Kowa(コーワ)SIXとSuper 66/独特なスタイリングの中判一眼レフカメラ
今回は、6×6判の中判一眼レフ、コーワシックスシリーズについて解説します。
中古の中判カメラといえば、正方形のましかく写真が撮れる6×6判がとくに人気です。
しかし、国産カメラとなると、大量にある二眼レフとは異なり、中判一眼レフは少ないもの。
そんな国産の6×6判中判一眼レフとして数少ない存在のひとつ。
それが、Kowa SIXやKowa Super 66なのです。
コーワとは、現在も製薬会社として有名な「興和」のこと。
キャベジンやウナコーワなどでおなじみのメーカーです。
じつはコーワは1970年代までフィルムカメラのメーカーでもあり、35mmと中判でかずかずの名機を送り出していました。
装着されたレンズは描写に定評があり、現在も中古で人気を博しています。
そんなコーワの最高峰であるKowa SIXやKowa Super 66。
クラシカルかつマニアックな中判カメラを中古で手に入れたい方にぜひおすすめの逸品です。
ぜひコーワ一眼レフで正方形の大画面を描写を味わってみませんか?
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Kowa SixとKowa Super 66
まず、コーワの中判一眼レフカメラについて、性能・特徴を見ていきましょう。
Kowa Sixの特徴・スペック
形式 | 中判フィルム一眼レフカメラ |
シャッター | B、1秒~1/500秒 機械式 レンズシャッター ミラーは自動復帰しない |
露出計 | なし (露出系内蔵ファインダーあり) |
AE | なし |
ファインダー | 交換式 標準ではウエストレベルファインダーを装備 |
レンズマウント | 独自のスピゴットマウント |
対応フィルム | 120フィルム・220フィルム |
フィルム装填 | スタートマーク式のセミオートマット |
フィルムバック | KOWA Sixと KOWA Six MMは固定 KOWA Six 2型と KOWA Super 66は交換式 6×6判のほか645判あり |
電池 | 不要 (露出計内蔵のファインダー使用時はMR9水銀電池) |
発売年 | 1968年(KOWA Six) 1972年(KOWA Six MM) 1973年(KOWA Six 2型) 1974年(KOWA Super 66) |
Kowa SIX(コーワシックス)シリーズは、かつてカメラを製造していたコーワ(興和)が1960〜1970年代にかけて送り出した中判一眼レフカメラ。
現在中古で手に入る国産の中判一眼レフカメラとして数少ない存在です。
メジャー度でいえばゼンザブロニカが別格ですが、その他の中古で購入して実用可能なものというと、コーワと、あとはNORITA 66(ノリタ66)、FUJITA 66(フジタ66)があるくらい。
縦に長いコーワ。
ハッセル風の奥に伸びたボディのブロニカ。
35mm一眼レフをそのまま拡大したようなノリタ。
国産の中古中判一眼レフは、それぞれにまったく異なるスタイルを味わえる、じつはディープな機種が揃った世界なのです。
それでは具体的に、Kowa SIXやKowa Super 66の特徴をみていきましょう。
独自のスタイルのレンズシャッター式中判一眼レフ
1968年に最初の機種、Kowa SIXが登場したコーワの中判一眼レフ。
まるでレンズが1つしかない二眼レフのような、縦に伸びたスタイルが特徴的です。
このKowa SIXは、じつは日本初のレンズシャッター中判一眼レフ。
レンズシャッターの中判一眼レフといえば、中古カメラの最高峰のひとつ、ハッセルブラッドが有名ですが、意外にもそれまで、国産のフィルムカメラにはない形式だったのです。
1960年代の時点ではゼンザブロニカはフォーカルプレーンシャッターのみ。
レンズシャッターで、ストロボ全速同調するKowa SIXは、その点でアドバンテージを持っていました。
中判の一眼レフとしては、当時の販売価格も安め。
レンズシャッターでストロボが使いたいアマチュアカメラマンにとって、貴重な選択肢となったといいます。
ウエストレベルファインダーでフィルムカメラならではの撮影
Kowa SIXは標準ではウエストレベルファインダーを装備。
中古で購入する場合にもほとんどはウエストレベルがセットになっていると思います。
縦長の二眼レフのようなボディは、ウエストレベルでの撮影に最適。
ほどよいホールド感で、安定して撮影を楽しめますよ。
6×6判の美しく明るいスクリーンは、デジタルカメラには真似できない、フィルムカメラならではの味わいです。
ただし、ハッセル同様ミラーはクイックリターンではないので、撮影後は巻き上げるまでファインダーが見えなくなることには注意しましょう。
中判システムカメラ Kowa SIX
またKowa SIXは一応のシステムカメラとして、多様な付属品を展開していました。
ファインダーも交換式で、アイレベルや、露出系内蔵のTTLファインダーも存在。
後期のモデルはフィルムバックも交換式となりました。
交換レンズ含めKowa SIXの関連用品には入手が難しいものも多いので、中古カメラ店で見つけたら確保するのがおすすめです。
製薬会社として有名なコーワのカメラ
中古カメラ愛好家には知られていることですが、Kowa SIXやKowa Super 66を製造したコーワとは、キャベジンやコルゲン、ウナといった市販薬で有名な興和のこと。
コーワは1950〜1960年代にかけては国産カメラメーカーのなかでも独特の地位を占め、二眼レフのカロフレックス(KALLOFLEX)や広角35mmレンズを搭載した35mmフィルムカメラカロワイドなどで人気を博しました。
中古カメラ愛好家の間では、製造数が少なくコレクターズアイテムの「コーワSW」(28mm広角レンズ搭載)がとくに有名です。
魅力的な中古フィルムカメラが多いことで知られるコーワですが、カメラを作り始めたのは、愛知県に本拠を置いている地縁によるものでした。
もともとは紡績会社だったコーワは、戦後相次いで、光学事業と医薬品事業に進出。
なかでも、光学事業の立ち上げに関わったのは、職を失った陸軍・海軍の光学技術者たちだったのです。
とくに海軍の工廠(工場)は愛知県の豊川市にあったため、地縁を活かした形だったといえるでしょう。
同様の例は他メーカーにも多く、ニコンはもともと海軍向けの光学機器を製造。
他にも1950年代の中堅メーカー、アイレスも海軍の技術者が立ち上げたメーカーです。
※この項参考文献「興和の秘密とワルツの悲劇」2018年6月4日閲覧
プロミナーゆずりのシャープなレンズ
Kowa SIXシリーズは、交換レンズも充実。
もともとコーワは「プロミナー」(Prominar)というレンズブランドを用いており、シャープな描写に定評がありました。
前述のような出自のメーカーだけあり、その性能は確かなものに違いありません。
Kowa SIXやKowa Super 66用のレンズはプロミナー銘ではなく単にコーワ銘ですが、その性能はプロミナーの良質な描写を受け継いだもの。
国産レンズのなかでも独特の地位を保った、コーワならではのシャープかつクラシカルな味わいを楽しめます。
ちなみにコーワはカメラからは撤退しましたが、Prominar銘はいまも望遠鏡に使用。
そして2014年には、マイクロフォーサーズのミラーレス一眼用の交換レンズも新たに登場しています。
日本製カメラながら設計はドイツ人
縦型の独特のスタイリングで知られるKowa SIX。
他のコーワ製フィルムカメラが、いかにも国産カメラ然としたデザインなのに対し、いくら中判とはいえ、それらとはかけはなれた見た目です。
そのことには、Kowa SIXが日本人による設計ではないことが影響しているといえるでしょう。
Kowa SIXの設計を手がけたのは、ドイツ人技術者のハインツ・キルフィット(Heinz Kilfitt、1898〜1973)。
他の代表作としては、戦前の時点でゼンマイによる自動巻き上げを搭載していたフィルムカメラ、ロボット(ROBOT)の原型を考案したことで知られています。
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コーワの6×6判一眼レフ 各機種解説
Kowa SIXからはじまる、興和の中判一眼レフ、それぞれの特徴を解説します。
基本的なスタイルはどれも同じですが、徐々に改良が施され、
Kowa SIX(1968年)
最初に発売したKowa SIXです。
基本的なスタイルはこの時点で完成しています。
後年の機種との違いは、フィルムバックが固定式であること。
ミラーアップ、多重露光がないこと。
中古で購入する場合、もちろん後のモデルのほうが機能的には充実していますが、現在の目で見ると実用上はさほど大きな違いはないのではないでしょうか。
KOWA SIX MM(1972年)
Kowa SIXにミラーアップと多重露光を追加したモデルです。
MMとは、ミラーアップ(Mirror up)と多重露光(Multiple exposure)のそれぞれの頭文字を取ったもの。
こちらも、フィルムバックは固定式です。
KOWA SIX 2型(1973年)
Kowa SIX MMから、フィルムバックが交換可能となったモデル。
フィルムバックには6×6判と645判があります。
Kowa SIXは縦型ボディのため、フィルムバックもボディ下部に回り込むような独特の構造です。
Kowa Super 66(1974年)
コーワの中判一眼レフの最終機種にして、コーワが最後に新規で発売したフィルムカメラです。
機能面では、ミラーアップ機構が省略されています。
Kowa SIX 中古購入・使用時の注意
さて、そんなKowa SIXやKowa Super 66を中古で購入する際には、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか?
いくつかの、覚えておきたい点について解説します。
ストラップ金具が独自形状
Kowa SIXはストラップの金具が独自形状。
二眼レフなどによくある、ボディ側の丸い金具に、ストラップ側の金具を取り付ける形式です。
そのため、中古を探す際にはストラップの金具が付属しているか、もしない場合には入手できるかあらかじめチェックしましょう。
マミヤの中判一眼レフ用の金具が使えるということですが、流用となるので当然ですが自己責任となります。
調子が悪いときには無理に操作しない
Kowa SIXには、経年で不具合が発生しているものがままみられます。
当店で販売する場合には当然、修理・オーバーホールを行っていますが、もし調子の悪いものを見つけた場合、無理に操作しないようにしましょう。
内部のパーツに負荷がかかり、単に噛み込んで動かなくなるだけでなく、動作部品の破損を招きます。
幸いKowa SIXは現在も修理が可能。
専門の修理業者に頼むことで整備できるので、もし少しでも不具合を感じたら、専門家に見てもらうのがよいでしょう。
中古カメラ愛好家の間では内部部品に弱いところがあるといわれており、同年代のニコンやペンタックスのように扱うのはおすすめできません。
おすすめの120フィルム(中判フィルム)
中判カメラで使う120フィルムは、以下のものがおすすめです。 ポジフィルム(リバーサルフィルム)で撮影するなら、富士フイルムのPROVIA 100Fが定番です。独特の立ち位置の国産中判一眼レフ
外観も独特なら、プロのスタジオ撮影には向かないフィルムバック固定式を当初は採用していた点でも独特なKowa SIX。
中判の一眼レフカメラとしては、なかなかにマニアックな部類に入る機種だといえるでしょう。
他の人とは違う、趣味性の高い中判カメラが使いたいあなたにぜひおすすめしたいKowa SIXやKowa Super 66。
ぜひ、しっかり整備された個体を中古で手に入れて、コーワのレンズで世界を切り取ってみませんか?
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