説します。
リコーオートハーフは、1960年代を通じて人気を博したハーフサイズカメラのひとつ。
ハーフサイズカメラのなかでも代表的な機種です。
リコー オートハーフの最大の特徴が、ぜんまい仕掛けで「フィルムを自動で巻き上げる」ということ。
1980年代より後のフィルムカメラでは電気モーターでの巻き上げが当たり前になりましたが、それに先んじること20年、すでにぜんまいによる連続撮影を可能としていたのです。
さらに、露出の設定やピント合わせも不要で、操作は「押すだけ」です。
誰でも使える機種なので、初めての中古フィルムカメラにもおすすめですよ。
そして、外観デザインは1960年代に夢見た未来そのもの。
レトロフューチャーなデザインは、いまでも色あせることはありません。
いくつかの種類があるリコー オートハーフですが、使い方はどれもほとんど同じ。
早速、どんな中古フィルムカメラなのか詳しく見ていきましょう。
目次
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リコー オートハーフ
まず、リコー オートハーフ(RICOH AUTO HALF)の特徴や性能、そして当時、他のカメラに比べて「新しかった点」を紹介します。
リコーオートハーフ 共通の性能・スペック
形式 | ハーフサイズカメラ |
シャッター | 1/125秒(通常時) 1/30秒(ストロボ撮影時) |
レンズ | RICOH 25mm F2.8(3群4枚) |
ピント合わせ | 固定焦点 (一部機種除く) |
露出計 | 外光式 セレン受光素子 |
露出 | プログラム自動露出 |
巻き上げ | ぜんまい式 |
裏蓋 | 初期モデル:取り外し式 オートハーフS以降:ちょうつがい開閉式 |
電池 | 不要 |
発売年 | 1962年〜 |
※上記性能は、オートハーフSL等一部機種では異なります。
リコー オートハーフ(RICOH AUTO HALF)は、1961年から1980年代にかけてリコーが製造したハーフサイズカメラ。
機能によりいくつかの種類に分かれますが、基本的なコンセプトは同一。
オートハーフのコンセプト。
それが「自動で撮れるカメラ」というものです。
ピント合わせ不要。
プログラムAE(EE)により、シャッターや絞りといった露出の知識も不要。
さらに、ぜんまいを内蔵することで、シャッターを押すと自動的にフィルムが巻き上げられて、撮影の準備まですべて完了するのです。
ピント合わせが不要かつプログラム露出のカメラは他にもありますが、この時代に巻き上げまで自動化したのは非常に先進的な設計だといえるでしょう。
1960年代は、知識がなくても写真が撮れるカメラが普及しはじめた時代。
このリコー オートハーフをはじめとする全自動のカメラによって、老若男女、すべての人がカメラを持つことができる時代が到来したのです。
「かつて夢見た未来」のデザイン
リコー オートハーフの大きな魅力のひとつ。
それが、他に似たものがないデザインです。
四角いボディ。
レンズの回りも長方形。
いわゆる「カメラ」というイメージとは違う、メタリックな金属板で装飾されたシンプルな形状。
まさに、1960年代ならではの「未来」のイメージの具現化。
実際、リコー オートハーフは高度経済成長期を象徴するアイテムとして語られることが多いカメラ。
数え切れないほどのオートハーフが、大阪万博の景色を切り取ったのです。
ボディ正面のアルマイト板には非常に多くのデザインがあり、メーカー純正ラインナップのほかに、企業のノベルティとしてオーダーメイドされたものもあります。
大阪万博では、万博ロゴ入りモデルも会場で販売されました。
写ルンです感覚で使えるカメラ
リコー オートハーフは、写ルンですで初めてフィルムカメラを使ったという方にもおすすめ。
撮影方法は、写ルンですと同じくらい簡単です。
違うのは、裏蓋を開けて、フィルムを入れ替えるだけ。
あとは、シャッターボタンを押すだけできれいな写真が撮れますよ。
リコー オートハーフは写ルンですに比べて、より本格的な「自動露出」という機能を持っています。
これは、被写体の明るさに応じて、フィルムにどれくらいの量の光をあてるかを調整する機構。
写ルンですにはこの機能はありません。
写真の「露出」がぴったりだと、より色鮮やかに、くっきりと、フィルムの味を引き出せます。
ぜひ美しい写真を撮ってみませんか?
ちなみに、同様に簡単操作できれいな写真が撮れるクラシックなカメラとしては、「オリンパス ペンEE」シリーズもおすすめです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ハーフサイズカメラについて、詳しくはこちらの記事でも解説しています。
リコー オートハーフの詳しい特徴
では、簡単に撮れるカメラを生み出すために、リコー オートハーフにはどんな工夫が施されているのでしょうか?
ぜんまいで自動的に巻き上げ
リコー オートハーフを象徴する機能。
それがぜんまい巻き上げです。
リコー オートハーフのボディ下面には、ぜんまいを巻くための大きなノブがあります。
あらかじめ、これでぜんまいを巻き上げておくことで、シャッターを切ったあとに、自動でフィルムが巻き上げられるのです。
ぜんまいを使用しているため、おおむね20枚くらいごとに再び巻き上げは必要となりますが、難しい操作が一切必要ない機構なので不便に感じることはないでしょう。
なお、巻き戻しはクランクを使った手動式です。
ピント合わせ不要
リコー オートハーフのレンズは固定焦点。
基本的にリコー製の25mm F2.8レンズが搭載されています。
固定焦点とは、レンズの被写界深度を最大限に活かして、プリントしたときに見かけの上でピントが合っているようにする機構。
明るい屋外で撮るぶんにはパンフォーカスになるので、近距離から遠距離までくっきり写ります。
レンズの実際のピントは2.5mで固定されており、人物の記念写真を撮るときにもっともよい写りをするように設定されています。
余談ですが、この25mm F2.8というレンズは少し広角寄り。
ライバル機種のオリンパス ペンシリーズでは、広角用の特殊モデル、ペンWで採用されたのと同じ焦点距離です。
広角寄りのレンズは、身近な景色を切り取るのにも、旅行にも最適。
被写界深度が深くなるので、パンフォーカスとの相性も抜群です。
操作不要のプログラム自動露出
リコー オートハーフは、絞りやシャッター速度など、露出に関する操作も不要。
ボディ前面の透明なプラスチック部分にあるセレン光電池を用いて、明るさに応じて自動的に絞りが変化します。
(シャッター速度は1/125秒で固定です)
セレン光電池は太陽電池の一種なので、カメラにほかに電池を入れる必要もありません。
自動巻き上げ・自動露出のフィルムカメラは1980年代以降当たり前になりますが、それらはすべて電池が必須。
オートハーフの独創性は、ぜんまいやセレン光電池など、当時選ぶことができた最良の技術を組み合わせて、特別な操作不要・電池交換も不要なカメラを生み出したことにあるといえるでしょう。
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リコー オートハーフの種類とおすすめ機種
では、リコー オートハーフを中古で購入するならどんな機種がおすすめなのでしょうか?
おすすめモデルと種類を解説します。
おすすめのリコー オートハーフ
オートハーフS
バリエーションが多いリコー オートハーフですが、おすすめなのは以下のモデルです。
リコー オートハーフS
リコー オートハーフE
リコー オートハーフSE
リコー オートハーフSE2
リコー オートハーフE2
こうしてみると種類が多いように見えますが、基本的に外観はほとんど同じ。
簡単にいえば、初期モデルと最末期のモデル、特殊なモデル(製造数が少なくお店にも少ないので意識しないでOK)以外ならどれでもよいということです。
これらのモデルは、ボディ前面にアルマイトの板がはめこまれており、多種多様なデザインが存在します。
機能的にセルフタイマーの有無以外ほとんど差はないので、好みのデザインのものを選ぶのがおすすめです。
では、続いて各モデルについて見ていきましょう。
リコー オートハーフ(初代、1962年)
初代機種。
のちのモデルと異なり、シャッターボタンがボディ前面にあります。
また、裏蓋は取り外し式。
ボディ後面のカバーがすっぽりと外れる形状になっています。
セルフタイマーはありません。
リコー オートハーフ ゾーンフォーカス(1963年)
初代オートハーフのレンズをピント合わせ可能にした機種。
この記事でも解説したとおり、リコー オートハーフは基本的に固定焦点のカメラですが、この機種と、後述するオートハーフSLだけは、例外として目測式です。
シャッターボタンはボディ前面。
裏蓋は取り外し式ですが、前面のデザインはのちの機種同様アルマイトの装飾仕上げとなりました。
アメリカのカメラメーカー、アンスコ社にOEM供給されています。
リコー オートハーフS(1965年)
リコー オートハーフの基本形態を完成させた機種。
ボディの裏蓋がこの機種以降ちょうつがいによる開閉式となりました。
また、シャッターボタンがボディの上面へ移動しています。
この機種にはセルフタイマーも装備されています。
リコー オートハーフE(1966年)
リコー オートハーフSのセルフタイマーを省略したモデル。
見分け方は、ボディ前面のセルフタイマーレバーの有無です。
このモデルでは各種OEMや、リコー自身によるバリエーション展開が非常に多く行われました。
中古カメラ店でも、さまざまなデザインを目にすることができるでしょう。
リコー オートハーフSE(1967年)
セルフタイマーあり。
フィルムを入れたときに、自動的に1枚目まで巻き上げられるようになりました。
(それまでのモデルは空写しが必要)
リコー オートハーフSL(1970年)
他のモデルとは毛色の違う上級機種です。
レンズは大口径の35mm F1.7。
目測式のピント合わせが可能です。
他のモデルはシャッター速度が固定で絞りのみ可変しますが、こちらは露出に応じてシャッター速度も変化します。
機能追加によりボディも大型化。
マニアックなモデルといえるでしょう。
リコー オートハーフSE2(1976年)
オートハーフSEのマイナーチェンジ。
ホットシューが装着されました。
リコー オートハーフE2(1976年)
オートハーフEのマイナーチェンジ。
こちらもホットシューが装着されました。
リコー オートハーフEF(1978年)
1975年のコニカC35EF(ピッカリコニカ)の登場を期にどんどん当たり前になっていったカメラへのストロボ内蔵。
リコーもオートハーフにストロボを内蔵しました。
このオートハーフEFは、それまでのオートハーフの真横にストロボをそのまま増設したようなデザイン。
ストロボには単3乾電池を2本使用しますが、本体はそれまで同様電池不要です。
リコー オートハーフEF2(1979年)
リコー オートハーフEFのマイナーチェンジ機種。
固定式だったストロボがポップアップ式となり、レンズから離れたことで赤目(ストロボの光が目の血管に反射して目が赤く写る現象)を軽減できるようになりました。
オートハーフの姉妹機種
なお、リコー製の35mmカメラ(フルサイズ/フルフレーム)には、オートハーフと同様にぜんまい巻き上げを採用した姉妹機種が存在します。
リコー オートショット(1964年)
リコー スーパーショット(1965年)
リコー ハイカラー(1968年)
などです。
ただし、これらの機種はフィルムの送り量がハーフサイズの2倍のため、単純計算で連続撮影枚数がハーフサイズの半分となってしまい、ぜんまいを巻き上げる頻度が増えてしまいました。
リコー オートハーフ 中古購入時の注意点
では、これからリコー オートハーフを中古で探すとき、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか。
モルトの劣化に注意
中古フィルムカメラに共通するモルト(スポンジ)の劣化ですが、リコー オートハーフではとくに注意が必要です。
リコー オートハーフの裏フタは、遮光性能のかなりの部分をモルトに頼っています。
単に光が漏れるだけでなく、大量の劣化したモルトは内部に付着して故障の原因にもなります。
オートハーフを中古で探す場合、モルトが交換されたものを選びましょう。
貼り替えられたモルト
オートハーフにおすすめの35mmフィルム
ハーフサイズカメラのRICOH AUTOHALFでは、フィルムは35mmフィルムを使用します。
35mmフィルムはこちらがおすすめです。1960年代を象徴するカメラを使ってみませんか?
独特なデザインで人気の高いリコー オートハーフ。
手軽な操作から、中古フィルムカメラ初心者の方にもおすすめできる機種です。
1960年代に思い描かれた「未来」を、あなたも追体験してみませんか?
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